まるでシャボン、あらすじですね。
両親がアパートを営む大学生の世津子の家に、一つ年上のいとこの草子が下宿するためにやってきた。
草子が住み始めてから1週間後、もう一つの空き部屋に、羽賀という若い男が入居してくるのだが…
という、まあ本当冒頭の説明だけですけども、そういうあらすじでございます。
で、主人公が世津子という女の子で20歳。
一つ年上のいとことして草子という女の子がいて、家でアパート業をやっているところに、
そこに昔ちょっと住んでた感じがあるっぽいんだけど、
なんかいきなり草子ちゃんが空いてる部屋に入ってくるらしいわよ、みたいな。
えーなんで?みたいな感じでやってきて、草子ちゃんが住み出してから1週間後にまたサラリーマンの羽賀という若い男が急に入居してくるんだけど、
まあこの3人の関係だったり、まああとその他いろいろね、女の子だったり男の子だったりがだんだん出てきたりするんだけど、
まあこの3人の関係みたいなのとかを描いた感じの作品ですね。
まあこういうあらすじなんですけども、ざっくりてらださん読んでみて、
全体の感想というか、思ったことみたいなのを先に聞かせていただきたいなと思うんですが。
そうですね。まあ面白いんですけど、なんか割と中盤ぐらいから、
結構死の匂いというか、がありつつなんかこのサスペンス的な緊張感があったりもして、
でもラストはちょっとまた違う雰囲気になったりする、すごい不思議な漫画やなぁと読んでて思った。
気の抜けたシュールなシーンもあるしね。
ああそうね、意味わかんないんだよな、その料理するところで氷がぴゅって飛んで、草子の顔にぴゅって当たって、「いてっ!」みたいなのとか、
原付きで行こうとしたらガンと、
まあそこは笑うよね、やっぱり。
そういう気の抜けたコメディーみたいな、そんなやらしくない程度にコツコツ入ってる感じはね。
そうやなぁ、なんかあるし、なんかでも僕結構これまで読んできた少女漫画の中では、「なんで好きになるのこの人?」みたいな疑問が結構一番大きかったなっていう漫画でもあったなぁ。
だからハチクロ飲んだときに、「なんでこんなはぐちゃんモテモテなん?」みたいな。
はいはい
全然わからんな、みたいなのってあるじゃないですか、その矢印がなんでこんな強く向くんやろうって。
はいはいはいはい。
だからそういうのは、あれ、世津子が羽賀さんのことを好きになるのもだし、草子がなんでこんなモテてんねんっていうのも。
でもなんかね、そういうところを無視してもいいぐらいの良さがある話ではあると思うんだよな。
確かに、話としてこの関係がなんなのかみたいな、すごくミステリアスな人なんだけど、草子ちゃんが。
そこに対しての謎みたいな、大きい線みたいなのがあって、そこだけでもこの2巻というボリュームでもすごく面白いし。
ただなんか、僕は、もしかしたら僕がずっと特集してきた少女漫画の中で一番恋愛の話やなとも思ったのよ。
あー、そうね。
だから、これはがっつり恋愛の話という特集をするエピソードなんのかということも考えつつ、みたいな。
だから要素としては、読む人とか環境とか考えてることによっていろんなものが読み取れる漫画なんかもしれないね。
そうね、でも確かにその話聞いてすごいしっくりきたけど、なんか人間関係の話っていうよりも、もう恋するもんですっていう前提がまずあって、
そこからの関係性の話なんで、そこは確かにすごく恋愛漫画的ですね、これまで読んだ漫画の中でいうと、ずーっと抜けてる。
そうねー、とか、ちょっと初めにタイトルとか出しちゃうのもどうなんかなと思ったけど、俺なんかね、改めて読んで、矢沢あいってめっちゃ影響あるなって思ったよね。
あー、うん、確かにね。僕も矢沢あいかなり思い出しましたね。
