紹介SCP/Tale
タイトル: 流れ
原語版タイトル: Flow
訳者: (user deleted)
原語版作者: SunnyClockwork
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/flow
原語版ソース: http://scp-wiki.wikidot.com/flow
作成年: 2017
原語版作成年: 2015
ライセンス: CC BY-SA 3.0
SCP財団とは: https://ja.wikipedia.org/wiki/SCP%E8%B2%A1%E5%9B%A3
©️SCP財団 http://ja.scp-wiki.net/
1・5・9・13・17・21・25・29日更新予定
BGMタイトル: Night Light
作者: Blue Dot Sessions
楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Night_Light
ライセンス: CC BY-SA 4.0
【活動まとめ】 https://lit.link/azekura
00:06
Tale 流れ
マーサは広大な川の真ん中に立ち、膝下を寒さで震わせていた。
汚れのないガラスのように透明な川は、彼女の周りで渦巻き、打ち寄せるばかりで、岸は存在しなかった。
水面は白い霧に覆われていたものの、彼女はその凶暴とした薄布を越えて、川の端まで見通せるような気がした。
彼女は川の源に思いを馳せた。鳥がさえずっていた。
合唱は開いた窓を通じて、春風と共に流れ込んだ。
風はノートのページを何枚かめくったが、マーサは気にも止めなかった。
ルームメイトのヤンは入ってくるなり声をかけたが、返事はなかったので、ただテーブルに一杯のコーヒーを置いた。
日常的に人を喜ばすコーヒーの穏やかな香りでさえも気を引くことはかなわない。
マーサは不動のまま目の前のページをじっと眺めていた。
意識は全く別の場所を漂っている。
向こう側から音が聞こえる。しかし厚いカーテンのような霧に遮られ、それは遠くおぼろげだ。
何かを忘れている気がしたが、その考えは過ぎ去っていった。
川はより早く、騒々しく流れる。
冷たさは消えないものの、だんだんと心地よく感じられる。
その場で鏡、手を流水に浸した。
それは美しく、液晶のようで何かが足りなかった。
透明に過ぎて、命を持たず、多様性を持たなかった。
川底には色付きの石も、泳ぐ魚も、岸を彩る花もない。
しかし彼女には可能性が見えた。
マーサはペンを取り、書き始めた。
白い霧に覆われた絵画のように、言葉が流れ出ていくのが感じられた。
次々とページを書き上げる間、コーヒーは冷め、鳥は飛び立つ。
03:01
気づかれぬままに、ヤンは部屋に出入りした。
やるべきことはわかっていた。
白い霧はまだそこにあるが、歌が水面を飛び交うことで、
さきよりも軽く、明るくなる。
魚、石、花、木だけでなく、海の暗がりや、かげばった緑がある。
川の流れ方も変わり、もはや連続ではない。
偏極と落下、そして岩まみれの急流。
岸の形は定まり、彼女の作品を見て回ることができるような、一本の道ができていた。
そこに立っているだけで、川の勢いが彼女を下流へ行くように促している。
それに逆らって、彼女は振り返った。
川の源は、いまだ白いノームによって遮られている。
日暮れ後間もなく、マーサは椅子から立ち上がり、勝利の喜びとともに紙束を掴んだ。
ソファーに座っていたヤンは、彼女に夕飯の残りを食べるか、と尋ねた。
出来上がったのは、厚みのないパンフレットというべき一冊で、黒白の表紙で飾られていた。
マーサは何冊かを印刷し、街角で配った。
ほとんどは読まれることもなく、ゴミ箱や下水口に流れ着いたが、いくつかは手に取ってもらえた。
彼らはまず冊子にざっと目を通してから、2回目に読むときになって、より慎重に順番を守って読み直すことになる。
一杯のコーヒーとともに、あるいはバスの待ち時間に、あるいは電気を消す前にベッドの中で、
彼らはページをめくることで何が起こるかをわかっていない。
どれだけ熱心に読もうと、彼らはそれを単なる好奇心であると考えただろう。
家作だが、それ以上のものでもないと。
その夜、彼らは夢を見る。彼らはタイガの夢を見る。
岸と渓谷、滝とうねり、漂う白部、彼らは同じ道をたどり、足元を水しぶきで濡らす。
06:04
タイガに促され、彼らは前進し、流れと一つになろうとする。
朝になり、皆が夢を忘れる。
目覚め、日常に帰る。しかし頭の片隅で、白部に覆われた川が流れる。
はじめは静かに、徐々に明瞭に、毎夜の夢見の度に音を増していく。
そして何度か、一日の仕事か勉強を終えた後に、彼らは帰って書き始める。
言葉が紙か画面の上に生じるとともに、体の中で川は流れ、だんだんと音を増していく。
本当にうまくいった。信じられない。
うん、いや本当にすごいよ。
だってこんなにオリジナルで、つまりクールだって言いたいわけか。
やめて、ヤン。
でもやり方は好きだな。紙とペンで古き良き時代って感じだ。
てっきりキーボードで全部打ち込むものかと思っていたよ。
ん?どうした?
次にもっと大きな企画をやる時は、私が現代人でラップトップを持っていることを思い出させて欲しいものね。
マーサは広大な川の真ん中に立ち、何か新しいものを作り上げようとしていた。
欲望にとどまらない、もっと強い感情を伝える何かを想像した。
彼ら自身を映すような、あるいは新たな視界を与えるような。
それとも現実を形作る何か。
彼らは自分の中を流れる川を知り、無限の可能性と力を知ることになる。
マーサは振り返った。
水面を覆う白い霧を眺め、彼女は川の源に思いを馳せた。
08:34
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