国立工芸館の移転と特徴
アートテラー・とにのそろそろ美術の話を、この番組は、私アートテラー・とにがアートに関わる方をゲストにお迎えして、トークを繰り広げるポッドキャスト番組です。
本日は、国立工芸館岩井美恵子さんをゲストにトークをしていきたいとおもいます。
ということで、よろしくお願いします。 よろしくお願いします。
結構、お久しぶりですというか、コンスタントに会ってはいます。 そうですね、いつ以来かしら?
去年のポケモン×工芸の時に、来させていただきまして、すごい良い展覧会ですねって言って、
たぶんこの番組でもポケモン×工芸良かったみたいな、年末の時に刺さった美術展として紹介したんですけど、
ただなんか、私の展覧会じゃないから、私の展覧会に行く時には、いつ来るの?みたいな感じの。
そうですよね。
そして今回、満を持して、この後たっぷり話しますけど、岩井さんの展覧会がやっておりますので、
それに合わせて、今日はですね、国立工芸館金沢までやってきました。
ありがとうございます。
なので今回もですね、前回の戸渡し現代美術館の回もそうだったんですが、
プロデューサーが同席せずに、僕が一人だけ機材を持ってやってきている状態ですね。
大変ですね。
という感じで、やっていきたいと思っております。
よろしくお願いいたします。
ということで、今さらった国立工芸館と言いましたけど、
国立工芸館というのが、そもそもどういうところなのかというのをですね、まずは教えていただきたいなと思います。
工芸館はもともと東京にあったんですけれど、その頃、トニーさんご来館いただいたことでありました。
東京国立近代美術館の姉妹館という感じで、
結構古くまでいい感じの建物が、軍隊が使っていたみたいなところですよね。
そうですね。もともと東京国立近代美術館の中の工芸とデザインだけを扱う文館というか、
そういう形で1977年に竹橋の方の建物ができたんですね。
それでそのままずっとやってきたんですけど。
大体みんな近代美術館を見た人が、見終わってそっちも行こうかなみたいな感じで行くような施設でしたよね。
そうですね。
それが今は当勤日になっているということですね。
そうですね。細かいことを申し上げると、まだ組織上は当勤日の一部ではあるんですけれども、
館としてはこちら金沢に移転したということになります。
トニーさんもご存知だと思いますけど、移転してきたのは2020年、ちょうどコロナ禍の10月でした。
当勤日の一部がなぜ一部だけ金沢に来ちゃったんだろうという疑問を持たれる方が多いと思うんですけれど、
もちろん金沢石川が後継大国だということはありますけれども、
これは国の施策の一環なんですよね。
地方創生施策というのがあるかと思うんですけど、東京一極集中を是正しましょうという。
その観点から政府の機関が地方へ移転する。消費者庁側の四国行かれたり、文化庁京都行ったりとかあります。
それの一つなんですけれども、石川県と金沢市から後継館をその一環で金沢に移転してくださいという要望をいただきまして、移転をしたということになります。
石川県の所蔵作品も合わせてこちらに来たんですか?
そうです。作品も人も全部こちらに来ています。
さっきフルクーまで言っちゃって失礼だったんですけど、もともとだけいい感じのメガの建物だったじゃないですか。
移転するって最初聞いたときに、こちらに新しい建物ができるのかなと思って、実際に来てみたら、
建物ごと一緒に来ちゃったの?というような感じの、こちらももともと歴史ある建物だった場所をリニューアルしたんですよね。
工芸の定義とコレクション
そうですね。今こちら石川の後継館も、石川県がずっと保存をしていた旧陸軍の施設です。
第9師団の司令部長舎というものと、あと金沢開港舎の2つをつなげて今使っています。
展示室としてはそんなに大きさは変わっていませんか?
変わっていないですね。数字的には少しだけ大きくなりましたけれども、ほぼほぼ変わっていないです。
僕は前の国立工芸館は、本で東京のレトロ美術館という本を出版させていただいて、レトロな館として紹介しているんですよ。
紹介した矢先にあの建物が無くなり、無くなっちゃったなと思っていたんですよ。
せっかく紹介したのに、皆さん行けなくてちょっと申し訳ないなと思っていて。
前の建物の時は、1階から2階に上がるところの階段がすごくいい感じだって紹介して、
こっち来たらまた同じような階段があるから、こっちも変わらずいいなと思いましたけど。
皆さんが階段移築したの?っておっしゃられるんですけど、移築はしていないです。
やっぱり同じ明治時期の軍の施設ということで似ているのかもしれないです。
建物の内部はそんなに変わっていないとはいえですけども、石川にゆかりなる松田文六さんの常設展示室があったりとか、
あとは僕が個人的にこっちに移転してきて変わったなと思ったのが、
もちろん前のところにもあったんですけど、ミュージアムショップが充実する。
前ももちろん充実してないって言わないけれども。
ちょっと控えめなね。
こっち来てからすごい力入ってません?
はい、そうです。前の時ももちろんあったんですけど、
やっぱりこれからお話しすることにもかかってくるかと思うんですけども、
工芸って絵画とかに比べたら身近であるということが強みの一つだと思うんですよ。
なのにショップに工芸に関するものをたくさん置けないというのはずっとジレンマであったところ、
せっかくこちらでリニューアルしてオープンするということなので、ちょっとだけ広くして。
今はショップ担当もちゃんとおりまして、彼女がセレクトしていろいろ商品開発もして、なかなかいいもの揃ってるなと。
やっぱりパワーアップはしてるんですよね、こっち来てから。
ちなみにそのコレクションっていうのは大体どれぐらい数?
今4000点超えるぐらいかなと思います。
実はこの番組でいろんなジャンルを取り上げてきたんですけども、
学芸員さんで登場していただいて、工芸の回って今回実は初なんですよ。
そうですか。
工芸専門はありましたけど、ジャンルとしてはどういう定義というか、どういうものがあってというお考えになるんですか?
