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初めてMacを手にした感動は忘れられない。
ネットの声をご紹介します。
ハンドルネームDr.Rainさん。
何もかもスムーズで早くてビビった。
iPhoneとの連携も最高。
続いてMr.Incredible488さん。
Appleシリコンのおかげでバッテリー切れのストレスから解放された。
初めてのMacでそう感じたそうです。
次はあなたが体験する番。
全く新しいMacBook Neo。
心躍るMacが嬉しいプライスで登場。
詳しくはApple公式サイトをご覧ください。
これから始まる新生活。
悩みに悩み抜いた。
そして今やってきた。
ワクワクする大特化。
僕たち。
私たちは。
山田の家電で充実した新生活を送ります。
山田へ急げ。
おしゃべり本棚。
この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
山本修吾朗作。
つづみくらべ。
第2回。
そうでございますか。
老人は納得がいったようにうなずいた。
それで私をのとやから探りに来たものとおもしめしたのでございますな。
でも同じようなことが何度もあったのだもの。
私はすっかり忘れておりました。
老人は遠くを見るようにしていった。
つづみくらべはもうおとりやめになったかと思っていたのです。
どうしてそう思ったの。
老人は答えなかった。
そしてどこか遠くを見るようなめつきをしながら
懐で押している左の肩をそっとゆすりあげた。
それから二日ほどすると急にお類は金沢へ行くことになった。
師匠のすすめで上下の勧瀬家から手直しをしてもらうためである。
その稽古は二日ほどかかった。
勧瀬家でもお類の腕は抜群だと言われ
大師匠が自分で熱心に稽古をつけてくれた。
もうつづみくらべで一番の賞を得ることは確実だった。
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大師匠もそうほのめかせていたし
それ以上にお類は強い自信を持っていた。
森元へ帰ったのは十二月の押し迫った頃であった。
あの老衛師はどうしているだろう。
家へ帰って何よりも先に考えたのはそのことだった。
まだこの町にいるだろうか。
それとも故郷の福井へもう立っていったか。
もしまだいるとすれば自分のつづみを聞きに来るに違いない。
お類はそう思いながら残っているわすかの日を
一日も怠らず離れ家でつづみの稽古に暮らしていた。
けれど老人の姿は見えなかった。
すでに雪の季節に入っていた。
重たく空に広がった雲は今や全く動かなくなり
毎日細かい雪がちらちらと絶えず降ったり止んだりした。
はじめのうちはたまたま差しかける日のぬくみにも溶けていた雪が
家の陰に残り柿の根に残りして
次第にその翼を広げやがて固く凍てて
今年の寝雪となった。
大都籠森の明日に迫った日である。
お類がつづみを打っていると庭の小芝垣のところへ
雪見野に傘をつけた人影が近寄ってきた。
まあやっぱりまだいたのね。
お類はあの老人だと思ってつづみをやめて縁先まで立っていった。
けれどそれはあの老人ではなく
まだ十二三の見慣れぬ少女であった。
あのーお願いがあって参りました。
少女はお類を見ると傘を取りながら小腰をかがめた。
お前誰なの?
私宿外れの松葉屋と申す宿屋の娘でございますが
家に泊まっておいでの老人のお客様から
お嬢様に来ていただけますようにって頼まれて参りました。
あたしに来てくれって?
はい。病気が大変悪いのです。
それでもう一度お嬢様のおつづみを聞かせていただいてから死にたいと
そう申しているのです。
あの老餌だということはすぐにわかった。
普通の場合ならいくら相手があの老人であっても
そんなところへ出かけていくお類ではなかった。
けれど老人は今重い病床にあるという
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そして死ぬ前に一度自分のつづみを聞きたいという
その二つのことがお類の心を動かした。
いいわ。言ってあげましょう。
彼女は冷ややかに言った。
お前あたしのつづみを持っておいで。
それから家の者に知れてはいけないから静かにしておくれ。
手早く身支度をしたお類はその娘につづみを持たせて家を出た。
松葉屋というのは宿外れにある汚い鬼賃宿であった。
老人は一間だけ離れている裏の狭いすすけた部屋に寝ていた。
ようおいでくださいました。
老人は衰えた相棒に感動の色を表しながら
じっとお類の目を見つめた。
御上下へおいでになったと伺いましたので
もう二度とお嬢様のおつづみは聞けないものと諦めておりました。
ありがとうございます。
ようおいでくださいました。
お類はただ微笑で答えた。
自分の打つつづみにこの老人がそんなにも大きな喜びを感じている。
そう思うと不思議に金沢で大師匠に褒められたよりも
強い自信と誇らしい気持ちが沸き上がってきた。
いやお待ちくださいまし。
お類がつづみを取り出そうとすると老人は静かにそれを制しながら言った。
今思い出したことがございますから
それを先にお話申し上げるとしましょう。
私家へ断りなしで来たのだから
短い話でございます。すぐに済みます。
老人はそう言って苦しそうにちょっと息を入れながら続けた。
お嬢様は正月のつづみ比べにお城へお上がりなさるのでございましょう。
上がります。
私の話もそのつづみ比べに関わりがございます。
お嬢様はご存知ないかもしれませんが
昔、もうずいぶん前に
漢字の生やし方で
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一の城というものと六路兵衛というものが
午前でつづみ比べをしたことがございました。
知っています。
ともわりのつづみのことでしょう。
ご存知でございますか。
十四年前に漢字一の城と六路兵衛という二人の生やし方があって
小つづみを打たせては龍虎と呼ばれていたが
二人とも負け嫌いな激しい性質で
常々互いに相手をしのごうと競り合っていた。
それがある年の正月
両種前田口の午前でつづみ比べをした。
どちらにとっても一大の名を争う勝負だったが
ことに一の城の意気はすさまじく
極半ばに至るや精魂を尽くして打ち込む気合で
ついに相手の六路兵衛のつづみを割らせてしまった。
打ち込む気合だけで相手の打っているつづみの皮を割ったのである。
一座はその神業に驚嘆して
とも割りのつづみと今に語り伝えている。
わたくしは福井のものですが
と老人は話を続けた。
あの時の騒ぎはよく知っております。
一の城の評判は大層なものでございました。
けれど
それほどの面目を施していた一の城が
それから間もなく
どこかへ去って行方知らずになったということを
ご存知でございますか。
それも知っています。
あまり気が真に行ってしまったので
神隠しにあったのだと聞いています。
そうかもしれません。
本当にそうかもしれません。
老人は息を休めてから言った。
一の城はあるよ。
自分でつづみを持つ方の腕を折り
生きている限りはつづみは持たぬと誓って
どこともなく去ったと申します。
私はその話を聞いたときにこう思いました。
すべての芸術は人の心を楽しませ
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気を駆し高めるために役立つべきもので
そのために誰かを任そうとしたり
人を押しのけて自分だけの欲を
満足させたりする道具にすべきではない。
つづみを打つにも絵を描くにも
少女な温かい心がない限り
何の値打ちもない。
お嬢様、あなたは優れたつづみの打ち手だと存じます。
お城のつづみ比べなどにお上がりなさらずとも
そのお手並みは立派なものでございます。
おやめなさいまし。
人と優劣を争うことなどはおやめなさいまし。
音楽はもっと美しいものでございます。
人の世で最も美しいものでございます。
お類を迎えに来た少女が
薬糖を飲むときだと言って入ってきた。
老人は苦しげに身を起こして薬糖をすすると
話つかれたものかしばらくじっと目をつむっていた。
では聞かせていただきましょうか。
老人は長い沈黙の後で言った。
もうこれが危機おさめになるかもしれません。
失礼ですが寝たままでごめんをこむります。