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真夜中の読書会おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになるをテーマに、
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第179夜を迎えました、今夜も新コーナー来ると思いますからスタートします。
先日、宮沢李恵さん主演のオーランドというお芝居を見てきました。
今日はそんなオーランドという物語と、原作者であるバージニアウルフについて、
最初にちょこっとご紹介したいと思います。
オーランドのですね、私は割と初日に近いタイミングで、
埼玉芸術劇場で見たんですけれども、その後渋谷パルコであって、
兵庫、名古屋、福岡などもこれから回られるということなんで、
あんまりネタバレしないようにしゃべりたいと思います。
オーランドはどんなお話かというと、
イギリスの女流作家であるバージニアウルフが、
1928年に発表した長編小説オーランドを原作にしたお芝居でして、
物語の始まりは16世紀末、エリザベス・チョーイングランドを舞台にしています。
宮沢李恵さんが演じるのは主人公のオーランドですね。
彼は彼はってつまり男性なんですね。
美貌と才能に恵まれてエリザベス女王の長愛を受けている若き貴族、
つまりは超美少年の貴公子って感じの役を、
宮沢李恵さんがやったわけなんですけれども、すごくお似合いでしたね。
だいぶ前に、その同じくオーランド役を、
タベ・ミカコさんがやってらしたバージョンを見た記憶があるんですけれども、
タベさんの方が強さがあって、
宮沢さんの方がむしろやんちゃな少年って感じがしましたかね。
どちらも少女漫画から飛び出してきたようなと言いますか、
王子様ルックと相まって、
その画面とキャンディーキャンディーを一緒くたにしたような元服感でした。
そんなオーランドはある日目覚めると突然女の人になっちゃうんですね。
そこから30歳からかな、歳をとらないまま360年もなんと生きなきゃいけないことになるという、
ファンタジー大河ドラマという感じの壮大な物語なんですね。
今まで男性として生きてきて、長愛を受けてきた、そしてモテてきたオーランドは、
女性の体になってしまい、女性として扱われる自分とそのギャップに戸惑いつつも、
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意外と早く受け入れていて、男性の時には気づかなかったことに気づいたり、不合理に行き通ったりという、
かなり現代的なお話でもあります。
決して女になって悪いことばかりじゃないというふうに描かれているのもとても良いなと思いましたし、
ジェンダーギャップの話だけじゃなくて、360年も時代を駆け抜けるので、
ジェネレーションギャップと言いますか、時代ごとの価値観もギャップにぶち当たらせるっていうね、
それを1928年に描いたバージニアウルフがすごいなと思いましたけども、
こういうテーマ設定にしようって思いつくことはできるかもしれないけれど、
それを描き切る必力がすごいですね。
バージニアウルフってなんか名前がすでにかっこいいですもんね。
声に出したくなる名前ですよね。
バージニアウルフにすごく影響を受けましたとかって面接で言ってみたいですもんね。
そんなバージニアウルフは自分一人の部屋というエッセイ本も出してまして、
これはつまり女の人も自分一人の部屋を持つべきだっていう話なんですけれども、
そのあたりも進んでますよね。
今のNHKの朝ドラの虎に翼にも通ずるような話だなと思いました。
というわけで、今日の来ると思いますはバージニアウルフとオーランドでした。
気になった方はバージニアウルフもぜひチェックしてみてください。
さて本日のお便りに参りたいと思います。
ペンネームローズムーンさんからいただきました。
あたやんさんこんにちは。
こんにちは。
真夜中の読書会を聞いて読みたいなと思う本が増えるばかりです。
でも本を読む時間がなかなか取れていません。
本屋さんや図書館に行く時間もないのが正直なところです。
そしてまた子どもたちが夏休みに突入。
毎日朝昼晩とこんだてを考え、部活の練習着の選択をしという毎日かと思うと、
充実したお仕事についていらっしゃり、読書の時間もあるばたやんさんを羨ましく思ってしまう自分もいます。
嫉妬するようなことを言ってしまってすいません。
短い時間でも何かちょっと現実逃避したい気分なのかもしれません。
そんな私におすすめの本があれば教えてくださいといただきました。
ありがとうございます。
そうですよね。そっか、先週ぐらいから夏休みでしょうか。
長くそして暑い夏休みですね。
毎日そうめんってわけにいかないですもんね。
さて、今日の勝手に貸し出しカードは、この度、直木賞を受賞されたイチホーミチさんの
ツミデミックをローズムーンさんにお貸し出ししたいと思います。
このツミデミックはですね、短編集なんですね。
なので、こま切れに読書の時間をとるような場合でも