館のコレクションを分類するときの項目なんですけど、それでいうと陶磁、陶芸でしたね。
それからガラス、漆、木工、漆工、竹、それから染色、金工、人形、その他もありますけど、あと工業デザイン、グラフィックデザインという感じですかね。
かなり幅広いですね。
これはバカのフリして聞きますのもあれなんですけど、油彩画とかと工芸が違うのはなんとなく理解できるじゃないですか。
彫刻作品って立体だし、工芸のような気もするけど、でもそれは今陶器店に残ってるじゃないですか。多分分けられてるじゃないですか。
木帳とか金属で作った彫刻は工芸ではないんですか?線引きみたいなのがあるんですか?
そこは非常に曖昧です。
とにかく意図せず、今のご質問いただいたと思うんですけど、実は2年前かなに工芸館と近くにある金沢21世紀美術館で共同企画をしたんですけれども、うちの館長がキュレーションして。
それが人形をテーマにしたものだったんですけど、あちらは現代アートの美術館。
うちは工芸の美術館なんですけど、同じ作家さんの作品を持ってるんですよね。一人じゃなくて複数。
うちは工芸の中の人形というジャンルで持っている。あちらは彫刻という意味合いで、同じような作品を持っているっていうのを集めて展示するというキャンバーをやりました。
つまりそのぐらい受け取り方というか解釈の仕方によって違うぐらいかなと思ってます。
ざっくりとここで分かれるというわけではなく、曖昧な部分が残っていると思います。
国立工芸館自体はコレクションは増えているんですか?
そうですね。おかげさまでまだ毎年収集はできているので、少しずつ増えています。
工芸のジャンルのものがここ10年ぐらい、僕がアトテラーとしていろんな展覧会を見ていく中で、結構盛り上がってきているなと思うんですよ。この10年間。
いよいよ国立工芸館も新規展、金座星で頑張るような感じなように見えているんですけど、実際どうですか?工芸界のイメージとかがアップしているとか、工芸はどんな感じですか?
そうですね。工芸以外の業界の方が注目をしてくれるようになったりですとか、あとは海外で日本の工芸の人気が非常に高まってきているということが大きい原因かなと思っていますが、盛り上がっているんじゃないかなと思います。
なんか聞いた話だと海外だと工芸、工芸で伝わるみたいな。
伝わるといいなということを何回か、まだ完全に伝わっていないと思うんですけど、やっぱり英語のクラフトが日本の工芸作品を全部含むような定義ではないので、
日本の工芸は特殊だと思いますので、工芸というものが広まっていくといいなという動きが一番あると思います。
金沢の工芸文化
日本の工芸とアメリカのクラフトの違う部分はどういうところですか?
アメリカというか欧米の場合は、完全に用途のあるものがクラフトで、ファインアートよりは評価が下がるというところですよね。
日本の場合は、もともと工芸とか美術とか区分がなかったので、使えるか使えないかじゃなく身の回りにあるものをどんどん装飾していったりとか、
複数枚とかを詰めて、それが絵画になってとか、そういう考え方なので、そもそも美的作品を区分するしないの違いがあったんだと思います。歴史的に。
改めて言われたら、複数枚とか屏風絵って、今は当たり前のように江戸絵画とかの最高峰みたいに言われてるけど、
もとは用途があるもの。
部屋の室内として。
だから日本としては、昔からその辺の曖昧というか、決まってなかったから。
だなと思ってます。
ちなみになんですけど、これだけ回してきて、今更なんですけど、
工芸のアクセントは工芸であってます。
僕は工芸ってよく言ってて、たぶんみなさんも工芸じゃないですか。
で、俺一回玉結びとかコネクト出た時に、工芸の話をしたんですよ。
そしたらリスターさんから、工芸じゃないみたいな、言われて、
ずっとこの業界、特に岩井さんとかって、工芸工芸って言ってたから、
当たり前に工芸って言ってたんですよ。
これは何か正解はあるんですか。
私たちはもう工芸って言っちゃってるんですけど、
たぶんアナウンサー辞典みたいなのと、工芸が正しいはずです。
国立工芸館って何ですか。
国立工芸館?工芸館。
でも工芸館ですよね。
国立工芸館っておっしゃってると思うんですけど、
工芸だけ取り上げたら、工芸になってると思います。
ややこしいですね。
難しいですね。
言われる可能性があるので、ここで言っておきますけど、
この番組では工芸でお伺いする予定です。
よろしくお願いします。
そうですよね。
あともう一個さっきさらっと出てきた、金沢が工芸大国。
いろいろと日本全国のところに工芸の産地があるんですけど、
金沢が特にっていうのは、例えばどういうところで?
