まず最初にね、イグノーベル賞って何なの?っていうことについて軽く説明します。 イグノーベル賞っていうのはね、ノーベル賞のパロディーとして人を笑わせ
そして考えさせられる研究に対して送られるものです。 1991年から行われているようで、毎年9月に受賞者が発表されています。
結構歴史長いですね。イグノーベル賞って知ってたんですけど、そんなに何だろう、優位賞正しきって言ったらあれだけど、1991年からやってるとは思わなかったです。
ちなみに僕がね、1989年生まれなんで、イグノーベル賞はね、僕の2個下となります。 歴史はまあまあそこそこ長いですけど、当たり前ですけど、本家のノーベル賞とは全く関係のないパロディーの賞でございます。
でね、このイグノーベル賞では毎回10部門程度が選ばれるんですけど、 なんとですね
この長い歴史の中で機械工学部門として受賞したイグノーベル賞っていうのは今回初なんですね。
これはね大変栄養なことなのかどうかは謎ですけども、とにかく機械の専門家としては見ないわけにはいかないということになります。
ちなみに機械に近い分野だったら、例えば材料工学部門とかは過去に受賞例がありまして、
その内容がですね、人の代弁を凍らせて作ったナイフが機能的でないことを実証したということで受賞されてますね。
もうなんか思考が全然追いつかないんで、これは一旦見なかったことにしましょう。 じゃあねこっから早速2023年のイグノーベル賞
機械工学部門を見ていきたいとおもいます。 機械工学部門の受賞理由はこちら。
死んだ雲を機械的クリッピングツールとして蘇らせて使用したということです。 この研究ではなんと雲の死体を使って
小さいものをつかめるような機構を作って実際に使ってみたという研究なんですね。 先ほどの代弁ナイフと同じようなインパクトある内容です。
これだけ見ると非常にサイコパスな感じがしますよね。 雲の死体を使って機構を作ったみたいな。
ただこれさすがイグノーベル賞で当然ですけど、この研究面白いとかユニークだけじゃなくて、ちゃんと考えさせられる内容になってるんですね。
SNSでもこの機械工学部門の受賞内容がバズってましたけど、やっぱりインパクトがある雲の死体を使ったっていうマットサイエンスな部分がすごく注目されてたんですけど、
背景まで含めて考えると意外と学びがあるんですね。 意外とって言うとちょっと失礼かもしれないけど。
なので少しですけど、このラジオではそこの部分を深掘りしていければなと思います。 まずイグノーベル賞を受賞した研究のタイトルがこちらです。
ネクロボティクス。即時使用可能なアクチュエーターとしての生態材料。
直訳ですけど、ネクロボティクス。聞き慣れない言葉なんですけど、これは研究者、その研究者たちが作った造語です。
ネクロっていうのは死を意味する窃盗語で、それとロボティクスという言葉を掛け合わせた造語なんですね。
ゲームとかでもさ、よくネクロマンサーとかね、飼料を使って戦うキャラクターとかいますよね。 そのネクロです。
ロボティクスっていうのはそのままね、ロボット工学なんで、つまりネクロボティクスっていうのは死のロボット工学と言えますね。
死のロボット工学。やばいですね。なんか中二心をくすぐるワードですよね。 ネクロボティクスの研究所って言ったらね、なんか入り口に魔法陣とか貼ってありそうですけど。
ただね、当然そういうオカルティックな話ではないんですね。 即時使用可能なアクチュエーターとしての生態材料ということなんで、つまり
生き物の体そのものをすでに完成された動力付きの構造体と、そういうふうにみなして、それを後からコントロールする術はないだろうかということを研究しているということです。
