クリスマスの贈り物の期待
クリスマスの贈り物
たけひさゆめじ
母さん
みっちゃんは、おやつの時、
二つ目の木の葉パンを半分頬張りながら、母様に言いました。
ねえ、母さん
なあに、みっちゃん
あのね、母さん、もうじきにクリスマスでしょ?
ええ、もうじきね
どれだけ?
みっちゃんの年ほどおねんねしたら
みっちゃんの年ほど?
そうですよ
じゃあ、母さん、一つ、二つ、三つ
と、みっちゃんは、自分の年の数ほどテーブルの上に手をあげて、指をおりながら感情をはじめました。
一つ、二つ、三つ、そいから、ねえ、母さん、五つ、ねえ、六つ
ほら、六つねたらなの?ねえ、母さん
そうですよ。六つねたらクリスマスなのよ
ねえ、母さん
まあ、みっちゃん、お茶がこぼれますよ
ねえ、母さん
あいよ
クリスマスにはね、えっと、あたい何がほしいだろう
まあ、みっちゃんはクリスマスのおくりもののことを考えていたの
ねえ、母さん、なんでしょう
みっちゃんのことだもの
みっちゃんがほしいと思うものなら、なんでもくださるでしょうよ、サンタクロスのおじいさんは
そう、母さん
ほら、お口からお茶がこぼれますよ
さあ、ハンカチでおふきなさい
ええ、なんでもくださるよ
みっちゃん、何がほしいの
あたいね、金の服を着たフランスの女王様とね
それから赤いほっぺをした白いジョーカーと
それからおとぎ話の5本と
それからなんだっけ、それからピアノ
それからキューピー
それから
まあ、ずいぶんたくさんなのね
ええ、母さん、もっとたくさんでもいい
ええ、よござんすとも
だけど母さんはそんなにたくさんとても覚えきれませんよ
でも母さん、サンタクロスのおじいさんが持ってきてくださるのでしょう
そりゃあそうだけれどもさ
サンタクロスのおじいさんもそんなにたくさんじゃお忘れなさるわ
じゃあ母さん、書いてちょうだいな
そしてサンタクロスのおじいさんに手紙出してね
はいはい、さあ書きますよ、みっちゃん、言ってちょうだい
ピアノよ、キューピーよ、クレヨンね、スケッチ帳ね、切り抜きに、手袋に、リボンに
ねえ母さん、おうちなんかくださらないの?
そうね、おうちなんか重いからね
サンタクロスのおじいさんはお年寄りだからとてももてないでしょうよ
ではピアノもだめかしら
そうね、そんな重いものはだめでしょ
じゃあピアノもおうちもよすわ
あ、ハーモニカ、ハーモニカなら軽いわね
それからサーベルにピストルに
ピストルなんかいるの、みっちゃん
だってお隣の二郎さんが悪者になるときいるんだって言ったんですもの
まあ悪者ですって
あのね、みっちゃん、悪者なんかになるのは良くないのよ
それにね、もし二郎さんが悪者になるのにどうしてもピストルがいるのだったら
きっとサンタクロスのおじいさんが二郎さんに持ってきてくださるわ
二郎さんとこへもサンタクロスのおじいさん来るの?
二郎さんのおうちへも来ますよ
でも二郎さんとこに煙突がないのよ
煙突がないとこは天窓から入れるでしょ
そう?じゃあピストルはよすわ
贈り物の結果
さあ、もうお茶もいいでしょ
お庭へ行ってお遊びなさい
みっちゃんはすぐにお庭へ行って二郎さんを呼びました
二郎さん、サンタクロスのおじいさんにお手紙書いて
僕知らないよ
あら、お手紙出さないの?
私母さんがね、お手紙出したわよ
ハーモニカだの、お人形だの、リボンだの、ナイフだの、人形だの
持ってきてくださいって出したわ
おじいさんが持ってきてくれるの?
あら、二郎さん知らないの?
どこのおじいさん?
サンタクロスのおじいさんだわ
サンタクロスのおじいさんってどこのおじいさん?
天から来るんだわ、クリスマスの晩に来るのよ
僕んとこは来ないや
あら、どうして?
じゃ、きっと煙突がないからだわ
でも、母さん言ったわ
煙突のないとこは天窓から来るって
ほう、じゃ来るかな
何持ってくる?
なんでもよ
ピストルでも?
ピストルでもサーベルでも
じゃあ、僕手紙を書こうや
二郎さんは大急ぎで家へ飛んで帰りました
二郎さんの与え礼を縫っていらした母さんに言いました
サンタクロスに手紙を書いてよ母さん
何ですってこの子は
ピストルと靴と洋服と欲しいや
まあ何を言っているの?
みーちゃんとこの母さんも手紙を書いてサンタクロスにやったって
人形だの、リボンだの、ハーモニカだの
ねえ母さん、僕ピストルとサーベルとねえ
それはねえ二郎さん
お隣のお家には煙突があるからサンタクロスのおじいさんが来るのです
でも言ったよ、みーちゃんの母さんがね
煙突がないとこは天窓がいいんだって
まあそれじゃあお手紙を書いてみましょうね、坊や
嬉しいな、僕ピストルにラッパも欲しいや
そんなにたくさん欲張る子にはくださらないかもしれませんよ
だって僕ラッパも欲しいんだもの
でもね、サンタクロスのおじいさまは世界中の子供に贈り物をなさるんだから
一人の子供が欲張ったらもらえない子供ができると悪いでしょう
じゃあ僕一つでいいや、ラッパ、ねえ母さん
そうそう、二郎さんは良い子ね
赤いふさのついたラッパよ母さん
ええ、赤いふさのついたのをね
嬉しいなあ
クリスマスの夜が明けて目を覚ますと
二郎さんの枕元には立派な黄色く光って赤いふさのついたラッパが
ちゃんと二郎さんを待っていました
二郎さんは大喜びで母さんを呼びました
母さん、僕吹いてみますよ
ちってちってた、とってちっち、とってち
ところがみっちゃんのほうは朝目をさましてみると
リボンと鉛筆とナイフとだけしかありませんでした
みっちゃんはストーブの煙突をのぞいてみましたが
ほかには何も出てきませんでした
みっちゃんは泣きだしました
いくらたくさんおくりものがあっても
みっちゃんをよろこばせることができないのでした
みっちゃんはいくらでもほしい子でしたから