あの、「天ない」っぽいのよ。
うんうんうん、わかるわかる。
わかるでしょ。世津子に翠を見るし、草子と先生のルック似てんのよ。
あー、なるほどね。
うん。で、その羽賀と草子の関係とかもさ、あきらと先生のとかなんかあんじゃん。
自分の主人公が恋した瞬間に、相手にはもうすでに過去の恋愛があって、そこには入り込めないみたいなやつあんじゃん。
で、僕は「天ない」でそれを知ったんだけど、この辺の原型ってまるでシャボンにあったのかみたいなことはすごく思いました。
確かにな。
うん。
自分は、蚊帳の外っていう。
そうそう。
そうやな、確かに。でもなんか最終やっぱその、草子が背負ってるもの、世津子が背負ってるものみたいな、割とその恋愛外的な話にも落ちていくから、ラストに進むにつれて、あ、いい作品やなって思うよ。
そうなのよ。その世津子と草子の関係みたいなもんもあんのよ。だからあの、(「天ない」の)《私は冴島翠みたいになりたい》みたいな感じがあんのよ。
だから先生もだし、マミリン・翠の関係みたいなのも、世津子・草子の中にもあんのかみたいな。
そういういろんなね、種がここにあるんだなとか思いましたね。
そうね。
まあちょっと詳しくはまた、いろいろ説明の後に話させていただこうかなと思うんですが、言ったらその恋愛っていうのが当たり前みたいな、ちょっとてらださんが今の感覚でいると引っかかるとこみたいなんて、やっぱ時代性とか掲載誌、すごくあるのかなっていうのは思っていて。
はい。
で、86年に週刊マーガレットで連載してた作品なんですよね。こう言ったらまあ景気がどんどん良くなっていく時のど真ん中の少女漫画誌だから、もう恋愛当たり前みたいな、恋愛最高みたいな時代の中の産物ではあるから、
その中でもすごく繊細な作風だと思うのよ。岩舘先生の作品としては。好きの理由とかじゃなくて好きになるもんだろうみたいな価値観が全然世間にとってまだまだ当たり前だったっていうところがあって、その辺のハードルみたいなのが今の感覚としては低いのかなっていうのはちょっと思ったりしますね。
うん。そうやね。確かにまあ、生きるためには働かなきゃかみたいなあんまなくて、すごいバイト的な働きをするシーンっていうのがあるんだけど、そこの気軽さみたいなものが。
ちょっと緩いよね。
明らかにああ裕福な時代なんだなっていう。
いやそれはあるな。簡単に一人暮らししてるし。
うん。そうね。
なんかその辺が裕福な時代の感じはあるな。で、僕は結構この中で、それこそ働くっていうこととか、食べるっていうこととか、生活、掃除をする、洗濯をするとか、そういったものを結構書いていて、そこで世津子と草子の関係、その人たちがどういうことなのかっていうことも描き出してるんで、どういうふうに働くかどういうふうに生きるかみたいなことで見ても面白いなとは思うんだけど、ちょっとこれも後半話させてもらえたらなと思います。
で、時代的に言うと、これは週刊マーガレットという雑誌でやってたんだけど、今はマーガレットになってるんだけどね。で、全く同時期に別冊マーガレットで、紡木たくの「ホットロード」がやってたという時代です。
うーん、なるほどね。全然まだ、なんか層が違うね、全然。
層が違う。やっぱりそこも時代ってところがあるんだけど、海行くところとか、なんか車乗って行くところとかは、ちょっと確かに相似関係もあるっていうかね。
そうやな、まあ向こうはバイクですけどね。
そうそうそう、結構。で、あの、が運転するっていうね、ここも結構僕的には面白いところだなって思ったりするんですが、そういう時代の作品ですね。80年代半ば、バブルに向かって景気が良くなっていってる時代の中での集英社、週刊マーガレットというところでやった作品でございます。
