本題に入る前に、まずもち子さんに一つ質問に答えてもらいたいと思います。
まずこちらの画像を見てほしいんですけど、もち子さんこの紫の画像見えますかね。
はい、見ております。
ここに形で言ったらメタモンみたいなグニャグニャっとした形と、スターミーとかスタフィーみたいなちょっとトゲトゲした形の絵があります。
リスナーの皆さんもサムネに載っけておくので、見ながら考えてほしいんですけど、これどっちかがキキっていう名前で、どっちかがブーバっていう名前なんですけど、どっちがブーバだと思います。
ブーバは左のメタモンっぽい方じゃないですか。
なんかグニャグニャっとした柔らかそうな方がブーバだと思いますよね。
そうですね。
で、当然このトゲトゲした星みたいな形してるやつをキキだと思いますよね。
そうですね。あえてどっちか名付けようと言われたらそういうふうにします。
で、これ面白いことに、世界中のどの言語の話者でもメタモンみたいな形をしてる方がブーバで、トゲトゲした方がキキだっていうふうに答えるんですよ。
で、これブーバキキ効果とか、あとマルマとタケテみたいなのである人もいるんですけど、ブーバキキ効果と一般的には心理学の世界とかで呼ばれています。
これ何が面白いかっていうと、自分の母語に関わらずなんとなく丸っこい形をしてる方がブーバっぽいし、なんとなくトゲトゲしてる方がキキっぽいよねっていうのが、全世界全人類に共通してるっていうのがちょっと面白い話だよねっていうふうに言われてて、
こんなふうに特定の音が特定の形とかイメージと結びつく現象を音象徴、音の象徴、シンボルですね。
英語で言うとサウンドシンボリズムとか言ったりするんですけど、音象徴っていうふうに呼ばれていますよと。
他の例で行くと、例えばクレヨンしんちゃん見たことあります?
クレヨンしんちゃんにアクション仮面と一緒にもう一個出てくる緑色のロボットがいるんだけど、あれしんちゃん何て呼んでるか知ってる?
分かんない。
分かんないです。
あれしんちゃんの中ではカンタムロボット呼ばれてるんですよ。
おおもとあれ多分ガンダムだと思うのね。
ガンダムって言われるとなんか強そうな感じするけど、カンタムって言われるとしょぼい感じしない?
しょぼい感じします。だいぶ弱そうな感じがします。
だいぶ弱そうな感じするよね。
あと日本語のオノマトペなんかも結構音象徴とか変わってて、
例えばコロコロとゴロゴロを比べるとゴロゴロの方がなんか大きいものが転がってる感じがするよねみたいな。
特定の音とか特定の音のタイプっていうのが音とか形のイメージに結びついてるよっていうのが音象徴っていうふうに呼ばれてるわけですね。
ここまで大丈夫でしょうか。
大丈夫です。なんとなくイメージ通りなんというか、確かにって感じはしますね。
この音象徴っていうのがポケモンの名前にもあるんじゃないっていうふうに言い出したのが河原先生なわけですよ。
河原先生と当時河原先生の学生さんだった熊谷学次さんかなっていう方が一緒に研究されて、
2016年にサウンドシンボリックパターンズinポケモンネームズ、ポケモンの名前における音象徴のパターンっていう論文を出して、
これが結構言語学の世界でバーンって売れたというか。
すごいですね。学生の期末レポートとかじゃなくて、ガチの論文として出てるっていうのがなんかすごいですね。
そうなんですよ。これ国際ジャーナルに載った論文なので、リンクを概要欄に貼っておきたいと思います。興味ある方はぜひ見ていただきたいんですけど、
英語で書かれているので、日本語でやられた追実験なんかの論文もありますので、そっちもちょっと貼っておこうと思いますが、
このポケモンの名前を使ってどういう音象徴の効果があるかっていうのを調べたのがこの論文だったわけです。
感覚的に言うとさっきのカンタム、ガンダムと同じで、ガブリアスって言われたら強そうだけど、カプリアスって言われたら。
すごい弱そう。
なんかあんまり攻撃力高くなさそうだよね。
600族じゃなさそう。
とか、ゴローンは強そうだけど、コローンだと。
3段進化の1個目な感じがします。
するよね。みたいなのも、この感覚って結構日本人、我々みんな持ってると思うんですよ。ポケモンやってきた世代は。
はい。
ですよね。ありますよね。その感覚。
あります。
これをポケモンの大きさ、ポケモンって身長とか体重とかちゃんとポケモン図鑑に記録されるじゃない。
あの数値とか、あるいは強さ、攻撃とか防御とか特効とかあるよね。
はい。
ああいうのと特定の音に相関関係があるのかっていうのを、統計学を使ってやるっていうすごい高派な論文なんですよ。
真面目にやったってことですよね。
めちゃくちゃ真面目にやってます。
実際の論文見ていただくとわかるんですけど、めっちゃグラフとか統計の計算とかがきちんと出てきます。
ポケモン図鑑を眺めながらポチポチ遊んでるわけではないという。
この実験参加したいな。
それで見つけた発見に大きく4つありまして、今日はその4つを簡単にご紹介しようかなと思ってます。
まず河原先生たちの発見①。ポケモンが大きくなれば大きくなるほど、名前に含まれる濁音が増える。
