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家庭の幸福 その2
2025-10-25 16:03

家庭の幸福 その2

0157 251025 太宰治 家庭の幸福 その2 朗読:高見心太郎
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00:00
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おしゃべり本棚。
この時間は、福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
家庭の幸福、その2。
太宰治。
街頭録音というものである。
いわゆる政府の役人と、いわゆる民衆とが、街頭において互いに意見を述べ合うという趣向である。
いわゆる民衆たちは、ほとんど怒っているような口調で、例の官僚に食ってかかる。
すると官僚は、妙な笑い声を交えながら、実に幼稚な観念を。
例えば、「研究中。ごもっともながらそこをなんとか。
日本再建。官も民も力を合わせ。
それはよく心がけているつもり。
民主主義の世の中、まさかそんな極端な。
ですから政府は皆さんのご助力を願って。
うぬん。」
そんなことばかり言っている。
つまりその官僚は、始めから終わりまで、一言も何も言っていないのと同じであった。
いわゆる民衆たちは、いよいよ怒り、絶望鋭くその役人に迫る。
役人は、ますます盛んに例のいやらしい笑いを発して、
傲願無知のアホらしい一般概論をクソ丁寧に繰り返すばかり。
民衆の一人は、とうとう泣き声になって、役人に詰め寄る。
03:07
寝床の中でそれを聞き、とうとう私も逆上した。
もし私があの場に居合せたなら、そうして司会者から意見を求められたなら、きっとこう叫ぶ。
私は税金を納めないつもりでいます。
私は借金で暮らしているのです。
私は酒も飲みます。
煙草も吸います。
いずれも高い税金がついて、そのために私の借金は多くなるばかりなのです。
この上またあちこち金を借りに歩いて、
税金を納める力が私にはありません。
それに私は病弱だから、おかずや注射液や薬品のためにも借金をします。
私は今非常に困難な仕事をしているのです。
少なくともあなたよりは苦しい仕事をしているのです。
自分でもほとんど仕事のことばかり考えつめているのです。
酒も煙草も、またおいしいおかずも、
今の日本人には贅沢だ、やめろということになったら、
日本に一人もいい芸術家がいなくなります。
それだけは私断言できます。
脅かしているのではありません。
あなたはさっきから政府だの、国家だの、
さも一大事らしくもったいぶって言っていますが、
私たちを自殺に導くような政府や国家は、
さっさと消えたほうがいいんです。
誰も惜しいと思いやしません。
困るのはあなたたちだけでしょう。
何せ、クビになるんだから。
何十年かの金属も水泡に浸するんだから。
そうしてあなたの妻子が泣くんだから。
ところがこっちはもう仕事のために
ずっと前から妻子を泣かせどうしなんだ。
好きで泣かせているんじゃない。
仕事のためにどうしてもそこまで手が回らないのだ。
それをまあ何だい。
にやにやしながらそこを何とかご都合していただくんですなあ、だなんて。
とんでもない、クビをくくらせる気か。
おい、みっともないぞ。
そのにやにや笑いはやめろ。
あっちへ行け、みっともない。
私は社会党の右派でも左派でもなければ、
共産党員でもない。
芸術家というものだ。
覚えておきたまえ。
不潔なごまかしが何よりも嫌いなんだ。
土台、あなたはなめていやがる。
そんなあたりさわりのないいいかげんなことを言って、
06:01
いわゆる民衆をなだめ、
納得させることができると思っているのか。
たった一言でいい、
君の立場の実情を言え。
君の立場の実情を。
そのようなすこぶる泥臭い面歯の言葉が、
とめどなくいくらでも、
次々と胸に浮び、