で、改めて岩舘真理子先生の紹介をさせてください。岩舘真理子さん。
1957年、昭和32年、北海道札幌市生まれ。1973年、週刊マーガレットの秋の増刊号に掲載された落題しますでデビュー。その後、集英社週刊マーガレットを中心に多数の作品を発表し、
87年、「冷蔵庫にパイナップルパイ」で、同社のヤングユーに連載を開始。92年、「うちのママが言うことには」で、第16回講談社漫画賞を受賞というプロフィールですね。
で、岩舘先生も猫をたくさん飼ってます。
猫ね。うん、ありましたね。
すごい少女漫画の作家は猫をたくさん飼うというのが、この国では決まってます。
なんでなんやろうな。
わかれへん。
まあなんかすごいイメージにも合うけどね。
いっぱい猫飼ってる少女漫画家って、いいけど。
そうなんすよ。
岩舘先生についての本は、岩舘真理子、小倉冬美、大島弓子の「私たちができるまで」っていう本が角川から出てて。
この角川版の本はちょっともしかしたら手に入りにくいかもしれないんですけど、2014年に復刊ドットコムより復刊されてるので、このバージョンだったらまだ手に入るかなという感じですね。
で、大島弓子さんから岩舘真理子さんに対しての50の質問とか、そういったものが載ってたりとか、岩舘さんが全部書いてきた作品についての全作品解説とか、
大島弓子、岩舘真理子往復書館みたいな1ページこう書き合ったりみたいなものとか載ってるんで、
その辺の少女漫画の先生たちがどんなことを考えてたんかみたいなことが気になる人、岩舘真理子、大島弓子が気になるなという人はぜひね、
この本読んでもらったら大体の感じがわかるかなっていう本なんで、今回のエピソードもそれを参考にしてお話してます、僕はって感じですね。
週刊マーガレットって僕らってもうその時別マしかなかったから、僕の世代はね。もう「マーガレット」と「別冊マーガレット」だったんだけど、もともと「週刊マーガレット」っていう雑誌だったんだよ。
で、週刊マーガレットがどんな作品で成り立ってきたかっていうと、一番初めは「アタックNo.1」。で、その次、もうここで歴史変わります。少女漫画の歴史変わりますっていう作品だと、「ベルサイユのばら」。
はいはい、今映画やってる。
映画やってる。映画も最高なんですよ。ぜひ見てください。「ベルばら」があって、もう大ブームになるんで、一つの「歴史もの」みたいな。
だから、ここで少女漫画の二つの型ができてるっていう、「スポ根」、「歴史もの」。
あー、確かにね。結構特徴的な、二つが。
そう。ベルばらみたいな人がスポ根っていう合わせ技やなって思ってるエースを狙え。
合体したら。
合体してる部分もあると思うのね、「エースをねらえ!」。ベルばらの終わりぐらいに始まってます。で、あとは、少女漫画のもう一つの型として、バレーものってあるのよ。
「アタックNo.1」のバレーじゃなくて、踊るほうのバレエね。
はいはい、ありますね。
バレエものの少女漫画って、もう未だに傑作で出続けてるのよ。
の、有吉京子先生の「SWAN」という、「白鳥SWAN」という作品っていうのもやってて。
ああ、なるほどね。まあ確かに、今表紙台本に貼ってありますけど、そういう感じの絵柄よね、完全に表紙の雰囲気とかもね。
そうそう、絶愛、ブロンズね。これはいつかやらなあかんなとは思ってる。重要な作品なんで。
へえ。
と思ってるんやけど、これはまあ、はっきり言っちゃうと、ボールは友達みたいなサッカーの漫画があると思うんやけど、それの同人誌を商業ベースに載せてるのよ、言ったら。
え、ああ、そうなん。じゃあ、二次創作やけど、まあ多少アレンジしてあって載せてるみたいなことですか?
