九州における造船業の重要性と現状
この時間はズームアップ。毎週水曜日は九州経済です。 今日は造船。高市政権の成長戦略17分野にも入っています。 この造船にズームアップしていきます。
エコノミストの鳥丸聡さんです。 鳥丸さん、おはようございます。 よろしくお願いします。
先週、九州7県の単館を見ましたけれども、一番いいのは、TSMC効果が続いている熊本県。 それに続くのが、造船がちょっと元気になってきている長崎県ということなんですけれども、
長崎県って製造品出荷額の4分の1が船舶関連産業で占められていますので、造船業界の浮き沈みっていうのが県の経済に与える影響は、他の県とは全然比較にならないくらい大きいということです。
九州経済におけるこの造船業の重要性と課題について検討してみたいと思うんですけれども、あんまり知られていないんですが、九州は国内建造量の3割強を占める造船アイランドです。
結構なウェイトシェアを占めているんですね。
福岡あたりにいると、都市高をドームの方に行く途中に、下に福岡造船が見えたりして、造船があるなっていう感じなんですけれども、結構なウェイトを占めていて、この造船アイランドっていう言葉は、かなり前に九州運輸局が九州の造船業をホームページで紹介するときに
使っていた言葉なんですけれども、全く流行らなかったというか定着しなかったんですよね。
なんでかっていうと、船自体が自動車とか家電製品といった身近な消費材とは違うということと、あと造船所って海端に当然立地しますので、
一部の市民県民以外は普段建設、建造現場っていうのを目にする機会が少ないっていうことも影響しているし、あと自動車と異なって、主に船舶を輸出している港っていうのが文字税関管内じゃなくて、
長崎港とか佐世保港とか三池港とか、これ長崎税関管内なんですね。三池港もおおむたですけれども、実は長崎税関が所管しているんですね。そのあたりも影響していると。
造船業の歴史と産業革命遺産
そんな九州の造船業界の歴史をひもっておいてみると、これが実に奥が深いっていうか、近代九州にあってはユネスコの世界文化遺産、明治日本の産業革命遺産に長崎の小菅州船場跡だとか、長崎造船場のジャイアントカンチレバークレーンとか登録されていて、
九州で造船が果たしてきた重要性がわかるかと思います。関栄八幡製鉄所で鉄を作るとすると、燃料の石炭は地元調達なんですけれども、原料の鉄鉱石は輸入するわけですよね。輸入するくらいだったら輸入する船を地元で作ろうっていうので造船業が発達して、
そして八幡製鉄所で作られた鉄の一部を使って船を作るってですね。船って鉄でできてます。だから今風の言葉で言えば造船クラスターっていうのが当時から形成されていたっていうことになるかと思います。
造船不況の変遷と国際競争力の低下
そんな産業革命遺産が示すように、明治以降の日本は不国共平策の中で造船業に力を入れて戦後も勢い止まることなくて、今からちょうど70年前、1956年に日本の建造量っていうのは世界一になりました。
ところが1973年オイルショック後に原油単価が当然減っていきますから、第一次造船不況っていう風になって、その次は1985年のプラザ合意で急激な円高が進んで、価格競争力が低下して第二次造船不況に見舞われて、
21世紀になってから2008年リーマンショックをきっかけとして世界同時不況、輸出が蒸発したっていう風に言われてましたけれども、あの時に造船業から撤退する企業が増えて、第三次造船不況を経て今に至るっていうことになるんですね。
日本造船工業界によると、建造量の世界シェアっていうのは、先ほど申し上げた1956年から1999年まで44年間世界一を守ったんですけれども、これが2000年に、よくある話ですが韓国に追い越されて、そして2010年中国が1位となって、
日本3位ですね。造船日本は危機的状況に陥ったと。性能で勝負すると日本の造船力は世界一なんですけど、お値段勝負となるともう中国や韓国に勝てないっていうですね。
どの程度高いかっていうのを見てみると、船舶の建造コストっていうのを日本と中国比べると、中国は2割安いんですよね。何十億円、何百億円するようなですね、巨額なもので2割差があるっていうのは、これが大きいわけですよね。
結果、一昨年の船舶受注量の世界シェアを見ると、中国が71%、韓国14%、日本わずか8%っていうですね。
随分シェアに違いがありますね。