一つの機械として生き物の死体を見ているわけですね。 なんでそういう視点になるのか。なんでそういうことをしたのか。
それは生き物の体が 工学的に見て非常に優れているからです。
世の中にはね、いろんな機械やロボットありますけど、そういったロボットの仕組みと生き物の体の仕組みって実はこれ切っても切れない
縁があるんですね。 生き物の体や構造をモチーフにして設計されたロボットって結構あるんですけど、
例えばね、何の生き物も参考にせずに人間が知恵でロボットを作り出したとしても、 なぜか何らかの生き物には似てしまうんですね。
生き物の体って進化の過程で最適化されてますから、 人間がね、ポンと考えて生み出すようなことができないような高性能なロボットなわけですよ、すでに。
高性能なロボットって言えばね、多分最初にこうパンと頭に思い浮かぶのって、 例えばアシモとかペッパー君とかね、ああいうヒューマノイドだと思います。
でもそういうロボットをイメージした時って、動きってどうですか? なんかさ、こう、
アシモとかペッパー君とか、形こそは人の形をしてるけど、 人のような動きってあんましないですよね。
人ほどスムーズに動かないというか、やっぱロボットっぽい動き?ロボット特有の動きってあると思います。 それは当然ね、人間の形は模しているんですけど、そもそも人ではないんです。
もっと言えば、構造が専念されてないんですね。 例えばああいうロボットだと、関節ごとにモーターが入ってるわけですね。
肩、肘、手首、指とかね、そういう曲がる部分にモーターが入ってて、それが独立して動いてる。 だから物を握りましょうってなった時も、じゃあ俺は肩を何度曲げて、肘を何度曲げて、
このタイミングで手首を何度曲げて、みたいな感じで、もうめちゃくちゃ頭の中で計算して、ザ・ロボットみたいなね、動きになるわけです。
一方でね、人間ってどうですか?と、我々関節ごとに体を動かさないんですよね。 もちろん肘だけ曲げるってこともね、意識すればできるんですけど、
基本的に動作においては、複数の関節を総合的に動かすっていう動作をしています。 でもその中で我々ってさ、その物を取ろうと思った時に、じゃあ肩はこのぐらい動かして、肘はこのぐらい動かして取らなきゃ、とかって、
頭で考えませんよね。自然にやってるこの動作なんですけど、実はそのための体の構造になってるんですね。 人間の体って
多関節筋といって、関節をまたいだ筋肉っていうのがついてるんですよ。 肘だけ動かすじゃなくて、その先についてて、この複合的に動きが出せるよっていう筋肉があらかじめセッティングされているわけですね。
だから各関節しか動かない、ごとにしか動かせないロボットとは違って、一つの筋肉だけで複合的な動きができるような構造がもう出来上がっているわけです。
別にロボットでも仮想的に多関節筋の動きを再現するような制御ってはできるんですけど、 計算量が段違いなんですよね。
関節ごとにモーターを同期させながら、各関節の座標を考えて、各関節から関節の座標がこうなってなってみたいな、 とにかく膨大な計算量がいるんです。
一方人間はこの多関節筋っていうのを動かせば、複合的な動きできちゃいます。 超低コストなわけですよ。
人間がもう頑張って脳を使わなくても体を複雑に動かせると。 筋肉のつき方、骨格っていうのはそういうふうに構造が最適化されてるんですね。
これは人間に限らず様々な生き物でもそうなってるんです。 もう考え尽くされた構造なわけですよ。体っていうのは素晴らしい構造物なんです。我々も動物も。
ということは、どういうことかといえば、 人間が頑張って知恵を絞って高性能なロボットとか機構を作るよりも、そもそも生き物の体そのものを使っちゃった方が早いんじゃないの?
