映画「ユースフル・ゴースト」の紹介
この時間は日替わりコメンテーターが独自の切り口で、多様な視点を提案するCatch Up。 木曜日はクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんです。
今日はリモートでのご出演です。三好さん、おはようございます。 おはようございます。 おはようございます。
なんか今日も、すごい作品と出会ったっていうような感じの熱量の高さが、いつもに増して伝わってくるんじゃないかって感じするんですけど。
毎度毎度最高を更新している。 そうそう。今日は何を紹介してくれるんでしょうか。
はい、ちょっと今日は覚悟してお付き合いいただきたいと思いますけれどもね。
本日はですね、福岡では明日8月7日、金曜日よりKBCシネマで公開となります対映映画です。
タイトルがユースフルゴーストという作品をご紹介します。
はい、これ監督にとっては初長編作品となった作品だったんですけど、これがですね、
2025年、去年のカンヌ国際映画祭の非評価週間という部門でグランプリ受賞を始めまして、そこから各国映画賞もそうなめにしていきました。
で、先月東京から順次始まっているこの日本公開もですね、今、観客からのですね、すごい高い熱量を受けてのスマッシュヒットを今記録しておりまして、
さらには、先月ながら私のアジアンフィルムジョイント2026で、先月ね、監督のアフタートーク付きの先行上映を行わせていただいたんですけど、
その際にもね、やっぱね、ちょっとね、異様な熱気と感動で、観客席の空気がね、ちょっと一変する様子を目の当たりにしてきましたよ。
そうなんです。で、この映画、このユースフルゴーストというこの映画なんですけど、もうね、先言っときます、ものすごい変な映画なんです。
え?変な映画?
めちゃくちゃ変な映画。ちょっとこの後のあらすじに言うんですけど、めちゃくちゃ変な映画なんですけど、冒頭で言い切りますけどね、これ。
もうね、今後間違いなく数十年先まで、国際的な映画シーンにおいてタイ映画を代表する、もう新たなマスターピースとなることは間違いないですからね。
うーん、これは見なくちゃ。
さらには見押しにおいても、今年どころかここ数年に及ぶ傑作映画ランキングに鮮やかに踊り出た、破格の大傑作だと思います。
この間もなんかなかった?そういうのが。
まあね、濱口さんの。
そうそうそうそう。
濱口さんの急に豪愛が悪くなると、やっぱりこの作品が並び立つって、すげえ2026年だなと思いますけど。
本当ですね。
そんなことでね、この魅力をここからご紹介していきたいと思います。
あらすじと作品の奇妙な設定
はい、まずはこの映画、ユースフルゴーストのあらすじからご紹介していきます。
映画の舞台は、粉塵郊外が深刻化するタイ・バンコクです。
で、最愛の妻であるナットっていうね、女性がいるんですけども、この奥さんを亡くした、呼吸器疾患で亡くしたわけですけども、そのナットさんを亡くした青年、マーチというですね、男性がおります。
このマーチの元にある日、妻の魂を宿した掃除機が現れます。
変だ。
まず変なのが始まってきたね。
変ですね、やっぱり。
で、異なる姿になってもなお、お互いの愛を確かめ合う二人なんですね。
ちょっと待って、掃除機と?
掃除機とね。
片屋一方で、この青年マーチの家族が一族経営する家電製品の工場があるんですけど、この工場では劣悪な労働環境で命を落とした従業員の幽霊たちが工場の機械や製品に取り付きまして、
工場はもうね、今、創業停止にまで追い込まれているような事態になっているわけですね。
そんな状況を受けて、社会…犯罪を拒絶されたこの掃除機の姿をした妻ナットは、夫への真実の愛、そして自らを役に立つ幽霊だと署名するために、工場の助齢に協力することになるかっていうようなお話になっていきます。
なるほどね。
…って言うけどね、これだけ聞いても、もう一体何言ってんだ、三好と。大丈夫かっていうようなあらすじであることは、こちらも自覚しておるんです。
とにかく信じてください。ここから全く思いもよらない形で、おい、まさかそんな話だったのかっていうところまでたどり着きますから。
そして終わった後にはもう忘れがたい一本になっちゃったなっていう感じで、あなたの記憶に刻まれる作品になると思います。
さらには、脚本とか演出とか美術、あるいは映画が提示するそのやっぱりそのある種の時代性、あるいはそれが最終的に普遍性に至るまで、もうね、実はね、これね、全方位めちゃくちゃ資格のない一本であったっていうことに驚かされるような一本になっていきます。