もう国内の船主さんでさえ中国への発注量を増やしているっていうですね。こいつはまずいと。
国内業界再編と政府の再生戦略
ちょうど今から1年前に業界1位の今治造船が業界2位のジャパン・マリン・ユナイテッドを完全子会社化することを発表して、今年1月に子会社化完了したんですけれども、
あれの理由もやっぱりコスト競争力を強化して中国韓国勢に対抗するっていうのが目的だったわけですね。
崖っぷちの日の丸造船業界に1年前、思わぬ追い風が吹きました。
これはトランプ完成対策の一環として、石破政権が骨太の方針に国内の造船業を再生してアメリカに協力するっていう内容を盛り込んだんですね。
5500億ドルの大米投資の中に造船も盛り込まれたと。業界大騒ぎ。
5500億ドルって当時80兆円、1年前80兆円ですけど、今ドル円レートで換算すると89兆円になってて、9兆円損したみたいな感じになってるんですが、
高市政権にその後なって、わずか数年前は構造不況業種って言われていた造船が成長戦略、17分野の一つに取り上げられたっていうことですね。
造船業再生ロードマップと目標
同時に、2035年、今から10年後を目標年次とする造船業再生ロードマップっていうのが、
今年1月に登場して、その中に何が書かれているかっていうと、日本の船主の船舶建造需要がこれからどんどん増えると。
それに対応するだけの量を国内で作ると。今作っているのが900万艘トンっていうことなんですけれども、
これを10年後1800万艘トン、要するに2倍に増やすっていうのがロードマップの中に盛り込まれたから大騒ぎになってるわけですよね。
ちなみにこの船の艘トン数って、私たちは重量で1トン2トンって思ったりしますけど、全然違ってですね。
船の艘トン数っていうのは溶石。難しいんですよ。断面を切ってあって、微分じゃなくて積分して体積を求めるっていうことを。
どれだけ積み込めるかっていうことで測るわけですね。
イメージとしてはね。
造船アイランド復活に向けた課題
増船アイランド九州復活に向けて政府の後押しを追い風として、九州も動き出すのは大いに結構なことなんですけれども、課題がてんこ盛りと。
課題の一つ目は受注量を増やせるだけの人材、人手不足ですから、労働力確保できるかっていうことで、
2つ目の課題は仮に受注量を増やせたとしても、オーダーメイドなんですよ、船って。
1隻ごとに異なる設計ができるだけの技術者を確保できるかっていうことですね。
3つ目の課題はこれまで増船業界大胆なリストラを実施してきましたけれども、果たして増船業を取り巻くエンジン、モーターとか発電機とか通信装置とかですね、周辺産業がどれだけ残っているかっていうのがよくわかんないっていうことです。
課題解決への取り組みと将来への疑問
これらの課題については、例えば労働力不足っていうところでは、全国に6カ所増船技術センターっていう研修所があって、6つのうちの2つが長崎と大分にあるんですよ。
この辺りを活用したいっていうのと、あと技術者が確保できるかっていうと、国立大学で極めて珍しいんですけども、九州大学が船舶海洋工学科っていうのを工学部に設置してて、私らの時代は工学部増船学科って言ってましたけど、今ちょっとおしゃれな名前になってます。
あと、長崎総合科学大学もそういった技術者を育てるコースを持っていたり、この辺りがあったりして、なんとかいけるんじゃないかなっていう感じがするんですけれども、4つ目の課題が一番大きい課題なんですけれども、高市政権が想定している通り、10年後に今の建造量の2倍の需要が発生するんだろうかっていうことなんですね。
太陽年数を迎えた船舶の代替需要っていうのはあるんでしょうけれども、今の日本が目指しているのは、エネルギーの自給率を高めましょうとか、食料の自給率を、国内自給率を高めましょうっていうことですから、自給率が高まれば高まるだけ、海上輸送量は増えにくくなるわけですよね。
それと今のAIブームですけれども、電子部品の貿易ってこれからもどんどん増えそうなんですけれども、この単価が高くて軽い製品の貿易って、航空輸送が担っていて海上輸送じゃないんですよね。
だから本当にこれだけニーズが増えるんだろうかっていうのがよくわかんない。九州経済にとってこの古くて新しい造船アイランド、どんなふうになっていくのか、これから数年間注目していきたいと思います。
まとめ
鳥山さんありがとうございました。
この時間はズームアップ。水曜日はエコノミストの鳥丸さとしさんでした。