取り上げるのが坂本慎太郎さんの『幻とのつきあい方』っていうアルバムですね。
前回の72回のエピソードで坂本慎太郎さんがやってたゆらゆら帝国っていうバンドのことについて話してるんで、
ゆら帝時代についてはそのエピソードを聞いていただけたらなと思うんですけども、
そのゆらゆら帝国が2010年に解散するんですよね。
で、その1年後、2011年にレーベル、zerone recordsっていうのを立ち上げて、自分の初のソロアルバムとして『幻とのつきあい方』っていうアルバムが出たんですね。
2011年の11月とかかな。
で、これはDFA。LCDサウンドシステムの人がやってるレーベルがあるんだけど、そこからアメリカ版も出てて、『幻とのつきあい方』は。
その音楽好きの中ではヒットしたアルバムというかね、話題になったアルバムっていうので、そういう記憶もあるんですけど。
この後も定期的にアルバムは出てて、坂本さんのソロアルバムとしては今までで4枚あるって感じかな、フルアルバムとしては。
通定してるものはありつつモードがいろいろ変わっていってる感じはあって、このファーストの『幻とのつきあい方』出た時のショックというか、影響を受け方みたいなのとかも、
この2011年という年に出たのも印象的だったし、僕としてはめちゃめちゃ影響を受けたというか、本当に。
20歳の時に出てるんですけど。
これ、てらださんは2011年ってまだ高校生か。
高校2年生とかなんで、全然リアルタイムでは僕はすいません、聴いてないです、このアルバムは。
聴いてない?
ただ、これアルバムが出た時のジャケットのインパクトとか、あとタワーレコードのポスターに出てたんですよ、多分そのタイミングで。
NO MUSIC, NO LIFE.ね。
それの言葉がすごいね、やっぱパンチラインというか強かったから、こんなかっこいい人おるんやっていうのを僕は結構そこで認識したんですよ。
あの「役に立たないものは〜」みたいなやつか。
そうそう、携帯がね、後ろにバーってある、前で写真撮ってる。
かっこよかったね、その写真の撮られ方とかも坂本さん単体でのビジュアルで結構いい写真多かったよね、この時の。
ジャケットといい、なんかあの佇まいといい。
あとなんか個人的に坂本慎太郎って白黒っぽい写真とかがすごい似合う人やと思うんやけど、NO MUSIC, NO LIFE.のポスターも白黒やから基本、だからなんかすごい雰囲気があって良かったなと。
雰囲気あったよね。あんまりこういう佇まいの人っておらへんかったもんね、ミュージシャンでね。
この後に『まともがわからない』っていうシングルが13年に出たりとかして、その翌年にセカンドの『ナマで踊ろう』っていう、2014年に出るんだけど、この辺りぐらいまで本当に僕はもう坂本さんのインタビューとか動向があったらもう全て読むみたいなぐらいほんと傾倒してたというか、すごいそういう存在だったんですけど。
あと、ソロになってから、コーネリアス、小山田圭吾とすごい近づくんだよね、距離が、坂本さんが。もともとゆら帝売れたのも、小山田さんが今年のベストに『3×3×3』入れたみたいなところから交流はずっとあるんだけど、この2011年以降、本当にコーネリアスの曲が作曲で作詞坂本慎太郎っていうコンビでね、いろんな曲ができてて、全部いい曲っていうか。
最近の本当コーネリアスの曲にも一曲坂本さんが作詞書いてるやつとかもすごいいいし、あ、こことここが一緒に仕事しだすんや、みたいな感じの驚きみたいなものがあって。
なんか僕からすると本当に、別に他にめっちゃ影響を受けてる、現行のシーンとかに影響を受けてるわけじゃないけど、独自にいい音楽をコツコツやっていくみたいな。それはコーネリアスもなんだけど。そこがクロスして、信頼できる仕事とか、音楽をどんどんやってくれてるみたいなのは、一つのミュージシャンとしてかっこいい形みたいなんで、そういうのも含めて憧れてましたね。
音楽性的には全然交わると思われへんような。思われへんかったけど、なんかでも言われてみると、コーネリアス後期の音がさ、デッドな感じみたいな。ドラムの音がパーンって終わるみたいな感じとかって、言ったらハイファイやんか、そういうコーネリアスの。だけど、今回の幻の付け合い方ってすごいローファイだけど、音がめっちゃデッドな感じ?すごいサスティンがない感じっていうか。
かわいいって、ちょっとチープな感じの音に。そうそうそうそう。そう考えると、この試行してるもんが近いっていうのはめっちゃわかる気がするんだよね。鳴ってる音は違う気するんだけど。で、近作はかなり近づいてるのよ、2人とも。あ、そうですね。そうそう。だから、なんかその辺面白い関わり方やなーみたいな。坂本さんは結構渋谷系っていうのに対して複雑な感じのコメントをいつも残してるんやんか。
僕が一番好きなのは、確か「remix」か「クイック・ジャパン」か忘れたけど、インタビューで、《俺だってゲンズブール好きだよ》って言ってたのよ。同じようなもん好きなのに、言ったらセルジュ・ゲンズブールのオブスキュアな魅力にやられてる人と、言ったらオシャレ度。やっぱフランスのオシャレな男っていうところで渋谷系って受けてるわけやんか。はいはいはい。
