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2025-08-10 07:52

ベテラン社員の暗黙知をAIで継承|miiboで実現する次世代ナレッジマネジメント

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企業が直面する深刻な課題として、ベテラン社員の退職・異動による経験知の喪失があります。人手不足で引き継ぎ時間が取れず、マニュアルに載らない暗黙知が失われ続けている現状を、AIによる知識継承システムで解決する方法があります。

本記事は、株式会社miiboと株式会社こころみが開催した「AIエージェント構築実践セミナー第18弾 ~ベテラン社員のノウハウを継承したAIを作る~」の内容をまとめたものです。会話型AI構築プラットフォーム「miibo」を活用し、ベテラン社員のノウハウを効果的にAIに継承する実践的な方法を、ディープリスニングによる暗黙知の引き出しから、AIフレンドリーなデータ構造化、RAGを活用した実装、そして社内展開まで、3つのステップで解説します。

なぜ今、ノウハウ継承AIが必要なのか

ベテラン社員が持つ知見を社内に引き継ぐことなく退職してしまうケースが増加しています。培われたノウハウがマニュアルやFAQとして形式知化されることは稀で、多くの暗黙知がそのまま失われ、企業にとって大きな損失となっています。

人に引き継ぐ場合でも、人手不足により引き継ぎの工数が確保できないという問題があります。さらに、人に引き継いでも再び属人化してしまうリスクが存在し、根本的な解決にはなりません。AIに学習させることで、いつでも利用可能で、何百人でも同時にアクセスできる知識資産として活用できるようになります。

従来のマニュアルやWebサイトにナレッジを蓄積する方法と比較して、会話型AIは質問すれば自然に回答を返してくれるため、多くの人にとって使いやすいシステムとなります。特にmiiboを活用することで、ノーコードで簡単に構築でき、様々なLLMを切り替えて利用できる柔軟性を持った継承型AIを実現できます。

ステップ1:ディープリスニングでノウハウを引き出す

ベテラン社員のノウハウを効果的に引き出すためには、単に質問するだけでなく、信頼関係を構築しながら話を聞き出すディープリスニングという手法が有効です。この手法では、相手との心理的安全性を保ち、何でも話せる状況を作ることを重視します。

社内の人間がインタビューする場合、利害関係や部署間の問題により全てを話してもらえない可能性があります。外部の専門インタビュアーが実施することで、より本音に近い情報を引き出すことができます。インタビュー設計では、ノウハウだけでなく、その方の略歴、思い、悩みなどの背景情報も含めて聞くことで、信頼関係を構築していきます。

特に重要なのは「どういう状況のときに、どういう行動をとって、どういう結果になったのか」という状況・行動・結果の流れで聞くことです。感情の部分(共感的理解)とロジカルな部分(論理的理解)の両方を引き出すことで、単なる手順だけでなく、判断の背景にある考え方まで抽出できます。株式会社こころみでは、このディープリスニング手法を用いて、ベテラン社員から「丁寧に聞いていただいて、組織文化や過去の経緯まで理解してもらえた」「内部スタッフでは聞けなかった内容まで話せた」という評価を得ています。

ステップ2:AIフレンドリーなデータ構造化

引き出したノウハウをAIが学習しやすいデータ構造に変換することが、継承型AI構築の要となります。ノウハウの種類によって適したまとめ方が異なり、AIが検索しやすく、理解しやすく、出力しやすい構造にする必要があります。

哲学や仕事観などの抽象度の高い内容は、Markdown形式の文章で記述します。見出しをシャープ記号(#)で階層化し、箇条書きをハイフン(-)で表現することで、情報の構造が明確になり、AIが理解しやすくなります。判断基準やルールについても同様に、構造的な文章として整理します。

手順や業務プロセスなどフローチャートで表現される内容は、YAMLやMermaid形式で記述します。これらの形式では、条件分岐や次のステップを明確に定義でき、「AのプロセスからBへ、Bで条件分岐してCかDへ」といった流れをテキストで表現できます。例えば経費精算プロセスのような複雑な業務フローも、AIが理解可能な形式に変換できます。