まず工芸もいろいろな分野が揃ってると言いますか、
例えばどこどこだったら焼き物の産地とか、
有田とかもう佐川そのイメージですね。
そうですよね。
どこどこだったら例えば染色なんとか織りの産地とか、
そういうので有名だったりしますけど、
吉川の場合はそれこそ九谷焼き、和島塗り、
それから加賀油膳とかもありますし、
加賀蔵丸で均衡もあるし、
本当に幅広くあるんですよね。
それがまず一つ大きい。
ある程度ジャンルを網羅している。
網羅しているというところですね。
ですので焼き物って携わる人口で言うと、
たぶん工芸の中でも一番人数が多い素材だと思うんですけど、
どこの地域に行ってもやっぱり焼き物が一番多かったりするんですけど、
ここはもしかすると焼き物より漆をやっている人が多いかもしれないぐらい、
だからといって別に焼き物が少ないわけじゃないんですよ。
漆の人口が多いということなんですけど、
そのぐらい本当にいい意味で平均的に
いろんな工芸を楽しめるがある街だなと思っています。
それは確かに東京から移転するとなったら、
一番バランスがいい場所なんですね。
説得というか納得しやすいというかじゃないかなと思います。
これはあるんですか?石川がそうなったバックグラウンド的な。
国立工芸館の背景
もともと前田藩がいろいろお細工所というのを作って、
それこそ自分たちの武具を作るとか、
職人さんたち、いわゆる工芸職人さんたちをきちんと教育して育てて、
しかもちゃんと食べていけるような、そういうシステムを作っていたそうなんです。
やっぱり歴史のバックボーンもあった上でなんですね。
そうですね。それで今にも続いて、
たぶんその精神が生きているから、
金沢美術工芸大学であったり、宇田山工芸工房であったり、
教育機関もまだちゃんと残っていますし、
じゃあそこを卒業した人が技術とかだけ学んだから、
じゃあ東京に戻って製作するぞとか考えてもいいんですけれど、
そのあと若手の工芸家たちが製作しやすいように、
いろんな行政の支援がいろいろあるというのも聞いています。
だから結構金沢とか石川在住で重ねが多かったし、
なおかつこれまでも発表の場が石川にそんなになかったとしても、
ここに工芸館が来たことによって発表の場までできたら、
そうなるといいなと思います。
いよいよどんどん発展していきますね。
より良いと思っています。
先ほどコレクションが4,000点近くって話だったんですけども、
心象工芸展の意義
いろいろと名品がたくさんあって、
それこそコレクション展で出される時もあると思うんですけども、
この作品ぜひお勧めになるとか、例えばありますか。
工芸館ですね。
本当にたくさんあるので、好きなのもたくさんあるので、
私が好きかどうかっていうのがたくさん好きなのがありすぎるから、
ちょっと今お勧めしたいものとしてなんですけれど、
工芸館、展示室の方には残念ながらちょっとスペースの問題で、
常設展のスペースってないんですよ。
毎回展示会をするんですが、
屋外展示で2点ほど常設している作品があって、
1点は館の裏にある橋本雅幸さんの作品で、
これは前の東京時代もありましたよね。
その時は前庭にあったものなんですよ。
入口の前というか近くにある。
それが今建物の裏側におります。
それはですね、ちょっと建物の裏回っていただければ、
いつでもご覧いただけるんですけど、
もう1点建物入っていただいて、
目の前に金子純さんの大きな焼物が目に入るんですよ。
一番最初に目に入るやつですね。
これをちょっと今回はお勧めをしたいと思っておりまして、
ちょっとレア感で言いますと、
目にできるのに普段は閉じている中庭に設置しているんです。
目に見えるとは言っても、そこにガラスがあるので、
向こうには行けないですね。
行けないです。
というそのレア感と、
あとこの作品、金子純さんの典型的な作品のシリーズの1つではあるんですけれど、
この工芸館に設置するということで、
工芸館に合うものというものを選んでいるんですね。
金子さんの作品としては塔の焼物ですね。
高さが結構ありますよ。
大きさとしても目の前に立つと自分の高さぐらいあるというか、
もうちょっと高さがあるものだと思うんですけれど、
この大きい作品で水玉だったり、
ストライプの模様をよく付けられるんですが、
今回うちの作にはストライプタイプ。
これが何かというと、金沢って雨が多いんですよね。
その雨を表している作品ということで、
金沢に来た工芸館ならではの作品。
しかも実際金沢で雨降ったら雨に打たれるんですね。
そうなんですよ。
そう言われると、
例えば僕とかも東京から金沢に旅行感覚じゃないけど、
結構来る時に確かに何回かに1回は雨だなって思うんですよ。
雨かって思っちゃいがちですけど、
この話聞いてみると、
雨に打たれる金子さんって見えるっていうちょっとポジティブにね。
そう捉えていただけると。
しかもさっき金あるチラシが見つけてあって持ってきたんですけど、
10月25日金曜日に国立工芸館移転開館記念日ということで、
ガラスの向こうの気になるアレって書かれてる。
アレ山はアレなんですよね。
阪神の優勝以来のアレ。
こっちの工芸館でいうアレは金子純作品ですね。
これがどういうことですか?
ガラスの向こうの気になるアレとしかイベント名が書いてないんですけど、
これが何なんですか?
ガラスの向こうにいつも気になるアレがあるんだけど、
ガラス1枚で隔ててそばにはいけないんですよね。
それを毎年、10月25日が移転開館日なんですが、
この日だけその中庭に入れるようにオープンします。
ガラスの向こうに行けるんですか?
行けます。
しかも写真撮影OKってなってて。
これは貴重ですね。
ってことは開館以来何回かやってるんですか?
そうですね。3回、4回目になるのかしら。
どうですか?皆さんこのアレを写真撮れるって人が結構いらっしゃるんですか?
どうかなと思いましたけど、おかげさまで皆さん楽しんでくださって、
中入ってやっぱり大きい作品と写真撮れるっていうのが楽しいんですよね。
だいぶ楽しんでくださっているので、今年も皆さん晴れるといいな。
雨のパターンもあったんですか?
雨の時はその時間だけ中断とか。
晴れないといけないんですか?
そうなんです。
なるほど。
雨みたいなストライプなんですけど、晴れてないとちょっと屋根もないところなのでね。
そっかそっか。
そうなんです。
でもチャンスがあれば行けるってことですね。
そうですね。
このイベント目は毎年これなんですよ。
ガラスの向こう。
これとかアレとか言っちゃいましたね。
気になるアレです。
でも行けなくてもこれがいつも見れますので、ぜひ皆さん見に来ていただきたいと思います。
お願いします。
ということでいろいろと聞いてきたんですけど、早速やっぱり展覧会についてお話をどんどんたっぷり伺いたいと思っております。
改めて今回何ていう展覧会でしょうか?
