#015|ジョージ・ナカシマ×イサム・ノグチ|素材との対話|木の第二の人生と石の永遠|フリーエッジ|あかり|金沢21世紀美術館|今日から明日へ|作品を継承すること|2027年5月長期休館|絵画の傷は直さない方がいい|保存修復5つの心得|夜警|ワニス|家具は小さな建築|彫刻を空間へ|ニューホープ|牟礼|メディアアート|ガラストップ・テーブル|一般1,200円|10月31日開幕|現代美術|展覧会
2026-10-28 17:49

#015|ジョージ・ナカシマ×イサム・ノグチ|素材との対話|木の第二の人生と石の永遠|フリーエッジ|あかり|金沢21世紀美術館|今日から明日へ|作品を継承すること|2027年5月長期休館|絵画の傷は直さない方がいい|保存修復5つの心得|夜警|ワニス|家具は小さな建築|彫刻を空間へ|ニューホープ|牟礼|メディアアート|ガラストップ・テーブル|一般1,200円|10月31日開幕|現代美術|展覧会

今日のアートニュースを1つのテーマで読み解きます。テーマは「素材と向き合う」。木工家ジョージ・ナカシマは「一本の木に唯一の完璧な用途がある。木は二度目の人生を望んでいる」と考え、自然の縁を残すフリーエッジと蝶形の継ぎ手で木と対話しました。彫刻家イサム・ノグチは数億年動かない石を彫りながら、彫刻を庭園や広場、和紙と竹の「あかり」へと空間へ解き放ちました。10月31日に金沢21世紀美術館で開幕する『今日から明日へ 作品を継承すること』は、2027年5月からの長期休館を前に、素材の経年変化や機材の旧式化と向き合いながら作品を未来へ残す意味を問い直す展覧会です。そして絵画の保存修復のプロが指南する5つの心得――すべての変化が傷とは限らず、修復とは元通りにすることではなく作品との対話であること。素材の声を聞く人たちを考えます。この番組を作っているチームのアプリ「Moshilin」では、世界中のアート好きと音声ルームで直接話せます。ダウンロードリンクは番組の概要欄にあります。iPhoneの方は、Webブラウザから safekids.win にアクセスすればそのまま試せます。💌 番組へのメッセージ募集中:感想や取り上げてほしい展覧会を、Spotifyのコメント欄から送ってください♪今日の1曲:ジャズ(番組中盤)■参照サイトNGV/George Nakashima and Isamu Noguchi: A Life Between - https://www.ngv.vic.gov.au/essay/george-nakashima-and-isamu-noguchi-a-life-between/The Noguchi Museum/Biography - https://www.noguchi.org/isamu-noguchi/biography/biography/Knoll/The Soul of a Tree - https://www.knoll.com/knollnewsdetail/george-nakashima-studioEBSCO/George Nakashima Biography - https://www.ebsco.com/research-starters/biography/george-nakashimaGeoffrey Diner Gallery/George Nakashima Biography - https://dinergallery.com/artists/30-george-nakashima/biography/Geoffrey Diner Gallery/Isamu Noguchi Biography - https://dinergallery.com/artists/83-isamu-noguchi/biography/Sworders/George Nakashima's Harmonies in Wood - https://www.sworder.co.uk/news/george-nakashimas-harmonies-in-wood/?pc=3453Sceners Gallery/George Nakashima - https://scenersgallery.com/collections/george-nakashimaGeorge Nakashima Woodworkers 公式/History & Team - https://nakashimawoodworkers.com/philosophy/history-team/Nakashima Foundation for Peace/Altar for Peace - https://nakashimafoundation.org/project/north-america-usa-altar-for-peace/SFMOMA/George Nakashima - https://www.sfmoma.org/artist/George_Nakashima/イサム・ノグチ庭園美術館 公式サイト - http://www.isamunoguchi.or.jp/美術展ナビ/今日から明日へ 作品を継承すること - https://artexhibition.jp/exhibitions/20261017-AEJ3021503/金沢21世紀美術館 公式/展覧会一覧 - https://www.kanazawa21.jp/exhibition_en.php金沢21世紀美術館 公式サイト - https://www.kanazawa21.jp/en/japan-guide/21st Century Museum of Contemporary Art - https://www.japan-guide.com/e/e4209.htmlNiEW/Kanazawa 21st Century Museum Renovations - https://niewmedia.com/en/news/066443/金沢21世紀美術館 公式/2026年度プレスリリース - https://www.kanazawa21.jp/tmpImages/videoFiles/file-19-603-file.pdf朝日新聞/「路上で生きる」をどう見る? - https://www.asahi.com/articles/ASVBR0P7DVBRUTFL007M.htmlWikipedia/Conservation and restoration of new media art - https://en.wikipedia.org/wiki/Conservation_and_restoration_of_new_media_artARTnews JAPAN/絵画の傷は直さない方がいい? - https://artnewsjapan.com/article/90925Canadian Conservation Institute/Condition Reporting – Paintings - https://www.canada.ca/en/conservation-institute/services/conservation-preservation-publications/canadian-conservation-institute-notes/condition-reporting-paintings-introduction.htmlArtDependence/Restoration begins of Rembrandt's The Night Watch - https://artdependence.com/articles/restoration-begins-of-rembrandts-the-night-watch/ScienceAQ/The Varnishing Point - https://www.scienceaq.com/Article/Chemistry/86962.htmlNTT ICC/Challenges in Digital Art Conservation - https://www.ntticc.or.jp/en/feature/os10/article/06/石橋財団アートリサーチセンター/Cultural Properties Protection - https://www.ishibashi-foundation.or.jp/en/art_culture/protection/Artlyst/Modern Painting Conservation Techniques Could Be Damaging - https://artlyst.com/modern-painting-conservation-techniques-could-be-damaging-museum-masterpieces/ライブドアニュース/絵画アプリ「えをみる」 - https://news.livedoor.com/topics/detail/32668867/美術手帖/OAO 京都工芸展 - https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/33250美術手帖/チームラボ 浜離宮 - https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/33240美術展ナビ/11月1日と3日に閉幕する展覧会20+α - https://artexhibition.jp/topics/news/20261027-AEJ3029633/美術展ナビ/フォンタネージ展レポート - https://artexhibition.jp/topics/news/20261019-AEJ3022833/TRILL/京都でアートと工芸をめぐる秋 - https://trilltrill.jp/articles/5132680■声質変換:つくよみちゃん公式RVCモデル(CV.夢前黎) https://tyc.rei-yumesaki.net/work/software/rvc/■元の音声:本番組用に生成したDJナレーション音声

感想

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ME-FM
想像してみてください。
あなたが一生懸命貯金をして、ついに憧れのアーティストの絵画を手に入れたとします。
おお、いいですね。
で、いざ家に飾ろうとカンバスをよく見たら、端の方に点々とネズミの足跡が残っているのを発見してしまう。
ああ、なるほど。それはちょっとショックかもしれませんね。
ですよね。
さて、あなたはプロに頼んで、これをきれいにクリーニングして消し去るべきでしょうか?
それとも、50年前のアーティストのアトリエを走り抜けたそのネズミの足跡もまた、美術師の一部として受け入れるべきでしょうか?
いや、非常に悩ましい。でも、アートの本質を尽くすといいですね、これは。
残すべき作品とは一体何なのか?
そして、ダメージと歴史の境界線はどこにあるのか?
そうなんです。
今日のひもときは、まさにそこがテーマなんですよ。
素材と向き合う、という。
木は第二の人生を望むし、石は数億年動かない。絵の具は生き物のように変化して、メディアアートの機材なんかはあっという間に旧式になっていくじゃないですか。
そうですね、本当に。
残すっていうのは、過去のある一時点を冷凍保存することではなくて、なんかこう、素材の声を聞きながら何を受け継ぎ、どんな変化を引き受けるかを決め続けることなんじゃないかと。
芸術家ごじんの素材との格闘から始まって、現代の美術館が直面する保存のジレンマ、そして未来の美術を待つ絵画修復の最前線まで、今日はすべてこの素材との対話という一本の線でつながっていますからね。
なので、たくさんの資料や記事をじっくりひもときながら、あなたがよく知っている人になるための近道を今日もお届けしていきたいと思います。
よろしくお願いします。
早速最初の話題に入りましょうか。
この入り口となる二人のアーティストについては、10月27日配信の第8話でも取り上げました。
はい、特集の第1部ですね。
そうです。ぜひそちらも聞いてみてください。
第1部では、ジョージ・ナカシマとイサム・ノグチという二人の巨匠の追い立ちに触れましたけど、今日はその第2部として、彼らがどう素材と対話したのかにフォーカスします。
ナカシマの木に対する哲学は非常に独特で、資産に富んでいますよね。
ですよね。
一本の木、一つの部位に唯一の完璧な用途がある。木は二度目の人生を望んでいるという言葉にすべて表れています。
通常家具を作るときって、木の皮の部分とか節とかひび割れって、まあ欠陥として切り捨てちゃうじゃないですか。
普通のメーカーならそうしますね。
でも彼は丸太の自然な縁をそのまま生かすフリーエッジを採用したりして、特に僕が面白いなって思うのはバタフライジョイントという。
基本なんです。
ああ、あれは特徴的ですね。
割れ目があるところにあえてリボンのような蝶々の形をした木片を埋め込むんですよね。
はい、あれは単なる装飾でもないんです。物理的なくさびとして機能していまして。
くさびですか。
そうです。割れ目の両側を長方の木片でがっちりとつなぎ止めることで、木がそれ以上裂けていくのを防いでいるんですよ。
03:00
なるほど。じゃあデザインと機能が完全に一致してるんだ。
ええ、自然が生み出した割れという欠点を隠すんじゃなくて、その割れを止める構造そのものをデザインの主役に据えてしまったわけです。
いや、すごいな。一方、イサム野口はどうでしょうか。彼は石という木とは全く異なる時間軸を持つ素材と向き合いましたよね。
はい。香川県の群れ町にアトリエを構えて、地元の石の作家である泉正敏さんと深く共同しました。
数億年もの間、沈黙して動かない石。野口はその圧倒的な永続性と対峙したわけですが、ここで僕ちょっと素朴な疑問なんですけど。
はい、なんでしょう。
中島のアプローチって、なんだかスポーツのチーム作りに似てません?
