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鼓くらべ3
2025-12-27 15:17

鼓くらべ3

0166 251227 山本周五郎 鼓くらべ3 朗読:武田伊央
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00:00
初めてMacを手にした感動は忘れられない。
ネットの声をご紹介します。
ハンドルネームDr.Rainさん。
何もかもスムーズで早くてビビった。
iPhoneとの連携も最高。
続いてMr.Incredible4883さん。
Appleシリコンのおかげでバッテリー切れのストレスから解放された。
初めてのMacでそう感じたそうです。
次はあなたが体験する番。
全く新しいMacBook Neo。
心躍るMacが嬉しいプライスで登場。
詳しくはApple公式サイトをご覧ください。
おしゃべり本棚。
この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
つづみ比べが数番も進んでいた。
これにはいろいろな身分のものが加わるので、
上司の席にはミスがおろされている。
お類は控えの座からそのミスの奥をすかし見ながら、
いく度もそうみの震えるような感動を覚えた。
しかしそれは気遅れがしたのではない。
学伝の舞台で次々に披露されるつづみ比べは、
まだどの一つも彼女を恐れさせるほどのものがなかった。
彼女の価値は確実である。
そしてあのミスの前に進んで賞を受けるのだ。
遠くから姿を拝んだこともない大使の手で一番の賞を受けるときの自分を考えると、
その誇らしさと名誉の輝かしさに身が震えるのであった。
やがてずいぶん長い時がたってから、ついにお類の番がやってきた。
落ち着いてやるのですよ。
師匠の二重門は自分の方でおろおろしながら繰り返して言った。
ミスの方を見ないで、いつも稽古するときと同じ気持ちでおやりなさい。
03:02
大丈夫、大丈夫、きっと勝ちますから。
お類は静かに微笑しながらうなずいた。
相手はやはり野戸屋のお歌であった。
曲は真の序で笛は関瀬孝太雄が務めた。
拝礼を済ませてお類は左にお歌は右に互いの座を占めてつずみをとった。
そして曲が始まった。
お類は自信を持って打った。
つずみはその自信によく応えてくれた。
使い慣れた道具ではあったが、かつてそのときほど心よく鳴り響いたことはなかった。
三の字へかかったとき早くも十分の余裕を持ったお類はちらっと相手の顔を見合った。
お歌の顔は青ざめ、その唇は引きつるように片方へゆがんでいた。
それはどうかして勝とうとする心をそのまま絵にしたような激しい執念の層であった。
そのときである。
お類の脳裏にあの旅絵師の姿が浮かび上がってきた。
ことにいつも懐から出したことのない左の腕が。
あの方は。
お類は愕然として夢から覚めたように思った。
老人は一之将がつずみ比べに勝ったあとで自分の腕を折り、
それもつずみを持つ方の腕を自ら折って行方をくらましたと言ったではないか。
いつも懐へ隠している腕がそれだ。
一之将様だ。
それに違いない。
そう思う後から目の前に老人の顔が鮮やかな幻となって描き出された。
それからあの穏やかな声が耳元でこうはっきりささやくのを聞いた。
音楽はもっと美しいものでございます。
お類は振り返った。
そしてそこにお歌の賢明な顔を見つめた。
瞳の上ずった、すでに血の毛を失った唇を片方へ引きうがめている顔を。
音楽はもっと美しいものでございます。
またという列を争うことなどおやめなさいまし。
06:04
音楽は人の世で最も美しいものでございます。
老人の声が再び耳によみがえってきた。
お類の右手がはたと止まった。
お歌のつずみだけが鳴り続けた。
お類はその音色と意外な出来事に驚いている客たちの動揺を聞きながら
つずみをおろしてじっと目をつむった。
老人の顔が笑いかけてくれるように思え
今まで感じたことのない新しい喜びが胸へあふれてきた。
そして自分の体が目に見えぬ戒めを解かれて
柔らかい青草の茂っている広い広い野原へでも解放されたような
軽い生き生きとした気持ちでいっぱいになった。
早く帰ってあの方につずみを打ってあげよう。
この気持ちを話したらきっとあの方は喜んでくださるに違いないわ。
お類はそのことだけしか考えなかった。
森元へ帰ったのは正月7日の暮れ方であった。
疲れてもいたし粉雪がちらちらと降っていたが
お類は誰にも知れぬように裏口から家を出て行った。
「まあ、お嬢様。」
松葉屋の少女は不意に訪ねてきたお類を見て驚きの目を見張った。
そしてすぐ聞かれることはわかっているというふうに
「あのお客様は亡くなりました。」
と当たり前すぎる口をで言った。
あれからだんだんと病気が悪くなるばかりで
とうとう夕べお亡くなりになりました。
今日は日が悪いのでお弔いは明日だそうでございます。
お類は裏の部屋へ通された。
老人は北枕に寝かされ
逆さにした枕屏風と貧しい四季実の壺と
細い線香の煙に守られていた。
お類は顔の布を取ってみた。
衰え切った顔であった。
つぶさに舐めてきた世の深山が
刻まれている皺の一つ一つに染み込んでいるのであろう。
けれど今すべては終わった。
09:02
もうどんな苦しみもない。
困難な長い旅が終わって
老人は今安らかな
目覚めることのない眠りのとこについているのだ。
「ようなさいました。」
お類には老人の死に顔がそう言って微笑するように思えた。
「さあ、わたくしにあなたのお手並みを聞かせてくださいまし。」
わたくし、お教えで目が開きましたの。
お類は囁くように言った。
それでいろいろなことがわかりましたわ。
今日まで自分がどんなに醜い心を持っていたか
どんなに思い上がった
たしなみのない娘であったか
ようやくそれがわかりましたわ。
それで急いで帰ってきましたの。
お目にかかって褒めていただきたかったものですから。
お類のほうに初めて温かいものが滴った。
それから長い間
田元で顔を覆いながら声をしのばせて泣いた。
長い間泣いた。
今日こそ本当に聞いていただきます。
やがて涙をおしぬぐってお類はふくさをときながらささやいた。
今までのようにではなく生まれ変わった気持ちで打ちます。
どうぞお聞きくださいまし。
お師匠さま。
今はもう老人が完全一之上であるかどうか確かめるすべはない。
けれどお類は堅くそう信じているしまたよしそうでないにしても
その老人こそ彼女にとっては本当の師匠であった。
部屋はもう暗かった。
取り寄せた火でつづみの皮を温めたお類は
老人の枕辺に端座して心を沈めるようにしばらく目を閉じていた。
南側のすすけた障子にほのかな黄昏の光が残っていて
それが彼女の美しい横顔の線を
12:03
暗い部屋の中に幻のごとく描き出した。
こうとして
つづみはよく澄んだ騒音でさえある音色を
部屋いっぱいに反響させた。
お類は男舞の曲を打ち始めた。
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どうぞご引きに。
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