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集中できないよっていう方にもおすすめかなと思って選びました。
ツミデミックのネーミングはおそらく、罪とパンデミックの掛け合わせかと思います。
コロナ禍、設定としてはコロナ禍、パンデミックをきっかけに
それぞれ登場人物が抱えていた問題とか過去の問題とかが
露呈してという身近なお話ではあるので、
すごく頭を切り替えなくてもスッと入っていけるという意味で選びました。
ツミデミックには6つの短編が収録されています。
それぞれどんなお話か、そして中でも私のお気に入りの1編を
ご紹介していきたいと思います。
ツミデミックに収録されている6編は、
まず居酒屋の客引きのアルバイトをしている男の子が
過去のある出来事を突きつけられるという話、
違う鳥の羽、そしてイケメン配達員に当たることを期待して
フードデリバリーにハマってしまった奥さんが主人公のロマンス、
友人と教師に死んだ少女が蘇って出てくるという話、
臨行、下心を持って一人見の老人に近づくちょっとほっこり、
心温まるお話でしょうか、特別援護者、
それから娘の妊娠をきっかけに自分や隣人の過去の秘密が明らかになる
祝福の歌、そして知り合いではない複数人が集ってドライブをすることになる
この人たちは実は同じ目的を持って集まっているんですけれども
というお話サザナミドライブという6編になっています
私が一番好きなのは2番目のロマンスという小説です
そしてローズムーンさんにもぜひ読んでもらいたいなと思ったのがこのロマンスなんです
いずれもですね、サスペンス小説と言えると思うんですけれども
ロマンスは特に私の好きなサスペンスショートショートのタイプなんですね
ちょっとあんまり言ってしまうとネタバレになってしまうので
もし直木賞受賞作ですし、この後読んでみたいなと思ってらっしゃる方は
ネタバレをあまり聞かずに読みたいなと思っている方は
一旦ここで止めていただいて読んでから
ぜひまた聞いてもらえたらなと思うんですけれども
言ってしまうと私が好きなサスペンスのタイプの一つとして
これはいわゆる信用できない語り手というタイプなんじゃないかと思うんですね
このロマンスの主人公はユリーさんという女性で
4歳の子供がいるお母さんなんですが
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今仕事を探しているところですけれども
コロナ禍でなかなか見つからず
旦那さんは美容室で働いてますが
ちょっとお客さんが減ってしまって
いろいろうまくいってないので
イラついているという状況なんですね
ある日ユリはフードデリバリーの配達員
ウーバーイーツみたいなものだと思うんですけど
めちゃくちゃかっこいい配達員を見つけて
あの人が来るといいなって
フードデリバリーを頼むようになって
でも誰が来るかわからないから
配達員は指名できない仕様になっているのかな
そのアプリがガチャみたいなもので
次こそは次こそはって頼むようになって
だんだん深みにはまっていくという話なんですね
途中まではすごく同情するというか
わかるなっていう
コロナの頃はいろんなことが制約されていましたし
そのくらいの楽しみでもないとやっていけないよね
っていう感じで読み進めていくんですけれども
ちょっと途中からムムムムと思うところが出てきて
これが信用できない語り手だったのかとなるんですね
これすごくよくできた小説でして
この主人公に何というかとても惹かれてしまう
振り回されてしまう私
心情をちょっとうまく説明できないなと思ってたんですけど
ちょうどパトリシア・ハイスミスさんの
サスペンス小説の書き方という小説誌何本かありまして
これもすごく面白い本なので
もしサスペンスとかミステリーがお好きな方は
ぜひ読んでみてください
パトリシア・ハイスミスさんはですね
皆さんもご存知の
見知らぬ乗客
ヒッチコックのやつですね
アランドロンの映画
太陽がいっぱい
マットデーモンのバージョンで言うと
リプリーの原作を書いた小説家の方ですね
あと私が好きなのはケイト・ブランシェットで
映画化もされたキャロルも
パトリシア・ハイスミスです
彼女の書いている
サスペンス小説の書き方という本に
まさにこのツミデミックを紹介するにふさわしい
ちょっと言い当てているなと思ったところがあったので
ご紹介したいと思います
ハイスミスはですね
あらゆる優れた物語には
サスペンスがあると言っています
何か嘘をついているとか
秘密があるとか
ある種の暴力性とか
何らかのアクション
そしてそれが時に死の可能性さえも
漂わせているっていうのが
サスペンスですね
ツミデミックの6編はいずれも
サスペンス要素があるとも言えます
ハイスミスはこの本の中で
主人公の書き方
主人公の設定の仕方
キャラクター設定の仕方について
詳しく解説しています
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例えば太陽がいっぱいのリプリーのように
主人公が罪を犯す側のパターンがありますよね
ホームズとかポアロみたいに
主人公が解決する側の小説も
たくさんあるんですけれども
そうだとしても
いずれにしても
