1. 雑踏
  2. 「若い読者のための短編小説案..
2024-09-18 55:15

「若い読者のための短編小説案内/村上春樹」を読む①

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・若い読者のための短編小説案内/村上春樹

・水の畔り/吉行淳之介

・馬/小島信夫

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サマリー

「若い読者のための短編小説案内」は、村上春樹が短編小説を解説する講義を基にしており、学生たちと一緒に作品を読み進める内容です。このエピソードでは、村上春樹の講義のスタンスや、吉行純之介の短編小説「水のほとり」について語られています。村上春樹の「水のほとり」に関する解説を通じて、同時代の作家である吉行純之介の作家論や背景が語られます。物語の構造や文体の揺れ、また作品同士の関係性について深く掘り下げる様子が印象的です。村上春樹の短編小説に対する深い考察が展開され、彼の独特な文体や物語構造についての理解が深まります。また、小島信夫の作品との比較や、作品内での不条理な状況についても触れられます。村上春樹の作品における馬の象徴的な意味や主人公の嫉妬心が語られ、作品の内容や解釈について意見交換が行われます。夫婦関係や愛情表現の複雑さについても考察され、特に主人公の心理描写が注目されます。村上春樹の作品を通じて、読書の楽しさと自己の感想を持つ重要性について考察します。

講義の背景
コーノ
じゃあ、「若い読者のための短編小説案内」が一応、メインですね。
村上春樹がプリンソン大学でやってた講義で、短編小説を何やろう、解説するみたいなやつですよね。
ポーさん
そうですね。学生と一緒に読むっていうやつですね。
コーノ
読み方みたいな感じですかね、どっちかっていうと。
ポーさん
うん。なんかみんなで話し合うみたいなこととか、一緒にディスカッシュするって書いてたんで。
コーノ
そうですね。で、なんかそういう本が一応出てて、で、そこには案内というか、紹介される短編小説の本文が載ってないんで、
僕はその本買ったけど、ずっと読んでなかったんですよ。
ポーさん
はい。
コーノ
で、その紹介されてる小説っていうのが、なかなか手に入らないというか、見当たらない本が多かったんで、
で、ずっと今まで読んでなかったんですけど、今回そういうのをやってみたいなと思って、
紹介されている小説を読んでから、村上春樹の解説の本を読むっていう、一緒に講義を受けてるみたいな、そういう体験ができたらいいなと思って、
いつからこれをやりたいと思ってて。
ポーさん
いつから思ってたんですか。
コーノ
もうこれ買ったときからです。
ポーさん
ちょうど買ったんですか。
コーノ
いつ頃かな。でも数年前とかですね。これ知ったのが村上春樹のエッセイとかを読み出してからなんで、
なんかそんなに前ではないですね。5年とかからでも。
ポーさん
ようやくつんどくが解消されるって感じですね。
吉祐純之介の作品
コーノ
そうですね。まだ全部は読んでないんですけど。
ポーさん
まず村上春樹は、このそれぞれの作品入る前に、まずはじめにっていうところで、自分がどういうふうにこの短編を授業で取り上げたかっていう話を書いていて、
そこは割とそれを踏まえて読んだ方が良かった。
村上春樹はあくまでも小説家だから、文芸評論家みたいな分析はできなくて、自分が物を書くという見地から作品を読み解いていたっていう、
そういうスタンスの表明がまず出ましたね。
コーノ
これが引用というかチェックしてるのが、これ村上春樹の読書論というか、読書の楽しみみたいな、醍醐味みたいなことを言ってたのが25ページにあって、
読者がその作品を読んで、そこにどのような仮説、偏見の柱をありありと立ち上げていけるかということに、読書の喜びや醍醐味があるのではないかと言ってて、
それを自分はこの本を読んで、こういうふうに思いましたよっていうのをやるっていうのが今回の趣旨やったっていう感じですね。
ポーさん
そうですね。
コーノ
で、これ37ページに一応、趣旨の延長として書いてるんですけど、講義をやるにあたって、作家にしかわからない秘訣とか、創作本の頼りに読み解く。
村上春樹がやるからには、作家としての立場からの読み解きみたいな。
あとは横糸と縦糸って言ってましたけど、その縦糸は自我と自己の関係をどのように位置付けていくかを中心的な論題に作品を。
これあんまりよくわかんないですけど。
ポーさん
そうなんですよ。また後で説明することわりが入っていて、自我と自己っていうのを図解で書いてくれてるけど、
自我と自己っていう要望の仕様があくまでも自分独自のものだから、ちょっと一般的な定義とは異なってますっていう断りを入れていて、
でもそれが村上春樹独自にどういうふうな位置付けで自我と自己を使ってるかっていうことは書いてないから、
わかったようなわからないような感じはありました。
コーノ
そうですね。中心に自我があってとかどのでしたっけ。逆でしたっけ。
ポーさん
えっと、中心に自我です。
コーノ
自我ですね。
ポーさん
はい。
コーノ
で、その社会の抑圧みたいなのがあって。
ポーさん
エゴが、自我、自我、エゴがあって、周りにセルフ、自己っていうのがあって、外から外界が常に意味とセルフの方に力を入れているっていう、そういう無意識とか意識の話ですよね。
コーノ
だから、その図だけ見たら、社会があって本音があって建前みたいな感じなのかなって僕は思ったんですけど。
ポーさん
そうですね。
その本の解説を読んでるときあんまりよくわかんなかったです。移動していくとか。
そうそう、これちょっと私もね。
コーノ
難しいですね。
今回は最初の吉祐純之介の水のほとりからやっていくんで、1個ずつ順番に読んでいくっていう感じですね。
じゃあまず本の感想を言ってから、村上春樹の解説の感想みたいな感じですかね。
ポーさん
そうですね。まず読んだ最初の印象を語っていいと思います。
コーノ
この吉祐純之介の水のほとりっていうやつが、まあまあ初っ端からこれ全然手に入らなくて。
ポーさん
そうですね。
コーノ
絶版ですね、大体出てる本が。
で、僕が今買ったやつが、襲影者文庫の吉祐純之介は男と女の子っていう文庫が一応あるんですけど、これに一応入ってます。
ポーさん
はい。
コーノ
で、これは昭和53年の初版ですね。文庫やけど。だからめっちゃ前のやつです。
で、別に売ってたらその価格はなかったです。これは600円か700円ぐらいで。
ポーさん
あ、そんなもんですか。
コーノ
はい。買いました。ただ売ってない。なんせ。全然売ってないです。
で、一応全集とかには入ってますね。
ポーさん
そうですね。私は全集で読みました。新庁舎の吉祐純之介全集の第一巻。
コーノ
え、サインイリースかそれ。
ポーさん
あ、ほんとだ。
コーノ
本人ですよね、これ。
ポーさん
あ、ほんとですね。
コーノ
図書館に。
ポーさん
これ印刷?