写真とかも、佇まいとかも含めて。なんかそこの、俺も全然ゲンズブール好きなのにみたいな。その一般的なイメージが渋谷系的なオシャレなフランスな感じっていうのになったのに、こう複雑なことを言ってるみたいなインタビューとかもあって、なんかその気持ちはすぐわかるっていうか。
そうやな。ロックに対する影響もすごい強いもんね、ゲンズブールはやっぱり。
うん、実はそうだよね。なんかその辺ね、面白いなっていうところがあったりとか。そういう言葉とか、それも含めてね、すごい影響を受けたアルバムで。
2011年、いかにこの『幻とのつきあい方』が革新的で、他のシーンに独立した存在かっていうことを話すためには、2011年にどんなアルバムが出てたのかってことを整理する必要があると。
で、ざっくり2011年名番っていうのを台本に書いたんですけれども、まずロックから、Radioheadの『The King of Limbs』、James BlakeのJames Blake、ファーストですね。で、Bon iverのBon iver、ファースト。『The King of Limbs』とJames Blakeって言われたら、ひとつジャンル浮かぶと思うんすけど。
思い浮かんでますね。散々言葉が。
当時もみんな言ってた。
ダブステップでしょ。
ダブステップ。
腐るほど聞きましたね、ダブステップってあの頃。
ダブステップっていうのがものすごい新しい音楽のジャンルだって言って、ロック文脈で言われだしたよね、ダブステップって。
Radioheadがダブステップをやった。で、James Blakeがシンガーソングライター的なロック耳でも聴ける新しい音楽の感じみたいな感じがあって。
もう、それまでUKのRadioheadが聴いてた人らが、James Blakeを中心にダブステップだ!みたいな感じでみんな言ってたっていう。
いやー懐かしいですね。だからJames Blakeをロキノンとかがすごい押してたのが懐かしいですね。
ロックらしいロックっていうのがもちろんあったんだけど、そっちじゃなくてこっちの方が今はかっこいいぞみたいな感じの圧があった感じはしたかな。
そうですね、ロックンロールリバイバルとかの反動がモロに出てきたのかなっていう。
っていう感じがあって、だからこのダブステップって言ったらその2ステップから来て、それがダブと合体してダブステップみたいな感じのあれなんだけど。
だから本当にクラブミュージック文脈で来たもんが、評価してたのはこれ結構ロック側の人ばっかりだったっていうのが結構面白い。
だからここでちょっとクラブミュージック目覚めたみたいな人めっちゃ多いと思うんだよな。
ずっとゼロ年代はロック聞いてきたけど、ダブステップからそっち、クラブミュージックみたいな方にどんどん寄っていくみたいな感じがすごいあったんちゃうかなっていうね。
この前からポップスとかね、もちろんPerfumeとかもあったし、もちろんそっちはそっちは盛り上がってんだけど、これ臨界点っていう印象があるな、僕としては。
そうですね、確かにな。あとそのRadioheadの『The King of Limbs』出たときに、やっぱりアルバムだけだとこんな感じだよみたいな。
結構みんながっかりの雰囲気が正直出ちゃってたと思うんだけど、僕の周りではそういう感じだったんですけど。
ライブの『Lotus flower』とか見たらこんなかっこいいんかいみたいな。
そういう実際の映像を見たときのかっこよさでやられたりとか。
そうね、だから『In Rainbows』とか『Hail To The Thief』のところってまだまだ新しいことやってるけどちゃんとバンドだったのが、本当に音としては『KID A』『Amnesiac』的な嗜好というかね。
バンドからちょっと離れた感じがして、ロック大好きみたいな感じでRadioheadが好きな人からすると、はて?って感じだったって話ってことだよな。
それがライブで見ると、あ、意外と肉体的やなみたいな。トム・ヨークもAtoms For Peaceとかやりだすから、そういう流れなんやなーっていう。
そうね。で、アトムスのライブもフジ来たやつとかもめっちゃヤバいみたいなね。
そうそうそう。
それもありましたね。で、もう一個言っとくと、でもArctic Monkeysの『Suck It and See』もこの年なんですよ。
はいはい。
これは言ったら超アメリカになったアルバムで、
イギーポップめっちゃ聴いてたみたいな、当時ね、言ってたと思うんだけど。
この前のアルバムから変わりつつあったんだけど、え、Arctic Monkeysこんなアメリカになったの?みたいな。
うん。
ここからですからね。
そうそうそう。とかで、ただ、こういうアルバムが出るぐらいまだまだロックとしては元気ってことですよね。
全部みんなクラブに行ったってわけじゃないっていう。
ああ、そうですね。
っていう時代で、Arctic Monkeysがそういうアメリカに寄ったっていうのと、あとはドリームポップ、シューゲイザーっていうのもこの時流行りだすんですよ。
はい。
