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            ひすいを愛された妃 前編
2022-10-29 16:56

ひすいを愛された妃 前編

005 ひすいを愛された妃 前編 朗読 武田伊央

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おしゃべり本棚。 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
小川美名作 ひすいを愛された妃。
昔、 ひすいが非常に珍重されたことがありました。
この不思議な美しい緑色の石は、 中国の山奥から取れたと言われています。
そこで、国々へまで流れて行きました。 その自分の人々は、何よりも真理が尊いということには、まだよく悟れなかったのです。
そして、ひすいの玉をたくさん持っている者ほど偉く思われましたばかりでなく。 その人は、幸福であるとされたのであります。
藤野花咲国の王様は、どちらかといえば、そんなに欲深い人ではなかったのでした。 けれど、
妃は大層ひすいを愛されました。
私は、 じっとこの青い色に見入っていると、
魂も身も、 一緒にどこか遠いところへ消えていきそうに思います。
王様は妃をこの上もなく愛していられましたから、 自分はこの石をさほど欲しいとは思われなくとも、
妃の望みを十分に叶えさせてやりたいと思われました。 いくら高くてもいいから、
いいひすいの玉があったら持ってまいれ。 と、家来に申し渡されたのです。
ある日、家来の建てまつった玉を、王様は手にとって眺められ、
「なるほど、 美しい色をしている。
どうしてこのような見事なものが、 この世の中に存在するのだろうか。」
と言われました。 家来は王様の言葉を受けたまわってから、
恐る恐る申し上げました。 美しい女王様を飾るために、
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空から降ってきた梅雨が、石になったものと思われます。 王様はうなずかれました。
まことに、 そうかもしれない。
こう言われると、いつしか喜びが悲しみの色に 変わっていくのが見えました。
なぜなら、生あるすべての美しいものに、 いつか死のあることを思い至られたからです。
本当に家来は、うるわしい、 白い香りの高い花のような方でした。
その眼は星のようにすんでいました。 その唇には、
蜜蜂が来るかとさえ思われたぐらいです。 けれど、
すべての美しい婦人は弱々しかったように、 妃は首のまわりにかけられた、青い石の首飾りの重みを支えるに、
耐えられないほどでした。 「私は、
この青い石の重みに押されて、 その中に渦まって死にたい。」
いかにその姿は小さく美しくても、 欲望に限りのないことが知られたのです。
そしてそれは、恐ろしいことでした。 流行は、
ちょうど梅菌のように感染するものです。 そしてまた、それと同じように、
人間を災いするものでした。 国々に、翡翠の玉は貴重のものとなりました。
どの女王もその首飾りをかけられるようになりました。 一人王様や妃が愛されたばかりでなく、
国々の金持ちは、青い玉を集めるようになりましたから、 たちまち青い宝石の値は限りなく上がったのです。
こういうように、いくら出してもいいからという人たちがたくさんになりますと、 翡翠の玉は自然と世間に少なくなりました。
少なくなるにつれて、 偽物が現れるようになりました。
遠い国からわざわざ船に乗って、 翡翠を高く売りに一儲けしようと、笑ってやってくる商人もありました。
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船が港に着くと、早くその商人からこの青い石を買おうと思って、 見張っている人までありました。
藤の花咲く国の妃は、 もはやか弱い身につけられないほど青い玉がたまりました。
美しい姿でこの重い宝石の首飾りを引きずって、 その上、腕にも冠にも散りばめて、
なよなよとした姿で御殿の中をお歩きなさる様子は、 麗しくもあり、またすごいようでもあり、
なんといって敬意のしようがなかったのでした。 王様は妃の様子をごらんになって、
「空の星が一時に揺らぐようじゃ。」 と仰せられたのです。
またその青い玉から放つ一つ一つの光に目を止められて、
「なんという光合しさじゃ。」 と仰せられたのです。
この時、 妃のお顔には不安の色が浮かびました。
私は心配でなりません。 この頃は本物を誤魔化すほど、
巧みに偽物が作られるということを聞きました。 悲しいことに、
私の目はまだそれを見分けるだけの力がありません。
私の身をこうして飾っている玉の内にも偽物があって、
それを陛下までが美しいとご覧なさるようなことはないかと思うと、 胸の内が穏やかでないのであります。
王様は愛しい妃のお言葉を黙って聞いていられましたが、
お前の心配は最ものことじゃ。 偽物を神聖な体につけて知らんでいるとは、
すなわち私の不得にもなることじゃ。 早速玉の心眼を見分けることができる人物を
召しかかえることに致そう。 宝石を見分ける名人が募集されることになりました。
そしていろいろの人たちが集まってきましたけれど、
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結局名人というのは最後に残された一人にすぎません。 その者は腰の曲がった顎に白い髯の生えた老人でした。
このおじいさんは若い時分、チベットの方へ山から山へと翡翠を訪ねて歩いた経験があって、
一目石を見ればそれが本物か偽物かということの見分けがついたのです。 おじいさんは早速御殿に召されました。
そこで妃の首飾りについている玉を鑑定させられました。
おじいさんは膝を負ってうやうやしく青い玉を手のひらの上に乗せて眺めていましたが、 その中から一つ一つ分け始めました。
青いたくさんの大きなまた小さな玉は、 左右に二分されました。
右の方に置きましたのは本物で、 左の方に置きましたのは
偽物でありますと言って、 妃は美しい顔に驚きの色を浮かべられました。
なぜなら、かつて見事な玉だと見とれていました大きな玉も、 偽物のうちに入っていたからであります。
恐れ多いことでありますが、 本物の翡翠はそうたくさんあるものでありません。
その後、一層翡翠の値は高くなったのです。
ある日のこと、この年取った鑑定家は、
私が今まで見た翡翠のうちで、 最極の女王の首にかけてある飾りの玉ほど、 不思議な美しいものはありません。
青白い玉のうちに瞳を凝らしてみますと、 夢のような天人の姿が見えるのであります。
これこそ、広い世界のうちで、 一番尊い師と思われます。
この話は、やがて妃のお耳にまで達すると、
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妃は開けてもくれても、 その玉が空想の目に浮かんで、
物思いに沈まれたのであります。
王様はそれを悟られると、 天にも地にもただ一人愛する妃のために、
最極の女王が持っていられる青い玉を 手に入れて与えたいと思われました。
しかし、そのことは一刻の富を尽くしても、
おそらく最極の女王の承諾を得ることは 難しかったのです。
どうかして最極を征服することは できないものかなと、
藤野花咲国の王様は考えられました。
そして、その機会を待っているうちに、 両国間にちょっとした問題が起こりました。
ついにそれをきっかけとして、 戦争は始まったのでした。
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