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『舞い降りた天使・朗読版』#1ー②
2026-08-19 10:14

『舞い降りた天使・朗読版』#1ー②

家事、子育て、仕事に追われ、自分を見失いかけた主婦・徳永真穂。

夫との関係、娘の不登校、そして職場の年下の同僚・栗原との出会い。

恋と家族の絆を通して、一人の女性が少しずつ自分自身を取り戻していく、大人の女性のための恋愛ヒューマンドラマです。

人生に疲れた一人の女性が、もう一度、自分の人生を生きようとする物語。

彼女を救ってくれた『天使』は、思いもよらない人物だった……


『舞い降りた天使』は、「官能小説コンテスト」ノミネート作品です(大人のケータイ官能小説運営事務局主催)


本番組では、作品をより多くの方に楽しんでいただけるよう、一部の表現を調整した朗読版をお届けします。

朗読版ではお届けしていないシーンを含む完全版は、携帯官能小説サイトにてお楽しみいただけます。


『無料で読める大人のケータイ携帯官能小説』

https://kanno-novel.jp/viewstory/index/16146/?guid=ON


どうぞ最後までお楽しみください。

ぜひ、朗読版と完全版、それぞれの形で『舞い降りた天使』の世界をお楽しみください。


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朗読......木下真由美

イメージング......もりもり

録音・編集......たりお

演出......有馬 優美子

音響制作......Moon Magic


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著作権について

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00:18
第1章 第2話
本当はあと30分仕事をするつもりだったのに、私は早くこの場所から消え去りたくてたまらなくなっていた。
そうですか、大変ですね。
ううん、当たり前のことだから。
ただただ恥ずかしい。
それだけの理由で、私は栗原君に背を向け、ハーブティーを口にしながら、いそいそと片付けを始めていた。
するとその時、栗原君の優しい声が聞こえてきた。
徳永さん、いいお母さんですね。
え?いいお母さん?私が?そんなはずない。
だって、そんなこと今まで一度も言われたことがない。
そ、そんなことないよ。お迎えに行くのなんて当たり前のことだし。
そう、そんなの当たり前。
それに私はいいお母さんなんかじゃないの。私はダメなお母さんで、いつも注意されてばかりで、桜には申し訳ないくらいで。
そうなのかな。え?
夜一緒にいてあげるとか、お迎えに行ってあげるとか、当たり前みたいに言ってますけど、それって大変なことじゃないですか。
だから徳永さんはいいお母さんだと僕は思いますけど。
その言葉に言葉を失った私の脳裏には、大野先生の言葉が駆け巡っていた。
当たり前です。みんなやってることですよ。どうしてできないんですか?
しっかりしてください。徳永さん。
私はいつも点数をつけられているような毎日を過ごしている。
頑張っていても結果が出なければお母さんとして。
0点。100点にほど遠い私にとって栗原君の当たり前じゃなく大変なことという言葉はあまりにも優しくて、涙がこみ上げてきた。
あ、すみません。お迎え遅くなっちゃいますよね。邪魔しちゃってごめんなさい。お疲れ様でした。早くお迎え行ってあげてください。
03:02
あ、うん。あ、それと、ハーブティー美味しかった。ありがとね。
私は何とか涙をこらえて振り向き、栗原君に笑顔を見せると、栗原君はちらっと私のデスクに置いてある桜の写真を見て優しくにっこりと笑った。
かわいいですね。徳永さんによく似てる。
あ、ありがと。じゃあお先に。栗原君はお仕事頑張って。
はい。栗原君はただ笑顔で返事をしているだけ。それなのに、栗原君はとてもキラキラしているように見えた。
そして栗原君がキラキラすればするほど、自分がとてもくすんでいるようで、私は栗原君を避けるようにして事務所を後にした。
駐車場に向かう足は急がなくてもいいのに早足になる。早く車に乗らなきゃ、早く、早く、早くしないと泣いてしまいそう。
栗原君の優しい言葉を思い出したからか、それとも自分があまりにもくすんで思えたからなのか、車に乗る頃にはもう涙があふれていた。
大野先生に注意されたことをまた思い出したからかもしれない。栗原君が言ってくれたようなことをどうしてパパは言ってくれないんだろうって悲しかったのかもしれない。
理由はわからない。わからないけど、私は一人、車の中で咳を切ったように涙を流した。
声が漏れるほど制御することなく涙を流したのは久しぶりだった。栗原君の優しい言葉をきっかけに頑張らなきゃって張り詰めてたものが崩れてしまったのかも。
もっと優しくされたい。誰かに助けてもらいたい。せめて話だけでも聞いてほしい。私は泣きながらそんな感情が生まれているのを感じていた。
その日の翌朝。
お母さん。
ん?
パパ、今日も遅い?
うーん、どうかな。
お母さんは、今日もお迎え遅い?
お迎え遅い?
それは桜の口癖。
ううん、昨日お仕事いっぱいしたから、今日は早めにお迎えいけるよ。帰りにスーパー寄って帰ろうか。
06:05
うん。
桜の笑顔を見ていると、昨日泣いてしまったことなんて忘れて、また頑張ろうと思えるから不思議だ。
ママ、行ってきまーす。
はい、行ってらっしゃい。
桜が玄関のドアを閉めると、窓から外の様子を見るのが私の癖。しばらくすると、桜がアパートの階段を降りて、友達が待っているところまで走っていく後ろ姿が見える。
こうして毎日桜が笑顔で学校に行ってくれる。それだけで幸せだ。
窓から大きなランドセルと小さな桜を見送ると、私は急いで身近くを済ませて会社へ向かう。それは、なるべく早く出勤して、なるべく早く帰るためだ。
職場に着くと、大抵まだ誰も出勤していなくて、2時間ぐらいは私一人。今日も職場のドアを開けると、フロアはしんと静まり返っていた。
さあ、頑張ろう。そう心の中でつぶやいて席に座ると、私のキーボードの上に小さな袋が置かれているのに気づいた。
そしてその袋には小さな付箋が貼り付けてあった。
ハーブティー。レモングラス。置いておきます。よかったらどうぞ。
栗原
栗原君。
昨日、おいしいって言ったから置いてくれたのかも。
どこまでも優しいな。将来、あんな子が桜の彼になってくれるといいのに。なんて考えながら、私はその小さな袋を開けて少し顔を近づけた。
レモングラスの香りを嗅いでみたかったからだ。
するとその時、
徳永さん、もう来てるんですか。なんだ、もっと早起きすればよかった。
声の方に目を向けると、そこには栗原君が立っていた。
え、なんでこんなに早く。というか、今見られてた。匂いを嗅いでたのを見られてたわよね。やだ、恥ずかしい。
私はその恥ずかしさをごまかすように急いで栗原君に話しかけた。
い、今来たところなの。栗原君は早くない。いつもこんな早くは。
それなのに栗原君は私の話なんて聞いてないのか、どんどん私に近づいてきて、そして私の手からハーブティーの入った袋を取り上げると、にっこりと笑った。
09:01
また、あのエクボのようなものを私に見せながら。入れます?
え?
芋たれしてません?
い、芋たれ?
言われてみると、そういえば最近、あんまり食欲がないかも。
レモングラスは胃に優しいんです。
そ、そうなの?
はい。飲みます?
あ、あ、はい。
じゃあ、入れますね。
あ、いや、私が。
ついでです。
あ、じゃあ、うん、なんなんだろう。
第1章 第2話 朗読 木下まゆみ
この笑顔の君が泣かないの?
10:14

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