ちょっと難しいんやけど、A×Bみたいなカップリングがあって、その同人誌をガーって書いてはって、それをオリジナル作品として商業ベースにやってるっていう。もちろん名前とかは違うし。
キャラクターを置き換えてるけどもってことやね。
そうそうそう、ベースがボールは友達さ!みたいな感じのA×Bみたいなカップリングっていう、それがマーガレットに載ってたっていう衝撃ですよ。
いやあ、それはすごいね。
もちろんCLAMPとかもそうなんだけどね。スタンドバトルの同人誌のものが商業ベースに変換されて出てるとか、まあそういう時代ですよ。
へえ、それは読み手っていうのはわかってるもんなんですか?やっぱり。
えーとね、こっから知ったっていう人もいるし、昔から読んでる人はわかってただろうね。
へえ、面白い時代ですね。
うん、そういう交差点ですね。インディーズからメジャーに来てるみたいな。まあそういうのもリニューアルしてからはあったし、
ブロンズやってた時に姉がマーガレット買ってて、それで僕も読んでるんだけど、ブロンズとかは。
その時、別マじゃなくてマーガレットを買うというのの看板作品は「花より男子」です。
ああ、さすがに僕も。
みんなドラマとかで知ってると思うんですけど、「花より男子」のスーパーヒットというので、マーガレットというのはありました。
僕が読んでた時のマーガレットっていうのはそういう作品がありました。
なるほど。
心の砂地。
で、岩舘先生のキャリアに戻るんですけども、70年代の半ばくらいから週刊マーガレットで書いてるんだけど、初期はいわゆる乙女チック路線と言われる陸奥A子さんとか田渕由美子さんとかの作品みたいなのを書いてます。
だから絵柄もそういう感じの絵ですね、当時は。
80年代入ってから、家族の話とかの中で深い話みたいなのが出てくるようになって、だんだんちょっと言ったらシリアスな作品に移行していってる時期みたいなのが80年代前半ですね。
「乙女坂戦争」とか、「ふくれっつらのプリンセス」「ガラスの花束にして」とか。
ここでちょっと変わってきたなっていうのは、僕が読んで思ったのは「1月にはChristmas」、「森子物語」っていう。
今回は草子って女の子が出てくるけど、森子と書いてシンコっていう。
変わってるね
うんうん。
作品があるんですけど、この辺からちょっと今回読んだような、「まるでシャボン」の雰囲気になってくるって感じですね。
正直この70年代前半ぐらいの作品も面白いんだけど、岩館真理子先生の作品読むんだったらこの辺の80年代半ばぐらいからが面白いのかなと思っていて。
特に傑作が連発されるなと思うのは、80年代半ばから後半にかけて。「私が人魚になった日」「おいしい関係」「終末のメニュー」「遠い星を数えて」「まるでシャボン」、「君は三丁目の月」、「五番街を歩こう」。この辺全部傑作です。
うーん。タイトルに一定のセンスがやっぱり。
いや、そうなの。
あらかにするね。
この辺の、「1月にはChristmas」とか「森子物語」とかもそうなんだけど。
ってか、乙女チックの時もそうなんだけど、岩館先生の作品ってマジでタイトルのセンスいい。
ああ、確かに。
僕、タイトル大好きなのよ。
タイトル大好き。
いろんなもん好きやんか。映画だったり、舞台だったり。
で、俺、やっぱタイトルがピンときてるもんが好きなのよ、基本。
ああ、まあ確かにね。
「恋愛的瞬間」とか、吉野朔実さん。もう最高のタイトル。もうそこですべて勝っている。
確かにな。
なんかね、そういうタイトルが最高だなと。特にこの辺の80年代後半の85年から89年。
言ったら、週刊マーガレットで書かれた最後の方というのは、すごく油が乗ってるし、岩館先生的には20代後半から30代ぐらいかな。
僕は本当この辺から読むっていうのをお勧めしますね。で、そのマーガレットがリニューアルするっていうので、
