1. 100円で買い取った怪談話
  2. #45 奇談:虫の知らせ
2021-11-24 11:39

#45 奇談:虫の知らせ

怪談といえば、幽霊という言葉が真っ先に思い浮かびますが、何もそんな話ばかりではありません。幽霊が出てこなくとも、怖かったり不思議だったりする話は怪談と呼ばれます。また、不思議な話のことを怪談と区別して奇談と言う場合もあります。今回紹介する、怪談売買所でEさんという男性から買い取ったお話は、まさにそんな奇談と呼ぶに相応しいものかもしれません。
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次、怪談作家の宇都郎・しかたろうです。
この番組では、私が行っている怪談売買所で買い取った、世にも奇妙な体験をされた方のお話をお届けします。
怪談といえば、幽霊という言葉が真っ先に思い浮かびますが、何もそんな話ばかりではありません。
幽霊が出てこなくとも、怖かったり不思議だったりする話は怪談と呼ばれます。
また、不思議な話のことを怪談と区別して、悲談という場合もあります。
今回紹介する怪談売買所でEさんという男性から買い取ったお話は、まさにそんな悲談と呼ぶにふさわしいものかもしれません。
小学校の時、京都に住んでいまして、私の両親は京都出身ではありません。
父は青森の出身で、母は満州生まれて、出身に育って四国に戻ってきて、
二人とも大学で京都に出てきて、京都で知り合って結婚して、ずっとてんてんと釈迦住まいしていたんですね。
僕が小学校5年生か6年生の夏、その時は京都の祇園の近くに縄手通りというところがあるんですけど、
そこの古い酒屋さんの裏に釈迦住まいして、酒屋さんの仕事を手伝いながら、そこで家族で暮らさせてもらっているみたいな。
小学校の課題で、お貝子さんを買うというそういう課題があったんですね。
小学校に生えているクワの葉を持ってきて、貝子2匹か3匹くらいみんな持って帰って、
葉を食べさせてということをしていたんですね。
クワの葉というのは母親が全部やっていたんですね。
小学校の課題だから僕がしないといけないんですけど、ほとんど世話は彼女がやっていて、
毎日だから貝子の世話、切り拭きとかもしてあったと思います。
夏で、すごい狭い家で居間があって、2階に居間と同じサイズの和室があって、
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そこに家族みんなで寝ているような生活だったんですけど、
夏、毎晩僕がかとり線香に火をつける役だったんですね。
寝る前に2階に上がってかとり線香に火をつけて、かとり線香がワーッとなったぐらいにみんなが寝るみたいな。
そんな役目だったんですけど、ある晩僕がかとり線香にマッチで火をつけて、
消えたと思ってゴミ箱にポンってマッチをほかしたんですね、いつものように。
ほかした瞬間にブワーッと火が立ち上がりまして、消えてなかったと思うんですけど、
ゴミ箱自体も木製なんですよ、古い家なんで。
タンスとかいうか、作り置きのゴミ箱でとにかくものすごい勢いで火が上がって、
ウワーッと思ってどないしようと思ったその火がバッと上がったほとんどすぐ瞬間に、
母親がフスマバッと開けて、バケツ持ってて水ザーッとかけて消火しはったんです。
え、何今のと思って。
僕の体感ではかとり線香に火つけました、マッチ消したと思いました、ゴミ箱入れました、
その瞬間火上がった、ウワッと思ったらもうフスマ開いて母親が水バッと消えたんですよ。
その時はびっくりもしたんですけど、安心したんですけど、後からめっちゃ怖くなってきて、
え、何でお母さんのタイミングで水かけはったんとか思って、
多分その場はとてもよくきかんくて、その次の火とかに母親にね、
お母さん何であんなに早く来たんって言ったら、母親が真っ青でね、おかいこさんが教えてくれたんよって。
とにかく不思議で意味のわからない話です。
体験としてはおそらく1秒あるかないかというほんの一瞬の出来事です。
しかしその一瞬の中には多くの展開があり、その展開一つ一つに対して体験されたEさんの心の中では、
驚きと狼狽と安堵と戸惑いが次々と現れ、
全てがないまぜになって本人もどう対処してよいのかわからない状態になったようです。
それではそこで起きた不思議を一つ一つ確認していくことにしましょう。
まず最初の不思議はゴミ箱から上がった火についてです。
Eさんはマッチの火を消したことを確認したそうです。
もちろん見た目は消えていたとしても、その火はマッチ棒の先端の内側でまだ燃えていたということもあるでしょう。
