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2023-08-14 04:19

#103【青空文庫】狐のつかい

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新美南吉「狐のつかい」

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Niimi Nankichi titile:a fox run an errand

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狐のつかい ニーミーナンキチ
山の中に猿や鹿や狼や狐などが一緒に住んでおりました。 みんなは一つの暗鈍を持っていました。
紙で貼った四角な小さい暗鈍でありました。 夜が来ると、みんなはこの暗鈍に火を灯したのでありました。
ある日の夕方、 みんなは暗鈍の油がもうなくなっていることに気がつきました。
そこで誰かが村の油屋まで油を買いに行かねばなりません。 さて、
誰が言ったものでしょう。 みんなは村に行くことが好きではありませんでした。
村にはみんなの嫌いな漁師と犬がいたからであります。 それでは私が行きましょう、
とその時言ったものがありました。 狐です。狐は人間の子供に化けることができたからでありました。
そこで、 狐のつかいと決まりました。
やれやれ、 とんだことになりました。
さて狐はうまく人間の子供に化けて、 尻切れゾーリをひたひたと引きずりながら村へ行きました。
そして趣味よく油を一号買いました。 帰りに狐が月夜の菜種畑の中を歩いていますと、
大変良い匂いがします。 気がついてみれば、それは買ってきた油の匂いでありました。
少しくらいは良いだろう。 と言って、
狐はぺろりと油をなめました。 これはまた何というおいしいものでしょう。
狐はしばらくするとまた我慢ができなくなりました。 少しくらいは良いだろう。
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私の舌は大きくない。 と言ってまたぺろりと舐めました。
しばらくしてまたぺろり。 狐の舌は小さいのでぺろりと舐めてもわずかなことです。
しかし、ぺろりぺろりが何度も重なれば、 一号の油もなくなってしまいます。
こうして山に着くまでに、狐は油をすっかり舐めてしまい、 持って帰ったのは殻のとくりだけでした。
待っていた鹿や猿や狼は、 殻のとくりを見てため息をつきました。
これでは、 今夜は安堵がともりません。
みんなはがっかりして思いました。 さてさて、
狐を使いにやるのじゃなかった。 と、
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