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2023-02-04 16:17

#127 Tale-JP - 財団は負けていない

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紹介SCP-Tale

Author: Rhapsodyyyyyy
Title: Tale-JP - 財団は負けていない
Source: http://scp-jp.wikidot.com/not-loser
Year of creation:2020
CC BY-SA 3.0

SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3

©︎SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/

00:05
スピーカー 2
テイル、JP。財団は負けてない。この地上から人類が消えて、早くも2週間が経とうとしていた。
かつては多くの人々が行き交っていたであろうこの通りにも雪が積もり、氷が張り、以前の面影は一つもない。
8月の米国南部だというのに、まるで北極にでもいるような光景だった。
以前の私なら、無情だとか、悲しいとか、何か特別な感情を抱いたかもしれない。
だが、慣れとは恐ろしいもので、今の私は、凍てついた廃墟を見た程度では何も思わなくなっていた。
いや、ひょっとしたら慣れではなく、これも私の持つ現実改変能力とやらのなせる技なのだろうか。
そうだとしたら、神様もずいぶん余計な力をくれたものだ。
そんなことを考え、じちょう気味に笑いながら眼前の建造物を見つめた。
それは財団の収容施設だった。
財団職員専用の宿舎、財団職員専用の商店街、
そして多くの監視装置に囲まれた大きな工場のような建物。
スピーカー 1
私が日本で見たどの収容施設よりも立派な出立ちだ。
スピーカー 2
また立派なだけでなく、その位置は厳重に否得されてもいた。
日本支部のどの資料にも、この施設の正確な位置は書かれていない。
また、現実改変能力では発見・転移ができないような何らかの工夫もされていた。
スピーカー 1
幹部職員の残したメモから、米国南東部の山岳地帯にあるらしいということだけは分かったので、
スピーカー 2
探し続けてやっと見つけたのだった。
中に入ると、早速多くのオブジェクトの収容室が目についた。
だが全て物品型のオブジェクトのようで、何かが襲ってくる気配はない。
また、監視装置や防御機構の類は機能していなかった。
財団の施設だから、自家発電装置くらいは用意してあるはずだが、おそらくマイナス50度の極寒で全て動かなくなってしまったのだろう。
03:12
スピーカー 2
ただ、現実改変能力の妨害機構は内部でも働いているようで、私の能力は完全にではないもののいくらか制限された。
スピーカー 1
目当てのオブジェクトはすぐに見つかった。 そのオブジェクトの収容室だけは電気が通っており、
スピーカー 2
収容設備が動いて音がしていたのだ。 地熱か何かを利用しているのだろうか。
原理はわからないが、収容設備が動いているというのは恐慌だ。
スピーカー 1
このオブジェクト、 SCP-505が収容違反を起こせば、
スピーカー 2
この米国大陸がまるごとインクに汚染されても不思議ではないのだから。 私は収容設備を点検し、問題のないことを確認した。
スピーカー 1
おそらく誰も管理するものがいなくても、 5年や10年は問題ないだろう。
スピーカー 2
だが、100年後はどうだろうか。 私はメモ帳を取り出し、こう記した。
SCP-505 三角
定期的に確認する必要あり。 メモ帳には既に日本で確認したいくつかのオブジェクトについて記してある。
スピーカー 1
SCP-030 JP 〇
スピーカー 2
収容済みの個体はすべて死んでいた。 野生の個体も透視しているだろう。
SCP-078 JP 〇 三角
自動化された装置で封じられていたが、 いつかは劣化するだろう。
SCP-916 JP 〇
収容施設から消えていた。 生き残りの職員が地下シェルターにでも運び込んだと思われる。
記されているのはすべて、放置すれば地球を居住不可能にしかねないケテル級のオブジェクトだった。
人類文明が健在だった頃は、財団によって適切に管理されていたのだろう。 だが今はそうではない。
スピーカー 1
誰かが財団の仕事を引き継がなければならないのだ。 今は凍てついたこの地球も、
06:00
スピーカー 2
いずれはきっと 元の温暖な星に戻る日が来る。
その時に地球が汚染された死の星であってはならないのだ。 これまで見た中には罰をつけたものはなかった。
いずれもすぐには滅びが発生しないよう、 財団によって何らかの対策が講じられていた。
人類文明が滅びる可能性を誰よりも危惧していた財団の科学者たちは、 その時が来た場合の備えも万全にしてきたのだろう。
だが私は先日、 財団の管理なしではどうやっても地球を、いや全宇宙を滅ぼしかねないオブジェクトの存在を知ってしまった。
SCP-871 食べなければ無限に増え続けるケーキ。
あれもこの施設に収容されている。 私などが様子を見に行ったところでどうにかなるとも思えなかったが、放っておく気にもなれなかった。
SCP-871の収容室は Dクラス宿舎の隣にあった。
その消費任務に当たっていたのはほとんどがDクラス職員だったろうから、 考えてみれば合理的な話だ。
スピーカー 1