印刷っぽいですね。
印刷か。さすがに。
違うと思います。これは印刷っぽいです。
さすがに。
ちなみにこの若い読者のための短編小説案内の最後に、読書の手引きっていうページがあって。
コーノ
はい。
ポーさん
で、そこで取り上げた小説がどこに収録されていてっていうのが書いてあるんですよ。
コーノ
あー、僕はそれ見てなかったですね。
ポーさん
私は後で気づいたんですけど。
コーノ
はい。
ポーさん
それで男と女の子っていうのにも収録されてるって、これ見ると全集書籍に収録されてるって書いてるんですけど、どうなのか。
228ページ。
コーノ
はいはいはい。こんなのあるんですね。
ポーさん
ねえ。全集、まあもちろん私が読んでる、読んだ全集も紹介されてるんで、どこに入ってるのかなっていうのはこれを読めばすぐにわかります。
コーノ
そうですね。僕はこれ、存在を知らなかったですね。
この読書の手引きっていうのはあるっていうのは。
ポーさん
うん。私も後で気づきました。
コーノ
まずはその吉祐純之介の水のほとりの紹介。
ポーさん
はい。
これあれですね。いつもみたいにAmazonの紹介とか文庫本の裏の説明みたいなものがないですね。短編集だし。
コーノ
戦後の作家ですね。
はい。
で、戦後に芥川賞とか取ってる人ですよね、確か。
ポーさん
はい。文学史上では第三の新人っていうくくりで語られてる。
コーノ
年代的には太平洋戦争は経験してて出生はしてないですよ、確か。病気かなんかで。
ポーさん
吉祐純之介はしてないですね。
コーノ
でもなんかその当時学生やったぐらいの年の人。
ポーさん
ウィキペディアで第三の新人のところを読むと、1953年から55年頃にかけて登場した新人小説家で、第一次戦後派作家、第二次戦後派作家に続く世代として現れたっていうふうな書き方ですね。
はい。
一次、二次で第三の新人。
コーノ
うん。
ポーさん
ざっくり言うと、糖病者っていう分類ですね。
はい。
主人公が東京に住んでたけど、病気になって地方の病院に入院すると。
主人公は東京に年下の女の子っていう書き方をして、少女かな。
コーノ
少女が恋愛の相手としていて、その子に会いにまたちょっと入院中に東京に戻って、その子と出会ってまた病院に帰るっていう。
そうですね。
ポーさん
ざっくり言うとそれだけの話で。
コーノ
そうですね。
ポーさん
そんなにこう話に起伏があるというか。
コーノ
まあ短編っていうのもあるし、しっかりストーリーがあるっていう感じの話ではないですね。
川の近くの病院。
で、その都会と田舎みたいなのを割と象徴的に描いてましたね。
で、これ東京とは多分書いてないですね。これ都会って言ってましたね、ずっと。
ポーさん
あ、そっか。都会って書いてありましたね。
コーノ
東京なんですけど、多分。
ポーさん
そっかそっか、都会か。
コーノ
なんかそれぐらいちょっとぼんやりした書き方やったりとかして。
ポーさん
そうですね。
コーノ
なんかいろいろその入院中に見えてくるものとか聞こえてくるものとかをなんか描写してるっていう感じも、
街の風景というか、景色とかがいっぱい出てきたりとか、ラジオとかね、なんか。
ポーさん
うん、なんか現状が聞こえてくるとかね。
この小説はなかなか読んだ後に、何これっていう感想が私はまずあって終わっちゃったみたいな、なかなか。
コーノ
僕でも短編小説で大体そんな感じだと思うんですよね、いつも。
特に、今回もこれ現実的な話なのか、幻想的な話なのか、ちょっと判断つかない感じあって、最初読んでて。
地名がはっきり出てくるわけでもないし、なんかその病院の周辺の町とか院長とか、ちょっとなんか偶和っぽいじゃないですか。
ポーさん
そうですね。取り勝ってる院長ね。
コーノ
そうそうそうそう。で、なんか表現の仕方とか切り取り方というか、そういうのもちょっとぼんやりしてるんで、
なんかこれはファンタジーなんかどっちなのかなと思いながら読んでましたね。
ポーさん
なんか川の名前だけ具体的に出てきたんで、それは確か伊東寄川って名前なんですけど、どの辺かなと思ってちょっとネットで見たけど出てこなくて。
コーノ
あるんですかね、じゃあ。
ポーさん
なんかね、ちょっと本当に私も偶和っぽいというか、ファンタジー感があるし。
コーノ
なんか水路か運河かと思ったら、ちゃんと川の支流やったみたいな。
ポーさん
なんか村上春樹っていうと、世界の終わりとハードボイルドワンダーランドの世界の終わりにちょっと通じる雰囲気がありましたね。
コーノ
そうですね。なんか幻想的な感じでしたね。ところどころ意味ありげな表現とかがいっぱいあったりとかして。
そうですね。
それもなんか気になるけど、特に意味はないみたいな感じでそのまま終わっていく。
ポーさん
まあでも確かに短編はそういうものっていうかそういうものかもしれないですね。
作品解説の魅力
コーノ
なんかカフカの短編とかも、ようわからんなと思いながら終わることとかよくあったんで。
意味わからないのいっぱいありましたよね。指でアスパラガス食べるとかとか。
ポーさん
そうですね。
コーノ
ドアの閉まらないタクシーとか。
なんかなんとなく意味ありげやけど、何かのメタファかなとか思いながら読むけど、特に何かわからないというままの。
ポーさん
なんか川で釣りをする女も出てくるじゃないですか。
あの人もなんかちょっと何なのかなって気になってましたけど。
コーノ
派手な着物の女。
ポーさん
病院で入院してる間にちょっと幻聴みたいなものが聞こえてくるようになったっていうシーンが出てきて。
こういうのが出てくるとその後のものって全部これって本当のもの?現実の話なのか幻聴なのかっていうのがだんだん疑わしくなってきて。
そういうのもあったから余計にこの話の現実感がちょっと怪しいなっていう。そう思いながら読んでましたね。
コーノ
床屋に行ったりとかね。
まあだからこれ自体は読んで、なんかそんなにこれで話せんのって思いましたね。
そうですね。大丈夫かなって思いましたね。
なんか好きで結構何回も読んだみたいなことは確か言ってたと思いますけど。
この作家の代表作でもなんでもないみたいな話ですね。
そうですね。
水野ほとり自体はそれぐらいの印象でした。
ポーさん
そうですね。
あれですね、我々2人とも吉野木純之介初めてですね。この水野ほとりが初めてだから。
これがその吉野木純之介の作品の中でいわゆる吉野木純之介的なものなのか、はみ出たものなのかとかそういう比較もできなかったんで。
ちょっと最初読んだだけだと私も感想を言いづらいなっていう感じでしたね。
コーノ
そうですね。じゃあもうめっちゃ早いですけど。
ポーさん