はい。それは何でしょう。そうですよねっていう感じがしますね。
言われれば当たり前な感じするでしょ。濁音って専門用語だと有性素外音って言ったりするんですけど、ガギグゲゴとかダジツデドとかが増えていくってことですね。
もう一つ発見②。ポケモンがでかくなるほど名前に含まれる文字数が増える。
要は名前が長くなるってことですね。
リザード、リザードみたいな。
そう。とかコドラ、あれコドラは。
コドラ、ココドラ、ボスゴドラです。
コドラ、ココドラ、ボスゴドラみたいに長くなるし、今のは良い例で濁音も増えてるよっていう風にポケモンが大きくなると名前の数が増える。
名前の文字数が増える。
2段、2回進化する子だと特に顕著かもしれないですね。
そうだね。
キギギギギギギギギあるっていうものもあります。
ギいいるだけや。良い例だよね。
みたいに名前の文字数が増えられる。
この名前の文字数は音の世界ではモーラ、ハクって呼ばれていて、
専門用語でいうと名前のモーラ数が増えるって言ってますね。
カワラ先生たちは。
モーラって何?って言われたらすごい分かりやすく言うと、
昔あったグリコのゲームですよ。
じゃんけんして、グーで勝ったら3段。
で、パーで買ったらパー、イーナー、ツープール、だから6段。で、チョキで買ったら、みなさん多分チヨコレイトってやってて6段に進んだ人が多いと思うんですけど
モーラ的にはチョコレイトで5段ですね。
あ、なんか諸説ありますね、そこはね。自分が買ったときはチヨコで行きたいし、みたいな。
まあでも一応、グリコの音をイメージしてもらえればわかりやすいと思います。
名前に含まれるモーラ、箔の数が増えるよっていうのが発見2でした。
発見3、今のはポケモンの大きさ、身長、体重だけで言ったんですけど、
そうじゃなくて、さっきのコドラ、ココドラ、ボスゴドラとか、ゴース、ゴースとゲンガーみたいなケースを考えたときに、
進化前と後で比べると、進化した後の方がダクオンの数も増えやすいし、それが発見3。
発見4は進化した後の方がモーラ数が増えるよねっていうのが発見4だったわけです。
あれですね、基本進化すると大きくなっちゃうんで。
面白いのが、大きくなったときに音の数が増えたり、ダクオンが増えたりっていうことをすることで、
あ、このポケモンでかくなったっていう感覚を我々持っている。
多分ゲームフリークの人、言語学できない、知らない人多いと思うんで、
その名前をつけたゲームフリークの人が感覚的にそれをやってるってことがすごいよねっていうのが、この論文の示してくれたことなんですよね。
そうですよね、強く大きく感じられるだろうから名前文字数増やそうぜっていうふうにつけてるわけではなさそうですもんね。
そうなんですよ。
なのでそれがすごく面白いところであるわけです。
これ論文としてもちろんポケモンの研究をしたっていうのはすごく面白い話なんですけど、
実は結構世界中の言語学者にインパクトを与えていて、
まずインパクトその1、この論文が出たことによっていろんな国の大学生が言語学、特に音声学やってみたい、ポケモナスティックスやりたいっていうふうに沸き立ったんですよ。
いいことですね。
僕らもね今こうやってラジオでやってますけど、こういうアウトリーチ活動って言ってその一般の人々に我々こういうことを研究してますよとか研究分野こういうことやってますよって広めていく活動があるんですけど、
それをやるっていう上でものすごいキャッチだったというか、非常に大きなインパクトを与えた。
実際これ最初は川原先生と熊谷さんともう一人の方、ごめんなさいちょっと名前忘れちゃったんですけど、でやられたこの最初の研究がもういろんな言語のポケモンの名前でやられるようになり。
確かにポケモン海外で名前変わることありますもんね。
そうですね。バルバサールみたいな不思議なことなんですけど、そういうの英語でやりました、ポルトガル語も見てみました、ロシア語を見てみましたみたいにいろんな言語でポケモナスティックスをやってみようっていうムーブメントがあったんです。
これがまずインパクトが大きくて、でその他にも実際これは川原先生がやられた研究ですけど、ドラクエの呪文で同じことをやってみたりだとかっていうことで、
温床長の研究っていうのをすごく推進した。
まあ確かに他もやりたくなりますもんね。他のそういう戦隊ものとか、なんかそういうのが出てくるところも見てみたいくなりますもんね。
そうなんですよ。でまずこれがインパクトその1。
もう一つ大きなインパクトがあって、ここちょっと話が難しくなっちゃうと思うんですけど、
我々がやってる言語学っていう世界の中では、ソシュールっていう哲学者と言ったらいいのかなの人のお話が結構影響力が強くて、
そのソシュール先生が何を言ったかというと、音と意味のつながりっていうのは詩的だっていうふうに言ったんですよ。
詩的って英語でアービトラリネスとかって言ったりするんですけど、要はどういうことかっていうと、例えば犬っていう生き物がいたときにこの犬という生き物を犬っていう音で呼ばなきゃいけないっていう
理由はどこにもないよねっていうことなんです。わかります?
