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オースター『バウムガートナー』
リチャード・フラナガン『第七問』
トリスタン・ガルシア『7』
トマス・リゴッティ『悪夢工場』
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サマリー
本放送では、暗黒編集者のOkubo Junが3月に読んだ海外文学の中から4作品を紹介する。まず、ポール・オースターの遺作『バウムガートナー』は、老哲学者が亡き妻の詩集を整理する中で、老いや喪失と向き合う静謐な物語。次に、リチャード・フラナガンの『第七問』は、父の戦争体験を辿りながら、H.G.ウェルズや物理学者レオ・シラード、広島の原爆投下、カート・ボネガットなどを引用し、愛とは何かを問う重厚な作品。トリスタン・ガルシアの『7』は、7つの中編からなり、アイデンティティや記憶、人生のループといったテーマをSF的な奇想で描く。最後に、現代ホラーの大御所トマス・リゴッティの『悪夢工場』は、ラブクラフト的な不気味さや異様な世界観を持つ短編集で、今後の翻訳展開に期待が寄せられる。
はじめに:語ぶるいジャーナル第4回
特殊カルチャープログラム NOIZ NOIZ NOIZ FM パーソナリティの暗黒編集者 OkuboJunです。
本日は、トークプログラム 語ぶるいジャーナルの第4回をお送りいたします。
語ぶるいジャーナルは、暗黒編集者 Okubo Junが、本の話を中心にお話ししていく番組でございます。
今日は、もう3月どころか、4月も下旬に入ってしまって恐縮なんですけれども、
3月に読んだ本の中から、海外文学が面白かったものというのを、いくつか紹介していきたいと思います。
ポール・オースター『バウムガートナー』
まず1冊目がですね、ポール・オースター 『バウムガートナー』 柴田本幸役新庁舎
ポール・オースターについては、昨年SSと鈴木直さんとやっている
ドリンカーズ・リーディング・クラブというYouTube番組の方でですね、
4・3・2・1という、大変分厚い小説を紹介したところでもあるんですけれども、
その時点でね、オースターがなくなったばかりのタイミングだったんですけれども、
今回ご紹介するのは、その後刊行されたポール・オースターの遺作になります。
主人公が70歳の哲学者で、バウムガートナーというのはこの主人公の名前ですね。
奥さんが編集者兼翻訳者だったんですけれども、奥さんはもう何年か前に亡くなっているということで、
彼女が残した大量の詩の原稿というのがありまして、
これをバウムガートナーはセレクトして出版しまして、結構反響があったみたいな感じの状況です。
自身の反省を振り返ったり、一族の歴史とかですね、奥さんの人生なんかを振り返るというのと、
並行してその主人公である老哲学者の生活みたいなのが綴られていくというようなものになっておりまして、
4・3・2・1はもう本当にものすごい分厚い本で、かつすごい大きな仕掛けがあったりするような本でもあったわけなんですけれども、
今回の本はそういうものではなくて、本当に大きな仕掛けもないですし、ページ数も少ないものなんですけれども、
何というか淡々と老いとか体の衰えみたいなものに向き合った感じの小説というような感じで、
しみじみといい小説だと思います。
終盤で若い女子大生がコンタクトしてきて、奥さんの書いた詩というのをすごくよかったので、今研究していますので、
未発表原稿がないでしょうかみたいなことを言ってコンタクトしてくるんですけれども、
そこに村上春樹だったらここで恋しちゃったりするんじゃないかみたいな気もするんですけれども、
そういうこともなく、娘ができたみたいな感じでサポートしていくとか、そういうあたりもなかなかよかったなと思いました。
リチャード・フラナガン『第七問』
続きましてリチャード・フラナガンの第7問。
こちらは渡辺幸江役で白水車ですね。
こちらも自分の人生やルーツみたいなものと向き合った本ということでは共通しているものがあります。
このリチャード・フラナガンという作家は僕は今まで読んだことがなかったんですけど、