で、Pains of Being Pure at Heart『Belong』、Horrors『Skying』ってこの2枚出てるんですけど、この辺でそのインディロック好きだよっていう子は、この『The King of Limbs』ついていかれへんかったけど、
こっちだって言ったらこっち行ったことも結構あった記憶があんねんか。
そうですね、確かに。あの頃すごかったもんね。みんなリバーブめっちゃかけてな。
もうリバーブの時代。あと、Washed Outとかその辺もいるけど、これ前段があって、ここら辺からマイ・ブラ再評価ってめっちゃあった記憶があんねん。
My Bloody Valentineっていうシューゲイザーの90年代のバンドで、伝説残してずっと音源はとってるらしいみたいなね、完成しないアルバムがあるらしいみたいな話から、
急に2008年から再活動みたいな感じになって、ライブしたのよ。で、フジロックにも来た。その時がフジロック史上一番の爆音だったと言われているライブで、
マイブラやばいみたいな再評価が始まりだしたのよ、その辺から。
多分その辺を言ったらインディーのバンドみたいな、ドリームポップとか言われるバンドとかが方法論として確立してきた、
そのケビン・シールズ、シューゲイザーのMy Bloody Valentineのギターのフィードバックノイズのやり方とか、
デジタルのエフェクターの進歩とかもあって、そういう感じの音を作る。
メロディーの使い方とかもマイブラっぽいみたいな感じのバンドが出だしたって感じ。
だからそういう人らもおったし、James Blakeも好き、『The King of Limbs』も好き、
ペインズ・ホラーズとかのこの辺とか、ウォッシュドアウトとか、この辺も全部好きっていう子は多かったんちゃうかな。
フジロックとか行ってる人はそういう感じだったんじゃないかな。
ああそうですね、確かに。これぐらいの後から邦楽でもめっちゃシューゲイザーのバンド出てきますしね。
出てくる。それこそこの段階でノーベンバーズとかも出てきてるし。
あ、このタイミングだね、ノーベンバーズ。
もういるね。っていうところもあるし、っていう感じかな。
その翌年、2012年にはマイブラの『Isn't Anything』と『Loveless』のリマスターっていうのも出だして、
この翌年、2013年には本当に新作の『mbv』っていうのが出る。
だからこの辺ってリバーブかけてすごいフィードバックノイズに夢中だった人っていうのは、そういう時代だったというふうに記憶してる人も全然いる。
確かにね。
マイブラの日本公演行きましたしね、僕も。
へえ、あ、そうなん。
なんばHATCHで大阪で2日あって、東京であって、もう1回来たのよ、東京。
で、その時、確かな…相対性理論だったかやくしまるさんソロだったか忘れたけど、対バンで東京でやったのよ、国際フォーラムなんかで。
へえ。
で、その時のコピーがなんかそのシューゲージング・シャワーって書いてあったこと覚えてる
どういうこと?シューゲージング・シャワー?
《極上のシューゲージング・シャワーをお楽しみください》みたいなの書いてあった。
音を浴びろ的なことなのか。
うん、意味わからんやろ。
うん。
そうそうそう。とかで、ロックはそんな感じでした。
ポップスって言うと、アデルが出た年なんですよ。
一枚目ですか?
アデルの一枚目。
うん。
確かこの時グラミーとかって全部アデルじゃないかな。
うん、すんごい人知った。
そうそう、とかで、だからアメリカのポップスっていう意味ではアデルどうのこうのみたいな話とかもしてた覚えもあるし、
あとはJay-Zとカニエがずっとやってて、やっと出たコラボレーションアルバムが出た年で、
カニエで言うと前の年に『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』が出てんのよ。
キング・クリムソンをサンプリングしてる曲があって、
カニエの『My Beautiful Dark〜』っていうのは、またややこしい言葉を出すけど、
この時の音楽の新しいものの評価、音楽好きとされてる人の中では、
僕の世代っていうのは「ピッチフォーク」っていうサイトがめちゃめちゃ影響力を持ってたんですよ。
で、ピッチフォークがピップホップの中ではカニエをめちゃめちゃ評価してて、
『My Beautiful Dark〜』は確か満点だと思います。「10.0」ちゃうかな。
そんなんで、だからピッチフォークに乗ってるやつとかを片っ端から聞いていくみたいなティーンとかもいたから、
それでちょっとカニエとかこの辺は聞き出してるみたいな感じも多かった印象はしますね。
あとなんか僕の記憶なんですけど、ニコ動とかでピッチフォークのまとめてるやつとかが、
アルバムとかまとめてて音も同時に流してるみたいな動画を結構見た記憶があって。
確かにその辺それこそピッチフォークのやつを翻訳して2ちゃんのスレッドに出して、
その辺で音楽の話、何々は満点だろうとかそういうのがさらにまとめサイトに載ってみたいなのとかもあったんで、
そういう時代だね。でもヒップホップ今ほどって感じあるかな。
もちろんあっちでは盛り上がってるんだけど、日本としては日本語ラップのシーンとアメリカのヒップホップと、
いわゆる音楽好きなフェスとか行く相当っていうのがどれも乖離がある状態だったかなっていう感覚がすごいある。