っていうことですよね。そういう考えに至る人がいてもおかしくはないということです。 で、そこでそれを実際にやっちゃおうっていうイカれた人たちが
ネクロボティクスと言い出したと言うわけですよ。 アプローチこそは違えど
ロボット工学なんですね。やっぱ根底にあるのはロボット工学とか機械工学なんです。 なんかね、いきなりロボットの、あ、ロボットじゃない、蜘蛛の死体を使って動かしてみましたって言うとね、すごいマットなサイエンティストな感じにするけど、
根底はやっぱちゃんと機械からのアプローチ、ロボットからのアプローチとなってるんですね。 で、まあこのネクロボティクス第一号として白羽の矢が立ったのが蜘蛛なんですね。
当然ね、蜘蛛をモチーフにしたロボットっていうのもいっぱいあるわけなんですけど、彼らは蜘蛛そのものをもう優れたアクチュエーターであると、
そういう目で見たわけですね。 で、蜘蛛っていうのはね、ご存知の通り拙速動物なんで、あの昆虫ですね。
だから体は外骨格と、あと腐肢っていうところで形成されています。 さっきにちょっと人間の、なんだろう、多関節筋の話をしちゃったんで、ちょっと話がややこしいんですけど、
人間とは違ってですね、拙速動物なんで、 各関節ごとに機能が分かれているんですよ。
蜘蛛の死体で作ったロボットハンド、これを機械として評価しちゃおうぜっていうのがこのイグノーベル賞を受賞した研究の主な内容なんですね。
ぶっ飛んでありますけど、流れだけ見るとまあまあまあしっかりしてるなという感じ。 ここからねちょっと具体的な研究内容について説明していきたいと思います。
まずね具体的にその蜘蛛のロボットハンド本当に作れるの?どうやって作るの?ということなんですけど、ここがこの研究のアピールポイントの一つになってます。
なんとですねこの蜘蛛のロボットハンド、なんと蜘蛛さえいれば10分で作れます。 圧倒的な速さです。
このね製作のシンプルさっていうのがこの研究のポイントの一つとなってます。 実験で使った蜘蛛はね超王道の蜘蛛、タランチュラです。
それを0度以下の環境に入れて暗落しさせてあげて、それを資料として使うと。 製作方法はね極めてシンプルで、蜘蛛の死体に空気の入ったね注射器をぶっ刺すと。
あとは刺した穴から空気が漏れないようにその周りを接着剤で固めて機密性を保つ、それだけです。 これだけで完成です。
あとはね注射器をチューっとやって空気圧を蜘蛛の中に送り込んであげると、勝手に足が開くんですね。 もちろん圧力を抜けば筋肉の収縮で自然と元に戻ると。
これでもうねロボットハンド完成しちゃったわけです。 ハンドができたら次何したくなるかって言ったら
性能を試したくなりますよね。 なんでこのロボットハンドの波磁力つまりつかむ力を評価しています。
研究の結果によると最大で0.35ミリニュートンの波磁力を発揮したと書いてあります。 0.35ミリニュートンちっちゃすぎてよくわかんないけど
グラムに直すと0.035グラムと って言ってもやっぱちょっとよくわかんないと。
実験方法はね極めてシンプルで蜘蛛にビーズみたいなのをつかませてそれを引っ張ると。 その引っ張った時にポンって抜けるまでの力
それを評価していて 当然ビーズのサイズによってねつかみやすいつかみにくいがあるんで
つかめる力って変わるらしいんですけどだいたい3ミリから4ミリぐらいの直径のビーズで この蜘蛛のグリッパーがね一番力を発揮するらしいです
まあまあわかりましたわかりました力がわかりました次何知りたいかと言ったら これあの極めてね機械工学的なアプローチなんですけど
耐久力知りたいですよね そこで連続運転を行ったみたいです
連続1000回開閉動作テストを行ってみた さすがにね1000回動かすと
関節が劣化してひび割れてくるということがわかったみたいです これ原因は動かしていくうちにですね関節の水分が飛んでしまって
劣化を起こすと 当然ね劣化ってても死体なんで日々朽ちていってはしまうんですけど
まあ安楽死1時間後の雲と7日後の雲で組織を比較したところ 足の構造においてはロボットハンドとしての劣化性能劣化となるような変化は
なかったということなんで つまりテストによる劣化っていうのはちゃんと動かしたことで劣化したんだなって
いうことを裏付けが取れたわけですね 実験の結果ね700回までは性能劣化なく動かせるということがわかったようです
改めてこう結果を見てて思うけど本当に機械要素部品として 雲を評価してなってのが面白いですよね
ここまでわかったらね次はね実践投入をするということです 何かというとまあデモンストレーションですね
実験ではまあビーズみたいなやつを使っつまんでこう引っ張り上げてたんですけど それを身近なものでどんなものがつかむことできるかなっていうのを試してみたということ