監督と作品の背景
で、これ監督勤めたのは、ラッチャプーム・ブンバンチャーチョークというですね、一回ではなかなか名前覚えづらいかもしれないんですけど、このラッチャプーム監督、タイバン国出身で、ルーツには中国系の羊も持っているような映画監督で脚本家でいらっしゃいます。
で、現在はスタジオでフルタイムの脚本家として働きつつ、商業映画やテレビシリーズの脚本を手掛けていらっしゃるんですけれども、その傍らで大学で映画理論や脚本術も教えたりとか、あるいはまた映画評価としても活動している屈指のシネフィルですね、この人ね。
この人自身は、2020年に発表した短編の赤いアニーシーという作品があるんですけど、この作品がロカルの国際映画祭に選出されまして、短編・今編部門でジュニア審査員賞というのを受賞しましたというところから始まりまして、さらに2025年に初の長編作品となるこの映画、ユースフルゴーストを発表しているわけですけれども、
これが冒頭でも触れた通り、菅野国際映画祭の非評価集間でグランプリを受賞ということで、今後間違いなく映画界をリードする代表的な映画作家、かくたる実力と実績を持ち合わせた人物と紹介していいと思います。
ということで、ここから作品の魅力をもう少し深掘りしていくんですけど、何せ先月、監督ご本人と直接トークンをさせていただいたみよしなもので、ご紹介したい点は山ほどあるんです。
悔しいけど数点に絞ってお話をしていきたいと思います。
着想源と「掃除機」のモチーフ
まずは、この一丁すると、とにかく来て列にも思える物語なわけですよ。これがどこから着想されて、最終的に掃除機の幽霊という設定に至ったのかという話から、ちょっとしたいきたいと思うんですけど。
これね、監督がまず始めに着想源としたのは、タイに伝統的に伝わるメーナークというですね、民話があるんです。これね、階段話と言ってもいいかもしれないんですけど、これ夫への未練から妻が幽霊になって帰ってくるのだけれども、周囲から2人が再び愛で結ばれることを阻まれていくっていう、そういう悲劇なんですね。
ちなみにね、ちょっとこれも横道一瞬揃えるんですけど、この今回のユースフルゴーストで主演を務めた、タイの人気女優のダビカ・ホームという女優さんなんですけど。
めっちゃ綺麗な人。
そう、めっちゃ綺麗なの。人類じゃないみたいに言ってるんですけど。
この人は実は2013年に、まさしくそのメーナークの伝承話を元にした、愛しのゴーストっていう映画で、
見た!
メーナーク役をね、そうそうそう、勤めてもいた、そういう方で、そう、だからね、そういうことからもちょっとね、繋がりがあるようなキャスティングにもなる。
ダビカ・ホーム、また美しい幽霊役。
もうね、前以上に美しいよ、ちょっと驚きますよ、これね。
で、またちょっと話を本質に戻すんですけど、そういう監督はそのメーナークっていう、もともと民話を映画化するってことに、
例えば着想源にしたときに、今この映画を作るってなったときに、現代におけるその幽霊ってのはどういう人たちなのか、どういう存在なのか。
そして彼らの愛の関係をなぜ周囲から阻まれるのかっていうようなところから、まず物語を発想していったというわけです。
で、この古い伝承、このメーナークの幽霊のように人々から意味嫌われ、愛で結ばれることが阻まれるような人たちってのはどういう人たちなのかっていうことを考えた先に、
監督はまずそれは現代社会におけるクイアやLGBTQの人々が経験してきたものと何かしら重なるものがあるんじゃないかっていうふうに着想していくわけですよ。
そして、そんな彼らが周囲から迎え入れられるためにどのような存在であらねばならなかったのかっていうことで言うと、それは社会にとって善人というか、善なる役割を果たす存在。
ユースフルな存在。
そういうこと、そういうこと。周囲から愛され、認められ、その存在の有用性、ユースフルが承認される存在として順応していく。
その求めに応えていかなきゃいけなかった現実があるんじゃないかっていうことを見つけていくわけですね。
そこから本作はさらにそういったLGBTQに限らない社会の中で弱い立場に押しやられ、いつでも社会にとって意味ある存在であることやその役割を果たす存在価値の証明を強いられ続けてきた様々なか弱くて小さな人々たちを幽霊として召喚するっていう、そういう映画になっていくわけですね。
そこで掃除機なんです、これ。
なるほどってなるかな?