今回は新庄工芸展という展覧会です。
新庄風景とかの心の新庄ですね。
そうですね。
なかなか聞いたことのないタイトルと言いますが、工芸展っていうと全体的には固いイメージというかあって、
なんかこういうエモい言葉があんまり結びつかない感じがするんですけど、まずはどういう意味合いというか。
はい。今トニーさんおっしゃってくださったように、新庄風景から取ったもちろん新庄なんですけれども、固いっておっしゃいましたけど、いやそうなんですよ。
なかなかイメージですよね。
そうですよね。工芸って難しくてわからないって言われることが結構あるんですよ。
何が難しいんだろうと思って、私はそんなに難しいと思っていないからわからなくって、お話を少し聞いてみると、技術のことがわからないから、なんかバッと見てきれいとは思うけれど、それ以上に何もわかんないとか。
作り方がわからないから。
そうなんです。というふうに諦めちゃう方が多いということに気づき、実際確かに工芸っていうのはその素材が大事だし、その素材に対しての技術があるからこそ作れるということはもちろんあるんですが、
それだけでわからないとか難しいって言われちゃわなくても大丈夫っていうことをお伝えしたくて、工芸家の方々たちももちろん技術をたくさん磨いてからこそできる表現とかあるから、そういうことを突きつけられる方もたくさんいらっしゃいますけれど、
そうじゃなくて、普通にペインターの方たちみたいに自分の気持ちとか思い出とかを作品に出している方たちもたくさんいらっしゃるわけですよ。
そういう作品であれば、普通に絵画とか彫刻を見るように同じように見て、これ面白いとか、ここどうなってるんだ、どう描かれてるんだろうとか、同じように見れるからそんなに難しくないですよっていうのをお伝えしたくて企画した展覧会です。
ですから、それぞれの作家さんの心象風景とかそういうものが表現されてますよっていうのをお伝えしたいタイトルです。
なんとなく工芸が最近全体的に人気が出てきた一つが、僕もついつい使っちゃうんですけど、超絶技巧展が始まってからこんな超絶技巧なんですよっていう展覧会が起きていて、
工芸じゃない展覧会にも超絶技巧の工芸の作家がグループの中に入ったりとかしてきて、やっぱりどうしても超絶技巧の話がメインになってる気がしてて、
工芸イコールそうと思ってたけど、実はそうだけじゃないってことなんですよね。
そうですね。もちろんそれはそれですごいし、技術すごいけれど、それだけじゃないっていうのは作家さんも思ってるし、
それを伝える仕事っていうのは私たちの仕事ですけど、私たちが頑張ってそれをやっていかなくちゃいけなかったなってちょっと反省もしつつ今回。
海外だと確かに例えば伊藤尺宗とか、それこそこれが展覧会今やってた田中一聖みたいにめちゃくちゃ細かく書いてます、超絶的ですっていう画家もいりゃ、そうじゃなくて抽象画の画家もいて、そっちはそっちでまだいいはずなのになぜか工芸。
ちょっとこっちはないがしろとは言わないけど、あんまりフューチャーされてなかった一面ですね、そこは。
ていうのがあるかなと思いました。
出品作家と作品
ってことは今回、新章攻撃切り口で全部で何人の作家を今回?
6名の作家さんにご出品いただいてます。
新作もそれぞれ作ってもらったりとか?
そうですね、全員少なくても1点は新作は入れていただきました。
先ほど見させてもらったので、岩井さんとは会ったらいつも展覧会でイベントで呼んでいただいたりとか、展覧会の話とか作品の話とかもその都度してるんですけど、今日はあれですもんね。
ここで話し合いましょうみたいな感じだったから、お互い一緒に会場に行かずに。
ここで僕も感想を混ぜながら。
お伺いしたいです。
6人の作家ですから、全員紹介していきたいと思います。
まずは最初は誰からいきましょうか?
そうですね、展示の順番がいいかなと思いますので、最初は沖純子さんからご紹介させていただければと思います。
沖純子さん、去年かの一昨年かな。
鎌金さん、米館の方で個展もされたので、ご覧になられた方もたくさんいらっしゃるかと思うんですけれども、
刺繍の作家さんです。
工芸館でやる刺繍の作家さんというと、たぶん普通に下絵を描いて、形が出るように刺繍されるものを想定されるかと思いますけど。
いろんな展覧会があるけど、昔から言うので言うと万国博覧会に出しましたみたいな。
ああいう超絶的な刺繍。スカジャンの後ろにあるような。
刺繍というとああいうイメージ。
もちろんああいうものも刺繍ではあるんですけれども、沖さんの場合は具象的な形を作る方ではないです。
古い布、それはご自身が持っていたものもそうですし、他にコットン屋さんからいただいたりとかした古い布に対して刺繍で色糸を刺していくんですけれども、
布と糸と対話しながら刺していくんですよね。
だから設計図があるわけではない。
ではないです。だからその作り方が非常に工芸的だなと私は個人的に思っているんですけど。
刺していきながら大きさに伺うと、無意識のうちにこの布にはこの糸って思って刺していくんだけど、刺していくうちに過去の自分のいろんな思い出っていうのがそこに見えてくるんですって。
今回ポスターとかでも使わせていただいたスイミツトという桃テーマにした作品があるんですが、
それもこの布だったらちょっとピンクかなと思ってピンク色の糸を刺していって、刺していくうちに布の方にシミがあることに気づき。
地になる布の部分ってことですね。
もちろんその布はコットン屋さんからもらってきたものなので、沖さんが付けたシミじゃないんですよ。
ピンクの糸を塗ってて、シミだな。
そういえば私小さい頃、お母さんが桃を剥いてくれたと。
沖さんのお母さんはちゃんとテーブルクロスを敷く方だったんだけれども、
そのテーブルクロスは汚してもいいよとテーブルを汚さないために敷いてるんだから、中にはテーブルクロスを汚さないでねってお母さんもいらっしゃいますけど、
沖さんのお母さんは汚していいのよって言うお母さんだった。
沖さんの独特な作品
よく桃を剥いてくれて、兄弟3人だったらしいんですけれど、ちゃんと剥き終わって置かれてからみんなで一斉に食べよう。
そうじゃないと大きいお兄ちゃんが先に食べちゃうから。
その時の様子を思い出し、出てきたって勢いつけて食べると桃は果汁がこぼれるじゃないですか。
このシミが桃を食べてる時にこぼれた果汁のシミに見えてくる。
そこまで来たらもうタイトルはこれはスイミツ島しかない。
桃なんだけれど、沖さんのお母さんとかおばあさんは桃のことをスイミツ島って呼んでたんです。
だからお母様の思い出に結びついたということで、これも桃ではなくてスイミツ島というタイトルにしたという作品なんですね。
一貫して沖さんはそういう作品の作り方をされる方なんです。
なんか刺繍で考えたら他に聞いたことないから、すごい独特の技法だなと思うけど、これがドローイングだったら普通なはずなのになるんですよね。
ペインターだったらこれがあれなのに、工芸の世界になると特殊ですね。今までありそうでなかったですね。
そうなんですよね。
ってことは、いわゆるスカジャン的な感じで、その場合はフィニッシュがある程度わかるじゃないですか。
設計があるから、沖さんの場合はどうしてるんですか?
