第二百三十四話『強い思いだけが、ひとを動かす』-【山梨篇】ピアニスト 中村紘子-
2020-02-22 12:19

第二百三十四話『強い思いだけが、ひとを動かす』-【山梨篇】ピアニスト 中村紘子-

今年は、音楽史上最も有名な作曲家のひとり、ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェンの生誕250周年にあたります。
故郷ドイツのボンだけではなく、世界中で記念コンサートが開催され、彼の作品を耳にする機会が増えることでしょう。
自身のデビュー55周年のリサイタルのひとつに、ベートーヴェンのピアノ協奏曲を全曲演奏することを選んだピアニストがいます。
山梨県出身の、中村紘子(なかむら・ひろこ)。
2014年7月19日、横浜みなとみらいホールで彼女は、およそ5時間かけて1番から5番までのピアノ協奏曲を弾きました。
会場の拍手はいつまでも続いたと言います。
69歳という年齢もさることながら、このとき中村は病に侵されていました。大腸がん。
彼女は、このコンサートの2年後に永眠します。
抗がん剤の副作用に苦しみながら、彼女は最後までピアノに向き合いました。

「私は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で、特に、第4番の第2楽章が好きです。
この楽章のピアノの独奏は、とっても弱い音、ピアニッシモなんです。
オーケストラは、フォルテ。ピアノを威嚇するように迫ってきます。
でも、一見、頼りなげで哀しく、弱そうに見えるピアノが、結局、オーケストラを最後まで引っ張っていくんです。
この楽章を演奏すると、耳が全く聴こえなかったベートーヴェンの思いをすぐそこに感じるんです。
どんなに辛かっただろう、孤独だったろう、それでも彼は闘いを続けた。倒れる、その日まで…」

彼女は、まるで自分の魂を重ね合わせるように、ベートーヴェンの思いを鍵盤に刻みました。
中村は、練習の鬼でした。
ピアニストであり続けることを大切にしたからです。
がんが見つかったとき、医師にこう言いました。
「治っても、ピアノが弾けないのは困ります」
技巧だけではなく思いを伝えるピアノにこだわったピアニストのレジェンド、中村紘子が人生でつかんだ明日へのyes!とは?

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