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ツクツク法師
2026-09-05 16:42

ツクツク法師

0205 260905 夢野久作 ツクツク法師 朗読:茅野正昌
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サマリー

昔々、欲張りなお坊さんがお金を貯めていましたが、泥棒に盗まれるのを恐れて庭に埋め、その上に菓子の木を植えました。夜になると木の葉からお金の音が聞こえるようになり、村人はお坊さんがお金を隠していると疑います。飢饉で困った村人がお金を借りに来ますが、お坊さんは断ります。夜中に泥棒が押し入り、お坊さんを脅して埋めた場所を聞き出しますが、亀の中にはお金がなく、菓子の木がお金を吸い上げていたことが判明します。人々はお坊さんを許さず、割れた亀の中に生き埋めにしてしまいます。その後、その場所から現れた蝉が「つくつく」と鳴き続けるようになり、村人たちはその蝉をお坊さんの生まれ変わりだと語り継ぎました。

欲張りなお坊さんと菓子の木
おしゃべり本棚 この時間は福岡のRKB毎日放送のアナウンサーによる朗読をお送りします。
夢の旧作作 ツクツク法師
昔あるところに一人の欲張りのお坊さんがおりました。
毎日毎日法坊へお経を読みに行って、もらってきたお金を、一つの大きな亀の中にためていましたが、
だんだんいっぱいになってくるにつれて、泥棒にとられそうなので、怖くてたまらなくなりまして、
ある晩のこと、小僧にも誰にも知られないようにお庭の隅に埋め、その上に菓子の木を一本植えました。
菓子の木よ、菓子の木よ、お前にそのお金はやるから、大切に晩をするんだぞ。
こう言って聞かせると、お坊さんは手や足を洗って、桑を片づけて寝てしまいました。
あくる日から、その菓子の木はずんずん大きくなりましたが、不思議なことには、
夜になると風が吹くたんびに、その菓子の木の葉の間で、チャラン、チャランとお金のぶつかる音がします。
お坊さんは喜んで、
あの菓子の木は感心だ。
毎晩人が寝てしまってから、お金が減らないように数えているのだな、と思っていました。
しかしその音を聞いた村の人は、そう思いませんでした。
あのお寺では、夜になるとお金を数える音がする。
あのケチンボンの坊さんがどっさりお金を貯めているのに違いない、と皆言い合っておりました。
飢饉と村人の嘆願
ところがある年のこと、その近所の村々で雨が降らないために、
お米がちっともできなくて、農民が大変に困ったことがありました。
村の人々は申し合わせて、お寺へ来て、
「和尚さん、すみませんが、あなたのお金を貸していただけますまいか。
それでお米を買ってみんな食べますから。
そのかわり、来年はきっとお米を作って、あなたにたくさんあげますから。
と、手をあわせて拝みながら頼みました。
しかし坊さんは知らぬ顔をして、こう言いました。
「それは困りましたね。私のところにはお金は一文もありませんよ。
あるなら探してごらんなさい。」
これを聞いた村の人は大変に怒りました。
「あなたはお坊さんのくせに嘘をついてはいけません。
あんなに毎晩毎晩お金を数えていながら、一文もないはずはありません。
みんなご飯がいただけないで死にそうになっているのに、
そんな意地の悪いことを言うのなら、ひどい目にあわせますぞ。
しかし坊さんはちっともおどろきませんでした。
「ひどい目にあわせるのならあわせてみろ。お金はほんとにないのだから。」
村の人たちはこれを聞くと、みんな怒って家中を探しましたが、
「なるほど。お坊さんの言うとおりどこを探してもお金は一文もありません。」
仕方がないのでみんな坊さんに謝って家へ帰ってしまいました。
泥棒の襲撃と真実
ところがどうでしょう。
夜になるとやっぱりチャラン、チャランという音が風につれて、近所の村中へ聞こえてきます。
これを聞くと村の中でも力の強い意地の悪い人たちが五六人寄ってこんな話をしました。
さあ、あのお坊さんはお金がないなんて嘘ばかりついている。
夜になるとあんなにお金の音がチャラチャラ言ってるのに、一文もないはずはない。