ヤングユーっていう雑誌をメイン媒体として書かれるようになったりして、で、そこでもすごくいい作品書かれていて、っていう感じではあるんだけど、
この「冷蔵庫にパイナップルパイ」っていうタイトルの作品があるんですけど、で、表紙にも載ってるんですけど、これはもう本当に、なんて言ったらいいかな、怪作ですね。
へえ、怪作。
奇作、怪作。
じゃあ、なんて言うんでしょうね。ちょっと一筋縄ではいかない作品でもあるってことなのか。
言ったらもうこれギャグなのよ。
あ、ギャグな。
だから、「まるでシャボン」の中にあるようなシュールなやつあるやん。あっちだけやってんのよ。
へえ。
で、3、4頭身ぐらいの子どもたちの4ページギャグなのよ。
へえ、なんか読みたくなるな、でも。そこまで振り切ってたら。
そう、で、でも岩舘先生の作品見て思ったと思うけど、顔の描き方は岩舘真理子なのよ。
ああ。
目とか、ちびっこなのに目はあれなのよ。だからなんかすげえね、言葉が難しいけど異形の。
ああ、なるほどね。
感じがちょっとあって。
ちょっと違和感があるみたいな感じではあるか。
うん、なんかめっちゃシュールなのよ。
へえ。
で、この表紙の感じとか、時代からちょっと読み取ってほしいんですけど、まあ子供たちのギャグの、少女漫画のギャグ漫画の歴史というので重要人物がいると思うんですけど。
さくらももこさんですか。
そうですそうです。に正直影響があったなと思う。
ああ、やっぱそうなんや。
へえ、なるほどね。確かにこれだけなんか、表紙の雰囲気全然違うもんね。
全然違うし、なんかちょっとそっちっぽいっしょ。
うんうん、確かに。
で、中身もゆったらさくらももこ、岡田あーみん的な感じがあるんだけど、まあでもなんかすげえシュールなのよ。
へえ、なんかタイトルからはちょっと想像つかんない。
だから、これから先に読んでこういう作家だと思ってはいけないっていうだけで。
ああ、確かにね。
うんうん、そうそうそう。でもこれをこれで俺、すげえ再評価のしがいがあるなみたいな、読んでてすごく面白かったっすね。
っていうので、まあ、漫画賞を取った「うちのママが言うことには」っていう作品もすごくいいですし、
「キララのキ」「アマリリス」とか、まあ後半もやっぱめっちゃいいな。
くらもちふさこ先生もそうだけど、後半もやっぱすごくいいっすね。この辺の作品もいいし。
ぶ〜けでもちょっと描かれたりとか、角川ヤングロゼでもね、描かれたりもしてたんで、
その辺すごくずっといい作品を描かれている作家さんという歴史です。
はい。
じゃあちょっと「まるでシャボン」に戻りましょうか。
じゃあ改めて、「まるでシャボン」の内容とか感想、話したいことっていうのを話していければなと思うんですが、
印象的なシーンとか、言葉とか表現とか、どの辺具体的なところでなんかあったりしますかね。
そうですね、僕がでも結構印象的だなと思ったのは、2巻の方の草子と神島くんが浜辺で喋ってるシーン。
ってかそこ以降ですよね。死ぬ前の神島くんと喋り合って、最後その事故に遭うまでのシーンの、ずっと幽霊みたいなタッチで描かれてるんですよ。
そこの死の匂い感みたいなものがすごいなっていう表現力としては、なんか夢を見てるかのような感じがして。
1巻の後半から2巻にかけてみたら、なんかやっぱすごいよね、その辺の。言ってるようなギャグ要素みたいなのはなくなって、グーンとエンジンかかってる感じというか。
そうですね、だからこの草子とか神島くんとか、その辺りの人がね、生きてないみたいな感じするんですよね、僕の中では。
確かにな。
ちょっと人間らしさがないというか、なんかでもね、僕の中では、なんかやっぱその当時っていうか、わかんないですけど、この世津子みたいな気持ちの女の子がたくさんいて、草子みたいな子にすごくこう、やっぱりそういう人に対するコンプレックスみたいなのがすごく感じる場面っていうのがあったんじゃないかなっていうのを。