チーム作りと言いますと?
選手の欠点を無理に直すんじゃなくて、その個性を最大限に生かして最高の配置を決める名監督みたいな。
でも野口は真逆というか、動かない石という永遠の素材を使いながら、それを遊具とか広場みたいな動的な空間へと引っ張り出している。
これで素材に対するスタンスとして矛盾してないのかなって思ったんですよ。
いや、そのコントラストこそが彼らの面白さなんですよ。建築家から転身した中島は、アメリカのニューホープという一箇所に深く根を下ろす提示を選びましたよね。
ああ、はい。工房を作って。
ええ、彼にとって家具は始めから終わりまで自分で統合できる小さな建築であり、一点毛の製作をお問した。素材である木に寄り添ってその場に留まったわけです。
木と一緒に定住したと。
対して野口はニューヨークと日本を絶えず行き来する異動の人生を選びました。永遠の素材である石と格闘しつつ、自分の作品を社会という動的な空間に持ち出すために、あえて工業的なプロセスを掴み取ったんです。
工業的というと、量産とかですか?
そうです。1947年のハーマンミラー社のガラストップのテーブルとか、1951年からの岐阜の和紙と竹を使った光の彫刻、明かりなどの量産家がその代表ですね。
なるほど。
木という変化する素材に寄り添って留まった中島と、石という普遍の素材を社会に動かすために自ら動き回った野口。だからどっちも素材の可能性を固定せずに変化を引き受けたっていう意味では共通してるんですね。
まさにその通りです。生涯対話を続けた二人と言えます。
アーティスト個人はそうやって自然の素材と対話してきたわけですけど、じゃあその生み出された作品を100年とか1000年先まで預かる美術館はどう素材と向き合っているのか?
ここで話題を現代の美術館へ移しましょうか。
金沢21世紀美術館の話ですね。
はい。2026年10月31日から2027年4月18日まで開催される今日から明日へ作品を継承することという展覧会ですね。
06:02
ちなみに一般チケットは1200円みたいです。
金沢21世紀美術館は2027年の5月6日から翌2028年の3月まで大規模開始のために長期休館に入りますからね。
そうなんです。
その休館中は白市でアートフェスティバルが開かれるそうなんですが。
この大きな節目の時期に美術館の最大の使命である構成に作品を残すことを正面から問い直しているんです。
でも現代アートの素材って木や石だけじゃないから複雑ですよね。
ええ。工芸やミクストメディア、空間全体を使ったインスタレーション、さらにはパフォーマンスのような上演を伴う作品やメディアアートなど多岐にわたります。
メディアアートとかだとやっぱり機材の問題がありますよね。
そこが一番の課題ですね。再生機材の給紙化という物理的な寿命に直面するんです。
ビデオテープとか古いブラウン管モニターとか、もう部品の製造ライン自体が地球上にないような、そこで僕強烈に引っかかった対立点があって。
何でしょう。
例えば昔のブラウン管モニターを使った映像作品でそのモニターが壊れたとしますよね。
それを手っ取り早く最新の薄型4K液晶モニターに交換しちゃっていいのって。僕は絶対反対なんですよ。
それはなぜですか?
