#1968. Pittsburgh か Pittsburg かの綴字論争
2026-10-19 18:53

#1968. Pittsburgh か Pittsburg かの綴字論争

【今日のひとこと】

アメリカで本当に起こった悲喜劇です.サイモン・ホロビン(著),堀田 隆一(訳) 『スペリングの英語史』 早川書房,2017年.の p. 210 をご覧ください.

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📕市河 三喜、松浪 有 『古英語・中英語初歩〈新装復刊〉』 研究社、2026年。

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7. 「#1607. 英語帝国主義から世界英語へ」 https://voicy.jp/channel/1950/j8ktxr4px3
8. 「#1576. 英語に関する素朴な疑問 千本ノック with 小河舜さん」 https://voicy.jp/channel/1950/xg195k9qdq
9. 「#1581. 歯科医学×英語史 with 無職さん --- 『英語史ライヴ2025』より」 https://voicy.jp/channel/1950/4th1404k03
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サマリー

アメリカ・ペンシルバニア州の都市Pittsburghについて、語尾を「-burgh」とするか「-burg」とするかをめぐる綴字論争が語られます。19世紀アメリカでは地名の綴りが揺れており、1890年設立の合衆国委員会が、綴りから発音を推測しやすくする標準化を進めました。委員会はboroughをboroに、burghをburgに簡略化し、ゲティスバーグやウィリアムズバーグではHを落とす方針を採用しました。しかしピッツバーグ市民は伝統的なHを残す綴りを要求し、1911年に委員会は同市だけ例外としてGHを認めました。その結果、PittsburghはGHで綴る一方、他のアメリカの多くの地名はGで終わるため、かえって綴り間違いの多い地名になったという皮肉が紹介されます。