だからその、わかります。なんかたまたまその音が当てがわれていただけであって、これがこう絶対犬って呼ばなきゃいけないっていうふうになっちゃうと、翻訳もできないですし。
そうなんですよ。だから逆にひっくり返して言うと、言語の音と意味っていうのが詩的じゃなかったら、どの言語でも犬は犬じゃなきゃいけないはずなんです。
大変なことになりますよね。
だから日本語ではたまたま犬っていう音をその生き物に当ててそういう名前をつけただけ、英語ではドッグっていう音を当ててその名前をつけただけ、スペイン語ではペロっていう音を当ててその名前をつけただけっていうふうに、そこに意味と音の関係に必ずこの音じゃなきゃいけないっていう理由はないよねっていうのが、まあみんな信じてることというか、前提だった。
だからアという音には別にアという意味がないというか、そういう理解であってますかね。
例えばここにコップがありますけど、これをアって呼ばなきゃいけない理由はどこにもない。
別にコップって呼ぶ理由も、たまたまそうなっちゃったから、でも急に明日からそのコップのことはキップって呼びますみたいにならないですけど、別にキップって呼んでも自分キップ派なんでみたいな。
ポケモンのポケモナスティックスの研究、ポケモンの名前に含まれる音っていうすごくポップな研究が、いやいやちょっと待てよそんなことないじゃないかと。
特にこのポケモンみたいに新しいものに名前をつけるとき、我々はその音に特定のイメージを結びつけてるよねっていうことを示したっていうのが、結構研究士の中でもセンセーショナルだったというか、面白いよねっていうふうに再注目されたっていうところで、非常に有意義な論文だったっていうのが、言語学者としては面白いところなわけですよね。
ちょっとそのソシュールさんがだいぶ定説だったと思う。むしろ前提ぐらいの、それを前提としないと始まらんぜぐらいだったと思うんですけど、ちょっとそこがこう由来だみたいな感じなんですか。
必ずしも、もちろん川原先生もそこまで強い言い方はしてなかったと記憶してるんですけど、恣意的ではないって言ったときに、そうじゃなきゃいけないとも言ってないよねみたいな。
じゃあその成立率100%じゃなさそうだぞと。
そうそうそう、そういうことです。恣意的である部分もあるよねみたいなことを、このポケモンというポップカルチャーが示しているっていうのが、すごく面白かったポイントなわけでございます。
はい、リスナーの皆さんももち子さんも第10世代やるときに、ちょっとチェックしてみてください。はい、では今日の1015日の原学はこんなところで、次のコーナーに行ってみましょう。
もち子の持ち込み。
このコーナーではリスナーの皆さんが日常生活で発見した、奇妙な言い回し、新しい若者言葉、謎のビジネス用語、そんな日常にあふれる不思議な言葉遣いを収集し、けいさんに分析してもらうコーナーです。
さて今日はもち子自身が持ち込んだ疑問についてお伺いしたいなと思っております。
けいさん、単刀直入に聞きますが、日本語は世界で一番難しい言語なのでしょうか。
なるほど、単刀直入な質問ですね。これまたよく話題になりますよね。
はい、よく言うじゃないですか、こう難しいとか、いろいろことしやかに言われることがあるかなと思っております。
でも日本人からしたら、いやいやいや英語の方が難しいよとか、ドイツ語の方が難しいよとか、中国語の発音わけわかんないよっていう風に苦戦している方も多いと思いますし、
でも外国の方からすれば日本語のもうトリッキーなところよくありますよね。日、日曜日っていうやつで、今日は日曜日でみたいなのだと、何個読み方あんねんみたいなのがあったりっていうところで、
難しいなと思う瞬間も、日本人でも多々あるかなと思います。で、なんかそういう風になった時に、言語学者の視点ではどういう風に捉えていらっしゃるのかなと思って聞けたらと思いました。
なるほど、わかりました。まずその日本語が世界一難しい言語かどうかっていうところなんですけど、文法体系の話でいくと、実はそうでもないんですよね。
そうなんですね。
例えば母音は日本語だったら、あ、い、う、え、おの5つしかないですよね。で、英語になるとこれが9から方言によっては16ぐらい母音があるっていう風に言われたりとか、
