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音声業界の海外市場が見えてくる番組、PODCAST AMBASSADOR。
この番組では、受賞オーディオジャーナリストであるあらいりなが、音声を通じて、音声業界の気になるニュースや注目の動きをお伝えします。
音声配信者やポッドキャスターが知っておきたい情報、音声配信が気になっている企業に役立つ視点を、業界目線とリスナー目線でお届けしていきます。
さて、今回は前回に引き続き、業界目線での番組レビューの続きをしていきたいと思います。
先日取り上げたのは、Spotify限定配信のフィクション系番組。
実はあらすじだけではなくて、エピソードの長さや配信頻度が今までの普通と違うといったところから、これが何を意味しているのか深掘りをしていきました。
レビュー後半の今回は、さらにそこからもう一歩踏み込みます。
本編の書き起こしをご覧になりたい方は、概要欄にリンクを貼っておりますので、そちらからご覧ください。
さて、今回も前回取り上げたSpotify限定配信の番組Red Frontierを、業界目線、コンテンツ制作という観点から深掘りをしていきたいと思います。
まずは前回までの振り返りです。レビューで取り上げた番組は、SFのフィクション系番組でした。
ただ、コンテンツ制作という観点から見ると、大きく3つ注目点があったんですね。
1つ目がエピソードの長さが普通より短い。2つ目はリリース頻度が早い。そして最後はリリース本数が1回に2本リリースというもの。
これが今まで私が聞き込んできたポッドキャストと比較すると珍しいものでした。
ではそれが何を意味しているのかというと、Spotifyが実験をしているんだろうというのが、ポッドキャストアンバサダー的な見立てだったんです。
Spotifyはプロットフォームとして台頭してきたものの、今後さらにポッドキャスト制作という立場としても、今のリスナーに最適な長さ、リスナーが満足するリリース頻度というのを探っているのではないかなと深読みをしていきました。
さてここからはさらにもう一歩踏み込んで、このSpotifyがしているだろうと私が思っている実験、じゃあ何の目的なのかというのをさらに深掘りをしていきたいと思います。
実験は実験でも、何を探りたいのか、何を洗い出したいのか、ポッドキャストアンバサダー的視点で考えた2つの目的、今回はお話ししていきます。
まず一つ目は、離脱率を下げる実験。離脱率というのは、要はエピソードを最後までちゃんと聞いてもらえるかどうかの指標となる数字のことなんですね。
エピソードが始まった時は離脱率0%、そこから徐々に聞く人が少なくなっていって最終落ち着くわけなんですが、この離脱率が低ければ低いほど最後までエピソードを聞いてくれる人が多いということを意味します。
個人配信者も離脱率が低ければ嬉しいし、モチベーションも上がるんですが、Spotifyにとってはそれだけじゃないと思うんですね。マネタイズにも重要な指標となるはずなんです。
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例えば、スポンサーの獲得。以前このポッドキャストアンバサダーでも様々な音声のマネタイズ方法について取り上げたんですが、これまで特に海外の音声業界でのマネタイズ方法のメインとなってきたのがスポンサー収入でした。
今でもニュース系番組の常に常連であるニューヨークタイムズやボックスメディアなんかは20分の番組の中に2箇所や3箇所スポンサー枠があるんです。
ではこのスポンサー枠、獲得に向けて重要な指標となるのがこの離脱率なんですね。
この離脱率が低いという数値が、例えばスポンサーに向けても最後まで聞いてくれるリスナーがいるという証明にもなりますし、そうすると例えば番組エンディングのスポンサー枠も売りやすくなるということにもつながると思いませんか。
ではこの離脱率の実験だろうと、私が勘づいたポイントはどこかというと、番組の長さが短くなっているという注目ポイントからでした。
これ今のエンタメ業界の流れというものも絡んでくるんですが、例えば一般的なSNSや動画サイト、人が隙間時間に楽しめるエンターテインメントというのは、実はどんどん時間の尺が短くなっているのが世の中の流れです。