なるほどってならないんだけど。
本当に役立つものですよね。
何かっていうと、監督はこの映画に関するインタビューをいろんな映画祭とかで受ける中で繰り返し、やっぱりね、なんで掃除機だったんですかって聞かれるわけです。
ですよね。
これの中で改めてご自身も回答していく中で自覚を深めていったっていうお話の中で一つあったのが、英語では掃除機って、例えばこれバキュームクリーナーなんていうわけですよね。
当然日本でも掃除機、掃除する機械ってことになるわけですけど、これタイ語ではもうちょっと違う意味らしくって、これね、言葉ではホコリを吸う機械っていう意味の言葉なんですって。
ホコリがここで出てくるんだ、なるほど、そうか。
で、おまけにね、タイでは社会における庶民の人たちだったりとか、大きな声を持たない力のない人々たちを謙譲表現だったりするのかな、ホコリっていう例えで表現されることがあるんですって。
私はホコリみたいな存在なんで、みたいな。
みたいですね。
ということで、この物語ではそうしたホコリたる人々が、権力者から一掃されるその暗示として、掃除機っていうモチーフが呼び込まれたってことなわけですよ。
社会における現代の幽霊とホコリ、そこから繰り広げられる記憶と尊厳と抵抗を巡る物語になっていくってことで、本編を見ていただきたいわけですよ、これはね。
みたいなことでね、段々とこのお話の中でも、この映画が単なる飛び道具的な突飛な設定ではなくて、非常に練られた設定としてこういうものを取り入れたってことが理解されてきたと思います。
深いですね。
深いんです。
クイアの美学と表現スタイル
もう一つ触れておきたいのが、この本作のまさしくそういった表現スタイルなんですけど、そこには先にも触れたクイアの人々が持つ美学みたいなものがですね、非常に搭載されているってこともちょっと触れておきたいと思うんです。
ここで言うこのクイアの美学っていうことを、ちょっとここで精一杯表現してみるならば、それは既成の価値観や社会の当たり前に逆らって、時にはユーモアとかズレとか極端さとか過剰さみたいなものを表現を通じて、新しい価値観とか自由を表現するスタイルみたいなこととして言えるんじゃないかなと思うわけですけれども、
こうしたクイアの美学みたいなことを本作においてはですね、監督は映画を作り始める段階からこの映画では美しさと醜さ、あるいは美しさと下劣さみたいなものが同居するような作品にしたいと思ったっていうふうに語っているんですね。
この美意識が結果的に本作を他とは異なるめちゃくちゃ強力な作品に仕立てているというふうにも感じましたね。
これは映画全体がね、そもそも本来のテーマを持っているその重厚さみたいなものと比して、このとっぴな飛行機、掃除機幽霊の設定を持ってきているわけですよ。
みたいなことでもやっぱり非常に美しさと何かみたいな感じになっていくわけですけれども、あるいは劇中いろんな場面で画面で起きている極端な場面と、あるいはその絵面と、その実観客の内面で引き起こされる驚くほど真っ直ぐで切実なエモーション。
みたいなものがコントラストを持ちながら、観客自身もたぶん驚きながらもグイグイ持っていかれるような独自の鑑賞体験が実現しております。
ちょっととんでもないですよ、この映画ね。
作品の推薦とパンフレット
ということで、絶対にご覧いただきたいこの映画、ユースフルゴーストなんですけど、もし年に数本しか映画を見ないというリスナーの方がいるんだったら、そのうちの一本はこの映画にください。
実質保証も添えてお勧めさせていただきますよ。自分が先行上映で実際に本作をいち早く観客に届けさせていただいた立場からも言えることなんですけど、僕の上映の時にもまさしく普段、映画を年に一本しか見ないというお客さんがいたんですよ。
その人がたまたまこれを見に来てくれたんですけど、その方も鑑賞直後にまず僕に熱量を持って、この映画本当に見れてよかったですって言ってくれただけではなくて、さらに事後に長い感想メールまで送ってくれたんですよ。
この映画は本当にそんなふうに驚くような形で、全く意図を超えた形で、どんなお客さんにも届いてしまうくらいの、めちゃくちゃ足腰の強い映画だと実は思ってます。
この映画をご覧になって、もし劇中で暗示される、大の様々な社会背景とかその現実も暗示的に描かれるんですけど、そういうことに興味を持たれた方がいらっしゃったら、ぜひこの映画の劇場パンフレットも全力でお勧めしておきたいと思います。
私、映画パンフレット、かれこれも30年以上買い続けている人間なんですけど、そんな三好が言いますけど、これ、お世辞抜きにここ数年で見た中で一番よくできている最高の鑑賞ガイドになるパンフレットだと思いました。
ということで、ぜひ合わせてチェックいただきたいと思います。
ということでね、ここに来てね、こんなに魅力的で圧倒的な作品紹介できる中、やっぱり映画見続けとくもんだなと思うわけですけれども、はい、ということで、本日はタイ映画ユースフルゴーストをご紹介しました。映画は明日8月7日金曜日よりKBCシネマで公開スタートです。
見下しの言葉を信じてくれるこの番組のリスナーの方には、2026年必修作品として全年質量、全体重をかけて全力推薦させていただきますということで、くれぐれもお見逃しなくというご紹介でございました。
夏休みの宿題が出ました。ぜひ皆さんもご覧いただきありがとうございます。
皆さんありがとうございました。
ありがとうございました。