そうですね。
コーノ
早速本編というか村上春樹の解説のほうに入っていきますか。
結構ね、難しいなと思いながら読んでましたけど、ただこの水野ほとりに関しては、
この解説読んで、めっちゃ内容をちゃんと噛み砕いてくれたっていうのが思って。
ポーさん
そうですね。私も思いました。
コーノ
これめっちゃ面白かったですよね。僕はこの水野ほとりの案内はすごい面白かったです。
ポーさん
私も先に言っちゃうと馬、後で話す小島信馬より、吉野木純之介の水野ほとりの解説のほうが面白かったです。
馬はわけわからんものでした。
そうですね。こっちの解説良かったですね。
読まないと全然面白さがわからなかったです。
村上春樹と吉行純之介の関係
コーノ
そうですね。結局しかも水野ほとりの解説で、読者の短編、小説案内のスタイルがちょっとわかっていくんですけど、
この他の作品とか結構読み込んでるとわからんよなっていうスタイルでしたよね。
ポーさん
作品単体で話してるのではなかったですね。吉野木純之介をちゃんとわかってないと、
作家論みたいな、作家と小説の関係を結構大事に話してたんで。
コーノ
そうですね。経歴とかも言ってましたし、他の作品との兼ね合いとかも全部言ってましたね。
だからこの水野ほとりをきっかけに別の本を読むっていうのも全然ありだと思いましたね。
まず村上春樹が言う水野ほとりの説明として、マイナーで未完成の作品。
当表もないけど、おそらく事実が元になってるだろうっていう。
だから実際僕ら読んで幻想的やなとかファンタジーやなとか思ったけど、
ぼかしてただけでちゃんと元になる話があるんじゃないかという、
作者のプロフィールからすればありそうなっていう、そういうことでしたね。
だからそれも知ってる人やったらわかるって感じですね。
ポーさん
そうですね。
作品のバックグラウンドっていうのをめっちゃ掘り下げていくっていうことをいきなりやられて。
コーノ
そういう感じと思いましたね。
ポーさん
この水野ほとりを書いた時期の吉浩純之介っていうのが同じように病院に入っていて、
ちょうど芥川賞を取って、その後入院してる。
コーノ
入院中じゃなかったですか。
ポーさん
入院中に受賞したのか。
コーノ
この水野ほとりだけ読んで絶対わかんないですよね。
ポーさん
絶対わかんないですね。
吉浩純之介の創作方法の表彰として読めるみたいな感じで絶対わからんわと思って。
コーノ
これだけ読んで講義を受けた人とかほんま何もわからんかったと思うんですよね。
ポーさん
やっぱりあれですかね、実際の授業だともうちょっとこれだけじゃなくて、ある程度もっと読んでっていう、そういう前提なんですかね。
作品の背景と読み方
コーノ
これにしては準備とか大変じゃないですか、それやったら。
ポーさん
そうですよね。
コーノ
中でもこれを取り上げたっていう感じなのかもしれないですけど。
ポーさん
だから僕は一番最初の感想として、そこまで思ってなかったっていうのが。
河野さんが。
コーノ
そうです、僕は。
ポーさん
だって前提知識ないとわからないって思いもやらなかったですよ。
コーノ
かなり踏み込んでましたからね。
ポーさん
そうですね。
村上春樹が作品の出てくるものを2つに分けるんですよね。
技巧性の世界と技巧性ではない世界。
それに分けて対比させていくと結構きれいに収まって。
その2つの世界の揺れ動きっていうのが、吉浩樹純之介の作家としての葛藤とつながって読めるみたいな話でしたね。
コーノ
そうですね、小説は下手やけど途中で上手くなってくるみたいな。
でもこの下手さがすごい、この人の短編の味みたいなのがあって。
物語じゃないんですけど、文体的な話とかすごいしてましたね。
文体の揺らぎが、この文学の葛藤であって、これから職業作家としてやっていくぞっていう覚悟が見えた途端に上手くなっていくみたいな。
ポーさん
そんなん分からんやんって思いましたけど、でも最初に言った村上春樹が講義でどういう風な読み方をするっていうスタンスとして、
自分の作家としての視点で読むっていう話をしてたんで、
そことはリンクしてたし、むしろ村上春樹の作家だからこそそういう話をしてもらえたっていう感じなんで、面白かった。
コーノ
すごいね、本当に作者のプロフィールと合わせて解説してくれたっていう感じでしたね。
ほんま、国語の授業みたいな感じですよね。
ポーさん
そうですね。大学の授業っぽいですよね。
で、その後2回目読むと、確かにそういう風に、その頭で読むと、なるほどなと思いながら読めましたね。
コーノ
なんかあれですよね、村上春樹と吉行純之介も接点があったんですよね、確か。
ポーさん
なんかエッセイでそんな話をしらっとしてましたね。
コーノ
だから、やたらと文章が下手、文章が下手だからめっちゃ言うから、これ怒られるのかなと思ったけど、
まあ、もしかしたら親しいのかもしれない。
ポーさん
吉行純之介は一般的にはそういう美学があって、文章も研ぎ澄まされてるみたいな、そういう評価なんでしょうね。
でも、自分はそこ、そうだとは思わない。
コーノ
なんかこの短編に限らず、どっちかというと下手みたいなことで。
ポーさん
そんなにみんなが言うほど洗練されたものではないと思う。もちろんそれが逆に素晴らしいって書いてますけど。
コーノ
それもなんかこう、なんていうんですかね、親しさの中のなんかこう、いじってる感じが。
58ページで、まさか船が書いてる。
ああ、船に心が和んでいたのはこういう理由だって話ですね。
深読みというか、なんか意味あんのかなみたいな。
ポーさん
で、このシーンはちょっと私も頭に残ってて、なんか気になるシーンだなと思ってたんですけど。
コーノ
そう、メタファーやっぱりあったんやみたいな、だけどまさか船だった。
これしかも、船が結構実は重要やったみたいなことを言ってて。
なんかその、あんなに人工的な小さい川の流れの中からこういう船収穫を得ることができるっていうのが。
チラッとこう、床屋の主人が触れてただけで、昔はここもよく船が取れたんですけどね。
あ、じゃあ自分もこのやり方で小説やっていけるって思った。
飛躍しすぎやろって思ったんですけど。
なんか人工的な文体で書いても売れるんじゃないかっていうふうに思ったみたいな。
そんなことは本文では一切言ってないですけど、そう読み取れるみたいなことをこの村上春樹は言ってるんですけど。
ポーさん
そうですね。すごいファンの人っぽくないですか。
あんなに吉祥寺之介の気持ちを自分で考えついてというか、想像するって。
村上春樹がすごい吉祥寺之介が好きなのか、村上春樹の想像力のやっぱ凄さを垣間見ますね。
コーノ
