できない人とできる人の関係性
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。
この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。
お互いを必要としている、できない人とできる人。
今回は、お互いを必要としている、できない人とできる人のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、お互いを必要としている、できない人とできる人について。
これは一見するとですね、できない人をできる人が助けているように見えるわけなんですが、実はできる人自身ができない人を求めていて助けられている。
もしかしたらそのために、相手を無意識のうちにできない人にしているかもしれない。
その仕組みに気づくことで、良い変化の第一歩を踏み出せるようになります。
第1回目、承認要求は誰もが持っている原点。
そして前回の第8回目、承認要求を満たし合うコミュニケーション3つの法則。
こちらの2つの内容ともリンクしながらお伝えしていきます。
さて、前回お伝えしたできない後輩とのやり取り、覚えてますでしょうか。
ミスをしてもメモも取らないし、繰り返しミスをする。
呆れて私がいい加減にしなさいというメモを机の上に置いておいたら、異動後数年経ってそのメモを記念に取られていた。
これは彼の承認要求を私が満たしていたんじゃないのかというお話をしました。
この例についてさらに今回は掘り下げてみたいと思います。
ちょっと復習になるかもしれませんけれども、第1回目の存在を認められる刺激、承認要求を満たす刺激、ストローク。
これは何もないよりはネガティブでもあった方がマシなので、ネガティブでも何でも取りに行く、そういうお話をしています。
つまり、できないと私が思っていた後輩は、無意識にミスをしてこのネガティブなストロークを得ようとしていた。
私ができない彼をキャッチして失跡し続けて、そしてストローク源になっていた。
私自身がこの承認要求を満たし続けていたがために彼はできなかったのかな、それが前回のお話の意味だったんですが。
ストロークによる関係性
ただ、これではですね、ある意味一方的なお話で違う見方をちょっとすることもできるんじゃないかな、それが今回の回になります。
違う見方をすればタイトルそのままになるんですけれども、できない相手、後輩を叱るということで、
実はこの叱っている私自身が相手やそれから職場の役に立っているんだという自分の存在を認められる刺激、ストロークを得ていたんじゃないのか、そうも考えられるんじゃないかなと思います。
こういう組み合わせというのは、お互いがお互いをピタッと呼び合って、安定したストローク交換が行われてしまう、そんな面があるかと思います。
前回は相手をもっと認めて褒める、ポジティブなストロークを出す、そんなやり方もあったんじゃないかとお伝えしましたけれども、
そもそもその時の私自身の承認欲求がポジティブに満たされていさえすれば、自然と相手のいいところに気づいて叱り続けるところまでいかなかった、そんな可能性もあったんじゃないかなと思います。
つまり、できると自分が思っている人が、そしてなんでこの人できないんだろう、本当に困ってしまうと思って指導しているつもりの、その人自身ができない相手を求めて生み出している、そんな流れがあるんじゃないのかということです。
例えば、現場や担当業務から直接得られるストローク、これがもう何よりも大好物な人の場合、そこから直接の自分が担当者とか現場仕事から離れて指導役だったり管理職になりますと、これかなり勝手が変わるんじゃないかと思います。
ある意味、ストロークが直接的じゃなくて間接的になる、そんなイメージ、靴の上から痒いところを書くみたいな、そんなイメージかと思います。
例えば、営業であったとすれば、お客様からの注文や感謝の言葉、そういったもので直接的に自分自身の承認要求が満たされていたのに、立場が変わることで後輩や部下を通してその承認要求を満たすということになるかと思います。
そうなると、この直接的なストロークがモチベーションの源、これが本当に何より好きなんだという場合には、ストローク不足、ストローク飢餓状態というものになってしまうかもしれません。ストロークについて飢えている、枯渇してしまうということですね。
何分私たちにはこのストロークのお好みがあって、選り好みをしてしまっているので、そういう指導役や管理職ならではのストロークというものはあるかと思うんですけれども、なかなかそれがお好みに合わない場合、そうすると、これは人によってはもしかしたらこの指導役、管理職としてのこのストローク、
ストロークの求め方の違い
これをですね、もっと強めの手応えというのを求めて、できない相手を叱る、そういうことで自分自身のこの承認要求を満たすという方向に行く人もいるんじゃないかと思います。
そしてできないとされてしまった相手も自分の存在を認める、ネガティブなストロークは確実に得られるパターンなので、ミスをしてしまう、無意識のうちにミスをしてしまう、そしてそれが繰り返される、そんな流れができるかもしれないです。
