乳幼児に対する訪問看護の利用者数は近年大きく増加しており、令和6年度診療報酬改定では利用者の状態に応じた区分が乳幼児加算に導入されました。一方で、状態に応じた質の高い訪問看護をさらに後押しするためには、評価水準そのものの見直しが必要との指摘がありました。本記事では、令和8年度診療報酬改定における乳幼児加算の見直し内容を、算定実務の視点から整理して解説します。
令和8年度改定では、厚生労働大臣が定める者以外への乳幼児加算が1日1,300円から1,400円に引き上げられます。対象となるのは6歳未満の乳幼児に対する訪問看護であり、適用される点数項目は訪問看護基本療養費・在宅患者訪問看護・指導料・同一建物居住者訪問看護・指導料の3つです。超重症児等の厚生労働大臣が定める者への評価1,800円は据え置きとなります。
改定の背景|乳幼児への訪問看護を取り巻く現状
乳幼児への訪問看護は、利用者数が増加するなかで質の確保が課題となっています。NICU等を退院後も医療的ケアを必要とする医療的ケア児は全国で2万人を超えると推計されており、訪問看護を必要とする乳幼児への適切な評価のあり方が継続的に検討されてきました。
令和6年度改定では、乳幼児加算が利用者の状態に応じて2つに区分されました。改定前は一律1,500円であった評価が、改定後は厚生労働大臣が定める者以外で1,300円、厚生労働大臣が定める者で1,800円という構造に組み替えられました。厚生労働大臣が定める者には、超重症児または準超重症児、別表第7に掲げる疾病等の者、別表第8に掲げる者が含まれます。
この区分導入後、算定状況には特徴的な傾向が見られます。乳幼児加算の算定利用者数は令和元年の9,810人から令和5年には15,486人へと約1.6倍に増加し、その後も増加傾向が続いています。令和7年6月審査分の速報値では、算定利用者のうち厚生労働大臣が定める者に該当する割合は42.0%、それ以外が58.0%となっており、両区分とも一定の利用者規模が確認できる状況にあります。
改定の具体的内容|100円の引き上げと据え置きの整理
令和8年度改定の中心は、厚生労働大臣が定める者以外への評価を1日1,300円から1,400円へ100円引き上げる点です。引き上げの対象は6歳未満の乳幼児に対し、訪問看護ステーションの看護師等が指定訪問看護を行った場合に算定する乳幼児加算です。改定の趣旨は、状態に応じた質の高い訪問看護が提供されるよう、評価水準を適正化することにあります。
一方で、厚生労働大臣が定める者への評価1,800円は据え置きとなります。据え置きの対象は、超重症児または準超重症児、別表第7に掲げる疾病等の者、別表第8に掲げる者です。これらの利用者については、令和6年度改定で設定された手厚い評価がそのまま維持されます。
改定後の評価構造を整理すると、2つの区分の差が500円から400円に縮小する点が特徴です。改定前は1,800円と1,300円で差額500円でしたが、改定後は1,800円と1,400円で差額400円となります。重症度に応じたメリハリは維持しつつ、厚生労働大臣が定める者以外への乳幼児訪問看護評価が底上げされる構造となります。
対象となる点数項目|3つの算定区分での適用範囲
今回の見直しは、訪問看護に係る3つの点数項目に共通して適用されます。具体的には、訪問看護ステーションが算定する訪問看護基本療養費、医療機関が算定する在宅患者訪問看護・指導料、医療機関が同一建物居住者に対して算定する同一建物居住者訪問看護・指導料の3つです。いずれの算定区分でも、乳幼児加算の金額は同一水準に揃えられます。
訪問看護基本療養費の乳幼児加算については、注11において1及び2(いずれもハを除く)に対する加算として規定されます。算定対象は6歳未満の乳幼児に対し、訪問看護ステーションの看護師等が指定訪問看護を行った場合です。改定後は1日につき1,400円、厚生労働大臣が定める者に該当する場合は1日につき1,800円が所定額に加算されます。
在宅患者訪問看護・指導料および同一建物居住者訪問看護・指導料についても同様の取扱いとなります。医療機関から訪問看護を提供する場合でも、訪問看護ステーションからの提供と同一水準の乳幼児加算が適用されるため、提供主体による差は生じません。算定要件・金額・対象者区分は3つの点数項目で統一されています。
実務への影響|訪問看護ステーションが押さえるべきポイント
実務上の最大のポイントは、令和8年度改定施行後の算定額の切り替えを正確に行うことです。施行日以降に提供する6歳未満の乳幼児への訪問看護では、厚生労働大臣が定める者以外への加算が1,300円から1,400円に変わります。レセプト請求システムや訪問看護記録のフォーマットを点検し、新単価への対応を施行日までに完了させる必要があります。
利用者区分の判定方法は、改定前後で算定要件の文言上の変更は見られません。超重症児または準超重症児、別表第7に掲げる疾病等の者、別表第8に掲げる者に該当するかを従来どおり確認し、該当する場合は1,800円、該当しない場合は1,400円を算定します。区分判定のためのスクリーニングや記録は、令和6年度改定で導入された運用をそのまま継続できる見込みです。
経営面では、令和7年6月審査分の速報値で算定利用者の58.0%を占める「厚生労働大臣が定める者以外」への評価引き上げが収益に影響します。乳幼児への訪問看護に積極的に取り組む訪問看護ステーションでは、訪問1回あたり100円の増額が積み重なることで、年間ベースでは小さくない影響となります。乳幼児の受け入れ体制の維持・拡充を検討する材料として活用できます。
まとめ|状態に応じた質の高い訪問看護の実現に向けて
令和8年度診療報酬改定では、6歳未満の乳幼児への訪問看護に対する乳幼児加算が見直されます。厚生労働大臣が定める者以外への評価は1日1,300円から1,400円に100円引き上げられ、厚生労働大臣が定める者への評価1,800円は据え置きとなります。適用される点数項目は訪問看護基本療養費・在宅患者訪問看護・指導料・同一建物居住者訪問看護・指導料の3つであり、改定の趣旨は状態に応じた質の高い訪問看護の提供にあります。施行日に向けて、算定システムの更新と現場での周知を着実に進めることが求められます。
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サマリー
令和8年度の診療報酬改定では、乳幼児訪問看護加算のうち、厚生労働大臣が定める者以外への評価が1日1,300円から1,400円に100円引き上げられます。この一見小さな増額は、利用者の約6割を占める層への底上げであり、訪問看護ステーションの経営安定と乳幼児ケアのインフラ維持に大きく貢献します。新たな事務負担なしに、質の高い訪問看護を広く後押しする実務的な改定として、施行日までのシステム更新が重要視されています。
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