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山の木を切って、キョロキョロの木を植えました。
もし今、土地に手をやっていたら、明らかにCGですね、そこは。
それがまだ当時は、そんなにCGが使われていなかったので、
全部手作業というか、実際に作り込むということをみんなやってたんですよね。
黒木瞳の映画ここだけバナシ
こんにちは、ヒマラヤで配信始めました。黒木瞳の映画ここだけバナシ。
今回も聞いていただきありがとうございます。
そして前回に引き続き、今回のプロフェッショナルは、
数々のヒット作で映画美術を手掛ける美術監督の部谷京子さんです。
今日もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
美術監督でいらっしゃるから、いろんな方々、美術部の方々を束ねていらっしゃるわけですけれども、
大体一つの区民で美術スタッフって何人ぐらいいらっしゃるんですか。
そうですね、美術っていうことだけで言うと数名ぐらいが割と多いんですけど、
あとそこに装飾小道具っていうのが入ってくると、
20人、応援の方とか入れるとそれを超えることもあったり、
あとはですね、セットを作るときの大道具さんだとか、
塗装具さんだとか、建具屋さんだとか、そういう方たちも
広い意味では美術ということでくくられると思うんですけど、
そういう方々も入れると本当にすごい人数になりますね。
どんなセットを作るかって、よく会うだけじゃなくて、
実際なんていうんですか、
私ね、模型を作ります。
模型とかありますよね。
あれですよく立体感がわかって、
そうですね。
私もあれ好きなんですけれども、
私も好きです。
細かい作業ですよね、あれね。
そうですね。ただ私が思うのは、
それを使って撮影するっていうアニメーションとかではなくて、
それはあくまでも打ち合わせ用のツールなので、
そこにあまり時間をかけないように気をつけようとしています。
ついつい楽しくて作り込んじゃうんですよ。
ちっちゃな椅子を作ったりテーブル作ったり、
もうそこまででいいかなって止めないとみんな一生懸命作ってくれるんで。
私も3本ほど映画を撮りましたけれども、
やはり模型があるとイメージが湧くんですよね。
ただ平面図だけではなくて、
ここがこうなってるからこういう風に撮って、
カメラワークをしたいなとかっていう、
ちょっとひらめいたりするので、
ずっとにらめっこしていましたけれども。
あと小さなカメラ使ってシミュレーションしたりして、
楽しいですよね。
そうですね。
そういったセットっていうのは、
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役者が入って初めて完成する?
はい。
というふうにおっしゃってますね。
やっぱりセットの初日、
初めて役者さんが入られる時っていうのは、
私はとても大事だと思っていて、
もちろんその前に、
役者さんたちと打ち合わせができる場合もあるんですね。
例えば川瀬直美監督で、
キーキリンさん主演のアンの場合は、
キリンさんのお部屋を作るというか飾る時に、
3人でその場所で打ち合わせをしたんです。
ロケセットだったんですけど。
何もない空間で、
もう使われてない部屋をお借りして、
さあどうしましょうってことで、
3人で畳の上で座って話し始めた時に、
私の家には何もないのよね。
何もいらないわっておっしゃって、
それってキキキリンさんでしょって。
ここを飾るのはキキキリンさんの部屋じゃなくて、
徳江さんの部屋ですからねっていうことで、
もうめちゃくちゃ飾らせていただいたんですけど、
そういうふうにあまり打ち合わせが役に立たないこともあるなという感じですけど、
でもすごくいい体験しました。
同じ空間で同じ時間を共有できたということが。
監督と役者とお店のお客さんと3人でということですね。
庭を見ながら庭も作りたいよねとか、
なんだかんだポツポツとキキキリンさんもおっしゃったりしてて、
ご本人のお家には何もないかもしれないけど、
ここはちょっと飾らせてねっていうことで。
一応飾ったら見てくださいねとか言ってたけど、
結局初日が明けるまでは一切いらっしゃらなかったです。
それもやはり役者さんによっていろいろだなというふうに思いますね。
ただやっぱり誰々の部屋っていう時に、
当然私が準備をする頃にはもうキャスティング決まっているので、
その方の役の姿を想像して作るようにしています。
そうなんですね。
本当に自分が役者の時は皆さんに感謝しかないんですけれども。
感謝されてるんでしょうかどうでしょうか。
いやいや、皆さんのご努力はもう本当に頭が下がりますけれども。
でもいつも大丈夫かな、これで合ってるかなっていうふうにすごくドキドキするんですよ。
初日は特に。
初日は寝られないほどではないんですけど、
やっぱり役者さんが入っていらっしゃるまではすごい緊張しますね、その瞬間は。
私も初日はだいたい胃が痛くなりますね。
何回やってていろいろいっぱいやってても、
初日っていうのはすごい緊張感があって。
でもそれがまた私はたまらなかったり、
