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こんにちは、73才 薬膳&料理研究家の木下 賀律子です。
暑い日々が続いております。お元気でお過ごしでしょうか。
ややもすれば食欲が落ちそうになるこの時期のお助け料理、カレーライスについて、今月は音声を収録していきます。
1回目の今日は、カレーの日本史です。
まず、カレーライスとライスカレーの違いは何でしょう。
ライスカレーというこの言葉を最初に使ったのは、札幌農学校の先生であったクラーク博士という説があります。
クラーク博士は、生徒は米飯を食すべからず、ただしライスカレーはこの限りにあらずという法則を作ったということです。
今でこそ、北海道はブランド米、ユメピリカや七つ星、食味ランク特英として有名ですが、
かつては寒冷地のため米の生産が難しく、小麦を栽培してパンを食べることが奨励されていたためです。
さて、その違いですが、ノンフィクション作家の井上博さんは、「日本人はカレーライスがなぜ好きなのか?」という本の中で、
具体的には、ライスカレーとはライスという主役の上にスープがのっかかっているというイメージで、カレーライスはカレーのスープが主役となっているイメージであると言っています。
昔はカレーにウスターソースをかけたというのはライスカレーだったかもしれませんね。
いずれにしても、今はライスカレーという言葉は聞かれなくなりました。
カレーライスが日本に入ってきたのは明治時代の初めです。
さて、カレーライスの作り方を見てみると、明治時代にカレーに使われた肉は鶏か牛肉だったことがわかりました。
江戸時代の日本では原則として肉食が禁じられていたからです。
実際には、鶏や野鳥、ウサギやイノシシなどをグスリグイと称して食べていたようですが、ごく稀にそれもこっそりとのことでした。
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カレーに牛や鶏が使われていたのは、牛は農耕用に、
鶏は農家にとって貴重な現金収入であった卵を取るために飼育されていたからです。
やがてそれらの役目を終えた牛や鶏がカレーの具材になっていったということです。
こんなわけで、当時の牛や鶏の肉はかなり煮込まないと固くて食べられなかったことが想像できます。
やがて日清戦争や日露戦争で軍が缶詰用に大量の牛肉を使った結果、市場ではたちまち牛肉が不足することになりました。
それまで沖縄など一部の地域以外でしか飼育されなかった豚の飼育が、それ以降奨励されるようになりました。
それから豚肉もカレーに使われるようになりました。
そしてまたジャガイモ、玉ねぎ、人参などの栽培も明治時代になってから料理の本に登場し、それらが一般的に使われるようになったのは明治時代も末期になってからと言われています。
このように明治の初めに我が国に入ってきたカレーが、限られた人々ではありますが料理されるようになったのは大正時代に入ってからと思われます。
そしてそのカレーが全国に広まったのは軍隊の影響が強いように感じます。
徴兵制度で日本中から兵隊として集められた若者が、軍で食べたカレーの味を覚えて田舎に帰り、それぞれの故郷で似たものを作ったからと言われています。
そして現在のようにカレーが国民食として愛されるようになったのは、学校給食にカレーが導入されたことも大きな力になりましたが、何よりもインスタントの固形ルーの発明が普及への大きな役割を果たしたと言えるでしょう。
肉と野菜を炒めて煮て、板状のカレールーを割って溶かし入れれば出来上がるという手軽さや、一皿でおかずとご飯、汁物を兼ねられる、そして何よりも白いご飯に合う、
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また材料に肉や野菜が入り、栄養のバランスも良いということが人々に受け入られていったのだと思います。
日本人がカレーを食べ始めて150年余り、その後もカレーは時代に合わせてどんどん進化していっています。
今日は、カレーの簡単な日本史について音声を収録しました。
最後までお聞きいただきありがとうございました。