そうなりますと、ストロークはそれを受けた行動をどんどん強化していくという、そういう習性がありますので、できない相手とできる自分というこの安定的な関係が出来上がってしまうんじゃないかなと思います。
いかがでしょうか。他にも例を出してみたいと思います。
ちょっと柔らかめに角度を変えまして、以前見たことがあるドラマの話を例に出してみたいと思います。
最近はちょっと聞かなくなったように思うんですけれども、ドラマでこんなセリフがありました。
恋人同士で、男性が他に好きな人ができて、しっかり者の恋人に別れを切り出す、そんなシーンなんですけれども、セリフとしては、「彼女は僕がいなくちゃダメなんだ。君は一人でも生きていけるから。」
そんなセリフ。これ当時ですね、このセリフやそれに似た場面っていうのをそれなりに見かけたような気がするんですが、私などはですね、「えーひどい話だなと思いまして、何を言ってるんだか。
どうしてしっかり頑張っている人が報われないで、あんなにめそめそ泣くばっかりで、自分でできることもしない人が選ばれちゃうんだろう。
もういざという時に、お互いが支え合える関係こそいい関係なんじゃないの?」というふうに思ったりしたものなんです。
ただこれ、今にして思えばなんですが、別れを切り出した男性、これどうでしょう。この承認要求っていうところでいきますと、頼られること、相手を支えることで承認要求が満たされる人。
頼られなくて支えも必要なさそうな相手では、この彼の承認要求は満たされない、ストローク飢餓状態となってしまう、そういうストロークの求め方をする人だったんだなというふうに思います。
このお互いが求めているストロークの組み合わせ、これが相性が良い悪いということにもつながるんじゃないのかなというふうに今では感じています。
できない人とできる人の関係
そしてまた違う見方、逆からの見方っていうのをしてみますと、このできない相手に満たされる、そういう承認要求を求めているできる人。
こういったできる人とペアになった場合というのは、これお互いが必要としあっているという意味ではある意味強い関係で幸せなのかもしれませんが、ただこれがかなりきつい状況になることもあるんじゃないかなと思います。
やっぱり人間ですから変わったり成長したりすることによって、ずっとできない自分でいることを求められ、場合によっては荒探しをされている、そんなふうに感じるレベルまでエスカレートしたものがあった場合、
自己肯定感が下がりますし、自信を喪失してしまったり、そんな状況になった場合というのは、これはやはりかなりきついんじゃないかと思います。
程度にもよるんですけれども、それほど深刻でないレベルなんであれば、まず一旦は必要以上の自責、自分を責めるということとはお別れして、
やはりまずは自分自身の心の中にあるストローク銀行、自分のストロークを貯めておくところを、7、80%ポジティブなもので満たせるように工夫するということをお勧めしたいと思います。
ポジティブなストロークを得られる相手、場所、状況でたっぷりと心の中のストローク銀行をポジティブなストロークで満たすこと、それがおすすめです。
また自分が当事者じゃなかった場合、周りでそんな悪循環を見かけた場合には、これは小さい芽の内につめるように、できれば早めに対処するというのがいいんではないかなと思います。
当事者同士も含めて、全体で風通し良くポジティブなストローク交換を行えれば最高なんじゃないかなと思います。
ただ深刻なレベルになっているのであれば、逃げる、自分の心身を守る、適切な相手や場所に相談して対策を取る、そういったことが必要になる場合ももちろんあるかと思います。
このあたりのバランスでいきますと、私たちの心の中にある親・成人・子どものうち成人が鍵になってきます。
成人は<今、ここ>にふさわしい行動・思考・感情が取れる部分です。
ポジティブなストロークを溜める
是非ここがうまく働くこと、それが大切なんですけれども、どうしても私たちストレスがすごくかかっている、非常に思い込みや偏見が激しい、強くなっている時って言いますのは、
うまくこのあたり、心の中で、本当であれば親・成人・子どもの中をゆるゆるとゆったりとエネルギーが循環するように、適切に自然とそれらがうまくバランスが取れるといいんですけれども、
どうしてもストレスがかかってきてしまいますと、親や子どもがグーッとエネルギーが凝り固まると言いますか、そこに凝縮されて、その中でしか動けないような、そんながんじがらめの状態になってしまいがちです。
そんなわけで、今回の回でも繰り返しお伝えしていますけれども、心の中のストローク銀行にポジティブなストロークを7、80%以上ぜひ貯めるのがお勧めですということを申し上げていますが、この状態であれば私たちの成人も非常にうまく働きやすい状態に自然となるので、
できれば本当にこの状態に持っていけるようになると一番いいのかなというふうに思います。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「お互いを必要としているできない人とできる人」。まずは気づくこと、そしていつもと違う変化を味わってみませんか。
ここまで聞いていただきありがとうございます。
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お相手は遠藤美保でした。ありがとうございました。