一応経歴と合わせて、その後の活躍とか合わせて、そう読み取れるっていうことなんでしょうね。
情感と物語の構造
コーノ
僕は一応この文庫の男と女の子、入ったやつ一応全部読んだんですよ。
ポーさん
どれくらい入ってないんですか。
コーノ
3つですね。この男と女の子っていう表題作が150ページ。
ポーさん
結構長い。
コーノ
中編ぐらいであったんですよ。
この中編に出てくる女の子が、同じ女の子なんですね。この水のほとりに出てくる女の子。
一緒であろうって言われてるんですけど。
だから、よりこの東京で会う少女のことを詳しく書いてるって感じでしたね。
ポーさん
男はまた別の人ってことですか。
コーノ
男も一緒です。
ポーさん
男も一緒。
コーノ
一緒やけど、この男と女の子の方では入院とかはしてないんですね、まだ。
ポーさん
前の話ってことですか。
コーノ
そうですね、前ですね。出会うときの話ですね。知り合うときの話。
ポーさん
この女の子、表題作は女の子で、水のほとりでは少女ってなってますけど、何歳ぐらいなんですかね。
コーノ
男と女の子の解説やったかな。村上隼の解説やったかちょっと忘れましたけど、ハイティーンって書いてありましたね。
だから18とかじゃないですか。その辺やと思います。17、18とか。
で、男は、この男と女の子の男は30歳です。
だから実際の多分年齢がそれぐらいやったんじゃないかみたいなこと、あとはそのあれですよね。
村上隼の解説では作者のバックグラウンドめっちゃ掘り下げてるんで、実在したんじゃないかっていう話もしてるし。
ポーさん
でもなんかこう、自分の実感として、そういう30歳の男とハイティーンの女の子がそういう恋愛遊戯みたいな形で関係を持ってるっていうのが、
今一つ現実感がないというか、私の身近にはない話なんで。
コーノ
まあでもそれは。
ポーさん
どんな感じなのかなって。
コーノ
その辺は多分文学やからっていう感じじゃないですか。
恋愛って言っても、すごいこの男と女の子の方ですごいその模様は書かれてるんですよ。
どういう形で知り合って、どういう風に恋愛感情を抱いていってとか。
で、そのどういう風な関係にあってみたいな。
割とそれはどこまで事実かどうかわかんないですけど、しっかりその心情が書かれてて。
僕はこっちを読んだ時に、こういう感じなんかって読み取れるぐらいによく書かれてましたね。
自分がそれを共感できるかっていうと、その状況がないんで。
千歳小児で両親が死んでて、その天ぷら屋の親戚か何か遠縁かなんかで引き取られて、天ぷら屋で働いてるけど、
そこの主人にちょっとセクハラというか、手出されそうになってて。
で、その女の子は例えばレイプとかされる前に、自分の裸をもう世の中に出してしまいたいって言って、
エロ雑誌のムードモデルに応募で来るっていうオープニングなんですよ、元々の女の子は。
で、そこで演習で働いてた人の友達が主人公の男なんです。
で、その現場に行って初めて出会うっていう。
で、主人公は無職なんですけど、その時は。
で、その子がちょっと気になるから天ぷら屋に通ったりとかして、
で、その友達、編集者の友達とかと一緒に話してて、何か得意なことはないの。
歌が得意っていうか、歌オーディション。
この時代のど自慢があったらして、のど自慢とか出てみたらって言ったら応募して、結構のど自慢にテレビで実際出るようになった。
で、テレビで歌ってるその女の子を眺めてる、そういうシーンとか見るんですよ。
ポーさん
結構その辺の年齢っていうよりは、境遇とかって、そういう同情とかが結構あるのかなとか。
コーノ
あとちょっと助けたいみたいな気持ちとかも含まれてんのかなとか、そういう感じでしたね。
ポーさん
まあ、男女の関係もあるけど、ちょっと親とか相談みたいな。
コーノ
入口は多分、もっと若い人を助けたいみたいなぐらいやったのかなと思うんですけど。
分かんないですけど、結構その辺がしっかり。
それがメインの話だったんですよ、男と女の子に関しては。
こっちは結構読みやすいし、内容入ってくるんですけど、その後の話をギュッて絞ったのが水のほとりって感じだった。
なるほど。
で、なんかこの吉祐義純之助は、その、血格で入院して、結局肺の手術をしてみたいな。
ポーさん
あ、そうなんですか。
コーノ
そうみたいですね。
で、その手術をして、一応その血格は治ったというか、再発はしてなかったけど、
ずっと前から喘息持ちみたいな、アレルギーの喘息持ちみたいな。
で、それが結構いろんな作品でテーマになってたりとかするっていう。
ポーさん
あ、そっか。もう一つのあの、血統。
コーノ
はい。
ポーさん
あれも喘息の話でしたね。
そうですね。
前集、私が読んだ前集と、コノンさんが読んだ文庫で被ってたものが水のほとり以外にもう一つあって、
それが血統っていう作品なんですけど、
はい。
それは喘息が出てきてましたね、話の中に。
コーノ
そうですね。で、この男と女の子の方もめっちゃ出てくるんですよ。
アレルギーと喘息みたいな話が。
うん。
だから、この話では女の子がすごいネタバレになるんですけど、
女の子がどんどん離れていって、で、女の子の子が歌ってた、
ノドジバンで歌ってた歌を聞くたんびに、なんかほっさがってるみたいな。
へー。
その。
ポーさん
あ、だからラジオの、ラジオから女の子の声が聞こえるって。
コーノ
あー、そうかもしれないですね。
ポーさん
水のほとりにそういうシーンがあったんですけど。
コーノ
歌かもしれない。
ポーさん
なるほど。
コーノ
歌ってた番組かもしれない。
ポーさん
あー、そういう話があったと思うと、
すぐ突然出てくるじゃないですか、ラジオから少女の声が聞こえてきたみたいな。
コーノ
そうですね。行かないと思ったって。
なるほど。
なんかどんどん距離が離れていって、結局別れたみたいな感じ。
別れたというか、それっきりになったみたいな感じ。
で、吉井基準之介はそっからも小説家デビューしてっていう感じになるし、
なんかそういう失恋というか、なんて言ったらいいんですかね、
添えになっていくっていうのが、こうなんと、トラウマというか、
なんかそういう引き金になるらしくて、前足とかのアレルギーの。
結構なんか、これ自体は面白かったし、
なんかどういう話を他に書いてるのかな。
これめっちゃ最初の方の小説じゃないですか、秘密のほとりにしても。
で、男と女の子とかも割と初期の作品なんで、
村上春樹の文学スタイル
コーノ
この後どういう、この人は作家人生を送っていて、
どういう作品を書いていくのかなみたいなのがちょっと気になりましたね。
ポーさん
なるほど。
コーノ
で、僕はそれで、これまた後で喋るんですけど、
