第三百三十二話『想像力で生き抜く』-【神奈川篇】小説家 吉川英治-
2022-01-08 14:22

第三百三十二話『想像力で生き抜く』-【神奈川篇】小説家 吉川英治-

今年、没後60年を迎える、戦前・戦後と多くの人々に支持されたベストセラー作家がいます。
吉川英治(よしかわ・えいじ)。
代表作は、『宮本武蔵』や『三国志』、そして『新・平家物語』など、歴史をテーマにした大衆小説。
わかりやすい文章で描く魅力的なキャラクターたちと、読者を飽きさせないストーリー展開は、絶大な人気を呼び、連載された新聞が待ちきれず、新聞販売店に押し掛ける人が多くいたほどでした。
1949年、吉川57歳のときには、作家の長者番付で、最高額の1位になるほどの人気ぶりでしたが、そこに至るまでの道のりは、苦難の連続でした。
父の没落により、学業半ばの11歳で奉公に出され、職を転々としながら家族を支えた少年時代。
関東大震災や戦争に翻弄されながら、食べるために必死だった青年時代。
やがて人気作家になっても、家庭をうまく保てず、孤独な日々をおくります。
そして、最も吉川を苦しめたのは、第二次大戦直後の絶望感でした。
戦地に向かう若者たち、特に、特攻隊の兵士たちが、自分が書いた『宮本武蔵』を大切に持参していた事実に、深く胸を痛めました。
剣禅一如という教えに感化された特攻兵。
「私はただ、勇気をもって生きてほしい、どんな困難にも負けない強い心を持ってほしい、そう願って小説を書いてきたのに、結局、戦地に散る若き命を救うことができなかった…。いや、それどころか、彼等の気持ちを高めるようなことになってしまった」
終戦からおよそ5年あまり、彼は一行も小説を書くことができなくなります。
親友の菊池寛(きくち・かん)は、吉川に言いました。
「いま、みんなが辛いんだ。こんなときこそ、キミの小説が必要なんだよ! 吉川君!」
そうして書いた『新・平家物語』は、争うことの無常を説き、多くの国民を癒し、勇気づけたのです。
大衆小説で一世を風靡したレジェンド・吉川英治が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

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