過去にも結構何冊か白水車から本が出てまして、基本的にどれも渡辺幸江役なのかな。
渡辺幸江役で白水車といえばね、僕の世代なんかだとキャッシー役家のイメージが強いわけなんですけど、
このキャッシー役家という人もね、チミドロ増木津ハイスクールという代表作が何年か前に復刊されたんですけど、
ちょっとそれ以外の小説も復刊してくれないかななんて思ったりもしてるんですけど、
それは忘れておきですね、この第7問という小説、小説なのかな。
ともそも小説ともエッセイともつかないような本というところがあるんですけども、
まず語り手はフィッチャード・フラナガン本人と母式人物です。
オーストラリアのタスマニア出身の方なんですけど、父親はかつて日本軍の捕虜になっていたと、
本当に奴隷労働をさせられていたみたいなことがルーツにあるわけなんですね。
その日本の地を訪ねて、その地のいたところを訪ねるというところから始まってですね、
特に日本人を非難するとかそういうわけではないんですけども、
ただやっぱり迎えてくれる日本人とはいまいちかみ合わないみたいな、
そういう感じのところから始まります。
父のことを書くというのがまず一つあるのと、
合わせて自分の反省というのを振り返っていく。
ここまでは自分と父のことを振り返るみたいな感じなんですけど、
それだけでなくですね、HGウェルズというSFの元祖みたいに言われる作家ですけれども、
このウェルズの開放された世界という小説が非常にここから重要になってきます。
これというのは核戦争を予見した本なんですけど、
そもそもこの本が刊行された時点では原子力エネルギーというもの自体が実現していなかったので、
何を言っているのかわからないみたいな扱いを受けていたようなんですね。
まともに取り合ってもらえなかったというか。
それを書いたウェルズの表現みたいなもの、
それも結構、執筆投資のロマンスみたいなことから始まって、その後のウェルズの反省みたいなものが綴られていく。
それと合わせて、この開放された世界を読んだ物理学者レオ・シラードという人が出てきます。
この人はこれを読んで、核兵器というのも実現可能だと確信するわけなんですね。
第二次世界大戦にあたってナチスにこれを作らせてはいけないということで、
アメリカ政府に掛け合ったりしまして、これがマンハッタン計画につながっていくと。
なんですけども、いざ原爆が本当にできちゃったとなったら、これを実際に使わせてはいけないということで、
アメリカ政府に掛け合って原爆投下を食い止めようとするんですけども、これは結局失敗に終わるわけですね。
というようなレオ・シラードの反省みたいなものも綴られていきますし、
さらには広島に原爆を投下したB-29の乗組員たちの話みたいなものも描かれていったりして、
さらにはカートボネガット、スローターハウス5、これはドレスゼンの爆撃というのが題材になっているSFなんですけど、
カートボネガットの引用なんかも絡んできたりという感じで、歴史だったり文学的な引用だったり、
いろいろと織り重なっていくような形になったものになっていきまして、これが終盤にどんどん集約していく。
タイトルの第7問というのはチェホフの引用になっていまして、チェホフの書いた文章で、
数学の試験問題のパロディみたいなやつがあって、一見数学の問題っぽくなっているんだけど回答不能、ナンセンスみたいな、
そういうものはいくつかあるらしいんですけど、その中の第7問として、
1881年6月17日水曜日、ある列車がA駅を午前3時に出発して、B駅に午後11時に到着する予定でしたが、
出発直前になって、午後7時までにB駅に到着せよとの指示がありました。
より長く愛するのは誰でしょう。男でしょうか。それとも女でしょうか。
これがチェホフの第7問になるわけなんですけれども、
より長く愛するのは誰かというのが本全体のテーマになってくるという、そういった感じの本であります。
これは重厚ですごい良かったと思いますので、こちらもおすすめです。
トリスタン・ガルシア『7』
続きまして、タイトル7つながりみたいな感じで、
トリスタン・ガルシアの川出処方針社、高橋慶役というのも面白かったですね。