芥川少女小作が入ってる文庫を買いました。
シューってやつですね。
まだ全然読んでないんですけど。
ポーさん
中古本っぽいですね。
コーノ
これ新品です。
ポーさん
新しいですか。今はじゃあ普通に。
売ってます、売ってます。
コーノ
70歳まで生きてはるから、ずっとその後も書いてはるはずなんで。
この辺が初期の作品だとして、
今後どういう小説を書いていくのかなっていうのはちょっと気になりましたね。
もう死んだ人やけど。
ポーさん
やっぱり村上春樹のチョイスが個性的でしたね。
コーノ
その作品もそうだし、作家もそうだし、
あとは何か一緒に上げられていた他の作品っていうのがあって、
それも一応気になるなと思って、
海沿いの土地でとか出口とか夕暮れまで、
何かそういうのも合わせて読んだらいいんかなと思いますね。
ポーさん
次元的な定評があるって書いてあるやつですね。
コーノ
この小説案内で、読み解くというか、
作家の書き手のスタイルみたいなのを書いていかがると思うんですけど、
向き合わないスタイルみたいな感じでしたね。
ポーさん
そうですね。
コーノ
自我には向き合わずバランスをとっていくみたいな。
ポーさん
さっきのエゴとセルフの話ですよね。
分かるような分からないような、感覚的には分かるかなって。
コーノ
踏み込まないんですよね。
この先行ったらもっとドロドロしていくような、
自我の本当に深いところには、
踏み込まずに行くことによってバランスをとっていくっていうのが、
小島信夫との比較
コーノ
大人のスタイルみたいなことを。
ポーさん
常に移動し続けてるっていう安定性っていう感じでしたよね。
コーノ
移動行為の文学的技巧性が魅力とか書いてましたね。
どっちつかずの状態に置くことに長けた作家って。
ポーさん
恋愛だとイメージしやすいですね。
そうですね。
コーノ
すごい落ち込むっていう感じでもなく、
なんとなくのらりくらりといける。
ポーさん
そうですね。常に微熱な感じ。
コーノ
だとは全然関係ないですけど、
村上さんっていうのは野球の例えがやたら多かったなっていうのを。
ポーさん
草野球の例え書いてますね。
コーノ
馬の時はそんななかったんですけど。
石垣純之宣言、やたら野球の例え多い。
ポーさん
どんなでしたっけ?
草野球云々っていうのは最初の始めにのところにあった例えでしたね。
自由にのびのびと読みましょうみたいな話でしたけど。
野球で言えば打線がつながってこないと読むようなこと言ってます。
ここでうちに来るなって書いてますね。
ボクスターの例えも使ってますね。
49ページの最初の2行目。
コーノ
これだからこれが分かりやすいんか分かりにくいんかちょっと。
いまいち分からへん。
ポーさん
それが効いてるのか。
コーノ
でもこの解説は面白かったです。
ポーさん
そうですね、これ読まないと面白がり方が分からなかったな。
コーノ
良かったですね、これは。
これは良かったですね、もうセットで良かったですね。
もっとなんかね、こういうのやってくると全然面白いですよ、やっぱり。
ポーさん
他の作品に出てくるんですか。
そうですね、その翻訳モノマネってやってるじゃないですか、たまに。
解説とか?
コーノ
解説そうですね、柴田本幸と2人でサリンジャーのサリンジャー戦記とかもやったし、
読み解き結構やってるじゃないですか。
ポーさん
そうですね。
コーノ
あんなんとかもやったから。
結構こういうの、まあ怒られたりするかもしれないですけど面白いなと思いましたね。
ポーさん
ロンググッドバイも白にすごい長めの解説だから後書きがあって読み応えあったし。
コーノ
全然評論とかできる人やなって、やっても読ませるなと思いましたね。
そうですね。
やっぱりだから、エッセイの定評があるんで、物語以外でもちゃんと読み手がつくなっていうのがすごい思いますね。
ポーさん
そうですね。
コーノ
小島信夫の馬に行きますか。
馬に行きます。
これ読んだことありました?
ポーさん
馬はあります。
そうなんですか。
はい、2回目、今回は2回目でした。
コーノ
これは小島信夫の僕はアメリカンスクールっていう新潮文庫。
ポーさん
はい、私もそうです。
コーノ
はい、入ってました。
ポーさん
アメリカンスクール、解説が穂坂和志でしたね。
コーノ
そうなんですか。
ポーさん
また後で全部読み終わったからゆっくり読もうと思いますけど。
コーノ
小島信夫の方が吉木潤之介よりは10歳ぐらい歳いってるっぽいですね。
ポーさん
そうですね。小島信夫は戦争にも行ってるんですよ。
コーノ
うんうんうん。
ポーさん
なのでちょっと上の世代ですね。
コーノ
アメリカンスクールで穂坂和志を取った人。
大体でも現代的には同じ時代を生きてた人。
この人もあれか、第三の新人が。
ポーさん
そうですね、デビューが遅かったから同じくくりになってるのかな。
コーノ
馬の話でしょ。
ポーさん
はい。
コーノ
馬、僕は小島信夫自体を全く初めて会って、
どんな感じの作家か、どの作品なのかって全然知らなかったんですけど、
さっきの吉木潤之介とまた全然違いましたね。
ポーさん
そうですね。こっちの方が。
コーノ
文体とか物語とか。
ポーさん
はい。馬の方がなんて言うんでしょうね。ちょっとおかしな話ですよね。
コーノ
そうですね。掴みどころがないっていう感じですね。
今何やってんのかわからんっていう、読んでても。
ドタバタ喜劇みたいなシナリオがよくわからんみたいな、そういう感じだったから。
この馬は、妻の時子が勝手に家を買うっていうとこから。
ポーさん
自分がもともと住んでる家に建て増しで、家を建てようとしてるっていう。
コーノ
改築ですね。増築か。
ポーさん
増築ですね。
コーノ
夫婦間のコミュニケーションが全然すごいチグハグなんですよね。
ポーさん
そうですね。主人公は僕っていう夫ですけど、
夫が全然知らないところで勝手に話が進んでいて、
講義するけど何か言いくるめられちゃって、
で、弟で何かピントがずれたような発言して、
コーノ
その流れに飲み込まれていってっていう、そういう感じでずっと続いてきますね。
そうですね。だからその間にどんどん大工が来たりとかして、
ポーさん
家がどんどん建っていくっていう。
で、後で知ったら二階建ての家が、増築は二階建てになるみたいな話になって、
コーノ
下の階に馬が住むみたいな話になって。
そう、だから馬っていうタイトルで始まって、全然馬が出てこなくて何やろうなと思って、
ポーさん
で、急に出てくるんですよね、その馬の話が。
私ね、最初、今回改めて読んで、何か似てるなって思った作品が一個あって、
漫画なんですけど、福光茂之って知ってます?