それってテセウスの船みたいじゃないですか。部品を全部新しいものに交換した船は果たして元の船と同じと言えるのかっていう。
あーなるほど。
当時の画質の荒さとか、ブラウン管特有の奥行きも含めて作品だと思うから、機材のアップデートは作品の魂を消しちゃう気がして。
まさにその葛藤こそが現代アートの保存修復における最大のジレンマなんです。
やっぱりそうなんだ。
過去のハードウェアという素材の固定にこだわるべきか。
それともアーティストが表現したかったコンセプトの再生を優先して機材の変化を引き受けるべきか。
それって誰がどうやって決めるんですか?キュレーターが勝手に?
いえ、キュレーターや修復家が協議して決めます。
ただ、絶対的な正解はないんです。だからこそこの金沢の展覧会が画期的なんですよ。
どう言いますと?
密室で決めるのではなく、完成品だけでなく。
えーと、調査・修復・機材更新・再演・記録というプロセスそのものを展示として公開しているんです。
ジレンマを社会に晒し、議論の場を開いている点を高く評価すべきだと思います。
へー、プロセスを見せるんだ。残すっていうのは、冷凍保存することじゃなくて、どう変化させるかを選ぶプロセスなんですね。
でも、こういう現代アートの修復方針って海外の美術館はどうしてるんだろう?
国や文化によってオリジナルへの執着やアップデートの許容度はかなり異なりますからね。
そういう時こそ、僕らの番組制作チームが作っている言語交換アプリ、モシュリンがぴったりかもしれないですね。
09:00
ここできましたか?
はい。モシュリンなら22以上の言語に対応していて、リアルタイムのAI翻訳と字幕機能があるんですよ。
だから、世界中のネイティブスピーカーの音声ルームにふらっと入って、日本の金沢でこういう展示があるんだけど、
あなたの国の現代美術館はどう?機材のアップデートって許されると思う?って直接議論できるんです。
異なる文化の視点を入れることで、私たちの固定観念もアップデートされそう。
そうですね。そうなんですよ。
アート好きのリスナーにはぜひ試してみてほしいです。
で、ちょっとここで番組からの振り返りをさせてください。
普段ならリスナーからのメッセージを紹介するんですが、今回は僕から。
ここで今日の1曲をお楽しみください。今日はジャズでお届けします。
さっきの中島と野口の話なんですけど、
はい、なんでしょう。
前回の第8話の収録の後、ずっと僕の中で引っかかってた問いがあって、
2人とも第2次世界大戦中に日系人としてポストンやミニドカといった収容所で過酷な体験をしていますよね。
ええ、そうでしたね。
あの不条理な体験が、彼らの素材をコントロールせずありのままを受け入れるという哲学にどう繋がっていったのかなって、もっと深く語りたいと思いました。
なるほど、それは非常に重要な視点ですね。
彼らは収容所という場所で、戦争や人種差別といった人間の恣意的な支配がもたらず不条理を経験しました。
だからこそ、人間のエゴによるコントロールを超えた気や意志という圧倒的な自然の時間軸に救いを見いだしたのではないでしょうか。
人間の社会の凶器とは無縁の、確固たる自然の摂理に対して深い敬意を持つようになった。
そうですね、不条理な歴史を経験したからこそ辿り着いた、狂信な哲学だと言えます。
深いですね。ちなみに、この二人の特集の続き、第3部は10月29日に、「一点物と量産、そして見に行ける場所」というテーマでお届けする予定ですので、お楽しみに。
はい。
さて、最新のメディア機材の話から、今度は最も伝統的な絵画の保存へと視点を移しましょうか。
実は絵の具もまた変化し続ける生き物のような存在なんですよね。
12:02
ええ、油絵具などは鉱物や植物、それから昆虫由来の物質が複雑に混ざり合った有機物ですからね。
ここで、アートニュースジャパンが公開している、「アート作品を守る5つの心得」というプロの保存修復家の指南が非常に参考になります。
これ、コレクターだけじゃなくて、家にポスターや絵を飾っている全ての人に聞いてほしい内容でした。
まず、一口のコンディションレポートの重要性とか、事故が起きたら触らず写真を撮るとか。
ええ、基本的なことですがとても大切です。
でも一番驚いたのは、全ての変化が修復すべき傷とは限らないという点です。
冒頭のネズミの足跡の話ですね。
はい。ウィルム・レクーニングが貧しかった頃に描いた絵に残るアトリエのネズミの足跡。
それからジャスパー・ジョーンズが自宅のドアとして使っていたラオシェンバーグの版画についた指紋。
ドアにしてたんですか?