我ながらあまり上品ではないと思いながら、
憤怒の念が募るばかりで、
いよいよ一人で興奮し、
おしまいにはとうとう涙が出てきた。
所詮は影弁形である。
私は経済学にはまるで暗い。
税の問題など何もわからぬと言ってよい。
その街頭録音の場に居合わせて、
恐る恐る質問を発し、
たちまち役人に教えさとされ、
さよか。すいません。
という情けない結果になるかもしれない。
けれども私には、
その役人のヘラヘラ笑いが気に入らなかったのだ。
ご自分の言うことに確信のない証拠だ。
ごまかしている証拠だ。
いい加減を言っている証拠だ。
もしあのヘラヘラ笑いの答弁が官僚の実態だとしたなら、
官僚というものは確かに悪いものだ。
あまりに舐めている。
世の中を舐めすぎている。
私はラジオを聞きながら、
その役人の家に放課してやりたいくらいの極度の憎悪を感じたのである。
おい、ラジオを消してくれ。
それ以上その役人のヘラヘラ笑いを聞くに忍びなかった。
私は税金を納めない。
あんな役人があんなヘラヘラ笑いをしているうちは納めない。
牢へ入ったって構わない。
あんなごまかしを言っているうちは納めない。
というくらいに逆情し、
そうしてただもう口惜しくて涙が出るのである。
けれども、
やはり私は政治運動には興味がない。
自分の性格がそれに向かないばかりか、
それによって自分が救われるとも思っていない。
ただそれは自分には鬱陶しいばかりだ。
私の視線はいつも人間の家の方に向いている。
その夜、
私は前の日に医者からもらっておいた鎮静剤を飲み、
09:04
少し落ち着いてから、
今の日本の政治や経済のことは考えず、
もっぱら戦国のお役人の生活形態についてのみ、
思いをめぐらしていた。
あの今の人のヘラヘラ笑いは、
しかし、いわゆる民衆を軽蔑している笑いではない。
決してそんな性質のものではなかった。
我が身と立場とを守る笑いだ。
防御の笑いだ。
敵の英法を避ける笑いだ。
つまり、ごまかしの笑いである。
そうして私の寝ながらの空想は、
次のような展開を始めたのである。
彼はあの街頭の討論を終えて、
ほっとして汗を拭き、
それから急に不機嫌な顔になって、
あの人の役所に引き上げる。
いかがでございました。
と下僚に尋ねられ、
彼は苦笑いし、
いや、もう散々さと答える。
討論の現場に居合せたもう一人の下僚は、
いえいえ、どうして。
街頭乱魔を断つというところでしたよ。
とお世辞を云う。
街頭とは怪しい刀と書くんだろう。
と彼はやはり苦笑いしながら云って、
でも内心はまんざらでない。
冗談じゃない。
土台、あんな質問者とは頭の構造が違いますよ。
何せこっちは戦軍万馬の。
少しお世辞が過ぎたのに気づいて、
下僚は素早く和刀を転ずる。
今日の録音はいつ放送になるんです。
知らん。知っているのだけれども、
知らんと云った方が人物が大きく応用に見える。
彼は今日の出来事は全て忘れたような顔をして、
のろのろとしつむを始める。
とにかくあの放送は楽しみだなあ。
下僚はなおも小声でお世辞を云う。
しかしこの下僚は少しも楽しみだと思っていないし、
実際その放送の夜にはカストリという奇妙な酒を変な屋台で飲み、
ちょうど該当討論放送の時刻に盛んにゲイゲイゲロを吐いている。
楽しみも何もあったものでない。
12:04
楽しみにしているのは、
例のあの役人とその家族である。
いよいよ今夜は放送である。
役人はその日はいつもより一時間ほど早く帰宅する。
そうして該当録音の放送の三十分くらい前から、
家族全部緊張して受信機のそばに集まる。
いまにこの箱からお父さんのお声が聞えてきますよ。
夫人は末の小さいお嬢さんを抱っこしてそう教えている。
中学一年の男の子は、
正座してそうしてきちんと両手を膝に置き、
実に行儀よく放送の開始を待っている。
この子は要望も丹麗で、
しかも学校がよくできる。
そうしてお父さんを心から尊敬している。
放送開始。
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