知らないです。
福光茂之っていう漫画家の、うちの妻ってどうでしょうっていう漫画があるんですよ。
あともう一つ有名なんで、僕の小規模な生活っていうのがあって、
福光茂之自身がモデルになったような主人公の僕っていうのと、
奥さんの話、4コマなのかな、なんですけど、
ずっと奥さんが教祭家で、常に主人公は奥さんに振り回されて、
でも多分そういう関係も、ある意味主人公は求めてるというか、
振り回されて主流に惹かれることにちょっと居心地良さを感じてるような、
そういう漫画があるんですけど、それに似てるなと思いましたね。
コーノ
これは別にあれですよね、この馬みたいにシュールな話ではない。
ポーさん
シュールな話です。
コーノ
意味分かるやつですね。
ポーさん
日常エッセイなんで、福光茂之好きな人はもしかしたら、読むときに割と好きかもしれない。
ただこっちの馬の方が話はむちゃくちゃなんで、うまくいくかわかんないですけど、
私はこれ読んで福光茂之っぽいなってちょっと思いましたね。
コーノ
これは完全にカフカやと思いましたね。
そうですね。文学で言ったらモロカフカですよ。
カフカとか、最近言った僕がよく言ってる、和尾石黒の満たされざるボのわけわからんっていうやつ。
ポーさん
不条理で巻き込まれていって。
コーノ
何が起こってんのかもいまいちわからんけど、誰かが怒ってたりとか。
ポーさん
小突き回されてね。カフカっぽいですよ、本当に。
コーノ
物語に連れ回されるっていう感じの。
ほんまだから、読んでてわけわかんないですよね。
不条理な物語の魅力
コーノ
その場その場で言ってることとか文章自体は読みやすいけど、
心情としても別に理解できなくはないですけどね。
もしかしたら妻が当僚と不倫してんのじゃないかとか、疑ったりとかする場面が出てきて、
心情は理解できるけど、その展開がわけわかんないですよね。
ポーさん
そう、なんか部分部分はわかるけど、全体で見たときにこれ何やったん?って。
コーノ
つながりとかなんか。
なんか急に病院入れられたりとかね。
電気ショック受けて。
これだから、いわゆる考えてたタイプの物語の進行じゃないですもんね。
そうです。
行き当たりばったりな感じはすごいありますもんね。
ポーさん
村上春樹もこれの解説で書いてましたけど、これが狙ってない感じが多分面白いんだって言ってましたね。
そうですね。
書いてる本人も、なんかこんなのできちゃったみたいな。
そういう意識してない、意図的じゃないところがこの作品の魅力みたいに言ってましたね。
コーノ
まあ短編やからね、余計。
ちょうど。
短く読めるから。
ポーさん
これ長かったらちょっとね。
コーノ
なんか気が狂いそうになる。
ポーさん
この話はやっぱり、登場人物、僕が面白くないですか、この本。
コーノ
ちょっとドン臭いというか。
ポーさん
なんか怒ってるけど、怒り方がなんて言うんでしょうね、ずれてるというか。
コーノ
理屈がちょっとよくわかんないですよね。
ポーさん
愛の告白があるから強く言えないとか。
主人公は奥さんに愛の告白をしたけど、奥さんからは愛の告白を受けたことがなくて、なんとなくそれで自分の方が現地取られたような感じになって。
コーノ
言ったじゃないのみたいに言われるかもしれないから強く言えないとか。
ポーさん
そう、よくわかんないですよね。
後半の話で、特にこの主人公のずれた発言で面白かったのが、馬が急にやってくるじゃないですか。
ひとしきり怒った後に、それで馬の名前はなんていうの?みたいなことを聞いてて。
馬の名前どうでもいいんじゃろって思うんですけど。
コーノ
しかも名前が面白いですね。
ゴロン。
ポーさん
ゴロンですね。
男だねとか言って。
コーノ
僕がまともな神経でこの立場にいたら、ほんま悪夢やなと思うよな。
小説の世界自体はね、すごい狂ってるんですけどね。
なんか常に疑ってるし、何が起こってんのかみたいなのを、ほんましんどいわと思いながら、この主人公の立場。
ポーさん
でもなんか主人公はやっぱり、さっきちょっと不滅しげゆきの話で言いましたけど、
そういうわけのわからない存在に巻き込まれてることにちょっとこう、気持ちよさを感じてる節がありません?
コーノ
それはそうなのかな。解説でそういう話ってありましたっけ?
ポーさん
ありました。
ありました。私もまさにそうだなって思いましたよ。
何だっけな。
それでカフカの話が出てたんですよ。
コーノ
でも、村上春樹はカフカと真逆って言ったんですけど。
ポーさん
そうですね。むしろそういう、自分が連れ去られてしまうようなところに快感というか、居心地よさを感じているところがカフカじゃない。
コーノ
僕は結構、話が進んでいった途中で、病院の窓から自分の家が見えて、
その影が映ってて、妻と誰かがいるみたいな感じで疑ってたじゃないですか。
その次の日に妻が来て、あなたが病院抜け出して、うちまで来たんじゃないかって言った時に、
あれ?あれ?みたいな感じで、どっちがおかしいやろ?みたいな展開になるじゃないですか。
あの時めっちゃ怖くて。
ポーさん
ちょっと怖いですよね、あれ。
コーノ
そっちに行くの?この話って思って。
誰が正しいか分からない、読者も分からないし、本人も主人公も分かってないし、
小説世界がすごい怖く感じました。
ポーさん
入院した病院も精神病院?
コーノ
そうですね。
ポーさん
精神科でしたっけ?