例えばTikTokなんかは基本15秒の動画ですよね。一方でこれまでのポッドキャストというのは、そんな世の中の流れとは逆を言っていて、前回のエピソードでも挙げたようにですね、2時間越えの作品もザラにあるほどなんです。
そこで今回のSpotifyとしては、実験として1つのエピソードの長さを10分以下にした、いわばコマ切りにしたといったところに、実はこのTikTokのような流れをポッドキャストに反映させているのではないかなと見ています。
要は長いエンタメだと途中で飽きられてしまう。そこを時間を短くすることで、早いペースで話が展開して、リスナーを飽きさせない。そこから離脱率を下げていくというような流れが見えてくるなというふうに考えました。
そしてもう1つの実験目的と私が睨んでいるのは、リスナーをどこまで焦らすのかという実験です。これ結構ちょっとざっくりした見立てではあるんですが、これも実は私がこう考えた理由があるんですね。
それがリリースの頻度です。注目ポイントとしても挙げたんですが、今回の番組、今までよくあった2週間に1度の更新から早くなって1週間に1度になりました。ましてや最初はですね、1回に2話1挙リリースというものもあったんですね。
これ、いわゆるビンジレスニングと言われる一揆々したいというリスナーの要求に応えるのは、どこまで焦らしたらいいのかという実験の1つになるんじゃないかなと思うんです。
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これあくまでも私の仮説なんですが、もしかしたら今まで2週間に1回の普通のリリース頻度では、実は2話目からリスナーの数がガクンと減っていたのかもしれません。
例えば、リリース頻度が空きすぎて忘れられていたということがあったとしたら、このエピソードのリリース頻度を上げることによって、続きが今すぐ知りたいというリスナーの見えざる要求にうまく応えられる1つの可能性になるのではないでしょうか。
実はこのビンジレスニングをしたいリスナー対策として、他の制作会社がよくやっているのは、実はサブスクモデルなんですね。
有料メンバーになれば一般公開よりも早くエピソードが聞けますよというサービス、あとは一挙に全エピソードが聞けますというようなサービス、実はよくやってるんですが、これもコンテンツの作り方やリリースの仕方をうまく使って、スポティファイは最適なリリース頻度というのを実験してるんじゃないかなと踏んでいます。
全体をまとめると、今回の番組レビューから見えてきたのは、スポティファイが限定配信の番組を使いながらエピソードの長さを調節したり、リリース頻度を変えるというような実験をしてるんじゃないかなということでした。
具体的には、離脱率を下げるための最適な長さ、そしてリスナーが一喜一喜してハマる番組作りにつなげる絶妙のリリース頻度というのを探っているというポッドキャスト・アンバサダー的な深掘りでした。
さて、今回はスポティファイ限定配信のポッドキャストRed Frontierを取り上げて、業界目線の番組レビューを2回にわたってお送りしてきました。
音声業界も毎日どんどん変わっています。特に最近は今回取り上げたスポティファイをはじめとするプラットフォーマーの動きも非常に大きいのがこの業界。
スポティファイはその中でもコンテンツ制作にも力を入れているだけに、今までのデータを元にこうした実験を進めているというのは絶対ありだなぁと思っています。
今回もあくまでもポッドキャスト・アンバサダー的な深掘りではあったんですが、こういう実験、私も含めた個人配信者の方もいろいろされていらっしゃるかもしれませんね。
もし今までにエピソードの構成を実験的に変えてみたという方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントでお待ちしております。
今回のエピソードの感想は書き起こし配信をしているノートのコメント欄やツイッターにてお待ちしております。
そして今回の放送が役に立った、面白かったという方は、ぜひアップル・ポッドキャストやスポティファイからのフォローやレビューも嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ポッドキャスト・アンバサダーのあらいりながお送りしました。
それでは次回のエピソードで。