あとただアメリカの話だけで言うと、この時っていわゆるフリーダウンロード、ミックステープっていう文化が出だしてるんですよね。
The WeekndとかFrank oceanとかがそれぞれタダでアルバムを上げて、それをダウンロードできるサイトがあって、
それを落として聞くみたいな感じのものが出だしてて、これは後のヒップホップの一大ムーブメントとなっていくんですけど、
フリーダウンロードのミックステープっていうのが。で、この時はウィークエンドの『House of Balloons』っていうのがめちゃめちゃヤバいみたいな話があって、
これは聞いた覚えがあるな。これすげえかっこいいなと思った覚えがある。ただね、Frank oceanも出てたんだけど、俺もダウンロードした記憶はあるんだけど、
あんま聞いてなかった正直。Frank oceanの『Nostalgia, Ultra』は、この段階だと。
僕はね。で、日本語ラップは日本語ラップでちょっとずつ、それこそSUMMITとかがどんどん盛り上がってきてて、SIMI LABが出たのも、この年だったりとか。
あとは、PUNPEEのミックステープ、一番初めのが出だしたもん、この年ぐらいじゃないかな。(※2012年)
本当に交わってはないですね。 交わってはない、本当に。全部買い入りはしてるけどね。PUNPEEだりOMSBとかはもちろんUSのシーン聞いてただろうし、
そこはあるんだけど、一般までそこが全部繋がって届いてないって感じかな。 そうね。あと身の回りにそういうの聞いてる人が僕の周りほんといなかった。
まだいなかったと思う。僕もこの時はヒップホップあんま聞いてなかったので、だからカニ絵とかぐらいかな。
で、日本のメジャーシーンの話も最後にしとかないといけないんですけど、サカナクションの『DocumentaLy』。
『アイデンティティ』が入ってるんですかね。星野源『エピソード』、andymori『革命』とかかな。
すごいな。全然日本も豊作というか。今、見るとね。2010年に星野源がソロを出して、2枚目が『エピソード』って感じかな。
『くだらないの中に』が入ってるね。っていうので、この次のストレンジャーぐらいから今のゾウの星野源に近づいてくるっていうか、
まだこの時は知る人ぞ知るかっこいい星野源って感じだった印象があるな。
そうね、ギター1本に近い感じだったような気がするよね。 そうそう。まだカクバリズムで出てんじゃないかなこの辺。
カクバリズムっていう名前も出ましたけども、ceroのファーストですよ。『WORLD RECORD』。 はぁー。そっか、このタイミングなのよ。
で、この時から東京インディーという言葉が出だすところだね。だからミツメ、スカート、昆虫キッズとか、その辺のバンドがわちゃわちゃ出だしてっていう感じだったかな。
で、あとはアイドル戦国時代っていうのもありまして、AKBの総選挙が2010、それに端を発する他のアイドル。
もちろんPerfumeが前段としてあって、音楽好きとしてはPerfumeめっちゃいいよねみたいな感じになってる時だね。
で、そういうアイドル文化が盛り上がってきて、AKBも共に盛り上がってきて、Perfumeもレーベル移籍して『JPN』っていうアルバムが出る。
ももいろクローバーのアルバムが新しく出る。『バトルアンドロマンス』っていうのが出る。から東京女子流の『鼓動の秘密』が出る。
で、ハロー!で言うとスマイレージが出るみたいな感じかな。だからそれぞれレーベルどっちかでは、でんぱ組とかももうすでにいるし、
今のWACK。初期BiSとかが出だしてくるって感じの流れになってくるって感じかな。
だから日本の音楽何聞くかっていうので、この辺全部聞いてたけど、僕は結構アイドルなんじゃないかっていう、アイドルの盛り上がりっていうのにロック的な興奮っていうのを求めてたっていうところもあって、結構必死にチェックもしてた時期ですね。
あとは日本のシーンで言うと、小沢健二がずっと沈黙してたんですけど、久々に日本でライブやりますって言って、2010年にライブして出すんですよ。久々に「ひふみよ」っていうツアーで。
そうそう。で、そういう考えでいくと、今の考え方で言うとヒップホップっぽい音の作りっていうか、ドラムがドーンとあってベースがあってみたいな感じなんかなって思うけど、そうでもないっていうか、すごいデッドな音のドラムが鳴ってて。
ドラムつーか、まずあの、このアルバムで一番特徴的なのはコンガね。 はいはいはい。めっちゃ入ってくるもんね、パーカス系が。 コンガパカパカ、パカパカ、パカパカ、ポコポコなってて。これは坂本さんも言ってるんですけど、ゆら帝解散ってなってから、何もしなかったんやって。ちょっとなんかやらないかんなー、みたいな感じになったときにコンガ買って、コンガずっとペコペコ叩いてたやって。
で、ベースも買って、でなんかそれでコンガとベースで、ギターも弾けるっていうので、気づいたら曲作ってたみたいな感じで。 だから一番このアルバムを作るときに始まりとしては、坂本さんがコンガを叩き始めたっていうところがスタート。