boroughの綴字とピッツバーグの問題
おはようございます。英語の歴史の研究者、ヘログ英語史ブログの管理者、英語のなぜに答える初めての英語史、英語語源ハンドブック、言語学ですっきり解決英語のなぜの著者の堀田隆一です。
去る6月10日、NHK出版新書、英語史で説く英文法の謎、なぜ三単元のSをつけるのかが発売されました。
発売前増殺がかかりまして、今第2釣りが全国、つつ裏裏の書店に並んでおります。大変ご好評いただいております。ありがとうございます。
英語の語源がミニツクラジオヘルディオ、英語史をお茶の間におもっとうに英語の歴史の面白さを伝え、裾野を広げるべく、毎朝6時に配信しています。
本日は2026年10月19日月曜日、新しい1週間の始まりです。皆さんいかがお過ごしでしょうか。
本日は、数日前よりシリーズと言っていいのかわからないんですけれども、少々注目しているある単語とその綴り字に関する話題の第3弾をお届けしようと思います。
その単語はバラ、バラですね。
b-o-r-o-u-g-hと書いてバラです。
町、城塞都市、市場ぐらいの意味でですね、イングランドの地名などに品質する要素なんですけれども、
この歴史的逸辞りが、私が調べた限り80種類はあるというところから始まりまして、数日前にはその語尾を持っている、語尾と言いますかね、その地名要素を持っている一つの町、ピーターバラ。
この長い綴り字を省略する場合には、どこをどう省略するかというような話題でですね、
関連する話題をお届けしてきました。で、今回もですね、それとやはり繋がってくる話題なんですね。
様々な逸辞りがあったということなんですが、その中でもですね、b-u-r-g-hであるとか、b-u-r-gのような綴り字もあったんですね。
こう書いてもイギリスでは日本説でバラと読み続けることが多いかと思うんですが、アメリカに渡るとですね、綴り字発音ということで、綴り字をむしろ基本にしてですね、そこから発音を導き出すみたいな方向性がありま
して、アメリカではこれ、b-u-r-gとなっていくわけですね。
そして、いろんな何とかバーグという街がアメリカ側にありますけれども、今回注目するのは綴り字論争が関わった一つの街、ピッツバーグの話題なんですね。
ピッツバーグかピッツバーグかの綴り字論争ということでお届けします。
ヘルディオは音声媒体なので何のことかと思うかもしれませんが、今回は綴り字の話題なんですね。
最初のピッツバーグはghで終わるんですよ。
2つ目に読み上げたピッツバーグはgで終わるんです。hがないんですね。
この2つの綴り字をめぐっての論争ということで、今日はピッツバーグかピッツバーグかの綴り字論争と題してお話いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
バラの逸連りということを話題にしてきましたけれども、これで思い出す一つのエピソードと言いますか事件と言いますかね、論争がありまして、これを皆さんと共有しようと思った次第です。
アメリカの地名標準化と合衆国委員会
これが今日の話題であるアメリカのピッツバーグをですね、どう綴るか問題ということなんですね。
アメリカ合衆国ペンシルバニア州の都市ピッツバーグが今日の主役なんですけれども、かつてある論争があったんですね。
この地名のですね、ピッツバーグのピットの部分です。
これは英国首相を務めたウィリアム・ピット・ザ・エルダーですね。大ピットと呼ばれている方なんですけれども、この英国首相にちなんだものなんですね。
そして問題はですね、今日の問題は後半要素のこのバーグの方でBURGHと綴るのか、BURGと綴るのか、つまり最後のHの有無に関して揉めたという事件があったんですね。
もう少し大きな背景からですね、お話し始めたいと思うんですけれども、独立後の19世紀アメリカですね。
未だ地名のつづり字にかなりの揺れがあったんですね。同じ場所、町の名前を表すのに書き手によってつづりがバラバラだったりするという状況があったんですね。
これでは困るということでアメリカ政府が乗り出します。1890年に当時の大統領ベンジャミン・ハリソンが地理的名称に関する合衆国委員会というものを設立するんですね。
政府の官庁や地図の表記の中で地名のつづり字を統一しよう、標準化しようとしたわけなんですよ。
この委員会の大事な役目の一つは、アメリカ市民にとって発音の適切な案内役となるようなつづり字にするということですね。
これアメリカらしい方向性だと思うんですね。発音を見れば、逆ですね、つづり字を見れば発音がちゃんとわかるストレートなつづり字にするという合理化を図ってですね、
つづり字改革、地名に関する改革をしようということですね。アメリカ英語の一般の単語のつづり字改革といえばノア・ウィブスターがすぐに思い浮かぶと思うんですけれども、もっとそれよりも100年ほど後の話
なんですけれどもね、
この地理的名称に関してちゃんと発音を復元できるような、そういうつづり字に統一しましょうということなんですね。
もともとですね、フランス語で表記されていたり、あるいはアメリカ先住民の言語に由来する地名だったりするんで、そもそも英語っぽくない、どちらかというとローマ字っぽくですね、
ローマ字っぽく表記される地名がアメリカの中には非常に多かったということなんですね。英語にはふさわしくない、英語のつづり方としてはふさわしくないというところから英語化する、あるいはアメリカ化するみたいな
ことを意図していたというのがこの委員会なんですね。
この委員会が出来上がったのは1890年という19世紀も終わりなんですけれども、問題意識自体は長らくアメリカでも抱かれていたようなんですね。
かの、ノア・ウェブスターもですね、自身のスペリング教本の序文でですね、固有名詞、地名に関するつづり字の統一みたいなことにも触れているんですね。
いくつか具体例を挙げながらフランス語風に綴られていたような地名はですね、これフランス語じゃないんだから、アメリカ人は英語を使っているんだから英語化してわかるようにするのが筋ではないかというような発言
をしているんです。
ただですね、ウェブスターはこの地名に関しては特に影響力を与えなかったということでですね、遅ればせながら、世紀の後半になって政府が対策に乗り出したと、そういう流れなんですね。
実際ですね、標準化される前のつづり字、つまり我々がよく知っている馴染みのあるアメリカの地名だけれども、標準化される前はこんな形だったんですよと示されると、何のことかわからないものが多いですね。
例えばナイアガラですけども、N-I-A-G-A-R-Aということですよね。これなんですが標準化される前はですね、ウネアウカラ、ローマ字的に言いますとウネアウカラというふうに書いてですね、これがナイアガ
ラを指していたと。
これクイズになるぐらいですね。例えばミシガン、今でいうとミシガンというようにM-I-C-H-I-G-A-Nと、少しフランス語っぽくは残ってますけれども、読めますよね、ミシガンなんですが、これ標準化する