また外見には特に何の異変も見られなかった。 財団による管理が終わってから最低でも2週間は経っているはずだから、
スピーカー 2
収容室どころか施設の外までケーキがあふれ出していてもおかしくないと思ったが、 いぶかりながら扉を開けると、そこには何もなかった。
ケーキも、報告書に記されていた皿やテーブルも、 影も形もなかった。
何らかの形で異常性を失ったのだろうか。 いや、そんなことが可能なら財団がとっくにやっていたはずだ。
生き残りの職員が持ち出し、地下シェルターかどこかで消費し続けているのだろうか。
考えられるうちではありそうな答えに思えた。 だがそれが正解だとしたら状況はあまり良くない。
スピーカー 2
何人くらいでその生活を続けているのかわからないが、 私なら何十年も地下にこもってケーキを食べ続けたくはない。
いつか精神に異常を来たすか、おいてケーキを食べる元気もなくなってしまうだろう。 もしそうなれば、地球はある日突然地面から染み出すケーキの山に飲まれることになる。
09:12
スピーカー 2
すぐに SCP-871の収容先へ向かわなければ。 現実改変能力を駆使してその在りかを探ったが見つからない。
SCP-871はこの施設のように現実改変能力者に見つからない仕掛けがしてある場所にあるようだ。 また見つけたとして何になるだろう。
SCP-871は食べる以外の手段で消費することができない。 食事の真似事しかできないこの私では何の力にもなれないように思えた。
どうすれば良いのだろう。 天を仰ぎ、おぼつかない足取りでSCP-871の収容室を離れる。
すると何かの物音が聞こえたような気がした。 何かの収容設備が動いているのだろうか。
だがその音は足音のように聞こえた。 物音はDクラス職員宿舎の方から聞こえる。
私の足は考えるより先に動いていた。 走り、Dクラス職員宿舎の扉を開ける。
果たして、そこには老若男女たくさんの人間たちがいた。
彼らは氷点下を優にしたまわる骨幹の中で、 寒がる様子もなくケーキを食べていた。
スピーカー 1
SCP-871の収容が彼らによって保たれていたことは疑いの余地もない。 一体何者だろうか。
スピーカー 2
皆白人のようで見慣れない防寒服を着ている。 そしてその防寒服は進んだ科学技術で作られたように見えた。
彼らは私の姿を見つけると何事かをボソボソとつぶやき合ったようだが、 それだけで特に話しかけてくる様子もない。
彼らがつぶやいた内容はわからなかったが、 なんとなく私の正体を知っていて、
こいつは相手をしても無駄だと言っているように思えた。 少々気まずい思いで部屋の中央に目をやると、
キャンプファイヤーのように何かが燃えている。 これが寒さを和らげているのか。
だがこの極寒で電気は止まり、木々は枯れ、油すらも凍りついてしまったはずだ。 一体何を燃やしているのだろう。
12:05
スピーカー 2
近づいて確かめてみると、それは人間の死体だった。 思わず後ずさりしたが、
彼らは気に留める様子もない。 その反応を見て私はようやく理解した。
彼らは SCP-7521だ。
地下で彼らもまた、財団による管理がなければ 人類を滅ぼしうるケテル級オブジェクトだった。
スピーカー 1
だが皮肉にも、今は彼らが地球を守っている。 地球が景気に埋め尽くされれば彼らも困るだろうし、
スピーカー 2
それを防ぐためなら不平一つ言わずにどんな任務もこなすだろう。 財団の大役としてなんとうってつけの存在だろうか。
私はいささか感動しつつ、元Dクラス職員宿舎を後にした。
ふと足元に目をやると、氷の上に真新しい足跡がついている。
スピーカー 1
おそらくSCP-7521の一人がつけたのだろう。 彼らの本拠地、
スピーカー 2
SCP-752に続いているのだろうか。 そういえば、SCP-752は地熱をエネルギー源とする地下施設だと報告書に書かれていた。
寒さをやり過ごすにはうってつけの場所だろうし、 多くのSCP-752、市が残っているに違いない。
私は足跡をたどってみることにした。 3分ほど歩くと、SCP-752の入り口についた。
スピーカー 1
これにはかなりめんくらった。 安全面の理由から、医師を持つケテル級のオブジェクトは他のオブジェクトとは離れた場所に収容するものだと、
スピーカー 2
私は日本支部のいくつかの施設を回った経験から知っていた。 だが、SCP-752は財団収容サイトから肉眼で見えるほど近くに位置していた。
そして、これも驚いたことに、 SCP-752の入り口を封じていた堅牢な施設は、明らかに外側から破壊されていた。
その光景を見て、私はやっと気づいた。 全て、計算づくだったのだ。
SCP-871などの危険なオブジェクトは、 あえてSCP-752のすぐ近くに収容されていたのだ。
15:05
スピーカー 2
人類が滅んだその後に、 彼らに財団の代理をやらせるために。
スピーカー 1
私の心配など、貴重だったのだ。 財団は収容施設から出たSCP-752-1たちが、すぐに財団施設を見つけ、
スピーカー 2
そして、その高い知能で数々のオブジェクトの収容手順を見抜くことを予想していた。 人類文明の滅亡など、財団にとっては敗北ではなかった。
その後のことまで全て予測し、 財団が亡くなった後も、この地球を守る策を講じていたのだ。
私は晴れ晴れとした気分で、 SCP-752を後にした。
ふと振り返ると、 その入口に書かれている大きな財団ロゴが目に入った。
私は思わず、 それに向かって敬礼をしていた。
16:17

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