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もちろん失敗することもあるんですけど、
そうじゃない時の喜びっていうのがひと際なので、
本当に初日っていうのは楽しみでもあり、不安でもあり、
待ちわびた日って感じですね。
晴れの日ですね。
それまでの準備が大変ですもんね。
そうですね。
そういうと、その突入性浅間産総事件。
それは原田雅人監督が1972年に起きました。
これは実際の事件ですね。
私も見てました、テレビで。
ですよね。
この産総は残ってないのでもちろん、
だからお作りになったんですね。
そうなんでしょうね。
この作品に関しては原田監督に声をかけていただいて、
初めて監督の事務所で打ち合わせがあった時に、
何を話されるのかなと思って、
まずは段ボールがいっぱい積んである部屋に通されて、
これを今から一緒に見ようと。
それは何かというとニュース素材なんですよ。
実際に事件があった地元のテレビ局の報道部から借りてきた
生のテープというんでしょうか。
データが段ボールに2、30箱ぐらいありましたかね。
あれだけ何日間もかけてずっと生中継をしてましたから、
すごい量ありまして、それを見ようと。
見られた。
だからテレビでは実はモザイクかかってたりする
未成年の方もいたじゃないですか。
そういう方も全部映ってたりして、
ちょっとそれもドキドキしましたけど。
その時に監督から言われたのは、このニュース映像を使うんだから
オープンセットはこれと同じものにしてねって言われたんですよ。
それどうしようと思って、本当に至難の技でしたね。
まずロケ場所を考えて、それで山探し。
山探し、山とカーブの道ですね。
湾曲した道があって、そこから1段下がったところに地面があって、
そこに立ってる別荘だったんです。
3つの要素がなければいけないんですけど、
やっぱりカーブした道と山肌はあっても、下の地面というのがまずないんでね。
じゃあもう仕方ない、それを作りましょうっていうことにして、
鉄板で地面を作って、
だから崖っぷちなので長い足をとってて、
反対側から見るとすごい景色でした。
崖っぷちの道路の切り立ったところに鉄板で別荘地の分だけ張り出しがあるということですね。
その事件をやっぱりみんながある程度見てたので、
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それを嘘をつきたくない。
あともう一つ山に関しては、当時まだカルジダワっていうのが
新興の別荘地だったらしいんですよ。
それで山肌にひょろひょろとした苗木が間隔を空けて植わっているだけだったんですよ。
ただ、今日本の山でそんな場所を見つけようなんてなかなかないじゃないですか。
で、山の木を切ってひょろひょろの木を植えました。
もう何やってるんだろうって感じですね。
地にも遠くなるような作業ですね。
本当にそんな作業でした。
私たちは用意されたそこでお芝居をするだけでいいのですが、
でもやはりそこまでリアルを追求なさっていると、
やっぱり役者の気持ちも入魂ですよね。
そうですね。現場にいらした時の皆さんの気持ちは、
そこで何か振り立つものがあるかなとは思います。
でも、今思えば、今、
もし今、突入戦をやっていたら、
明らかにCGですね、そこは。
それがまだ当時は、そんなにCGが使われていなかったので、
全部手作業というか、実際に作り込むということをみんなやってたんですよね。
だから雪の量もそうなんですよ。
そもそも雪が降り始めてから、
雪が降り始めてから、
でも新潟県も、降る日もあれば晴れる日もあって、
晴れるとすぐに屋根の雪が溶けちゃうんですね。
なので、軽トラで近くの山から雪をずっとピストンして運んでいました。
で、乗っけて、ならして、それでも繋がらないので、
監督はやたらとそれを見ることができなかったんですね。
だから、雪の量もそうなんですよ。
そもそも雪が降り始めて、
それでも繋がらないので、監督はやたらと空の雲を撮って、
一点晴れました、曇りましたっていうのが、
編集でずいぶん使われてます。
自然との戦いでもあるわけはありますからね。
そうですね。
用意してて、その酸素を用意してても、雪が降ったり降らなかったり、
曇ったり晴れたりとかして。
あるなと思っても、どんどん溶けていってなくなっちゃったり。
そうですよね。
本当、雨ふらしの日にすごくお天気だったりすると、もうがっかりしますもんね。
そうなんですよね。
とにかく美術っていうのは、いろんな仕事をしなきゃいけない。
必要とあらば、飛行機や車、爆発物。
そうですね。
それから雨から、雪から、何から。
本当にたくさんありますよね。
そうですね。いろいろ多岐に渡った仕事だなと思いますね。
空は作れないかなって、さっき言ってしまいましたけれども、
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本当に雨だとか雪だとかのことを考えると、そこまでも作ってしまうっていう世界ですね。
原田雅人監督でいうと、金融不織劣等。
出た!
私もちょっとですけど。
私ね、その時の黒木さんの登場シーン、すごく覚えてるんですよ。
そうなんですか。
どんなふうに?