えの口であというみたいなやつがあったりする。
そうですそうです。とか、少なくても7とか9とか言われたりするし、っていうところがあるので、音の体系だけ見ても全然英語の方が難しいと僕は思います。
で、文法体系を見てもよくやりますよね。高校の英語でもやったことあると思うんですけど、SVOとかあるじゃないですか。
で、あれって結局主語と動詞と目的語っていう文の要素をどういう順番で基本的に並べますかっていうお話なんですけど、
日本語とか韓国語とかトルコ語とかっていうのは基本的にSOV主語目的語動詞って並べる言語なんですね。
これが全世界の言語の45%ぐらいを占めていて、ついで多いのが英語タイプSVO、英語とかドイツ語とか、ドイツ語はちょっとごめんなさい、ドイツ語は良くなかったな。
英語とかフランス語とか主語動詞目的語っていう風に並べる言語っていう風に言われているので、
世界中の言語の割合から見ても特別日本語の文法が難しいとは言えないと思うんですね。
なるほど、普通なんですね。
そう、普通なんです。割とありきたり。
その音の話に戻っちゃいますけど、例えば音も常にシーンボイン、シーンボイン、シーンボイン、シーンボインっていう並びしかないし。
確かに、喉の奥からよくあるじゃないですか、ゲップのような音を出してみたいなとか、下打ちみたいな音とかも入ってこないですもんね。
ないですね。下打ちは良い例ですね。アフリカの言語なんかだと下打ちみたいな音を使う言語もあったりするので、そういう意味でもすごく特殊な発音があるとかっていうわけでもないので、
文法の側面だけ、話し言葉としての文法の側面を見たときは、すごく難しい言語があって言われたら、そうでもないっていうのが多分言語学者としては正しい回答なんだと思います。
なるほど。
じゃあ、その日本語ってめっちゃ難しいよね、世界一難しい言語だよねって話がどっから来たのかって話なんですけど、
おそらくこれはアメリカの国務省の外交官養成機関がありまして、FSIとかって呼ばれてるのかな。
Foreign Service Instituteって呼ばれてるんですけど、そのFSIっていう機関が英語がネイティブの人の外交官を各地に送るときに各地の言語を喋れるように教育するわけじゃないですか。
それにかかる機関を4つぐらいのカテゴリーでまとめてるらしいんですよね。
で、その英語ネイティブの人にとって習得しやすいものがカテゴリー1、ちょっと難しいのがカテゴリー2、結構難しいのが3、めっちゃ難しいのが4みたいになってるんですって。
で、それで日本語がカテゴリー4に入ってるっていうところからどうも来てるんじゃないかと。
へー。
という話で、おそらくそれで日本語が難しいっていうふうに言われるのは、一つは文字体系が複雑。
表記ですかね。ひらがなとカタカナと漢字と。
そうです。漢字も1月1日の日曜日は元日で、みたいにこう読み方がいろいろある。
日本人が小学校から高校まで12年とかかけてギリギリ習得できるかいなかレベルの難しさですもんね。
そうなんですよ。なので、そういう文字体系の複雑さっていう視点から見ると、確かに日本語は英語とかアルファベットを使う言語に比べたら難しいっていうことは言えるかなっていうふうに思いますね。
確かに何文字あるのって言われたら、ひらがなとカタカナの数はわかりますけど、漢字まで入れたらわかんないですもんね。
そうですね。小学校で学ぶのが1000くらいとかですよね。
で、中学校でそれがプラスで1300くらいになって、で、高校まで行くと1600くらいとか、常用漢字がそんくらいみたいな感じですよね。
本当にひらがなカタカナを合わせたら2000くらい。で、ちゃっかりアルファベットも使うじゃないですか。
って思ったら、大文字小文字合わせて52個だよっていうところからすると、本当にそこの量と複雑さっていう点では桁違いに難しいのかなと思いました。
そうですね。だから英語がネイティブの人が勉強するのに難しい言語かって聞かれたら、それはある意味ではイエスかなと思います。
ただ音声言語として世界一難しいかと言われたら、それはノーかなっていうふうに思いますね。
なるほど。ありがとうございます。よくわかりました。