なるほどね。そういうことか。かなりループしてる曲が多いじゃないですか。 うん、もうワンフレーズぐらい。ワンループと言ってもいいかなっていう感じの。 だからなんかリズムから作ってるのはすごいがてんがいくなーというかさ。コンガとかもそんな展開とかが大きい楽器じゃないと思うんですよね。
だから叩き方とスピードと何かがあるかなぐらいだもんな。コンガの展開って。 基本タカタカタカタカタカタカタカタカがちょっと違うだけ。 ドラムほど派手なフィルインがあるもんじゃないから、この一定の温度でずっと進んでいく曲みたいなのが多いのが、今聴いてて納得がいったなっていう。
そうそうそう。このセカンドと違うのは、ベースも全部坂本さんが弾いてるっていうことだね。で、書くとしてはほぼベースだけやんか、メロディっぽい楽器って。ギターとかちょいちょいあるけど。僕はやっぱりベーシストだったのもあって、この『幻とのつきあい方』のベースにもすごいこう、うわっと思ったんよね。曲作ってる人のベースっていうか。
坂本 なんかあの、言ったら本当にルート音から始まんないっていうかさ。動くフレーズにしてもこう、メロディに対して多分対になってる感じでベースが作られてるんだよね。だからこう、音楽の真ん中にベースと歌だけがあって、サイドにこう、パーカッションとドラムが配置されてるみたいな感じの音像っていうのが。
ああ、そうですね。で、その真ん中とさ、橋の間がかなりスカスカな感じじゃないよね。
そうそうそう、スッカスカっていうのがすごい衝撃的だったっていうか、そのスカスカであることが理由っていうか、その空洞ですはエフェクト的なギターの作り方で、スカスカでもスカスカである理由があるわけやんか。その『空洞です』っていうテーマを設けてて、それに向かってるしっていう。
そういうコンセプチュアルな空白っていうのをすごい感じてて、それはそれでめっちゃかっこいいっていうか、っていうものに興奮してたんやけど、その新しい本になるとそのスカスカである理由っていうのが曲のムードとか歌詞とかに表現されてるから、もちろん理由はあるんだけど、もっとこうラフっていうか、これが今かっこいいと思ってますんでって感じが、そのすごい音楽が好きな人が自分のために作ったレコードっていう感じがしてて。
自然体な感じですよねより。
そうそうそう。だからそのいわゆる卓録で作ったレコードっていうのって、それこそ昔はカセットテープ1本とか、4トラのMTRに自分で入れてとかでした。
本当はバンドサウンドでやりたいけど、MTRで撮ってるから変なことになってるみたいなもんとかを好んで聞いたりとかするやんか。このチープな感じがいいよねみたいな。坂本さんも影響に受けた音楽とかっていろいろあるんだけど、そういうもんを結構『幻とのつきあい方』の時には開けてたりもする。
ジミヘンの、これブートでしか出てないけど、ベッドの上でギター弾いてる音源とかがあって、そういうのすごい良いっすよねとか、そういう話しかしてるんだけど、そういうものをなんか丁寧に自分なりに解釈して作ってるっていうのがめっちゃおもろいっていうか。
これだから、いやらしい作り方をしようとしたら1回カセットテープに落とすとかさ、あるわけよ。
むしろ、4トラのMTR、カセットテープのMTRで全部自分で弾いて作るっていうやり方とかもあるのよ。
そうじゃなくて、今までちゃんと作ってきたスタジオで、その質感とかその方法をそのまま持ってくるんじゃなくて、ちゃんとしたスタジオチームで、このスカスカなもんを良いポップスとして作ろうとしたっていうのが、他のいわゆる凡百の宅録ミュージシャン達とは全然格が違うところなんですよ。
すごいチープなのにめちゃめちゃ高級なもんっていう感じ。このバランス感覚ですよね。
確かにね。でもそういう環境でさ、これだけチープなまま行こう、ってちゃんとなったことがすごいというかさ。
もちろん多分自分の自主レーベルっていうのでできたから、だし、ゆら帝で名前がちゃんと売れてるから、才能があるから、とか、そういうもんで担保されたからできたアルバムだとは思うけど。
このアルバムのジャケットもさ、坂本さんの見た目のインパクトはあるけどさ、金かかってる感じのさ、アルバムっぽい風格というか。
僕の大好きな対談で小西康陽さんと坂本さんが話してるインタビューがあって、何かあるためにこれは僕は十何年前の記事をいまだにwebで読めるんで読むんですけど、誰かがソロになった時のイメージ、っていうのがこのジャケットとかに込められてるみたいな。
マネキンとかと写ってたりとか、スーツでプールとか入ってるっていうのがなんかソロアルバムファーストっていうイメージなんですよみたいな。
そういう持ってくるところのセンスがやっぱりめちゃめちゃいいよなってめっちゃ思うんだよね。
なるほど。
で、その『幻とのつきあい方』聞いて最高やと思うわけよ。こんな感じの音楽めっちゃ聞きたいなと思うわけよね。
『幻とのつきあい方』みたいなレコードはないんかって言って、それで僕は坂本さんのインタビューとかそういうのを掘り出すわけなんだけど、
これはユラテイ時代から言ってるんだけど、スライ&ザ・ファミリーストーンの『フレッシュ』はもう僕にとって基本みたいなレコードなんですみたいな話をよくされてて。
これやっから聞いたことなかったから『フレッシュ』買いに行ったよね。