そうなんです。あと、ジョアン・ミッチェルの絵に見られる意図的なひび割れとかですね。
これらはアーティストの制作プロセスや歴史的な関係性を証明する作品の一部であり、ダメージではありません。
ちょっと待ってください。じゃあ僕がなけなしの貯金をはたいて買った高い絵をうちの飼い猫がバリバリって引っかいたとしますよね。
それもこれも我が家の歴史だって言って放置した方がいいってことですか?
ネズミの足跡が許されるならうちの猫の爪痕もアートの一部じゃないですか?
それはただの事故です。完全にダメージですね。
ピシャリと言われちゃった。やっぱりダメですが。
混同してはいけません。
アーティストの意図や歴史的文脈に基づく痕跡と、単なる所有者の管理不足による損傷は明確に区別されます。
猫の爪痕はメッセージを損なうノイズでしかありませんから。
いやー厳しいけど納得です。じゃあもし絵の具がプロッと剥がれ落ちちゃったりしたら、とりあえず瞬間接着剤でくっつければいいですよね。
絶対にダメです。いいですか、絶対に。
やめてください。
えーそんなに怒らなくても。
パニックになって素人が手を加えるのが作品にとって一番の破壊行為なんですよ。
触らずに破片を保管してプロに渡してください。
素人が使った接着剤を安全に取り除く作業の方が、元の損傷を直すより何倍も難しくて、結果的に作品を深く傷つけてしまいます。
うわー耳が痛い。良かれと思ってやることが最悪の結果を招くんですね。
でもプロの修復家なら同じ絵の具を使って元通りピッカピカにしてくれるんですよね。
実はそこにも大きな誤解がありまして、優れた修復師は欠損部分を補う際、あえて元の絵とは異なる素性の材料を使うんです。
え、なんでわざわざ違う材料を使うんですか?油絵には油絵具を使えばいいじゃないですか。
将来の技術で容易に除去できるようにするためです。これを可逆性と言います。
はあ、可逆性。
はい。もし同じ油絵具を使ってしまうと、50年後、100年後の人が見た時にどこまでがオリジナルの筆地で、どこからが21世紀の修復箇所か、区別がつかなくなってしまうんです。
15:07
だから油彩画に対してあえて水彩絵具を使ったりするんですよ。
なるほど。
未来の修復家へのバトンタッチを前提としているんだ。自分の修復を絶対の正解として固定しないんですね。
その通りです。さらに言えば、プロの修復家は、今すぐ直せないなら将来の技術を待つという選択肢も持っています。
待つんですか?
ええ。例えば、絵の表面についた頑固な裾を落とす時、物理的に擦って下の絵の具まで痛めるくらいなら立ち止まる。そして今では原子状酸素を使って裾を除去するような新しい技術も生まれています。
原子状酸素?なんだかSFみたいな響きですね。
簡単に言うと、酸素の原子を裾に吹き付けるんです。すると酸素原子が裾の炭素成分と結びついて二酸化炭素になり、機体となって蒸発していく。
へえ。
つまり、物理的に擦ることなく化学反応だけで汚れを気化させて消し去ることができるんです。下の絵の具には一切ダメージを与えません。
それはすごい。待ったからこそ作品を傷つけずに済んだわけですね。そういえば、レンブラントの夜景の修復も今、世間の注目を集めてますよね。
はい。アムステルダム国立美術館での公開修復プロジェクトですね。実はあの絵、過去に何度も劣化したワニスの除去と塗り直しが行われてきました。
そうだったんだ。
その度に隠れていた人物のディテールや鮮やかな色が蘇って、新たな観客を魅了してきたんです。修復のプロセスそのものが作品の価値を再発見し続ける対話の歴史になっているんですよね。
いやあ、今日のお話本当に視点が変わりました。レンブラントの夜景の公開修復なんて、オランダの美術版が今どう盛り上がってるかめちゃくちゃ面白いですよね。それこそモシリンを使って現地の人に聞いてみようかな。
きっと熱い意見が聞けると思いますよ。
木も石もメディア機材も絵の具も全ては時間とともに変化していく。残すということは過去の姿を冷凍保存することではなく、素材との対話を通じて何を受け継ぎどんな変化を引き受けるかを私たちが決め続けることなん
ですね。
ええ、それが継承の本質だと思います。
さて、最後まで聞いてくださったあなたに今日は一つ問いかけたいと思います。あなたが家で大切にしているもので、傷がついたけれどあえて直していないものはありますか?
日常の中にも物との対話はありますからね。
そうなんです。ぜひそのエピソードや今日の感想、あるいはこの金沢の展覧会みたいにこんな展覧会を取り上げてほしいというリクエストがあれば、スポーティファイのコメント欄から送ってくださいね。
それではまた次回のひもときでお会いしましょう。
17:49

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