前の一つのつづりはですね、マチヒガニングとでもローマ字的に言うとですね、
マチヒガニングとでも読みたくなるようなスピリングだったということですね。このようにですね、確かに状況はいろいろと大変だったんだろうなということを思わせる、そのつづり字、標準化前の地名のつづり字
ということだったんですけれども、
ただですね、アメリカの先住民の発音を反映した地名というのは未だにたくさん残っていまして、この委員会の力をもってしてもですね、やっぱり英語化しきれていないというか、極めて異質なスピリングのまま、現代まで
残っているものも少なくないんですよね。
例えばマサチューセッツとかミセシッピーっていうのも、皆さん書けますかね、どこかで間違えてしまうんではないですかね、書き慣れていないと、というような英語っぽくないつづり字要素が入っている感じがします
よね。
このようにですね、この合衆国委員会ですか、これもですね、どこまで力を持っていたのかというと、怪しいなという気がしてくるんですよね。
地名に限らず、英語という言語にはつづり字であるとか、言語上の統一を図ろうという国家的な機関というのが、いわゆるアカデミーというものなんですが、これが作られた試しがないんですね。
英語圏では、イギリスにもないですし、アメリカにもないということで、これがフランスなどとは異なるということで、このヘルディオでもアカデミーが英語圏では作られなかったという趣旨のお話、いろいろとして
きたんですが、
ここでもですね、アメリカですけれども、委員会を立ち上げたと言っても、やっぱりそんなにすごく強い力を持っていたわけでもなさそうだという雰囲気がですね、この英語圏における言語統率のアカデミーが存在しな
かったということと響き合って、なんだか面白いなという気がするんですよね。
boro・burgへの簡略化
さあ、背景、説明が長くなりましたが、今日の問題のピッツバーグなんですね。この委員会なんですが、いくつか実際に定着させた改革というのは確かにあるんです。標準化に貢献したというところがありまして、その一つ
がですね、まさにバラなんですね。
このバラという、イギリスの英語ではB-O-R-O-U-G-Hですか、フルで書くとこういうことになるんですが、これをアメリカ側ではボロと短くしようと、B-O-R-O、つまりローマ字通りボロみたいな感じ
ですよね。
これが前回の関連会でもお話ししましたが、イギリスの地名マルボロ、マルボロ、これはM-A-R-L、マールにバラをフルスペリングで綴るわけなんですが、アメリカ側にも対応する地名があって、そしてタバコの商
標にもなっていますが、マルボロですね。
あるいはマールボロというふうにB-O-R-Oとしているんですね。このようにイギリスのバラは簡略化してアメリカではB-O-R-Oと綴るというようなことですね。
これは委員会が決定したということで、ここには影響力があったということになりますね。
もう一つこれと関連して、B-U-R-G-H、これはスコットランド的な形態ですね、エディンバラのバラですけれども、これもアメリカ側にたくさんあったんだけれども、この最後のG-HのHというのは何だという
ところで、このHみたいなものは落としてしまおうというのがこの委員会の決定だったんですよね。
これで例えばゲティスバーグとかウィリアムズバーグという街があって、それまでは後ろにHをつけて書かれることも多かった。
G-HなのかGだけなのかということで揺れていたんですけれども、正式にはGで終える、Hはつけないという方向でですね、この委員会は決定したということなんですね。
PittsburghだけがGHを残した経緯
ところがところが、今日の主役のピッツバーグなんですが、これも長らく揺れていたんです。バーグのグの部分がG-Hで綴るのか、あるいはGだけなのかということで確かに揺れていたんですが、今回の委員会の改革によ
ればですね、先ほどのゲティスバーグとかウィリアムズバーグと補聴を合わせてGだけにすると。
Hなどは書かないという方向でですね、委員会が持っていこうとしたと。ところがですね、ピッツバーグのまさに市民たちがですね、自分たちの故郷の伝統的なつづりである、ちゃんとHが残っている、Hを含んだ方
ですね、こちらをちゃんと残したいと。
つまり委員会の言いなりになってHを落としてしまうという方向の変革に、固くなりに脳を突きつけたんですよ。
これでですね、委員会も1911年に余りの議論になってしまったということでですね、ついに折れたんですね。折れて伝統的なつづりであるGHをちゃんと残すということを認めることになったんですね。
綴りの例外が生んだ混乱
ただその代わりというべきか、このピッツバーグだけなんですよ。この例外的措置を委員会が認めたのはですね。なので結果的にですね、アメリカの地名の中で最もよくつづり間違えられる地名、名前の一つになって
しまったという、これまた皮肉なことが起こってるんですね。
なのでピッツバーグはGHなんです。ただアメリカのすべてのバーグは基本的にはGで終わるんです。やっぱりですね、これを知ってしまってから私も混乱ですね。どっちがどっちだっけという、つまり知らぬが仏だったわ
けですよ。
このバラの問題に私もですね、足を踏み入れてしまってからというものですね。このなんとかバラとかバーグのつづり人は一切ですね、自信が持てなくなりました。毎回辞書で引いているということなんですよね。
今回のヘルディオ配信は皆さんをですね、同じ混乱の沼に引き込もうと、引きずり込もうという趣旨が最初からあったわけではないんですが、おそらくですね、真面目に今日のお話を聞いていただいた方はですね、おそらく
混乱の人生、今後バラに関してですね、混乱の人生を歩むことになっていくのではないかと思います。
一度こちらの世界にですね、踏み入れてしまったということはですね、今後もお付き合いいただければと思います。このバラ関連のシリーズ、何か面白いことが出てきましたら、またお話ししたいと思います。
エンディングです。今日も最後まで放送を聞いていただきましてありがとうございました。
ピッツバーグかピッツバーグかのつづり人論争。ということで、なかなか面白い話題だったんではないでしょうか。
また絶賛発売中の新刊書、なぜ三単元目撃マップ企画のお知らせです。
全国のリアル書店で本書を見つけましたら、町と書店の名前を添えて、なぜ三単元が置いてありましたよとお知らせください。
私がGoogleマップ上にピンを立てていきます。日本地図をなぜ三単元で埋め尽くす。英語紙をお茶の間に広めていくというのが企画の趣旨です。
また本書を読了された方におかれましては、Amazonレビューなど各種のプラットフォームで本書のご感想もお寄せいただけますと幸いです。
それでは今日も皆さんにとって良い一日になりますように、英語字研究者のほったりうちがお届けしました。また明日。
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