立ち姿がなんて美しいんだと思って。
重役室のセットで、黒木さんが登場された時に、
本当に美しいなと思って、そのお姿が。
私もちろん現場にいました。
失礼しました。
もちろん紹介は普通にされたとは思うんですけれど、
お話をするまで親しくなるほどの関係性は作れなかったんですけど、
私は本当に憧れの女優さんというか、俳優さん、役者さんということで、
本当に現場で楽しみにしていて、なんて美しいんだろうって。
凛として本当に立ち姿が素敵と思いました。
役が、俳優役秘書で、今は女優の佐藤恵さんの秘書役だったんですけども、
この話をいただいた時に、セリフが本当に少なくて、
それで点々が多かったんですよね。
その点々の部分を私は見てるわけです。
その時に心の声が聞こえるというか、見てる姿が点々じゃないですか。
私はその時原田監督に、どうせ少ないんだったら、
この人一言も声を発しない方が面白いんじゃないんですかってお話ししたんですよ。
なるほど、すごいですねそれは。
そうすると見てる方が勝手にというか、
こういうことを思っているんだろうとか、こういうことを言いたいんだろうとかって思ってくださるから。
見ててとても感じました。
なので、そういうことを原田監督に点々が多かったんです。
そういうことを原田監督に提案したら、それは面白いということで、
じゃあ一言も発することない人にしてくださいというようなことです。
でもお声を聞いたような気がするんですか。
ないんです。
ないんですか。
一言も喋ってないです。
秘書なのに、はいとか言わなきゃいけないのに、それも出してないんです。
一言も発してないんです。
だからか、なんか本当にそのお姿が本当に目に浮かぶんですよね。
よく佐藤さんに、お前はいいなセリフがなくてとかで。
その分大変ですよね。
腹が壊れましたけれども。
その時は原田監督も納得していただいて、そういう思い出があります。
もう一回見なきゃ。
素敵なお話。
その時の美術なんですけれども、原田監督から無茶ぶりというか。
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そうなんです。
どんなリクエストだったんですか。
金融スクレット呪縛の時は、まず一言だけキーワードがありまして、
今回はバロックで行こうと。
バロックと言われました。
それはバロックと一言で言っても難しいですよね。
銀行の存在を表現するのに、ほとんどはセットだったんですけど、
バロック調にしてほしいということだなと思いまして。
株主総会が行われる会議場がありますよね。
あれは当時としては、坂本前翔さんがカメラマンの。
高くしたいから、上がCGで行こうとおっしゃって。
結構高い高さまで作ったんですけど、そこから上はCGにしていただいて、
結構迫力のある絵になっているかなと思うんですけれども。
バロック調ということで。
特には会議場と重役フロアの作りをバロック調にしたつもりです。
バロック建築とかって言うと、違和感があるとか。
今の日本人にとってあまり馴染めないものじゃないですか。
どちらかというと、否定的な時に使われがちな言葉ではあるんですけれども、
美術を大学時代にやってらっしゃったので、バロック美術もありますよね、芸術も。
すぐに湧きました、イメージは。
ちょっと重厚で威圧的だったりとか、
というようなところで監督がそうおっしゃったんだろうなというふうに私は捉えたんですけど。
ほんとその一言だったんですか。
はい、それだけです。
ちょっと原田監督電話しましょうか。
監督バロックって言ったよねって。
その一言だけで、美術、建物、それから室内、私の記書で言いました、室内だとか、
ある意味無機質な感じもしたし、圧がありましたよね、ものすごく。
そうですね、その圧をいかに役者さんに対して与えられるか、
観客の皆さんに与えられるかっていうところが勝負だなと思いました。
なんか不思議な空間でしたもん、あそこに立った時に。
そうですか、はい、それはよかったです。
成功だったかどうかは分からないですけど、でもなんか嬉しいです、そのお言葉は。
監督は何かおっしゃってました?
何も言わないですね。
そうなんですか。
浅間参総事件の時も何にもおっしゃらなかったんですけど、
ただ原作の佐藤さんがいらした時に、案内してあげてくださいとかっておっしゃって、
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ちょっと嬉しそうにしてらしたので、まんざらでもなかったかなとは思ってます。
シャイだからね。
そうですね、結構シャイなので、いいとも悪いともあまりおっしゃらないです。
ダメだったらダメってはっきりおっしゃるとは思うので、そうではなかったかなと思います。
平谷さんにはもともと話を伺いたいところですけれども、
今日はこの辺りで。
はい、残念。
でもまた次も次もございますので、
今日は皆さん、リスナーの皆さん、お耳を拝借ありがとうございました。
映画美術の世界はもう私も勉強になりましたので、
平谷さんの話ももっともっと伺いたいと思います。
次回をお楽しみにお聞きください。
平谷さん今日はありがとうございました。
ありがとうございました。
さようならみんな。