ドローイングが終わるかのように終わるってことなのかね。
私もわからなかったのでお伺いしてみたんです。いつも困ってるっておっしゃってました。
やっぱりフィニッシュ。よくあるあるですよね。
工芸作家って意外とフィニッシュ困ってるって聞いたことないけど、沖さんは工芸のテクニック、工芸の技法を使いながらやってることは本当にテンダーに近いアーティストさんなんですね。
そうですね。
作品を直で見させてもらって、コースターになってるこのスイミツトウモなんですけど、やってることはすごくドローイングっぽいなと思ったんですけど、
でも実物の見たときの圧というか、やっぱりドローイングとは全然違って、
改めて今日ずっと見ながら思ったんですけど、
この針と糸で作るものって、あれですね、言葉を選びますけど重いっすね。
ああ、そうですね。
それで一人で妄想して、創造とかしてたんですけど、
なんか、糊付けとかされて、服とかもそうで、なんかセーター手編みで作りましたって言われてプレゼントされたらめっちゃ重いじゃないですか。
なんか、えーって、好きな人からだったらいいけど、えーってなるけど、これが服を作るときも、最近なんか糊で付けれるみたいな感覚あるじゃないですか。
あれでもらったらたぶんそんなに、Tシャツに糊付けしましたって言ってもらったら別にありがとうなの。
この針と糸で付けるという作業って、いろんなジャンルの中であらゆるものの中で一番重い作業なのかなっていうのを、
大木さんの作品って色合い的には軽やかで綺麗だったりするのに、そこになんか念というか、おぞましいとまでは言わないけど、
大木さんの作品が発するオーラっていうのは本当に半端ないと思います。
大木さんが針と糸を使ってっていうのは、お母様も手仕事というかお好きだったみたいで、
その道具が残っていて、それを使い始めてっていうのがきっかけではあったそうなんですけども、
確かに大木さんは先ほど申し上げた通り、誰かが使っていた古い布を用いるわけですよね。
すでにそこには誰かの思いが乗っている。そこに針を刺すことで自分の思いとか気持ちも乗っかっていくっていうふうにおっしゃっておられるんですよ。
だからそれが重たいかどうかは別にして、誰かの思いに自分の気持ちとか思いをさらに乗せていくっていう感覚で制作されているという意味では、
確かにいろいろ詰まっているというふうには取れると思います。
制作年度を見たら2020年とか、ここ最近のものなのに、内容としては全然違うのに、
パッと見たときの感想としては、すごい民芸感にいるのかなって思った。
それだけ歴史の重みというか生活感みたいなものまで感じるというか、
新作なのに何十年、もちろんもともとの歴史もあるんでしょうけど、そこがすごく面白かった。
新作と言いつつ新作っぽく見える。いい感じの積み重ねが感じられるなと思いました。
じゃあ2人目いきましょうか。
中田真由の金馬技法
2人目が展示室の一つで2階に上がるんですが、中田真由さんという漆の作家さんになります。
彼女は出身は北海道なんですけれども、今金沢で制作をしていらっしゃる方になります。
とりあえず漆の作品って、漆って大体装飾があるんですけど、どういう装飾を思い浮かびます?
大体漆展とかいってラデンが多いですよね。そういうイメージ。
あとは普通に黒塗りとか赤塗りの感じで、僕は結構美術的なのも好きなんで、
それがちょっといい感じで上げてきた寝頃ですか言われて、ああいうのもいいななんて思いますけど、その辺のイメージですよね。漆って言うと。
だと思います。彼女中田さんの場合は金馬というちょっと変わった仕事をしている人なんですよね。
会場行って金馬って文字見たけど読めなかった。こんにゃくみたいな、醤油みたいな、なんかおいしそうな感じの。
金馬って読むんですよね。ぜひみなさん調べてみてください。
私の細かいところまで理解はできていないと思うんですけど、漆を何層も塗って、削ったところに漆をどんどん何層も塗っていって、それを研ぎ上げて磨き上げて模様を出していくという。
削っていくっていうのは最初はないところに、要するに造画みたいなことです。ではなくて漆の層みたいな。
ある程度漆塗ったところで彫って、その上からも漆を塗っていって、それで磨く、研ぐ、削るって言い方おかしいですけど、そうするとだんだん出てくるんですよね。
カラーのレイヤーを作って、ブルシレレイヤーを作って、削っていくことによって下の層が出てくるから色が変わってくる。
模様が出てくるっていうことなんですけど。
でもそれっていわゆる中国の錐種みたいなものってあるじゃないですか。あれは彫って終わりだけど、この金馬の場合はそこに彫った後に埋めていくってことですか。
埋める…
というかそこを今度は磨くことによって慣らしていくってことですね。
それで模様が出てくるってことですね。
中国的にしていくけど、じゃなくてそこを慣らしていくんだ。
だから平らな表面にはなっているんですよね。
日本だと香川とかの四国のほうで産業として残っている技法ではあるんですけど、それを使って制作をしている作家さんです。
香川の伝統的な金馬だと、いわゆる普通の本当に質芸と同じで、例えば銃箱とかそういうお椀とかに使われる技法なんですか。
それが元々香川の質芸というのは、鑑賞用の漆の作品をずっと作っているそうなんです。最初から。
なのでいわゆる和島塗りのお椀と同じように香川の方で金馬のお椀が作られているということはない。
香川でも結構珍しい。向こうだからといって当たり前の技法ではないんですね。
だからそれこそ工芸は日常的だって言ってましたけど、香川に行ったら金馬のものでご飯を食べているとかじゃないってことなんですね。
鑑賞用の作品を作るための巻き方としてあるものだそうなんです。
それで彼女が金沢に来て、ここでも金馬和尊とやっているんですけれど、初めて私も彼女の作品を見たときに、彼女も偶像的な模様を出しているわけではないんですよね。
ただただカラフルでなんだかわからないけれど、引き込まれる。
作品によって色も全然違うからあれですけど、例えば緑のなんかでっかいお皿みたいなものがあったやつなんかは、僕がパッと見たときにもうベタですけど、モネのスイレンイメージ。
印象派の絵画のようなイメージを受けましたけどね。
私もそういう印象だったんです。
彼女にこれはどういうもの?あなたはそもそもどういうもの?