馬の象徴と嫉妬
コーノ
注射科じゃないですよね。
鎮静剤。
ポーさん
ちょっとね、怖いですよね。誰の言ってるのが何が正しいんだろうって。
妻もちょっとおかしいから、妻の言ってることが間違ってる気もするし。
コーノ
妻ね、馬飲んのめっちゃうまいみたいな。
ポーさん
そうそう。
コーノ
あれちょっと面白かったですけど、馬乗れんやと思って。
めっちゃ馬と仲良くするし。
ブローさんって感じで。
あれも完全にコメディですよね。馬用の部屋に冷暖房ついてて。
ポーさん
本をちゃんとセットされてるみたいなね。
一番豪華な部屋になってるって言ってる馬の部屋が。
何それ?と思って。
コーノ
主人公は最初、大工の頭領が奥さんと仲良くしてたからそっちに嫉妬してたのが、
この嫉妬の対象が馬に変わるんですよ。
ポーさん
そうですね。馬がすごい筋肉流々の男らしい馬なんですよ。
コーノ
かっこいい。見た目で負けてるみたいな。
しかもなんか、家賃も稼いでくれる。馬小屋。
ポーさん
馬の面倒見る代わりにお金もらえるから、馬のおかげでこの家立ったようなもんだみたいな。
話の順序がおかしいよねみたいな。
すごい劣等感がね。
すっごい嫌だったのが奥さんの唇に馬の毛がついてて、
奥さんと主人公がキスしたときに馬に接吻したようであるみたいになってて、
匂いもすごいゴロウの匂いが染み込んでるとか。
コーノ
あの辺はね、ちょっとね、生々しいんだよね。
ポーさん
怖い話なのか、なんかこう面白い話なのか、怖がっていいのか笑っていいのかわからないっていう。
コーノ
まあでも両方あるのかなと思いますけど。
ポーさん
そんな話でしたね。
作品の解釈と意見交換
コーノ
はい。じゃあこの村上愛子の創設案内では。
はい。
ポーさん
これ初っ端5、6回読んだけどあんまりわからへん。
そういうもんだ、そういうもんだって。
コーノ
こっちはわからんやと思って。
しかも解説読んでもよくわからなかったんですね。
ポーさん
なんかね、解説、そうですね。
吉幸純之介の方が村上春樹が作者、小説を書いてる者としての立場でいろいろ考えたっていう話を結構書いてましたけど、
小島信夫の馬の方はあんまりそういう自分だったらこうとか小島信夫がこうなんじゃないかみたいな、
あんまりそういう書き手としての意見みたいなのが少なかったんで、
ちょっと私の中ではあんまり村上春樹だから書けるようなものは少なかったんじゃないかなって思いましたね。
コーノ
これはしかもそんなに作家にも触れなかったですよね。
ポーさん
そうですね。小島信夫自身のことはほとんど書いてなくて、
ちょっとこの作品の裏話みたいなところに触れてるのが74ページあたりで、
もともとこの作品っていうのは2つの話をガチャンコしたような作品だって書いてて、
それによって魅力が出てきたっていう話を書いてたんで、
このあたりはちょっと作品作るにあたってこういうふうにすると小説の面白さが出てくるみたいな、
村上春樹が小説家だっていうところの、だから言えるような話かなと思ったんですけど、
その後は結構割と普通にこの話を読んでこう考えたみたいな話が続きますね。
コーノ
アメリカンスクールも似たような構造やってとかそういう話もしてましたね。
ポーさん
馬が男性性の象徴みたいなこと書いてませんでしたっけ。
馬が主人公にはない男の強さみたいなのを表していてみたいな、
読んだらすぐにパッてちょっと思い浮かぶようなところかなと思ったんで、
そこはそんなに独自性を感じなかったかな。
コーノ
テーマを掲げる割にはあんまりちゃんと答えてないっていうのがあって、
ときこはなぜ家を建てるのかとか、考えるポイントって一応挙げてくれるんだけど、
それに対して答えがあんまりよくわからなかったですよね。
どういう、結局どういう、なぜの答えっていうのがあんまり。
ポーさん
なんで家、それが家なのかっていうことは書いてなかった。
なんで家かって話は書いてなかったけど、そういう何かを作るっていうのは、
告白の代わりのようなものっていうことですよね。
コーノ
あんまりよくわかんないじゃないですか。
ポーさん
違う、契約、そうですね。
コーノ
愛情表現みたいなことを言ってて、
夫婦関係のジグハグを描いてるみたいな、
それを何とかして修復したいみたいな、そういうことは書いてるんですけど、
一応長編小説、応用家族を読めばわかるみたいな、
そういう感じに落ち着いてたんで。
ポーさん
でもね、私応用家族、だいぶ前に読みましたけど、
応用家族のほうがリアリズムで書いてた記憶があります。
そんな馬っていうような、ちょっと非現実なものは出てこなかったんじゃないかな。
村上春樹はアメリカンスクールと応用家族のラインが好きだみたいなの書いてましたね。
でもちょっと私の中では馬のほうがかなりエクセントリックだった記憶があるんで。
コーノ
そうなんですね。
ポーさん
応用家族のほうが万人受けする作品だと思います。
愛情表現と夫婦関係
コーノ
わかりやすい。
だから結局そういうのは読んでいったほうが、読んでいったほうがもうちょっとわかるのかなと。
ポーさん
つながりというか何を書きたかったのかみたいなのを思いましたね。
村上春樹の回数読んでもわからなかったのが、馬の感想のところで言えばよかったんですけど、
時子が告白せずにずっと来てたのに、最後に愛の告白をするじゃないですか。
あれはなぜあのタイミングで言ったのかってのはわかんなくて。
なんならちょっとホラー映画みたいな感じもしたんで、最後に告白するじゃないですか。
あれも主人公がもうちょっとうなだれてる時に最後また近寄って行ってくるのが、なんか支配されてるような。
ちょっとゾクッとする怖さも感じたんですけどね。
コーノ
なんか引き止めようとしてんのかなみたいなのは感じましたよね。
精神病院に戻ろうとしてたんで。
ポーさん
トボトボと戻っていくときに叫んだ、ようやくその時になって愛の告白をしたっていうふうにも、
何回か後で読み返して思いましたけど、最初読んだ時はちょっと怖かったですね。
コーノ
この時子はね、すごいクセもんですからね。何がしたいのかわからないっていう。
この馬だけ読んでると、時子が何がしたいのかわからないのか、
その主人公がわかってないっていうのを表してるのか、どっちかわかんないですよね。
そうですね、主人公もだいぶ変わってますからね。
でもその、かみ合ってないというか、コミュニケーションがあんまりちゃんと取れてないっていう感じは伝わってくるんですけど。