お勢の人たちがお米が食べられないで困っているのに、自分ばかりお金を貯めて知らん顔をしているなんて悪いやつだ。
ひとつお前たちと一緒に泥棒に化けて行って、
あの坊さんを脅かしてお金を取り上げてみんなに分けてやろうじゃないか。
それがいい、それがいい。
というので村の若い人たちが五六人、黒い布で顔を隠して、
釜や菜太を持ってすぐにお寺に押しかけて行きました。
お寺に入った泥棒たちは寝ていた坊さんを引きずり起して、
さあ王将さん、たったいま勘定していたお金を出せ。
出さないとひどい目にあわせるぞ。
と言いました。
か、勘弁してください。お金は一文もありません。
と坊さんはふるえながら申しました。
しかし泥棒たちは承知しません。
この野郎また嘘をつく。お金がないのになんで音がするんだ。
さあ出せ、早く出せ。
と言っているうちにお庭のほうに風が吹いて、
ジャラン、ジャランという音がしました。
お金はあそこにある。
と一人が菓子の木のほうへ駆け出しますと、
みんなあとから続いて駆けて行きました。
これを見た坊さんは肝をつぶして思わず、
あ、そっちにはお金はありません。ありません。
と言いながらあとから駆けて行きました。
一人の若い者はふりかえってにらみつけました。
それ見ろ。こっちになければほかのところにあるのだろう。
早く言え。
と言うなり坊さんをおさえつけて、
なたをふりあげました。
やれ。やっつけてしまえ。
とほかの者も鎌や棒をふりあげました。
坊さんは仕方なしにとうとう本当のことを言いました。
助けてください。助けてください。
本当のことを申します。
本当のことを申します。
この菓子の木の下に埋めてあるのです。
うそだというならほってごらんなさい。
そのかわりどうぞ半分だけでかっぺんしてください。
この野郎。まだそんなことを言う。半分もくそもあるものか。
命だけは助けてやるからじっとしていろ。
と言いながら坊さんを菓子の根肩へしばりつけてしまいました。
坊さんを菓子の木へしばりつけると、
泥棒たちはみんなで横のほうから、
その菓子の根へ大きな穴をほりはじめましたが、
なるほどだんだん穴が深くなると、
下のほうから大きな亀がでてきました。
おい大きな亀があるぞ。
この中にその坊さんはお金をかくしているのにちがいない。
さようです。さようです。
とお坊さんは泣き顔をしながら言いました。
それを半分だけあげますから早くわたしをゆるしてください。
こんなにたくさんあれば半分でいい。
と言いながら、お坊さんの縄をといてやりました。
お坊さんの最期とつくつく坊主
さあ見ていろ。この亀をたたきわるからな。
といううちに、
二三人が桑の頭で亀の横腹をむちゃくちゃにたたきわりました。
みると中には菓子の根がいっぱいになっていて、
お金は一文もありませんでした。
これを見た坊さんは泣き出しました。
ああ、わたしが悪ございました。
その菓子の木を植えるときに、
お前にやるからしっかり番をしろと言ったの。
菓子の木が本当にしてすっかり根をいれてお金をすいあげてしまったのです。
ですから風がふくとあんなにお金の音がしたのです。
ああ情けない。わたしはもう本当に一文なしになった。
許してください。許してください。
と泣きながら謝りました。
けれども坊さんに幾度もだまされた人々は、
このお坊さんの言葉を本当にしませんでした。
この野郎。まだ俺たちをだまそうとする。
憎いやつだ。やってしまえ。
といううちに寄ってたかって襲いかかり、
割れた亀の中へ押し込んで、土をかぶせてしまいました。
ところがまた不思議なことには、
その晩からいくら風が吹いても、
その菓子の木の葉の間にはちっともお金の音が聞こえなくなりました。
その代わりに、その土の下から小さな蝉が何匹も何匹も這い出してきて、
その菓子の木につかまって、夜が明けてから日の暮れるまで、
おしい。つくつく。おしい。おしい。つくつく。おしい。つくつく。おしい。
と悲しそうに泣いていました。
村の人々はこの蝉に、つくつく坊主と名をつけました。
あのお坊さんはお金が惜しさに、あんな虫に生まれ変わって、
あの菓子の木につかまって、おしい。おしい。と泣いているのだと言い伝えました。
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