体の動きや作業の技など、テキスト化が困難なノウハウは動画として記録します。動画のURLと共に、内容の詳細な説明文を付加することで、AIが適切なタイミングで「この動画を参考にしてください」と提案できるようになります。Google AI Studioなどのツールを活用すれば、動画の内容を自動的にテキスト化することも可能です。

ステップ3:miiboでRAGを活用した実装

構造化されたデータは、miiboのナレッジデータストアに格納し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)の仕組みを活用して実装します。RAGにより、ユーザーの質問に対して関連する知識を検索し、その結果を基にAIが適切な回答を生成できるようになります。

miiboでのRAG実装の流れは、まずユーザーが発話すると検索クエリーが生成され、設定した外部データに対して検索が実行されます。検索結果の上位が前提データプロンプトに追加され、その情報を基にAIが応答を生成します。この仕組みにより、正確な情報へのアクセスが可能になり、エビデンスを示しやすくなります。

ナレッジデータストアへのデータ登録は、自由入力、URL指定、ファイルインポート、CSV形式でのインポート、Notionページからの入稿、API経由での登録など、多様な方法が用意されています。登録されたデータはEmbedding(ベクトル化)され、類似度に基づいて検索されるため、ユーザーの質問に最も関連性の高い情報が抽出されます。

検索精度を高めるために、チャンクの制御、カスタムフィールドの活用、検索モードの設定などの工夫が可能です。全文検索モード、ミックス検索モード、ハイブリッド検索モードから、用途に応じて最適なモードを選択することで、より精度の高い情報検索を実現できます。

社内展開と活用シーンの設計

作成したAIを社内で効果的に活用するためには、使いやすい環境への実装が不可欠です。SlackやMicrosoft Teamsなどの社内チャットツールに統合することで、日常業務の中で自然にAIを利用できるようになります。

社内ポータルサイトへの組み込みや、miibo Agent Hubのような社内AIプラットフォームの活用も効果的です。miibo Agent Hubでは、複数のAIエージェントを集約し、必要に応じて組み合わせて利用することも可能です。これにより、ベテラン社員のノウハウAIだけでなく、人事部の問い合わせ対応AIやマーケティング担当AIなど、様々なAIを一元管理できます。

具体的な活用シーンとしては、ベテラン社員の退職時のノウハウ継承、優秀な社員のスキルの全社展開、一時的な不在時の業務引継ぎ、夜間・休日の判断支援、若手社員のOJTや社内研修での活用、マニュアルに載っていない裏技や例外処理の共有などがあります。これらの活用により、社内の知識資産を効率的に共有・活用できるようになります。

運用と継続的な改善

継承型AIの運用では、ログ分析とユーザーフィードバックの収集が重要になります。miiboの会話ログ機能を活用することで、どのような質問に対してどのような回答がされたか、使われた知識は何かを詳細に確認できます。

精度向上のためには、間違った回答の原因分析が必要です。検索クエリーの問題、必要な情報の不足、矛盾する情報の存在など、様々な要因を特定し、改善していきます。MCPという機能を使えば、ユーザーが「この回答はおかしい」とフィードバックした際に、その情報を自動的に収集し、改善に活用できます。

社内教育の観点では、AI活用のワークショップ開催、定期的な研修、社内推進役の育成などが効果的です。miiboはノーコードで操作できるため、プログラマーでなくても使いこなせる人材を育成し、継続的な改善サイクルを回すことが可能です。

まとめ

ベテラン社員のノウハウを継承したAIの構築は、聞く力(ディープリスニング)、構造化(AIフレンドリーなデータ形式)、実装(使いやすい環境の構築)の3つのステップで実現できます。本セミナーで紹介された手法を活用することで、miiboを使ったノーコードでの継承型AI構築が可能になり、企業の知識資産として活用できるようになります。暗黙知の形式知化により、属人化を防ぎ、組織全体の意思決定力を底上げすることで、持続可能な組織づくりに貢献できるのです。



