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注文の多い料理店 前編
2024-12-28 15:45

注文の多い料理店 前編

0118 241228 宮沢賢治 注文の多い料理店 前編 朗読:本田奈也花
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おしゃべり本棚。 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
注文の多い料理店 前編
宮沢賢治、二人の若い紳士がすっかり イギリスの兵隊の形をしてピカピカする鉄砲を担いで白熊のような犬を2匹連れて
だいぶ山奥の木の葉のカサカサしたとこを、 こんなことを言いながら歩いておりました。
全体ここらの山はけしからんねえ。 鳥も獣も一匹もいやがらん。
なんでもかまわないから早くたんたーんとやってみたいもんだなあ。
鹿の黄色な横っ腹なんぞに2、3発お見舞い申したらずいぶん痛快だろうねえ。
くるくる回ってそれからどたっと倒れるだろうねえ。 それはだいぶの山奥でした。
案内してきた専門の鉄砲打ちもちょっとまごついて、 どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それにあんまり山がものすごいので、 その白熊のような犬が2匹一緒にめまいを起こしてしばらくうなって、
それから泡を吐いて死んでしまいました。 実に僕は2400円の損害だ。
と一人の紳士がその犬のまぶたをちょっと返してみて言いました。
僕は2800円の損害だ。 ともう一人が悔しそうに頭を曲げて言いました。
はじめの紳士は少し顔色を悪くして、 じっともう一人の紳士の顔つきを見ながら言いました。
僕はもう戻ろうと思う。 さあ僕もちょうど寒くはなったし腹は空いてきたし戻ろうと思う。
それじゃこれで切り上げよう。 なあに戻りに昨日の宿屋で山鳥を10円も買って帰ればいい。
03:04
うさぎも出ていたねえ。 そうすれば結局同じこった。
では帰ろうじゃないか。 ところがどうも困ったことはどっちへ行けば戻れるのか一向に見当がつかなくなっていました。
風がどうっと吹いてきて、草はざわざわ、 木の葉はかさかさ、
木はごとんごとんとなりました。 どうも腹が空いた。
さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。 僕もそうだ。
もうあんまり歩きたくないなあ。 歩きたくないよ。
ああ、困ったなあ。 なんか食べたいなあ。
食べたいもんだなあ。 二人の紳士はざわざわなるすすきの中でこんなことを言いました。
その時ふと後ろを見ますと、 立派な一軒の西洋造りの家がありました。
そして玄関には レストランワイルドキャットハウスという札が出ていました。
君、ちょうどいい。 ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか。
おや、こんなとこにおかしいねえ。 しかしとにかくなんか食事ができるんだろう。
もちろんそうさ。看板にそう書いてあるじゃないか。 入ろうじゃないか。僕はもう何か食べたくて倒れそうなんだ。
二人は玄関に立ちました。 玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで実に立派なもんです。
そしてガラスの開き戸が立って、 そこに金文字でこう書いてありました。
どなたもどうかお入りください。 決してご遠慮はありません。
二人はそこでひどく喜んで言いました。 こいつはどうだ。やっぱり世の中はうまくできてるねえ。
今日一日難儀したけれど、 今度はこんないいこともある。
このうちは料理店だけれども、 ただでご馳走するんだぜ。
どうもそうらしい。 決してご遠慮はありませんというのはそういう意味だ。
二人は戸をして中へ入りました。 そこはすぐ廊下になっていました。
06:05
そのガラス戸の裏側には金文字でこうなっていました。
ことに太ったお方や若いお方は大歓迎いたします。
二人は大歓迎ということでもう大喜びです。
君、僕らは大歓迎にあたっているのだ。 僕らは両方兼ねてるから。
ずんずん廊下を進んでいきますと、 今度は水色のペンキ塗りの戸がありました。
どうも変な家だ。 どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。
これはロシア式だ。 寒いとこや山の中はみんなこうさ。
そして二人はその扉を開けようとしますと、 上に黄色な文字でこう書いてありました。
当県は注文の多い料理店ですから、 どうかそこはご承知ください。
なかなか流行ってるんだ。こんな山奥で。
そりゃそうだ。見たまえ。 東京の大きな料理屋だって大通りには少ないだろう。
二人は言いながらその扉を開けました。
するとその裏側に、注文はずいぶん多いでしょうが、 どうかいちいちこらえてください。
これは全体どういうんだ。 一人の紳士は顔をしかめました。
うーん、これはきっと注文があまり多くて 支度が手間取るけれどもごめんくださいとこういうことだ。
そうだろう。早くどこか部屋の中に入りたいもんだな。 そしてテーブルに座りたいもんだな。
ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。
そしてその脇に鏡がかかって、 その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
扉には赤い字で、
お客様方、ここで髪をきちんとして、 それから履物の泥を落としてくださいと書いてありました。
これはどうももっともだ。
僕もさっき玄関で山の中だと思って見くびったんだよ。
作法の厳しい家だ。きっとよほど偉い人たちがたびたび来るんだ。
09:02
そこで二人はきれいに髪を削って、靴の泥を落としました。
そしたらどうです。
ブラシを板の上に置くや否や、そいつがぼーっと霞んでなくなって、
風がどーっと部屋の中に入ってきました。
二人はびっくりして互いに寄り添って、 扉をガタンと開けて次の部屋へ入っていきました。
早く何か温かいものでも食べて元気をつけておかないと、
もう途方もないことになってしまうと二人とも思ったのでした。
扉の内側にまた変なことが書いてありました。
鉄砲と弾をここへ置いてください。
見るとすぐ横に黒い台がありました。
なるほど、鉄砲を持って物を食うという法はない。
いや、よほど偉い人が終始来ているんだ。
二人は鉄砲を外し帯皮をほどいて、それを台の上に置きました。
また黒い扉がありました。
どうか帽子と街灯と靴をお取りください。
どうだ、取るか。
仕方ない、取ろう。
確かによっぽど偉い人なんだ、奥に来ているのは。
二人は帽子とオーバーコートを釘にかけ、
靴を脱いでぺたぺた歩いて扉の中に入りました。
扉の裏側にはネクタイピン、カフスボタン、
メガネ、財布、その他金物類ことに尖ったものは、
みんなここに置いてくださいと書いてありました。
扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、
ちゃんと口を開けて置いてありました。
鍵まで添えてあったのです。
はは、なんかの料理に電気を使うと見えるね。
金家のものは危ないことに尖ったものは危ないとこう言うんだろう。
そうだろう、してみると感情は帰りにここで払うのだろうか。
どうもそうらしい。
そうだきっと。
二人はメガネを外したりカフスボタンを取ったり、
みんな金庫の中に入れてパチンと錠をかけました。
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