しかしそうだとしても、ゴミ箱に入れた途端にものすごい勢いで火が立ち上がったと表現するほどの炎が上がるでしょうか。
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当時は子供だったEさんの目には小さな火がそう見えただけということも考えられますが、
それでも証言では火が垂直に立ち上がったとのことです。
記憶の中で多少大げさになっていたとしても、ある程度の火が燃え上がったことは確かだと考えられます。
ではなぜ少なくとも目に見える形で火がついていないマッチを入れただけでゴミ箱は燃え上がったのでしょうか。
中に何か燃焼反応に敏感な可燃性のものや気体が入っていたのでしょうか。
その点についてEさんに聞いてみたところ、心当たりはないということでした。
毎晩火取り線香をつけた後はマッチの火を吹き消してそのゴミ箱に捨てており、
これまで火が燃え上がるどころかくすぶるようなことすらなかったのだそうです。
ただその夜、ゴミ箱の中にどのようなゴミがどれくらい入っていたのかは本人も記憶がないとのことなので、はっきりとしたことは言えません。
さて次の不思議はお母さんの行動です。
ここがこの話の中で最も不思議であり、この体験を階段あるいは基段たらしめている点なのですが、
ゴミ箱の中から火が燃え上がると同時に部屋にお母さんが入ってきて、手に持ったバケツで火に水をかけて消したというのです。
これがEさんの悲鳴を聞いてお母さんが飛んできたのなら理解できます。
しかしそうではなく、お母さんが部屋に入ってきたのは火が燃え上がるのとほぼ同時だったのです。
部屋に入ると驚くそぶりも見せず、まっすぐゴミ箱に行って水をかけて消火。
それはまるでゴミ箱が燃えることをあらかじめ知っていたかのようです。
Eさんによると後から振り返ると、お母さんは早い段階からゴミ箱から火が出ることを知っていたばかりではなく、
燃え上がる時間も正確に知っていて、それに備えて襖の向こうでじっと息を潜めて待っていたような、そんな感じがするのだそうです。
お母さんは若い頃占いに凝っていたという程度で、他に不思議な出来事は何もないごくごく平凡な女性で、
もちろん未来を予知するような特殊な力があるわけでもありません。
このような不思議を見せたのはこの一度だけなのです。そこがまた不可解です。
もう一つの不思議な点が、翌朝Eさんに前夜の件を問われて、お母さんが答えた一言です。
おかいこさんが教えてくれたんよ。
この一言のせいでEさんはずっと気になりつつも、それから数十年たった今でも、お母さんにそのことを聞けないでいます。
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それほどにこの一言が重々しいものだったのでしょう。
彼の心の奥に、この件についてはこれ以上聞くことを躊躇させる何かを植え付けたのですから。
さて、お母さんが言ったおかいこさんについてですが、洋産業で飼育されるカイコを指した言葉です。
カイコはカイコガの幼虫で、絹糸の生産には欠かせない家畜です。
絹糸の生産は日本の近代化を支えたと言われるほどのかつての主要産業であり、カイコは農家に収入をもたらしてくれるために
おかいこ様と形象をつけて呼ばれることも多かったのです。
また古事記では植物神である黄月姫の体から、日本書紀では受け持ちの神の体からカイコは生まれたと記されていることからも
カイコは昔から神聖子されており、だからこそおかいこ様という呼び方が定着したのかもしれません。
イーサンのお母さんはおかいこ様から教えてもらったと言っていたということでしたが、
実際にそうなのか、それともたまたまその頃イーサンに代わってカイコの世話をしていたことから
詳しい説明を省くためにデマカセにそう言っただけなのか、真相は不明です。
いずれにしても、おかいこさんが教えてくれたんよ、という返答は
一連の出来事の説明としては十分すぎるくらいの説得力を持っているのではないでしょうか。
幼虫も青虫も真っ白い姿をしたカイコは、見るからに光合しく他の虫にはない崇高な印象を見るものに与えます。
神の体から生まれ出たおかいこ様には、絹糸のもとを作り出す以外にも特殊な力があるのかもしれません。
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それではまた次回お会いしましょう。
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