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サマリー

株式会社miiboと株式会社ココロミが主催したセミナーにおいて、ベテラン社員の暗黙知の継承に関してAI、特に会話型AIを活用する方法が考察されています。特にディープリスニングによる知識の引き出し方と、得られた情報を構造化することの重要性が強調されています。

ベテラン社員の暗黙知の重要性
いやーベテラン社員の方が、まあ移動とか退職とかで、その貴重なノウハウ、いわゆる暗黙知ってやつですかね。それがこう失われちゃうって結構聞く話ですよね。
あなたの周りでも、なんか引き継ぎ資料だけじゃこう全然カバーしきれない、あの人の勘どころみたいなものってあるんじゃないでしょうか。
今回はですね、株式会社miiboさんと株式会社ココロミさんが開催したセミナーの資料がありまして、それをもとにですね、この課題にAI、特にその会話型AIのmiiboでどうアプローチできるのかと、その辺の具体的なステップを深掘りしていきたいなと思っています。
単に情報を整理するんじゃなくて、生きた知識にするみたいな。
まさにおっしゃる通り、生きた知識にするっていうところが、あのすごく大事なポイントですね。ただ、情報をどこかにこうしまっておくんじゃなくて、対話を通じて誰もが必要な時に必要な形で引き出せるようにする。属人化しやすいノウハウをちゃんと組織の共有財産にしていこうっていう、そういう試みですね。
うーん、なるほど。そのための、じゃあ最初のステップですけど、ベテランご本人からどうやってその知識を引き出すか。資料にあったディープリスニングっていうのが影だと。これ単なるヒアリングとは違うってことなんですよね。
ええ、全く違いますね。あの技術的な質問とかをいきなりするんじゃなくて、まずその心理的安全性ですね。これを作るのがすごく大事です。
心理的安全性ですか。
はい。特に長年の経験で、もう無意識にやってることって本人もなかなか言葉にしにくいんですよ。なので、まずはしっかり信頼関係を築いてリラックスして話せる雰囲気づくり、これが最優先ですね。
あと社外の専門家、第三者が聞くっていうのも結構メリットがあって。
ああ、なるほど。
利害関係がないんで本音が出やすいっていうのはありますね。
ディープリスニングと知識の構造化
ああ、まずそこからなんですね。土壌づくりというか。
ええ、その上でどういう状況でどう考えてどう行動して結果どうなったかっていうのを感情面も含めて深く掘り下げていくんです。
単なる手順やり方だけじゃなくて、その背景にある考え方とか、半山の基準、つまりなんでそうしたのかっていうところまで引く、これが本当の暗黙値の抽出には不可欠ですね。
なるほどな、経験の裏側にあるその思考のプロセスまで掘り起こしていくと。
それで引き出したその貴重なお話、次はどうやってAIに食べさせるというか、理解させるんですか?構造化のステップですね。
ああ、そうですそうです。構造化。AIが理解しやすい形に翻訳してあげる作業ですね。これも知識の種類によって実は最適なフォーマットっていうのがあるんですよ。
へえ、種類によって違うんですか?
ええ、例えば仕事の哲学とかそういうちょっと抽象的な話はマークダウン形式がいいですね。見出しとか箇条書きを使って階層的に整理するんです。そうすると考えの骨組みみたいなのがAIにも分かりやすくなります。
なるほど、じゃあ業務のプロセスみたいな流れがあるものはどうでしょう?
ああ、そういう業務フロー的なものは、ヤムルとか、あとマーメイドっていう形式が向いてますね。
ヤムル、マーメイド。
ええ、これらはもしAだったらBに行って、そうでなければCに行くみたいな上天分岐を含む手順をAIがちゃんと追えるように記述できるんです。まあ言ってみればAI向けのフローチャートみたいなもんですね。
はあ、なるほど。分かりやすい。でも中には動画じゃないとちょっと伝わらない技術とかもありますよね。