確かにこれ何も知らないで見たら焼き物で、釉薬でこれができているのかなと思ったら、じゃなくてこれはもう漆なんですね。
あなたが漆の作家だとは聞いているけれど、じゃあこれは漆なんでしょうね、というところから金馬です。
金馬であなた何をこれを表現しているの?という話を聞いていくと、作品によってもちろんそれぞれなんですけれど、
彼女が育った北海道の工業地帯の煙の様子であったり、それがすごい印象的に残っているとか、
あと金沢に越してきてから、これは私も越してきて思ったことなんですけど、
金沢って雨が多いだけじゃなくて、冬に雷が鳴るんですよ。
夏じゃなくて?
そうなんですよ。夏もたまに鳴っていますけど、冬の方が動的に多くて、
それって私も東京から来ているので、天秤地位ぐらいにあるわけですよね。
でもそれは日常で、彼女もここの出身じゃないですか、それが非常に印象的だったということで、
そういうものの現象、心に残った煙が自然現象と言っていいかわからないですけど、
そういったものをこの金馬の技法を通して表現をしている。
彼女から見たらこういうふうに見えるんだっていうのはちょっと面白くて、今回ご出品をお願いをしました。
これただ漆で金馬という技法で、ということは釉薬じゃないわけですから、
作品に込められた思い
やっぱりこの方も大木さんと一緒で、やっぱり磨いていく作業で調整していくってことですよ。
パッと焼き上がってはい終わりじゃなくて、やりながらどんどん表情が変わっていくっていうことですよ。
だからここはこの色出したいからもうちょっと磨こうかな。
でも磨きながら、でもこことのバランスを見たら、
想定したほど磨かなくて、このぐらいで止めた方がいいかもなっていうのはやっているそうです。
やっぱりちょっと抽象画を描くような感覚っぽいですよね。
そうですよね。そういうのも面白いなっていうと、
やっぱりその紙塗りとかがこういうふうに見えるんだっていうのは面白い発見でした。
全部は天候をテーマにしているわけではなくて、自然とかが多いかなと思います。
僕が一番好きだったのが、今ちょうどスロープ用意していただいてあるんですけど、
なんていう作品でしたっけ?
これスポットライトです。
円形のというか、こけ形みたいな形のものが壁に飾ってあって、
メインがオレンジっていうのかな、黄色、黄土色、周りに赤く。
これ見た時に、パッと目に入った瞬間に、昔の金曜ロードショーのオープニングの曲が流れてきました。
そうですよね。
だからその色合いが有名っぽいってだけじゃなくて、なんか懐かしさ。
あの曲聞くと、金曜の日だみたいな感覚とかまで思い浮かべられて、
その感覚がすごく印象的でした。
自分の中の感情を感覚とか、自分の中の思い出を追体験するような色合いなんだなっていうのがすごく印象的でしたね。
多分それは本人も喜ぶと思います。
中田さん、自分がそれぞれこういう何かをイメージしたものとか作品されてますけど、
そこに対して、作家さんってよく好きに見てくださいっておっしゃる方いるんですけど、
中田さんの場合はそれだけじゃなくて、ここから自分の思い出、それぞれの見る方の思い出をここに投影してもらえたら嬉しいというふうにおっしゃってるんです。
今、トニーさんが気になったっておっしゃってくださったこのスポットライトも、これは実は撮り。
撮り?