うーん、僕もそう思うな。
影がある人がどんどん自分の欲しい人たちを魅了していくみたいな。そういうのはありませんよね、男性でもやっぱり。そういうフラストレーションみたいなものっていうのが、最後やっぱりそういうものが爆発するシーンもあるけど、そこには結構僕は共感はしたんですよ。
好きになる、好きにならないっていうところはちょっとわからないところはあるけど、なんかすごい世津子の気持ちっていうのが痛いほどわかるし、こういう経験ってやっぱあったなっていうのは。
いや、ほんとそうね。わかるわかる。なんかやっぱ、草子と世津子は漫画を見る限りはほぼ同じ顔なんだけど、いろんな要素でそういう差異みたいなのが描かれていってみたいな。
草子っていうのはなんかもう無条件にみんな、草子のことを好きになっていってしまうし、たぶんそれを望んでないんだけど周りの関係も壊してしまうみたいなことがあるっていう。
で、これを2020年代に生きてる私たちからのチャラい言葉で形容するような指し方で言うと、いわゆるサークルクラッシャーってやつですよね。
まあまあ確かに一番しっくりくるかもね。
それこそサークルクラッシャーものってなんかあるとは思ってて、恋愛の残酷さみたいなのとかを描くものとかってやっぱそういう女性を描いたりすることみたいなのあるんだけど、
その構造、いわゆるサークルクラッシャー的なことが起きてしまうっていう構造もしんどいし、草子本人もしんどそうみたいな。
まあそうやな。
っていうことを結構考えたな、僕は。だから、ぐっと自分の話にすると、少なからず僕もてらださんもこういう人を見たことがあるし、もっと言うと、こういう人に関わったことは結構誰しもあるっていう。
いやそうですね。僕ら今30になってこの20歳の人たちの恋愛っていう漫画を読んでるわけやけど、なんかでもラストでさ、やっぱ草子が世津子に対してさ、《明るい家庭で普通に育って、人を傷つけないで、自然に暮らしているように見える。
そういうの結構羨ましいわ、私》みたいなこと言うのが。もう今やから受け入れれるけど、僕が20歳ぐらいの時に読んだら、「うわ、こいつ嫌いやわー!」って絶対。
やっぱ渦中にいた頃の気持ちをすごい思い出してしまうぐらいのリアリティがあるというかね。
いやいやもう、あんたがはっきりしてくれたらいいのにとか思っちゃうよね。やっぱそういう人に対してはさ。もう本当に綺麗に生まれて、それに無条件に群がる。これが男から女っていう矢印っていうところもいろいろ読み取れるところあると思うんだけど、あんまり反対ってそんなないじゃん正直。
男性がサークルクラッシャーに。あるけど、そういうんじゃないやん。矢印をいっぱい向けるからサークルを壊すやん、その男性のサークルクラッシャーって。
向けられるわけじゃなくね。いろんな人に手を出すから。 そうそう。向けられて壊すことじゃないじゃんか。でもそういういっぱい矢印を向けられてしまう人の苦しみとか、で、そのいとこっていう関係がめっちゃ良くて。そこもやっぱすごい良い配置っていうか。なんか繋がってるところがあるけど全然違うっていう。
もう顔も言ったら僕は一緒だと思ってるから、この少女漫画の一つの型っていうの中に「双子との」っていうのもあるじゃないですか。ちょっとその辺の匂いもするっていうか。
確かにね。顔は一緒やけど中身は全然違うとか。
最後のシーンとかって、あ、これ草子かって思うと、せっちゃんだっていうシーンがあるんですよね。とかって、あの辺ってちょっとモロ言っちゃうと「半神」とかのラストみたいな。萩尾望都の「半神」とか。そういうものを想起させるけども、なんかああいうもしかしたら会った形っていうのも、こいつ嫌やわーとかなんやねんって思うのという見方もあるし、