まさにそういう身体的なスキルとか言葉にしにくいものは動画で記録するのが一番です。ただ動画だけだとAIは中身を理解できないので、その内容を説明するテキスト情報、これをちゃんと付与するんです。
ああ、テキストで補足するんですね。
そうです。そうするとAIはこの手順はこの動画の何分何秒あたりを見てくださいね、みたいに的確に案内できるようになるわけです。要は後でAIが検索したり理解したり活用しやすいように知識の特性に合わせてデータを整えてあげるということが大事です。
AIの活用と改善サイクル
データ形式を使い分ける。まさにAIフレンドリーにするってことですね。そしていよいよ最終段階。構造化したデータをその会話型AIのmiiboに実装していくと。ここでRAGっていう技術が重要になるという話でしたけど、このRAGっていうのはえっと。
RAGですね。リトリバルオーグメンテッドジェネレーション。これはAIが回答を作るときにですね、ただ自分の記憶、学習データだけに頼るんじゃなくて、まず関連性の高そうな情報を事前に用意しておいたデータストア、つまり構造化した知識の中から探してくる。リトリバル。
まず探す。
ええ。で、その見つけてきた情報に基づいて回答を組み立てる。ジェネレーション。こういう仕組みなんです。
ああ、なるほど。なんとなくAIに看扁を持たせてあげるみたいなイメージですかね。
ああ、まさに。すごく分かりやすく言うとそんな感じです。
これによって、AIは一般的な知識だけじゃなくて、その組織ならではの、しかも最新の、ちゃんと根拠に基づいた回答というのができるようになるんですね。
MIMOみたいなプラットフォームは、こういう色々な形式のデータを登録しやすくて、このRAGの仕組みを効果的に使えるようにうまく設計されているわけです。
なるほど。技術的な背景はよくわかりました。でも、どんなにいいAIを作っても、それが宝の持ち腐れみたいになっちゃったら意味ないですよね。実際の業務でどうやって使っていくかっていうのがやっぱり重要かなと。
おっしゃる通りですね。そこが一番大事かもしれません。やっぱりSlackとかTeamsとか、みんなが普段使っているツールに組み込んで、なんか気軽に質問できる環境を作るのが理想的ですよね。
ああ、日常のツールに。
たとえば、新人の人がOJTでちょっとわからないことを聞くとか、あるいは担当者の人がいないときに代わりに基本的な質問に答えてもらうとか、あとはマニュアルには載ってないようなちょっとしたコツとか裏技みたいなのを共有するのにも結構使えると思いますよ。
へー、裏技共有。それは面白いですね。
そうですね。現場で使えるっていうのが本当に大事です。それと、やっぱり使われた履歴、ログですね。これを分析したり、ユーザーさんからフィードバックをもらったりして、継続的にAIの知識を更新していく、改善していく。これが本当に価値のある知識資産にしていくための鍵になりますね。
miiboみたいなノーコードツールだと、ITの専門家じゃなくても現場手動でそういう改善のサイクルを回しやすいっていうのも結構大きなメリットかなと思います。
なるほどなー。いやー、よく分かりました。というわけで今回は、ベテランの暗黙地をAIで継承するためのディープリスニングでまずしっかり聞き出して、それを構造化してAIフレンドリーなデータにして、最後にmiiboとRAGで実装して現場で活用していく。そういう3つのステップを見てきました。
他に情報を保存するだけじゃなくて、対話を通じてアクセス可能の形にするっていうのがポイントでしたね。
そうですね。しなわれてしまいがちな個人の貴重な経験とか知識を組織全体の力に変えていく。これは単なる効率化っていう話だけじゃなくて、組織の学習能力そのものを高めるっていう意味で非常に戦略的な取り組みと言えるんじゃないでしょうか。
確かに。この話を聞いて、もしあなたの組織でこの暗黙地をAIで継承するってなったら、まず誰のどんな知識を対象にしてみたいか。ちょっとそんなことを想像してみるのも面白いかもしれないですね。
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