はい。
コロナ禍の時って外出してきないし、コンビニに行きたいから外出しても誰もいないしっていうので、
これがどうなるんだろうという不安感に苛まれてた時に、ある時空を見たら一羽の鳥がキューと飛んでいく姿が目に入ったんです。
それが未来につながっているようなイメージとして彼女は捉えられて、
鳥はたぶん毎日飛んでたはずだけど、それまでは全然目にも止まらなかった。
けど、その時その鳥だけは目に止まって、しかも未来へつなぐ、ちょっと希望的な要素を感じたということで、
この印象的な黄色というか赤というか、あんまり彼女はこういう色を使わなくて、
緑とか青とか多いんですけど、この時は希望に満ちてっていう意味で、その鳥をこれで表現している。
言われないとわからないというか、わかりやすく鳥の形があるとかじゃなくてですね。
本人はそのつもりだけど、さっき大輝さんは金曜ロードショーでおっしゃったけど、それでもいいんですよ。
その金曜ロードショーを見てた幼い頃の記憶とかを載せてもらえるのは嬉しい。
いろんなジャンルもちろん好きで、焼き物も当然好きなんですけど、
焼き物の新感覚
釉薬と違うのは、本当に祈りというか、たぶん本当に何度も磨いてらっしゃると思うんですよ。
手作業というか、めでてる感じが伝わってくるのが、他にやっぱり色合いだけでパッと見て言われないと焼き物と思っちゃうかもしれないけど、感覚で違うのはそこな気がしましたね。
鳥さんさすが。
彼女を作品作る大きさの限度っていうのがどのくらいかっていう話をしていた時に、自分が抱えて作業するから、
最終的には自分が抱えきれるぐらいが限界かなって言ってるんですけど、
作業としてそれが必要だということもあるけど、やっぱり自分が作品をギュッと抱え込む感覚っていうのがすごい大事なんだっていうこともお話しされるので。
意外といいとこついさですね。
意外とっていうか、ドンキシャでございますので。
逆にこの後4人当てれるのが不安になって、カードルだけが上がっちゃう。
じゃあ3人目いきましょうか。
3人目は中田さんの隣で展示している松永圭太さんという焼き物の作家さん。
今度は3人目にして男性の作家ですね。
焼き物の作家はたくさんいますけど、ちょっと見たことないというか、こんな人がいたのかっていうくらいの新感覚の焼き物で、実際どんな感じで作ってるのかぜひ教えていただきたいです。
松永さんがおっしゃっていただいたように、たぶんパッと見、これ木でできてるんですか?とかおっしゃられる方もいるような見た目というか。
あれっぽいなと思いました。和紙を貼って、花火玉みたいな感じの色合いで、質感もそんな感じで、ちょっとパッと見た時には段ボール紙的な感じのというか、見たく見えたんですけど。
そうですね。竜木っぽいっていう人もいらっしゃったりするんですけど。
彼、これは焼き物の中でも型成形というか、型を使ってデーションっていう、粘土を液体状にしたのを注ぎ込んで形作っていく。
普通のだいたいはろくろで作るとか、手びなりで作るとかじゃないですか、粘土型を。じゃなくてってことは型をまず作る?
そうですね。型を作って、彼の場合はセコ型とって、ろくろとかでやる場合って、いわゆる創造されるような粘土というかね、あの状態のものなんですけど。
松永さんの場合は、粘土にする前の原土といいますか、山から取ってきたまんま、全然生成しないような状態の土を液体状にしちゃって、それをこの石膏型に流し込んで、この形を作るんです。
他にそういうやり方をする人はいるんですか?ブロンズ像を作るやり方みたいなものですね。彫刻っぽい感じですけど、陶芸でもそういうやり方ってあることはあるんですか?
それこそ昔からある技法で、原土を使うというのとは別ですけれども、伝承で型を使うというのは、それこそ大量生産のこういう器とか、コップとか。
そういうものでは使われてきた技法なんですけれども、それをいわゆるユニークピースというか、芸術作品として彼は使っていて。
しかもコップを作るときの伝承を流し込むときだったら、早く、しかも均一にしないとダメじゃないですか。
そりゃそうですよね。大量生産したいからの技法なわけですからね。
だから、わーっと勢いよく入れて作っていくんですけれども、彼の場合は、これも失敗がきっかけだったそうなんですけど、ゆっくり流し込むことで、そうすると先に流したところが先に乾き出すじゃないですか。
それは理屈上そうなりますね。
で、それの表情を楽しむ作品なんですよ。
これは一気に型があって注いだって聞いたら、それだけ聞いたらですよ。
簡単、型さえ作れば誰でもできるじゃんって思うけど、やっぱりそこは作家だから、そういうわけにいかずというか、そんなことをやりたいわけじゃなくて、あえてゆっくり注いでいく。
ゆっくりっていうのは1日かけてぐらいの感じなんですか?どれぐらいのゆっくりさがあるんですか?固まるのすぐ固まるんですか?
ゆっくりっていうのは注ぐ時間をめっちゃ遅くするのか、それとも、例えば1から10までの高さがあるとして、今日は1までにして、固まったら次の日に2とか、そういうことではないんですか?
間を分けるのが1日か2日かっていうところはちょっと置いといて、それは1時間か2時間かっていうね。時間の割合はありますけど、基本的にそちらです。
そういうことなんですね。基礎を作っていくって感じですね。
だから、作品を見たときに、型で作ってるって言われないで見ると、横線とかボーダーのように見えてるのは、その分時間をかけて、その基礎を固めていくからってことなんですか?