なんですけどこのデモンストレーションがね まあとわかりにくくて超マニアックなんですけど
皆さんブレッドボードってわかりますかね 電子工作好きな人ならみんな持ってると思うんですけど
仮の電子回路を構成できる穴の開いた板みたいなやつでそこに抵抗とかコンデンサーを 刺してね回路を試しで作って作るというやつです
私持ってますけど 彼らはですねこれでとりあえずまず led を光らすような簡単な回路を作るわけです
で次にね雲のロボットハンドを使ってその回路の中にある部品を ブレッドボードから抜けるかどうかっていうのを試したらしいです
なんでやねんって感じでこれもっとわかりやすいであるだろうと思うんだけど 豆とかつまむとかね
なんかこうもっと身近者でやればいいのにも完全に研究者のですよねもう ブレッドボードがご家庭に1個必ずあると思い込んでますね彼らは
多分これがでもとしてみんなわかりやすいんだろうなって思ったでしょうね どのご家庭にもあるブレッドボード部品が抜けなくて困っていることありますよね
そこで今日紹介するのがこちら雲のロボットハンドですみたいな 多分そういうテレフォンショッピング的な音感覚だったんだと思います
でちゃんと回路から部品を抜き去って led を消灯させることができましたよ ということがまあちょっと論文には書いてありました
とにかくねこれで実用性も証明多分できたわけですね でまぁ結論ですね
この研究によって 何ができるかということなんですけども
まずねエコですということです このロボットハンドの大部分は雲でできているわけですから
生態材料なんでね あの廃棄物の問題とかがないということです自然に分解される素晴らしい材料で気候を
作りましたとこれが成果の一つですよと上がってます それはね雲の主体ですかね生態材料ですよね
あとね時間の節約になりますよとも書いてあります 普通のロボットってねいろんな製造工程があってかなり複雑な工程を経て作ら
れているんですけどこの雲のロボットハンドはですね なんと雲と注射器接着剤
部品線点数3点です 従来のロボットハンドの製造プロセスを大幅に削減していますよということです
ただし今後の課題としてはですね 主体なので脱水で朽ちていってしまいますと
蒸発防止のためのコーティングの開発が必要ですよということです 今後はね雲の種類やサイズの違いによる
波次力の違いまたは強度の強化そしてセンシング機能も含めたシステムの活用とか開発 こういうことを進めていきたいと書いてあります
当然で倫理的な問題もあります 雲の安楽死の方法とか調達の方法
こういったもののガイドラインを作って検討していく必要があるだろうということも励 てあります
ざっとで説明しちゃいましたけどこれがイグノーベル賞機械工学部門の受賞内容でございました 皆さんどう思います
これすごいよね本当に発想がね すごいし一応ねやっぱり雲
そのものもちゃんとアクチュエーターとして機能してるんですね それを実験を通して実証したとなんかこう妄想はするじゃん
ね遠隔コントロールできたらなぁ動物王みたいなそれをちゃん実際やっちゃうと で機能評価まで行うってそこまでのやっぱ探究心がものすごいなと思います
個人的にもかなり楽しめる論文でした 一方でやっぱねー
倫理的な観点はちょっと難しいなと思いましたね 一応最後に行こうとってつけたようにあの理由の話でしたんですけど
論文の中でそんなに大きくは触れられてないんですよねこの倫理の走って なんなら冒頭で
人間は毛皮や骨などそういう生き物の体を道具として使ってきた歴史がありますよね というとこから始まっているんで彼らとしてはそれと一緒だろうということです
確かにそう言われてみればそうなんだけど なんか本当にいいのかっていう直感的な倫理の感覚って働きませんこれ聞いた時に
僕はね少なくともこれこれ大丈夫かっていう感覚は働きました なんだろうねあのこればっかりちょっとね言語ができないんだけどなんか
倫理の1個抜け落ちてないかなっていう疑問があります 仮にね例えば今後いろんな動物でこういうネクロボティックスなアプローチが進むよって
なったら なんかもう一個考えなきゃいけないんじゃないかなって思う
思いませんという感じしますよねなんか でもね日本でも実は似たような研究やっててこれ筑波大学がゴキブリラジコン作って
いるんですよね これはなんかのあの生きたゴキブリに電気信号を遠隔で与えて
遠隔で操作するとゴキブリの動作を操作するという研究なんですけどそれを見た時は 特に何とも思わなかったんですけど
なんかねしたいをコントロールするってなるとなんかちょっとやっぱり1個 って感じがするんですよね
で同じような感じでね過去にもこれいいんかって思った事例があって例えばあの 猫ドローンとかって知ってますかね