そうなんや。スライの『フレッシュ』実は聞いたことないですね。
スライ。『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』とかウッドストック(でのライブ)とかって言ったら大所帯のファンクって感じのバンドだと思われてるやんか。
でもその後の名盤とされる『暴動』とか、めっちゃ暗い。
で、その『暴動』の次に出てるのが『フレッシュ』なのね。
そうなんや。
だからこれはもう作りはすごい近いっていうか、スライがリズムボックスとかでチャカポコチャカポコやりながらそれにファンクを乗せてるっていうアルバムで、すごいこうめっちゃミニマル。
そうなんや。
『幻との付きあい方』を聞いた耳で聞くと、これがもう基本なんですって言われると、なるほどみたいな感じで、その『フレッシュ』の良さもすごいわかってくるみたいな。
なるほど、じゃあ必要ですね。
そうそうそう。さっきあげたティミー・トーマスのWhy can't we live togetherもティミー・トーマスとリズムボックス、チャカポコチャカポコなってる中でめっちゃ歌うまいし、ソウルの人が歌い上げるみたいな。
なんかその伴奏と歌にめっちゃ乖離があるみたいな。
だから当時リズムボックスっていうのはバンドの代わりになりますよみたいなもんだったわけよ。
はいはいはい。
だからドラムいらんやんみたいな感じでこれを使ってるんやけど、でもやっぱ当時のリズムボックスの音やから、なんかすごい乖離があって面白いよね。真ん中なんもないやんみたいな。
なるほどね。
あと3枚あげるとしたら、シュギー・オーティスのインスピレーション・インフォメーションってアルバムもあげられてて、この人はスーパーギタリストなんだけど、シュギー・オーティスのお父さんもミュージシャンで。
同じくリズムボックスでのソウルみたいな感じのをやってて、すごいよくって。
この辺あげた人らはみんなそれぞれ歌ってる内容は違うけど、ソウルなんで恋愛の話とかそういうノリの曲が多いんだけど、ちょっと浮遊感というか、この3つのレコード全部なんか死のムードはすごいするんよ。
へー。
なんか無情感というか、リミナルスペースってあるじゃん。
はいはい、ネットのミーム。本来、人がいる場所とかの景色やけど人が全くいないっていう。
あの感じって『幻とのつきあい方』が先取りしてたと思ってるんやけど。
なるほどね。
だからそこで大物とネタとしては、割と人が離れていったスライとか、スライの『フレッシュ』は本当にその辺めちゃめちゃ表現してるとこあるんやけど、人がいない中で楽しくやってるみたいな、無情感みたいなのがすごいある。
カメラがめっちゃ急に引いてる感が出てくるっていうか。
うーん、なるほどね。鳴ってる音が鳴ってない、ないことがこうね、いいっていうのは。
使ってる楽器とか都合で起きたことみたいな感じかな、この辺だと。
ただそれをもうちょっとこう、そういうものを念頭に置きながらリッチにデッドなもんで作ってるっていう感じがすごいいいんだよね。
ただ、その慣れないベースとかを、完全な本職じゃないベースを弾いてるっていうところの、ちょっと絶妙な上手くなさ度みたいな。
上手いんだけど、すごい素晴らしいフレーズばっかりなんだけど、素人感みたいなのも合わせて、すごいいい感じになってるっていうかね。
だからAI的なものに近いような全然違うものっていうか、肌触りとしてはすごい人っぽい感じがするけど、肉体がめっちゃ薄い感じっていうか。
なんかこの感覚っていうのに僕はすごい憧れたし、これがかっこいいんだっていうのを提示されたことにめちゃめちゃ影響を受けたっていうね。
(当時)流行ってたジャンルみたいなんていうのは、サウンドとしてはそれぞれあると思う。なんかね、まだまだ新しいものを歓迎してる感じがすごいあったのよ。
ダブステップとか、そういったシューゲイザーやドリームポップでもいいけど、音を埋めることとか、新しく時代がなっていくみたいな流行みたいなものに対して、まだまだノリノリな感じがしたのよ僕は。
でもその時に僕はたまたま20歳でお金もなかったし、自分自身も悩んでたしみたいなところで、そういう音楽が楽しいな、いいなと思って乗っていこうと思ったけど、乗り切れない自分みたいなのがめっちゃあるわけよ。
そこを突かれた感じがしたかな、僕は。『幻とのつきあい方』が一番好きだったのは、ノリノリの世界みたいな感じに乗っていけないっていう感じが。
なるほどな。自分やもんな、基本的にこの歌。一人で作ってるのもあるけど、だからすごく音楽ジャンル的にも孤立してるっていうのとか、そのいろんな要素が含めてとても完成したアルバム。
そうそう。
思いますね。
ただなんかそういう、できる人だから貧乏っぽい感じじゃないっていうところも、こういうやり方であればリッチにできる感じがするっていうのがすごい良くて。
2011年っていうと3月に震災があるわけですよね。そういう部分ももしかしたら僕には。僕は本当に西日本にいたし、大阪に住んでたから全然何も被災してないし、正直やっぱテレビの向こうのもんだと思ってしまったところがすごいあったんだよね、東日本大震災の時は。
