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おしゃべり本棚。 この時間は、福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
菊池寛。 アラビヤンナイトからアラジンと不思議なランプ。
昔、アラブの都にムスタフという貧乏な仕立屋が住んでいました。 このムスタフには、おかみさんとアラジンと呼ぶたった一人の息子とがありました。
この仕立屋は、たいへん心がけのよい人で、一生けんめいに働きました。 けれども、悲しいことには、息子が大の怠け者で、年が年中町へ行って、怠け者の子どもたちと遊び暮らしていました。
何か仕事を覚えなければならない年頃になっても、そんなことはまっぴらだと言ってはねつけますので、本当にこの子をどうしたらいいのか、両親も途方にくれている有様でした。
ああ、わしにはこの怠け者をどうすることもできないのか。 ムスタフは嘆きました。そして間もなく、子どものことを心配のあまり病気になって死んでしまいました。
こうなると、アラジンのお母さんは、すこしばかりあった仕立物に使う道具を売り払って、それからあとは糸を紡いで暮らしを立てていました。
さてある日、アラジンがいつものように、町の怠け者といっしょに面子をして遊んでいました。
ところがそこへ、いつのまにか生の高い色の黒いおじいさんがやってきて、じっとアラジンを見つめていました。
やがて面子がひと勝負を終わったとき、そのおじいさんがアラジンにおいでおいでをしました。
そして、「おまえの名は何というのかね。」とたずねました。
この人はたいへん親切そうなふうをしていましたが、ほんとうはアフリカの魔法使いでした。
私の名はアラジンです。
アラジンは一体このおじいさんは誰だろうと思いながらこう答えました。
それから、おまえのお父さんの名は。
また魔法使いがききました。
お父さんの名はムスタフといって仕立て屋でした。
でもとっくのむかしに死にましたよ。
とアラジンは答えました。
するとこのわるものの魔法使いは、
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ああ、それは私の弟だ。
おまえはまあ私のおいだったんだね。
私はしばらく外国へ行っていたおまえのおじさんなんだよ。
といっていきなりアラジンを抱きしめました。
そして早く家へ帰ってお母さんに私が会いに行きますからと言っておくれ。
それからほんの少しですがといってこれをあげておくれ。
といってアラジンの手に金貨を五枚にぎらせました。
アラジンは大急ぎで家へ帰ってお母さんにこのおじさんだという人の話をしました。
するとお母さんは、
そりゃあきっと何かのまちがいだろう。
おまえにおじさんなんかありゃしないよ。
と言いました。
しかしお母さんはその人がくれたという金貨を見て、
ひょっとしたらそのおじいさんは神類の人かもしれないと思いました。
それでできる限りのごちそうをしてその人がくるのを待っていました。
まもなくアフリカの魔法使いは
いろいろめずらしいくだものやおいしいおかしをどっさりおみやげにもってやってきました。
なくなったかわいそうな弟の話をしてください。
いつも弟がどこにこしかけていたか教えてください。
と魔法使いはお母さんとアラジンにききました。
お母さんはいつもムスタフがこしかけていた長いすを教えてやりました。
すると魔法使いはそのまえにひざまずいて、
なきながらその長いすにキッスしました。
それでお母さんは、
この男はなくなった主人の兄さんにちがいないと思うようになりました。
ことにこの魔法使いがアラジンをなめるようにかわいがるのをみて、
なおさらそうときめてしまったのでした。
なにかしごとをしているのかね。
魔法使いがアラジンにたずねました。
まあほんとうにおはずかしゅうございますわ。
この子はしょっちゅうまちへいってあそんでばかりいまして、
まだなんにもしていないのでございますよ。
お母さんがてをもみながらそうこたえました。
アラジンはおじさんだというひとがじっとじぶんをみつめているので、
はずかしそうにうつむいていました。
なにかしごとをしなきゃいけませんな。
魔法使いはこうお母さんにいっておいて、
さてこんどはアラジンに、
おまえはいったいどんなしょうばいがしてみたいのかね。
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わたしはおまえにごふくみせをださせてあげようとおもっているのだが、
といいました。
アラジンはこれをきくとうちょうてんになってよろこびました。
あくるひおじさんだというひとは、
アラジンにりっぱなきものをひとそろいかってきてくれました。
アラジンはそれをきて、
このおじさんだというひとにつれられてまちじゅうをけんぶつしてあるきました。
そのつぎのひもまた魔法使いはアラジンをつれだしました。
そしてこんどはうつくしいはなぞののなかをとおりぬけていなかへでました。
ふたりはずいぶんあるきました。
アラジンはそろそろくたびれはじめました。
