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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
前回最後に、ライオンの挙動、ライオンがどのようにプログラムされているかという遺伝子の話を出しました。
遺伝子、二つ目の論点である行動遺伝学を理解するためには、
そもそも人間の心とは、生物学的にはどのような役割を負っているのかを知っていないといけませんから、
行動遺伝学と進化心理学とは、やっぱり切っても切り離せない関係にあるといえます。
そしてもちろん、ライオンだけではなく、
同様に人間の経質や心理は、遺伝子とどのように関係するのかという論点があります。
そしてもちろん、ライオンだけではなく、
同様に人間の経質や心理は、遺伝子とどのように関係するのかという論点があります。
要は、知能、パーソナリティ、自尊感情など、従来の心理学でこれまで検討されてきた概念が、
それぞれどの程度の影響を遺伝や環境から受けているのかを明らかにするということです。
どう明らかにするかというと、
双子を集めて心理テストを受けさせたり、行動を観察したりする心理学の伝統的な行動観察法から、
人間のDNAを解析するゲノムワイド関連解析という手法まで幅広くあるようです。
慶応大学の行動遺伝学者である安藤教授の本、「運は遺伝する?」という本から引用しますね。
遺伝が心理的特徴に与える割合を、エビデンスベースで弾き出したものがあって、
遺伝率を見ると、計算や認知、学歴のような知能だけではなく、
やる気や集中力のような性格とされるものも、ほぼ半分は遺伝で説明できます。
数字で言うと、計算能力の遺伝率は56%、認知能力の遺伝率は55%、
集中力の遺伝率は44%、やる気の遺伝率は57%です。
能力以外の主なところで言うと、
発達障害、僧侶性障害のような精神障害の遺伝率が7割近いほか、
人間関係といった事象、宗教やスピリチュアルに引き寄せられやすいかどうかといった、
普通は遺伝との関係で語られることのない要素にも3割程度の遺伝率が見られます。
これってめちゃくちゃエグいよね。
だって生まれた時から遺伝して、その人の能力が決まっているってことになりますから。
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さらにエグいのが、やる気というパラメーターも、
つまり努力ができるかどうかも57%の遺伝率があるという点です。
一般的な感覚からすれば、
仮に才能がなかったとしても努力で人生を切り開くことができると思うじゃないですか。
でも努力ができるかどうかも遺伝で決まっているのだとすれば、一体どうすればいいのでしょうか。
危ういのはですね、この部分だけが抜き出されて誇張されることです。
最近面白おかしく、すべては遺伝子で決まっているとか書いてるネットニュースも見るけど、
それは端的に間違っています。
行動遺伝学が明らかにしつつある、ある意味ショッキングな面白さを紹介しつつ、
ショッキングな部分だけを切り抜くフィークニュースには惑わされるべきではないというスタンスで続きますね。
まず、研究方法として、統計学の手法を使っているという事実からもすぐわかるように、
認知能力の遺伝率が55%、やる気の遺伝率が57%というのは、
単なる統計的な数値ですから、集団の傾向としてはこうなるという話です。
これはミクロとマクロを混同してはいけないという話で、
全体の傾向としては親の能力は確かに子供に引きつがりやすいのだけど、
ミクロ的にはかなり揺らぎがある。
例えばめちゃくちゃ優秀な、なんかこうハーバード大学を出たAさんの子供が、
必ず優秀とは限らないし、
親が罪を成したすごい実業家でも、
2代目に当たる子供は、もう全然バカ息子でダメダメかもしれません。
逆に明治時代の資料とか読んでるとよく出てくるんだけど、
小学校にも行っていない農民の親から、いきなり超優秀な子供が出てきて、
で、あまりに優秀だから地元の校長先生とかがお金を苦免してあげて、
地元の帝国大学に通わせてあげるとか、
そういうとんびがたかうむ的な現象もめちゃくちゃ普遍的に起こり得ます。
要はガチャなんですよ。
ただし最近、親ガチャならぬ遺伝ガチャっていう言葉を、
特に10代の若い子からよく聞くんですが、
ここにも誤解があるように見受けられます。
どうも、優秀な親の下に生まれたら遺伝的に勝ち、
そうでなければ負けという文脈で使われているみたいなんですが、
今言ったように、孤人というミクロにおける遺伝にはかなり揺らぎがあります。
だから、変なショッキングな部分だけを切り張りしたフェイクニュースに騙されないでねと心配してます。
今回はここまでにします。
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まだ次回に続きます。