この高橋慶さんという人はフランス文学の翻訳をやっている方で、ローランビネの翻訳をやっている方ですけれども、
今回のトリスタン・ガルシアの7というのは、
これは7つの短編集というか、ちょっと長めなので、中編と言ってもいいくらいのものですね。
7つの中編が収録されています。
著者は、本業は哲学者というか、文学と哲学、どっちが本業なのかわからないんですけれども、
文学者でもあり哲学者でもあるという感じの人で、哲学の方でも翻訳も何冊か出ているようです。
僕は読んだことないんですけれども。
7つの作品が入ってまして、
これもアイデンティティにまつわる本みたいな要素が強い1冊ですね。
SF寄りの奇想小説集みたいなもので、
例えば赤帰りのドラッグというのが出てくるやつがありまして、
これは過去の自分になれるみたいなドラッグなんですね。
それが大流行すると。
過去の自分になれるというのはどういうことかというと、
人間の記憶というのは、
過去、例えばその薬を飲むと何歳の時の自分みたいに内面が戻れるというものなんですね。
それが大変流行していくんですけれども、
一方でうつっぽい自殺傾向になった人がその頃に戻って自殺してしまうみたいな事件が起こったりとか、
いろいろ問題も出てくるというようなものだったりとか、
あとはかつて革命を夢見た女性というのが主人公で、
この人が夢と現実がクロスしていくみたいな感じで、
1973年に革命が成就した世界というのと、
今現在の現実の世界というのは平行してというか、ごっちゃになっていくみたいな、
そういう小説があったりとか、みたいなことがあり、
最後、7編あるうちの7つ目が第7という中編で、
今回この本に収録されている中では一番長い小説なんですけれども、
これはですね、ループものというかですね、
死ぬとその記憶を持ったままもう一度生まれ直して、
その人生をやり直すという男が主人公。
一回目は普通に人生を送るわけなんですけれども、
二回目では一回目の恐怖があるので、ちょっとうまくいくようにしようとしたり、
あとは別な時には世の中を良くしようとしてみたり、
何回かやっていくうちに、どうせ何回やってもダメなんだみたいな感じで、
諦めムードみたいになったりしていくというような感じで何回も生まれ直すというものですね。
これが自分はその記憶を持っているので、
どうせ死ぬけどまた生き返るんだみたいな感じのムードになってくるわけなんですけれども、
自分の人生に出てくる他の人たちですね、
特に毎回重要な役割で出てくる運命の恋人みたいな人と、
運命的な親友みたいな存在がいるんですけれども、
この二人が途中で死んだりしても、
君たちもどうせまた生き返るんだからと思っているわけなんですけれども、
ただ生き返ると思っているのは自分だけで、
相手にしてみればこの人生というのはその時限りなわけですよ。
その記憶を持たずにもう一回生まれてくるというのは、
本当にその人なのかみたいな問題みたいなのもあって、
そういう哲学っぽい問いみたいなのも関わってくるようなところのある小説になっているんですけど、
ただ哲学者だから哲学っぽい小説を書いているのかなという気もしつつ、
SFって結構ね、そもそもこういうものを扱ってきたジャンルでもあるなというところでもありまして、
そういう意味ではそれこそ典型的なフィリップ・K・ディックとかですけど、
そういうSFらしいSFであるとも言えるなという気がします。
ちょっと奇想的なものということで言うと、
トマス・リゴッティ『悪夢工場』
もう一冊ご紹介したいのがトマス・リゴという悪夢工場ですね。
こちらは岡嶋忠変役川出処防審者。
これは海外では非常に有名な現代ホラーの大御所みたいな作家なんですけれども、
単独で本という形で翻訳するのは今回が初めてということです。
同名のこの悪夢工場、ザ・ナイトメア・ファクトリーという著者辞選の短編集というのが海外では出てまして、
40数作入っているということなんですけれども、そこから9作をセレクトして収録したというのが今回の悪夢工場になります。
作品のセレクトとほとんどの翻訳を岡嶋忠さんがやっておりまして、
岡嶋忠さんというのはナボコフの翻訳で非常に有名な人ですけれども、
今実は岡嶋先生がナボコフの読書会というのをオンラインでやっていて、