もうちょっとグッと感情移入して入り込むと、もしかしたらこう自分もあれたかもしれないみたいな、そこに手が届く存在としても書かれてるなっていうことは、以前は僕読んだ時はわかんなかったけど、読み直してからそういう気持ちで読んだ人もいるだろうなっていうことはすごく思いましたね。
ああ、確かにね。そこは、だから実は大きくは違わないかもしれないっていう、草子自身のセリフでもね、あの時自分がいなかったら、タケシさんはあなたを選んだかもしれないみたいなこと言うシーンもあるし。
確かにな。
そもそも少女漫画で描かれるキャラクターだから、すごく綺麗だし可愛い女の子として描かれてるけども、なんか読んでる読者としては、ハナから草子に乗るっていう人ももちろんいると思うのね、僕は。中心になるのは世津子なんで、多くの人は世津子に感情移入して読んでいって、そこから見て、うわちょっとなんでやねんなんでやねんと思いながらも、わ、でももしかしたら自分も草子になったかもしれん、なれたかもしれん、だったかもしれんみたいなことを思うみたいなね。
なるほどね。
っていうところのバランスで、なんかその辺がこのタイトルの「まるでシャボン」っていう、シャボンの丸い形でふわふわふわっていっぱい飛んでいくけど、すぐパンパンパンって消えるみたいなものとか、この中のテーマになってる幸せな夢っていうやつですね。幸せな夢の中だったら、もしかしたら自分が草子だったかもしれんみたいな、なんかそういういろんなものが重層的に重なり合ってて、もうこれですよって感じですかね。
もうやっぱ少女漫画のこの重なり合いっていうのがやっぱ最高ですよっていう。
確かにね。言われてみれば、そっか、その辺りも。話自体はね、普通に本当に面白いですよね。話として読んでもね。
そうそうそう。こんなんな。なんかあの韓国とかで映画にしてくれたら、だから俺正直韓国ドラマとか映画とかでありそうだったらすげえ傑作感ある。
そうやな。
なんかあのこう雪降ってる感じとかね。
うんうんうん。確かに確かに。
ホンサンスとかが撮ったらすげえかっこいい映画だと思うな、これは。
神島くん、めちゃめちゃこう儚げなイケメンなんやろうね。映画化したら。
まあ坂口健太郎でいいでしょう。
ああなるほどね。いやでもそういう感じよな、もういろじろの。いやなんかでもそれで言うとちょっとタケシさん、タケシさんどうなんですかっていうのは。
羽賀タケシ。男たちね。えっと羽賀さんっていうのは草子を追っかけて、追っかけてって言っちゃうけど、草子を追っかけてきた男の人なんですけど、でまあサラリーマンで元婚約者でみたいな話なんだけど。羽賀さんなあ…。
羽賀さん結構むずいと思いますね、これ語る上でね。
うーん。岩舘真理子作品ガッと読んで、あの羽賀さんみたいな男はなんかよく出てくんのよ。
へえ、そうなんや。
っていうか、えっとなんていうかな、あんまり言ったら多くを語らない岩舘作品の特徴として、世津子が何も話さない羽賀さんをずっと見てるみたいなシーンがあるのね。
うんうん、あるね。
なんかそういう、まあそれこそでもまあ、若い恋愛の視線、この人のことがなんか好きになるなあみたいな、でらずっと見ちゃうみたいな、で勝手に想像してすごく好きになっちゃうみたいな、そういうところを描いてるんだと思うんだけど。
そうですね、だって、なんかこう好きな、なぜ好きかみたいなところもこうなんか窓の外にいて、自分の窓の手前でこけてくれたら眺められるのにみたいな、だからこうすごく見つめるっていうことをやっぱ。
そうそう、見っときたいっていう、だからなんかそこも言ったら、実際はグダグダで結構ダメなやつなの。やってることも結構、いやもうお前ちゃんとしとったらうまいこと言ったけどなみたいな感じやん。でもなんかその辺のズレみたいなもこれはまあ作為的だと思っていて、だから夢の中の理想像みたいなのに恋しちゃうみたいな、なんかまあ…恋愛の…バグみ?
