第八十六話『自分に向き合う時間』-【富士山篇】 作家 太宰治-
2017-04-22 12:56

第八十六話『自分に向き合う時間』-【富士山篇】 作家 太宰治-

3か月間、富士山を間近に眺めて、人生を見直した作家がいます。太宰治。
教科書にも掲載されることが多い、太宰治の『富嶽百景』の一文は有名です。
「富士には月見草がよく似合う」。
山梨県河口湖に通じる御坂峠には、この言葉が刻まれた文学碑があります。
文字は太宰の直筆が使われました。
『富嶽百景』の原稿は残っていなかったので他の作品から一字ずつ抜き取り、太宰の署名は、絶筆『グッド・バイ』からとったと言われています。
この石碑を立てるために奔走したのは、太宰の恩師、井伏鱒二でした。
井伏は、不健康で自堕落な暮らしをしている太宰を、この峠に連れてきて、3か月間、天下茶屋に住まわせました。
さらに、甲府に住む女性、石原美知子を紹介し、夫婦の契りを結ばせたのです。
太宰にとって、富士山とは、最も自分と対極にあるものだったに違いありません。
どっしり構えて、ゆるぎない。圧倒的な存在感。
華やかな人気を持ち、万人に愛される。
霊峰と崇められたかと思うと、銭湯の壁面に描かれる。
神と通俗をいとも簡単に行き来する唯一無二の象徴。
太宰は思いました。
「かなわない。富士には、かなわない」。
それでも彼は、3か月間、かすかな風にも揺れる月見草のように、富士山と向き合いました。
この時期を境に、彼は旺盛な執筆活動に入り、『走れメロス』『斜陽』や『人間失格』など、後世に読み継がれる傑作を世に出しました。
ひとには、自分と向き合う時間が必要です。
たとえそのときは無駄に思えても、立ち止まって対峙する。
その勇気と覚悟こそ、成長の礎なのかもしれません。
作家・太宰治が、富士山に教えられた、明日へのyes!とは?

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