以前から興味あったんですけれども、先日初めて参加させていただきまして、
これは面白かったので今後も参加していこうと思っているんですけれども、それはそれとしまして、
このトマス・リゴティは9編中7編は岡嶋忠役、
もう2編は雑誌化アンソロジーのとなり、過去に翻訳が出ていたものというのがありまして、
それに関しては初出時の翻訳者によるものになっています。
現代ホラーの大御所みたいなのも、スティーブン・キングと並び称されるくらいの存在なんですけれども、
まずこの想定の話からちょっと触れていきたいんですけれども、
これがまず赤字に黒い文字で書かれていまして、もう表紙が真っ赤なんですね。
さらにこの小口まで真っ赤に塗られていて、本当に手に取ると赤い塊みたいな感じになっていて、
この時点でちょっと怖いというものです。
9編全部紹介するのもあれなんですけれども、
例えば冒頭に載っているタワムレという小説は、刑務所で働く男が主人公で、
この人がサイコパス的な殺人犯に非常に悩まされている。
この夫の仕事というのはあまり良くないと思っている奥さんというのがいまして、
この夫婦の会話というもので、これなんか割と古き良き、怪奇、幻想文学、怪奇文学という感じの趣のある一編です。
あとは道化史の最後の祭りという短編がありまして、
これはいわゆるウィッカーマンとか、最近で言うとミッドサマー的な田舎ホラー的なやつなんですけれども、
主人公は道化史の研究をしている学者で、自らも道化史をやったりしている、ジャグリングみたいなことをやったりしているという人ですね。
この人が変わった道化史である祭りがあるというのを聞いて、どいなかの村を訪問する。
そうすると確かに道化史というのはいるんですけれども、何か様子がおかしいみたいなところからどんどん異様な世界に突入していくというものですね。
これなんかかなりラブクラフト的な感じのあるものです。
このトマス・リゴっていう人は、そもそもはラブクラフトのファン人出身みたいな作家だそうなので、
やっぱりそのラブクラフト的な要素というのは随所で感じさせるものがあるんですけれども、
今紹介した2作なんかは、収録作の中でも比較的わかりやすいものなんですけれども、
物によっては何が起きちゃうんだかよくわかんないけれども、とにかく気味が悪いみたいなものもあったりしてですね。
何か得体の知れないというか、底知れない不気味さを持った作家だなというふうに思いました。
これはやっぱり続けて読みたいと思いますので、
この悪夢工場がまずはぜひ皆さん読んでいただいてですね、
他の本もどんどん翻訳出してほしいという機運を盛り上げていきたいなと思うので、
これはもうぜひ皆さん読んでくださいという感じです。
まとめと今後の展望
というような感じで、3月に読んだ海外文学から4作かな、紹介いたしました。
以前まで読んだ本全部紹介しようかなと思ってたんですけれども、
それもあんまりこれ紹介してもらえないみたいなのもあったりしますし、
あとは何のつながりもなく、ただ読んだ本7冊とか並べても聞く方もあんまりかなという気もしますので、
こういう感じである程度テーマを絞ったりしてやっていってみようかなと思います。
ご意見ご感想など概要欄にお便りフォームとかも載せておきますので、
こんなテーマでしゃべってほしいみたいなことですとか、
あとはご自身のこれらの本についての感想などもありましたらぜひお寄せいただけるとうれしいです。
ということで今日はこんなところで終わろうかなと思います。
ちょっと間が空きましたが、これからはまたコンスタントにやっていきたいと思いますみたいなことを言いつつ、
どうせまた間が空くみたいなのが自分のパターンではあるんですけど、
なるべくそういうことのないようにやっていきたいと思います。
ということでApple、Spotify、その他Podcastサービスで聞かれている方はよろしければフォローしていただくとかしていただきまして、
引き続きまた次回の更新を楽しみにしていただければと思います。
ということで今日はどうもありがとうございました。
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