けれども魔法使いがおいしいおかしやくだものをくれたり、
めずらしいはなしをつぎからつぎとはなしてきかせてくれたりするものですから、
たいしてくたびれもしませんでした。
そんなにしてとうとうふたりは、
やまとやまとのあいだのふかいたにまできてしまいました。
そこでやっと魔法使いがあしをとめました。
ああ、とうとうやってきたな。
まずたけびをしようじゃないか。
かれいだをすこしひろってきておくれとアラジンにいいました。
アラジンはさっそくかれいだをひろいにいきました。
そしてすぐりょうてにいっぱいかかえてかえってきました。
魔法使いはそれにひをつけました。
かれいだはどんどんもえはじめました。
おじいさんはふしぎなこなをポケットからだしました。
それからくちのなかでなにかぶつぶついいながらひのうえにふりかけました。
するとたちまちだいちがゆれはじめました。
そしてめのまえのじめんがぱっとわれておおきなまっしかくなひらたいいしがあらわれてきました。
そのいしのうえにはわがはまっていました。
アラジンはこわがっていえへはしってかえろうとしました。
けれども魔法使いはそうはさせませんでした。
アラジンのえりがみをつかんでひきもどしました。
おじいさん、どうしてこんなひどいことをするんです。
アラジンはなきじゃくりながらみあげました。
だまってわたしのいうとおりにすればいい。
このいしのしたにはたからものがあるのだ。
それをおまえにわけてやろうというのだ。
だからわたしのいうとおりにおし、すぐにでてくるからなと魔法使いがいいました。
たからものときくと、アラジンはいままでのこわさはすっかりわすれてよろこんでしまいました。
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そして魔法使いのいうとおりに、いしのうえのわにてをかけると、いしはぞうさなくもちあがりました。
アラジンや、ごらん、そこにしたへおりていくいしだんがみえるだろう。
おまえがそのいしだんをおりきるとね、おおひろまがみっつならんでいるんだよ。
そのおおひろまをとおっていくのだが、そのときがいとうがかべにさわらないようにきをつけなきゃあいけないよ。
もしさわったがさいご、おまえはすぐにしんでしまうからね。
そうしてそのおおひろまをとおりぬけるとくだものばたけがあるんだよ。
そのなかをまたとおりすぎるとつきあたりにあなぐらがある。
そのなかにひとつのらんぷがとぼっているからね。
そのらんぷをおろして、なかのあぶらをすててもっておかえり。
魔法使いはこういいながら、おまもりだといってまほうのゆびわをアラジンのゆびにはめてくれました。
そしてすぐにでかけるようにとめいれいしました。
アラジンは魔法使いのいったとおりにおりていきました。
なにもかも魔法使いがいったとおりのものがありました。
アラジンはみっつのおおひろまとくだものばたけをとおりぬけて、らんぷのあるところまできました。
そこでらんぷをとって、あぶらをすてて、だいじにふところにしまってからあたりをみまわしました。
アラジンはゆめにさえこんなみごとなくだものばたけはみたことがありませんでした。
なっているくだものがいろいろさまざまのうつくしいいろをしていて、まるでそこらいちめんにじがたちこめたようにみえるのです。
すきとおってすいしょうのようなものもありました。
まっかないろをしていて、ぱちぱちとひばなをちらしているのもありました。
そのほかみどり、あお、むらさき、だいだいいろなんどで、ははみんなきんとぎんとでできていました。
このくだものはほんとうはダイヤモンドやルビーやエメラルドやサファイアなどというほうせきだったのですが、アラジンにはきがつきませんでした。
けれどもあんまりみごとだったものですから、かえりにこのくだものをとってポケットにいれておきました。
アラジンがやっといしだんのしたまでたどりついたとき、ちのうえではまほうつかいがいっしんにしたのほうをみつめてまっていました。
そしてアラジンがいしだんをのぼりかけると、「はやくらんぷをおよこし。」といっててをのばしました。
「わたしがもってでるまでまってくださいな。でたらすぐにあげますから。ここからじゃとどかないんですもの。」とアラジンはこたえました。
「もっとてをもちあげたらとどくじゃないか。さあ、はやく、さあ。」
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おじいさんはおこったかおをしてどなりつけました。
「すっかりそとへでてからわたしますよ。」アラジンはおなじようなことをいいました。
するとまほうつかいははがゆがってじだんだをふみました。
そしてふしぎなこなをたきびのなかへなげこみました。
くちのなかでなにかぶつぶついいながら、そうするとたちまちいしがずるずるとふたをしてしまい、じめんのうえへかえるみちがふさがってしまったのでした。
アラジンはまっくらなちのしたへとじこめられてしまいました。
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