すごいたくさんの人が死んだし、グイグイに好きなもの楽しむぜイェイみたいなムードではない感じが僕の中ではあったのよ。ただそれこそ海外の音楽とか日本の音楽でその辺のムードが入ってたかっていうと、僕はそんな感じがなかったと思ってて。
音楽自体とか言ってること自体に影響が出るかっていうのは、もっと政治的な発言とかライブでもちょっとそっちの方に頑張ってやるとか、そういうアクションとしてはもちろんあったんだけど、個人的な体験としてそういった2011年の3月に震災があってっていうムードとかを内包した音楽っていうのはなかなか出てこなかったと思ってたのね。
そうですね。そういったものに直接触れたものってちょっとワンテンポ遅く出てきたイメージがありますね。
ただ『幻とのつきあい方』はその辺が内包されてる感じがすごいした。11月に出てるんだけど。歌詞は震災またいで書いてるらしくて。
はいはい。
完全に影響があったっていう話はされてないけども、時期について聞かれた時にはまたいでてみたいなことは言ってるから、その辺のムードみたいなものを……。ムード、っていう言葉っていうか、坂本さんが長けてるのってそういう空気、雰囲気みたいなものを曲とか、それこそ具体的に歌詞に落とし込むっていうことにめちゃめちゃたけてると思ってて。
その具体的な言葉で直接入れるとかじゃなくて、本当に雰囲気やもんね。それを入れるやり方っていうのはね。
そうそう。だから音楽ってそういうもんだと思うからさ。喜怒哀楽とか言葉で表されへんものとかをやりたいから音楽やってるんやろって思ってるところがあるから、表したいものがあるとか、コンセプチュアルなものがあるとかもすごいそれが好きで。
しかもこの音楽聞いたら伝わる?坂本さんのこと知らん人がこのアルバム聞いてもなんかこの抜け殻っぽい感じとか、幻とかファントム、幽霊みたいなイメージを多分音聞いたらなんか伝わるっていう感じが、本当すげえなって思ってるっていうか、っていう感覚があって、っていうところがすごい好きかな。
確かにあるかも。なんかそれにこの『幻とのつきあい方』の歌詞って、やっぱりゆら帝の頃と比べるとなんかこう、よりストレートって言ったらいいんかな?
うんうん。いや、ストレートだと思う。
かなりミニマルなことをずっとちゃんと言葉にしてる誠実さというか、自然体さみたいなのがあるなーっていうのは感じますね。
そうそうそう。俺正直この衝撃みたいな、ストレートに言ってて言葉がズンって入ってきて、なんていうかな、その言葉の気持ちよさとかで口ずさんじゃうとか、フレーズが頭に入ってくるみたいなんて、本当にそのラッパーっぽいっていうか、坂本さんの。
この数年後にKOHHが出てくるんですよ。
はいはい。
俺はその、KOHHの初めのほうのミックステープとか、『junji takada』とか、その後の『毎日だな』とかの頃とかにすごくこう大好きで、今も大好きなんだけど、その時って僕の中では坂本慎太郎の音楽が好きな理由とこうの音楽が好きな理由って一緒っていうか。
なるほどね。真ん中でもそうやな。どっちも当然いいんですけど、坂本慎太郎の歌い方がめちゃめちゃいいなって。
いい、いい。
なんかその歌だから、たぶん『君はそう決めた』とかも、あの音で歌ってるからいいんやろうなっていう、あれはなんかもっとエモく歌う方法ってたぶんあるんですよ。
あるある。
それをしないっていうのがめちゃくちゃいいし。
いいよね。
それに。
そうね。逆に例えば和田アキ子とか松崎しげるに歌ってもらう7インチみたいな、めっちゃ感動的な曲になりそうで聞いてみたいけど。
そうですね。そっちに振るっていうのもありなんですけど。
振るっていうのもあるけど、この温度感がマジで最高よな。
なんかそれが上手い具合にプレッシャーにならないというか聞いてる側も。これがなんかもっと情熱的やったら、プレッシャーになりそうな気がするんですよねやっぱり。それがないのがいいな。
とか、もっとロボとかそっちに寄せていくっていうか、そっちもあると思うね本当は選択肢として。オートチューンでもっと欲張らなくしていくみたいな取り方もあったと思うんだけど、そっちでもない感じっていうかね。
その声だけはすごい人っぽい感じっていうのが、坂本さんの好きなとこなんだろうなっていうところと、僕もこっちの方がいいなって思うみたいなね。
感じがすごい良くってね。曲で言うと、1,2,3,4全部いいっていうのもあるよね。
そのアルバム。『幽霊の気分で』、『君はそう決めた』『思い出が消えていく』、『仮面を外さないで』、全部いいけど。
あと、やっぱり同じフレーズが繰り返すようなものが多いから、流れるように聞いていけるからね。
そのままいけるよね。どれが好きですか?曲で言うと。
そうですね。最初の4曲の中だったら僕は、『君はそう決めた』と『仮面を外さないで』が大好きなんですけど、難しいな。
全部いいよ。後半もいいよね。『傷と共に踊る』とか、『何かが違う』とかもいいし。
好きとはちょっと違うかもしれんけど、最後の小さいけど一人前っていう曲。
めっちゃいい。
この曲って鳴ってる音のキーが噛み合ってないような感覚があって、ちょっとずれてる感じというか。
その感じが、一人で宅録してる時とかの雰囲気にすごい近いなっていうのがあって。