だからさ、タケシさんに惚れてない状態でタケシさんの行動を見てもね、タケシさんにあんまり惚れられないのよ。あんまりストレートなかっこよさが登場するとこがないから。
うーん、まあちょっと確かにその辺は、あのまあもちろんね、30何年経ってるから、その辺の恋愛幻想みたいなのはちょっとないからわかんないっていう人が多いのかもしれないね、今思えば。
僕はやっぱその少女漫画読むときのOSを多分起動させてるから、一発で、まあそこそこ、世津子の気持ちにスッとなれるというか、あ、ここでもう好きになっちゃったんだねってことが、読者の目として理解はできるし、
あ、いい男なんだろうなみたいなことは、読みながらはそんな違和感感じないんだけど、改めて考えると確かにようわからんなって今思ってる。羽賀ようわからんくて。
あの、夜に羽賀タケシと草子が話すシーンがあるんですけど、タケシがさ、大家さんの娘かわいいよな、みたいなこと言うシーンの口元が結構。
ああ、あるある。にやっとしてるな。嫌な感じに見えてるんだけどな。
あそこ、めちゃめちゃ嫌なシーンじゃん。
あれ、わざとだよね、これね。
あれは絶対わざとだなっていうね。
うーん。
ああ、そんなこと言わんといてほしかったなと思ってしまったね、僕は。
これな、だからやっぱ、あの、草子一緒に暮らしてた時期もあるし、だからその夢マジックがないのよ。
ああ。
だから、草子といる時のタケシは、ちょっと顔の描き方とか違うのよ。
ああ、わかるわかる。あんまかっこよくないんですよね。
し、なんかどっちかというとなんかこう、若造って感じのリーマンなのよね。
ああ。
で、だから、世津子から見た時の羽賀タケシは、精悍な顔つきをした、あまり喋らない感じの男、に描いてあるよね。
確かにね。そうか。なんかそう、フィルターかかってるかかかってないかみたいな感じで言うと、確かに。
なんか僕そのさ、草子と話してるシーンのキャラ変ぶりがね、ちょっと不気味やってんけど、その、やっぱフィルターがあるかどうかって話やな。
っていうので書き分けてあるんだよね、多分。
なるほどね。
うん。
ああ、いやあ、そっか。じゃあちょっと僕何回も読み直さなあかんかもしれんな、やっぱ。
そうそう、これね、読み直すとめっちゃわかる。1ページ目とかもさ、初め見ると全く意味わからんねんけど、読み直すと、あ、これ、いなくなったっていうシーンなのねっていうのもあるし。
そうね。僕も2週目で気づきました、それは。
意味わかんないもんね。
手紙と指輪が置いてあってね。
そうそうそう。そういうのはあるから、2巻で、本当にこれはね、持っといた方がいい作品で。まあでもタケシ以外もダメなやつしか出てこないんだよな、男。
アルバイト先のお家にいる大学生の。
ああ、あいつは若いし、まあまあわかりやすくダメなやつだから。
まあそうね。
神島君もなんかわからんけどダメな感じするし。
いやそうね。
まあでもその辺も、そうね、なんかカメラがちゃんとこう近い風に撮ってるからあれやけど、離れてみるとこう、うーんって思える感じ?その恋は幻、加減?
うんうん。
っていうのも、まあまあしょうもないでみたいなところもちゃんとあるんやろうなぁ。
うーん、そう。