そうですそうです。
彼は生まれも育ちも、岐阜の美濃焼の産地で、ご両親も陶芸家なんですよね。焼き物が日常の人なんですけれど。
しかも、たじみって美濃地方の方で、あちらの方は、例えば京都の焼き物だったら土は取らないんですよ、京都で。土は外から持ってきて、ろくろ引くぐらいはあるけれど、過食して。
だけど、たじみとか美濃地方の場合は、自分のところで山から取ってきますから、近所に削った地層は当たり前にある。
さらに言うと、大量生産の工場がたくさんありますから、そこで失敗したい器とかを集めて捨てられる場所もあるわけですよ。
それって別に他の街では日常じゃないじゃないですか。
それにふと気づいた時に、これが自分の日常であるっていうこと。
型成形技法の探求
特に壊れたものが捨てられるところって、焼き物の終焉の場所じゃないですか。
焼き物における貝塚みたいなものが捨てられる。
でも、これを写真に撮って、転写シートにして、新しい作品に生まれ変わらせるっていう、
生まれるところと終わりのところっていうところの輪廻感じゃないですけど、そういうものもやっていたりですとか。
最初に2人で説明していたのは、土肌的なものもあれば、もうちょっと周りに色がついているなと思ったのが、
これは釉薬じゃなくて、写真を転写しているってことですか。
これは普通だったら、マグカップとかの横に模様、キャラクターがあったりとか、ある技法を使っているってことですか。
そうです。だから地元には転写シート屋さんもあるわけですよ。
そこにお願いして、自分なりのお友達とかプロに撮ってもらった写真を転写シートにしてもらって、それを貼って作品にするっていう。
究極の地産地消ですね。
そうですね。確かに地産地消っていう言い方になるかもしれないです。
だからその焼き物って何だろうとか、その産地とかがどういうものだろうとか。
これは前は別の陶芸館の友達と話をしていたんですけど、
ミノ焼きとか、今はエシカだったらプタニ焼きとか言いますけど、
それって元々そこで素材が採れて、土が採れてとか、それで発展してきたものですけど、
今のとき別に土ってインターネットで海外の土も買っちゃったりするわけですよ。
だからミノとかでもオーストラリアの土を使っている坂さんもいたりするわけですよ。
そっちの方が良いと思えば。
でもミノでやっているとミノ焼きって言われたり、ミノ焼きの坂って言われたりするわけですよね。
そうしたときに、なんとか焼きとか、それって何だろう、今、この時代には。
ということもあって、自分が生まれ育ったミノで焼き物を続けること。
何だろうっていうのを彼は、まだ若いですけど、非常に考えながら制作している人だなと思います。
とても工芸的な制作をする方ですけど、
最近現代アートの方でもロカとかも始めているんじゃないかな。
あと海外とかでも人気がちょっと出てきていて、
野中ヒルっていうギャラリーとかも扱い始めているので、
心象工芸展の開催
大きいところがついたんだったら、今後海外展開していくかなと。
でも気になったのが、内容というか作り方とかも教えてもらって、
できている形自体は縄文っぽいと言いますか、原始的なというかプリミティブな形のものが多いなと。
それは意図的にプリミティブな形を狙っているんですか?
そうですね。ここ最近はそこに非常に関心が高いみたいで、
チラシとかで使ったのもモヌケって呼ばれるシリーズだと思うんですけれど、
カラ、サナギとかが出ていたカラって意味なんですけど、
自分の制作方法と昆虫がサナギから行っていく過程が似てるって思ったそうなんです。
そこでちょっとそれにこだわってカラ作ってるんですけど、
カラから教えてもらったんですけど、昆虫って幼虫で芋虫がいるじゃないですか、それがサナギになるじゃないですか。
サナギの時ってドロドロな液体になってるんですね。
効きますよね。想像するだけで。
持ち歩いて思っちゃうんだけど。
それでサナギが出てきたら綺麗な蝶々がまた別の形になってるっていうものなんだけれども、
松永さんも限度があって、それを1回液体でドロドロにして、また違う形で出てくる。
この工程が似てる。
確かに虫っぽさみたいなものもある。
でもタイトルもモヌケっていうタイトルでしたもんね。
読めなかったです。
モヌケってそういう意味なの?サナギとかそういう。
カラっていう。
でもモヌケって全然、松永さんの作品書けないですけど、
改めてモヌケっていう字を見てモヌケだなと思ったけど、
モヌケなんてモヌケのカラ以外しか使わない言葉ですよね。
モヌケがカラって意味なんですね。
モヌケのカラってのは馬から落馬するみたいなことを言ってるってことなの?
頭が頭痛いみたいな言い方なのか。
でもすごく考えてることがすごくクレバーな作家さんだなって思って、
クレバーな作家さんはだいたいクレバーに見える作品を作るじゃないですか。
言い方ちょっと意地悪に言うと、
いかにもクレバーですみたいな、頭使ってますみたいな作品を作り、
それが別に悪いとは思わないんだけど、
そうなのに見せ方としてはすごく原始的なものに見えてるところが面白い。
レイヤーがある作家さんだなと思いました。
そうですね。だから彼の作品は、
小民家とかそういうところで展示されることが多かったそうなんです。
素朴な作家さんみたいに見えますもんね。
私もそういうところで何度も見てきたから、
今回もうちで展示をお願いした時に、
そういう造作を作った方がいいかなと思ったんですよ。
ただ、松永さんに来ていただいて、展示室をご覧いただいた時に、
この白いケースを使いたい、ここに入れたいっておっしゃったんです。
今、実際そうしてるんですけど、
作家さんそう言うからそっかと思ったんですけど、
初めそれを買った時に、正直真っ白のホワイトキューブじゃないんですよね。
うちは白いケース、大きいケースがあるだけなので、
ちょっと重すぎるというか、
そこが私もうまく使い切れるかしらって心配なところだったんですよね。
松永さんの良さが出ないんじゃないかと思ったんですが、
実際この白いケースの中に展示をしてみたら、
多分トニーさんがおっしゃるクレバーな部分っていうのがすごい際立って、
キリッとして展示されてきたんじゃないかなと思いました。
そっか、だから僕初めて松永さんを知って、初めてこれで見てるから、
こういう作家さんなんだってわかったけど、
確かにこれが古民家に展示されてたら、そこまで多分そうだよなって思って、
風景のように感じちゃったかもしれないですね。
だからちょっと知ってみるとより面白くなる作家さんですね。
だと思います。
さあということで、まだまだ紹介したいんですけれども、
お時間がやってきてしまったということで、
続きは後半でできると思いますけれども、
それも含めてですけども、今やってる展覧会、
じゃあ改めて最後に告知をよろしくお願いいたします。
はい。国立工芸館で開催中の展覧会、
新章工芸展、12月1日、日曜日まで開催しております。
技術だけじゃない工芸作家さんの気持ちとか思いとか、
新章風景などを表現した6名の作家さんによる展覧会になっています。
皆さんもぜひ、工芸は絶対難しくありませんので、
作品をご覧いただきながら、いろんなご自身の思い出と重ねて
楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
では、紹介しきれなかった3人は後半でということで、
また次回もよろしくお願いいたします。
次回も岩井さんとお届けしていきたいと思います。