このちょいずれね。どう合わせようかなって思って悩むけど、これでもいいかって思う感じっつうから。
でもループさせてるから、とりあえず音楽としては回ってるみたいな。
そういう感じをすごく感じて、こういう曲ってあんまなかったなっていう風に思いますね。
これ並びが一番最後なんもいいよね。
そうですね。
エンドロールの最後についてる最後みたいな感じの。
そうね、おまけ感があってね。
ただそこにすごい変な感じの要素も入ってるっていうのが、このアルバムのバランスだと思うし。
歌詞に注目してだと、やっぱり『仮面を外さないで』が僕も一番好きかな。
これって『空洞です』のさらに行った版みたいな。
そうですね、確かに言われてみれば。
仮面の下に仮面をもう一枚。
フレーズがやっぱいいしな。仮面の下に仮面をもう一枚。
ちょっと戻っちゃうんですけど、『君はそう決めた』、歌詞ですごいなと思うところが、「朝が来て 夜が来て また朝が夜になって 朝が来て。」
これマジでいいな。
すごすぎるなと思って、そこをほんまに繰り返しを全部ちゃんと言うっていうことの良さがあるじゃないですか。
《仮面の下にもう一枚、仮面を…》とかもそうなんですけど。
言葉の無駄があるというか、あえて復唱することの良さみたいなのがすごいいいなっていう。
それがしかもわざとらしくないのがすごいなって思います。
分かるわ。あのメロディすごいよな。
朝が来て夜が来てまた朝が。
このまた朝がの歌い方もマジでいいんだよな。
夜になってまたってさ。
凡百のシンガーだったら、なってこうやっちゃうんだけど。
あ、このなの感じがさ、絶妙なんだよな。
そうね。低体温な感じというかね。いいですね、本当に。
僕もこの時すごい鬱気だったから、一曲目からさ、幽霊の気分でからさ、広い通りを死んだつもりで彷徨ったっていう歌詞から始まるっていうか、
本当にその気持ちだったの、毎日。深夜とか。
君はそう決めたの、また朝が来て夜が来てまた朝になってみたいな感じとかもすごい良くって。
坂本さんがこの曲で書いてる時のこの無能感というか、
自分が幽霊みたいな感覚、肉体が邪魔な感覚みたいなんて、
もうちょっと30代とか40代の人の抱える感じ。
なんとかなるけどなんともならんみたいな感じのムードを描いてると思うんだけど、
僕は20代とかの無力さみたいなんて、描く音楽とかいっぱいあったわけ。
それこそ銀杏BOYZとか、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』的なものに昇華されることが多かった。
その時の20代とか若いけどなんともできないものの気持ちみたいなのが。
それに全然はまれなかった僕としては、そんな暴走したいわけではないんだけど、
すごく自分の中に空洞というか幻というか、肉体が邪魔な感覚みたいな感じを抱えてたから、
たぶん坂本さんの意図してるところではジャストではないにしても、
20代とか若いからなんもないことに対しても僕にとってはすごい響くもんだったって感覚があったね。
確かになー。そういう何も起こらなさというか、死ぬだけの理由もないけど生きる理由もないみたいな状態をそっと隣にいてくれるみたいな良さって、
あんまり未だかつてないかなって思うんですけど。
ないねー。
なんかやっぱ熱くなっちゃうからそういうもんで、暴力的やったりとかめっちゃ応援ソングになっちゃったりとか、
ただそこにいるみたいな。
そうそうそう。
やっぱゆら帝の時も思ったんですけど、音の説得力がやっぱり続ける人なんやなって。
ありすぎる。すごいね。本当にこのアルバム全体だとやっぱりベースのフレーズの当て方っていうか、
君はそう決めたの?《また朝が》、のところのさ、
てんてーん、っていうフレーズがあるやん。
言ったらちょっと引っかかりのある音を入れるところと、メロディーとの対になってるように作ってあるんだけど、
そこがやっぱやばかったな。
それこそギターやってる人しか出ないフレーズみたいな、
あんまこういう言い方したくないけどってやっぱあると思ってて、
本業のベーシストの人が大事にしてるところだと出ないフレーズってやっぱあるんだよね。
出にくいフレーズっていうか、そういうもんだと思う。
メロディー的にベースを弾いてるから、このアルバム全体的にね。
よりリフっぽくなってるところがあるんでしょうね。
そこがやっぱいいしね。
『君はそう決めた』の話ばっかしちゃうけど。
フレーズで言うとさ、《この街で生きている 宿題をしながら》
宿題!みたいな。
この曲ってすごくそういう宿題をしてそうなぐらいの男の子の漫画みたいなのが頭に浮かぶねんよな。
「みんなのうた」的な感じでも捉えられるっていう感じはするかな。
Eテレ感というかね。
《宿題をしながら、そして単純な嘘にドキドキしながら》
朝が来て夜が来てってなって。
このフレーズの重さもやっぱすごいよな。
そうね。
恋をしたりっていう表現も入ってるにせよさ、ここにリピート的な暴力性が入ってこういうのもめちゃくちゃいいと思うし。
叫んでみたりダンスしたりジャンプしたりっていうのも自然体なところの行動しかないっていうのが、
すごい個人的にはやっぱりいいなと思うな。
そうね。私なんかめっちゃ大きくジャンプしたりしてる感じではないってことが全然わかる。