カレンと赤い靴
この時間は、福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
夏のうちは裸足で歩かなければならず、冬は厚ぼった生きの靴を履きました。 ですから、その女の子の可愛らしい足の甲はすっかり赤くなって、いかにも意地らしく見えました。
村の中ほどに、年寄りの靴屋のおかみさんが住んでいました。 そのおかみさんは、せっせと赤い裸車のこぎれを縫って、小さな靴を一足こしらえてくれていました。
この靴は、ずいぶん格好の悪いものでしたが、心のこもった品で、その女の子にやることになっていました。
その女の子の名は、カレンと言いました。 カレンは、おっかさんの葬式の日にその靴をもらって、初めてそれを履いてみました。
赤い靴は、確かにお弔いにはふさわしくないものでしたが、他に靴と言ってなかったので、素足の上にそれを履いて、粗末な官王家の後ろからついていきました。
その時、年をとった活腹のいいお年寄りの奥様を乗せた、古風な馬車がそこを通りかかりました。
老婦人に引き取られるカレン
この奥様は、娘の様子を見るとかわいそうになって、
よく面倒を見てやりとうございます。どうかこの子をくださいませんか?と、牧師さんにこう言ってみました。
こんなことになったのも、赤い靴のおかげだとカレンは思いました。
ところがその奥様は、これはひどい靴だと言って、焼き捨てさせてしまいました。
その代わりカレンは、こざっぱりと見苦しくない着物を着せられて、本を読んだり、物を縫ったりすることを教えられました。
人々は、カレンのことを可愛らしい女の子だと言いました。
ある時、女王様が王女様を連れてこの国をご旅行になりました。
その中にカレンも混じっていました。
王女様はまだ若いので、もすそもひかず、金の冠もかぶっていませんでしたが、目の覚めるような赤いもろっこ皮の靴を履いていました。
その靴は確かに靴屋のおかみさんがカレンにこしらえてくれたものより、はるかにきれいなきれいなものでした。
世界中探したって、この赤い靴に比べられるものがありましょうか。
教会で赤い靴を履く
さて、カレンは献身礼を受ける年頃になりました。
新しい着物ができたので、ついでに新しい靴までこしらえてもらって、履くことになりました。
街のお金持ちの靴屋が、自分の家の仕事部屋でカレンの可愛らしい足の寸法をとりました。
いろいろと靴が並んでいる中に、あの王女様が履いていたのと、そっくりの赤い靴がありました。
なんという美しい靴でしたろう。
靴屋さんは、これはある伯爵のお子さんのためにこしらえたのですが、足に合わなかったのですと言いました。
これはきっとエナメル革だね。まあよく光っていること、とお年寄りは言いました。
ええ、本当によく光っておりますこと、とカレンは答えました。
その靴はカレンの足に合ったので、買うことになりました。
けれどもお年寄りは、その靴が赤かったとは知りませんでした。
というのは、もし赤いということがわかったなら、カレンがその靴を履いて献身礼を受けに行くことを許さなかったはずでした。
でもカレンは、その赤い靴を履いて献身礼を受けに行きました。
誰も彼もがカレンの足元に目をつけました。
そしてカレンが教会の敷居をまたいで、消火所の入り口へ進んで行ったとき、
墓石の上の古い像が硬そうなカラーをつけて、長い黒い着物を着た昔の牧師さんや牧師さんの奥さんたちの像までも、
じっと目を据えてカレンの赤い靴を見つめているような気がしました。
それからカレンは牧師さんがカレンの頭の上に手を乗せて、神聖な献礼のことや神様と一つになること、
これからは一人前のキリスト信者として身を持たなければならないことなどを話し聞かせても、
自分の靴のことばかり考えていました。
やがてオルガンがおごそかになって、子どもたちは若い美しい声で賛美歌を歌いました。
けれどもカレンは、やはり自分の赤い靴のことばかり考えていました。
お昼過ぎになって、お年寄りの奥様はカレンの履いていた靴が赤かった話を方々で聞きました。
そこで、そんなことをするのは嫌なことで礼儀に背いたことだ。
これから教会へ行くときは古くとも必ず黒い靴を履いていかなくてはならないと申し渡しました。
踊り続ける靴
その次の日曜は献身礼の後、初めての生産式のある日でした。
カレンは初め黒い靴を見て、それから赤い靴を見ました。
さてもう一度赤い靴を見直した上、とうとうそれを履いてしまいました。
その日はうららかに晴れていました。
カレンとお年寄りの奥様とは麦畑の中の小道を通って行きました。
そこはかなり埃っぽい道でした。
教会の戸口のところに珍しい長い髯を生やした年寄りの兵隊が松端へにすがって立っていました。
その髯は白いというより赤い方で、この老兵はほとんど頭が地面につかないばかりにお辞儀をして、
お年寄りの奥様にどうぞ靴の埃を払わせてくださいと頼みました。
そしてカレンもやはり同じに自分の小さい足を差し出しました。
はてずいぶんきれいなダンス靴ですわい。
踊るときぴったりと足についていますようにと老兵は言ってカレンの靴の底を手でぴたぴた叩きました。
奥様は老兵にお金を恵んでカレンを連れて教会の中へ入ってしまいました。
教会の中では誰も彼も一斉にカレンの赤い靴に目をつけました。
カレンは静談の前にひざまずいて金の杯を唇に持っていくときも、ただもう自分の赤い靴のことばかり考えていました。
やがて人々は教会から出てきました。そしてお年寄りの奥様は自分の馬車に乗りました。
カレンも続いて足を持ち上げました。
すると老兵はまた、
すると不思議なことに、いくら総姉妹としてもカレンは二足三足踊りの足を踏み出さずにはいられませんでした。
すると続いて足が一人でどんどん踊り続けていきました。
カレンはまるで靴の死体ままになっているようでした。
そこで御舎が追っかけていってカレンを捕まえなければなりませんでした。
そしてカレンを抱きかかえて馬車の中へ入れましたが、足は相変わらず踊り続けていたので、
カレンは優しい奥様の足を嫌というほど切りつけました。
やっとのことでみんなはカレンの靴を脱がせました。
それでカレンの足はようやくおとなしくなりました。
家へ帰るとその靴は戸棚にしまい込まれてしまいました。
けれどもカレンはその靴が見たくてたまりませんでした。
舞踏会へ向かうカレン
さてそのうちお年寄りの奥様はたいそう重い病気にかかって、
みんなの話によるともう二度と起き上がれまいということでした。
誰かがそのそばについて看病して世話してあげなければなりませんでした。
このことは誰よりもまずカレンがしなければならない務めでした。
けれどもその日はその町で大舞踏会が開かれることになっていて、
カレンはそれに呼ばれていました。
カレンはもう助からないらしい奥様を見ました。
そして赤い靴を眺めました。
眺めたところで別段悪いことはあるまいと考えました。
すると今度は赤い靴を履きました。
それもまあ悪いこともないわけでした。
ところがそれを履くとカレンは舞踏会に行きました。
そして踊り出したのです。
ところでカレンが右の方へ行こうとすると靴は左の方へ踊り出しました。
それから往来に来て町の門から外へ出てしまいました。
その間カレンは踊り続けずにはいられませんでした。
そして踊りながら暗い森の中へずんずん入っていきました。