ポーさん
村上春樹も書いてましたけど、問題のない夫婦なんてどこにいるのでしょうみたいに書いてて、
大成将なりとの夫婦も多少いびつな関係があるっていうのはよくあるっていう話をしてて。
だから私はそんなに重くこの話は読む必要はないのかなというか、
ちょっとうまくいってない夫婦の一部分をすごい拡大して、変な話に埋まっていく。
コーノ
デフォルメって感じですね。
ポーさん
そうですね、デフォルメしたような話なのかなと思ってみました。
言い回しがね、やっぱり面白いですね。
自由党の吉田みたいじゃないかみたいなね。
よくわからない例えがあるんですよ。
コーノ
時代、時代として。
ポーさん
時代を感じさせる。
奥さんが全部話してくれないから秘密主義で、
それでは万事秘密主義でまるで自由党の吉田みたいだっていうふうにと、
奥さんが、吉田さんって私みたいかしらととぼけた表情だとか言って、
これは面白かったですね。
コーノ
吉田茂ですね、たぶん。
ポーさん
そうですね。
コーノ
出てきますね、そういうのが。
例えは。
ポーさん
例えと、セリフの鈍狭なところと、
面白かった。主人公のキャラがやっぱり私は好きでしたね。
ちょっとかなり想像の話で、
186ページ、あ、一番最初か。
主人公が家に帰ってくると、木材がいっぱい積み上げられてて、
っていう話からこの小説始まるんですけど、
3年何ヶ月なんでこんなのなかったって書いてるから、
この家に住んで3年ちょっとで増築が始まったっていうふうに読めるじゃないですか。
だからまあ、引っ越して3年ちょっと経った時に何が考えられるかなっていう想像をちょっとしてて、
なんかこう、奥さんが何かしらアクション起こしたくなるような時間として3年経ったら何かあるかなって思ってたんですけど、
それがまあ、村上春樹が言ってた男らしさみたいなのが、
だんだん妻が夫に対して感じられなくなるのに、
3年ぐらい経つのかみたいな、
なんかそんな想像をちょっとしたりしましたね。
コーノ
なんかね、この八景野原の上に建てたあばら屋みたいな、そんな家やったんですけど。
そうですよね。
この時このね、交わし方もね、すごいコメディ感があるんですよね。
ポーさん
ダウンタウンの漫才みたいなね、やり取りなんですよ。
コーノ
この会話が。
ポーさん
噛み合ってない感じじゃない。
他に読みました?
コーノ
これはちょっと時間なくて、
なんかアメリカンスクールの最初の方だけ読んで、全然追いつかなかったって感じですね。
ポーさん
アメリカンスクールは読んでもすごいいいと思います。
読み返しありかなと。
コーノ
なんかでもこの、なんていうんですかね、こういう文体が多いんかなっていうのはちょっと思いましたね。
そのアメリカンスクールの最初というか、主人公がちょっと不満をもらすみたいな、そういう感じのスタイルが。
ポーさん
割とこう弱気だったり、なんか情けない男を書くのが上手いというか、
翻弄される人を書くの上手なのかなと思います。
コーノ
その辺も短編なんで、続けて読んでいきたいなと。
吉祐樹純之介の方は全部読んだんで、こっちも全部読めたらなと思ってます。
それぐらいでいいか。
ポーさん
そうですね、とりあえずじゃあ2つ読みました。
コーノ
次回の。
ポーさん
次は靖岡翔太郎のガラスの靴と、翔の純像の生物化。
ちょうど2つ2つ2つでいけますね。
コーノ
だから、村上春樹がどこまで広く読んでるのかっていうね。
日本の作家は全然読んでへんとか言っておきながら。
ポーさん
なんか小島信夫の法要家族は7回か8回読んだって書いてましたよ。
そうですか。
だから、読んでないって言っても村上春樹紀順の読んでないだから、相当読んでるんじゃないですか。
書いてますね、93ページに。
僕はこの作品7回か8回読んでるけど、本当に面白いって書いてますね。
コーノ
すごいなあ。
小里翔なんですかね、やっぱり。
でもなんか広いですよね、でも範囲が。
頑張るキャラすごい人ですからね。
このなんか解説、短編小説案内やりますよって言ってあげてくるやつが前春にしか入ってない。
そうですね。
文芸文庫が前春にしか入ってない。
引っ張ってくる、そこまでこう、生物とかはね、まだ有名やし。
ポーさん
有名で。小島納豪もね、文庫が今でも新品で買えるから、混ぜてますね、そういうのを。
コーノ
でも代表作に上がってきそうなやつかなと思いますね、生物。
ポーさん
キエタンとかも。
ちょっと気になったのが、村上春樹って自分の小説だと結構不思議なキャラクターとか、
マジックリアリズムみたいな舞台が出てくるじゃないですか。
でも割と自分のそういうのってあまり何かの比喩とか深読みせずに、
ただそこにあるものを受け取ってほしいみたいなこと言ってたと思うんですよ。
つまりそういうものって何かの象徴とかでもないみたいなことが入ってたけど、
自分がこうやって、あくまでこれは授業用での読みですけど、そういう時は結構ちゃんといわゆる先生っぽいような読み方。
コーノ
そう、完全に文芸評論ですもんね、これやり方。
ポーさん
だから普段は多分違うんだろうけど、やろうと思ったらできるんだなっていうのはやっぱりすごいなと思いましたね。
コーノ
割と小説家の人、自分のそういうのされるの嫌いみたいなこと言う人はいますからね。
違う時とかね。
そういう話、映画とかもそうですけど、評論とか読み時とかっていうのは毒になるか薬になるかみたいな話がね、
割とよくあるんで、最近も君たちはどう生きるかの話で、NHKで結構特集やった時に、
矢月駿本人が結構ネタバラシというか解説をしてて、
それをやられると、それが正解みたいになってしまう。
読書の楽しみと自己の感想
コーノ
作者が言ってるから正解は正解なんでしょうけど、みたいになってしまうから、
それはそれとして聞くっていうのが大事みたいなことをツイッターかどっかで見かけて、
自分の感想は自分の感想としてちゃんと持つことが大事。
書かれてることを読み取るっていうことはすごいけど、
でも自分がどう思ったっていうのは、その影響を受けないようにするのは大事みたいなことがありだったなと思って。
ポーさん
大沢上春樹もね、読書の醍醐味で書き取りましたもんね。自分で仮説を立ち上げるって言ってましたもんね。
コーノ
だからそれはそれで一つの見方でしかないみたいな、そういう意見ではあるんでしょうね。
55:15

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