犯罪者側が魅力的である
必要があると
ハイスミスはこれを
感じのいい犯罪者と言っています
面白いいいネーミングだなと思うんですけど
犯罪者にはなるべく好ましい要素が
あった方がいいと言ってるんですね
100%病んでるけど魅力的
っていうこともできなくはないけれども
あと必ずしも同一性というか
共感とかそういうことを求める必要はないけれども
主人公になるべく良い性質を与えることを
お勧めしますと書いてありまして
賢いとか見た目がいいとか
一部の人にはすごく優しい人であるとかね
家族思いであるとか
その方が罪とのコントラストが生まれて
物語が面白くなると
なるほどねと思いましたね
刑事コロンボとか古畑忍三郎の話を
たびたびしてますけど
あれもどちらかというと
犯罪者側の魅力で持たせている部分がありますもんね
そのためハイスミスは
主人公が気取りすぎていないかとか
屈強すぎたりユーモラスすぎたりしていないか
っていうのを非常に気をつけているとも書いてありました
戻って一本道さんの
罪デミックのロマンスに出てくるユリさんは
感じのいい犯罪者でありながら
信用できない語り手でもあるっていうのが
私の解釈です
それ以外も罪デミックに出てくる
罪を犯す人たちは
それぞれに感じがいい主人公なんじゃないかな
という気がしました
そしてパトリシア・ハイスミスは
もう一つですね
タイムペンのサスペンス小説において
大事なこととして書き出し
最初のページが大事だと言っています
ハイスミスが好むのは
情景描写が続くような冒頭じゃなくて
何らかアクションを生み出してくれる
動きのある書き出しがいいと思っている
というふうに書いてありました
太陽がいっぱいって言うと
ちょっと読みますね
その冒頭がどんな感じになっているか
トムは背後をちらりと見て
男がグリーンケージから出て
向かってくるのを確認した
トムは歩く速度を上げた
男が追いかけてきていることは
疑いようがなかった
というのが最初の文章の書き出しなんですけれども
つまり主人公が何か追われている
あるいは見つかりたくない
っていう状況にあるんだなって
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そういう人なんだなってことがわかります
緊張感のある書き出しですよね
今日の紙フレーズは
いちほみちさんの
つみでみっくのロマンスの書き出しが
どうなっているか
ちょっと読んで終わりたいと思います
目の前の曲がり角から
小さな人影がピュッと飛び出してきて
ゆりは反射的にさゆみの手をぎゅっと握る
男の子だった
おそらく走ることを覚えたばかりで
体のサイズに吊り合わないエネルギーを
持て余している
頼りない足取りで失踪したかったに違いないが
背中のリュックから伸びた紐に
あえなく阻止された
とあります
男の子が飛び出してきたっていう
アクションから始まる
動きのある描写から始まりますね
その男の子を引っ張った紐は
子供用のハーネスだと思うんですけどね
そこから主人公は家に帰って
夫に子供のハーネスどう思う
っていう話をするシーンに
繋がっていくんですね
賛成か反対かみたいな
ハーネスについて議論をしたかったわけじゃなくって
夫婦のグルーミング的な会話として
たわいない会話をしたかっただけなのに
夫の側はないわーって全否定で
子供ってすぐに大きくなるしなーみたいな
でっかい一般論にされたことで
そういう話をしたかったんじゃないのになーって
ユリががっかりするというシーンに
繋がっていくんですよ
この短い中に夫婦の関係性が
普通の会話たわいない会話も
弾まないずれている感じになっているってこととか
ユリの性格的なところがギュッと凝縮されていて
非常に引き込まれる冒頭文だなと思いました
この後にですね
シャワーを浴びているときに洗い物をすると
シャワーのお湯の出が勢いが悪くなるから
後にしてくれみたいなことを夫に言われるシーンがあって
いやこれローズムーンさんとか言われたら
切れていい案件だと思うんですけど
だったら自分が洗ってからシャワーを浴びればいいのにね
でもなんかそういうことってほんとありますよね
っていう感じでユリさんにね
かっこいい配達員の人が来るなと思って
UberEatsを頼んだり
毎日料理を作るのも大変なので
時々はUberEatsを頼んだりしたって
別にいいじゃんっていう気持ちに
今どんどんなっていくんですけど
そこからがちょっと思いがけない展開になっていくので
ぜひ楽しんでみてください
あわせてパトレシアハイスミスの作品も
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もしよかったらお読みいただけたら嬉しいです
リクエストありがとうございました
暑い夏休み皆さんも体に気をつけてお過ごしください
さて今夜もお時間になってしまいました
真夜中の読書会おしゃべりな図書室では
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それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう
おやすみなさい
おやすみ