タカウジの人生を振り返った中で、ターニングポイントを一つ挙げるとしたら、タカウジのターニングポイントはどこだったんですかね?
タカウジのターニングポイントは、弟のことだけに関しては果敢になるんですよ。そこが全ての歴史を動かしてるんですよ。
あれって、僕はこれを素直にエンタメとして思わせていただいて、本当に真実?
真実です。他のことはタカウジどうでもいいんですよ。
ただ、弟はずっと足利家の所定に生まれて、誰からも見向きもされなかったから、自分の分身みたいなヤツなんで、ここだけは絶対に守りたいんですよ。
それが人としての唯一の気持ち。あとは、嫁さんに関してはどうでもよかったりするんですよ。
徹底的に子供の頃に自負心がない環境で育っているので、それはすごい影響がありますよね。
それはやっぱり即失自難っていうことが多分に影響してる。
即失自難、それにも尽きると思いますけど。当時即失の自難って人権ほぼないですか、家門においては。
その中で今の即失の自難から正義大将軍ってこともそうですけど、やっぱりシンプルに、事実は小説よりきなりじゃないですけど、
観音の冗談だったり、哲士川原合戦とか、本当に映画みたいなことが起こるんですね。
映画っていうか、それがシリーズだったんで。シリーズのもとに映画ができてるんで、それが逆だと思うんですけど。
なるほど。砂ぼこりが吹いたとかも本当なの?
本当です。本当らしいんですよ。僕は見たことがないので。資料にはそう書いてありました。
これ、たられ場は厳禁ですけど、砂ぼこり吹かないで、あそこで死んでたらどうなったんですかね、幕府とかいろんな。
それはね、わからないですね。わからないです。
いや、それはね。
この質問自体は禁句ですかね。そういう禁句なんですかね。
たられ場って、僕はあんま考えないですし、それは後になったからそう言えるんであって、その時はわからないですよ。
そうですね。しかも砂ぼこりだけの要素じゃないですもんね。
おそらく。だからわからないとしか答えようがないですよね。
さっきの話に戻っちゃいますけど、資料に当たりながら膨大に書くっていうのは、その大枠としてはイメージできるんですけど、
弟のために全てを捧げたっていうか、そこで動きが全部あるみたいなものっていうのは、
理屈ではわかるんですけど、資料でどういうところからそういうのがわかるんですかね。会話があるわけじゃないわけじゃないですか。
だって、1回目、高橋が発狂するシーンは、
高橋家の残党に弟が追われて、明日死ぬかもしれないって発狂して、今日出ちゃうわけですよ。
それも資料として書いてあるんですよ。
発狂したみたいにあるんですかね。
発狂したとは書いてないんですけど、すごい焦って、五大御殿のところに出兵させてくれ、出兵させてくれって言うけど、
ダメって言われて、最終的には無断で出兵してるんですよ。
そうでしたね。
ほぼほぼ裸足のまま、何の歓迎ももらわぬまま出兵される。
つまり、そんだけ弟を助けた。
次に弟を助けるのは、結局、超敵になって、自分は坊主になろうとしてた。
弟が死にかけた。坊主になる意思は変わらないけど、なんでかって言うと、
足利幕府を作った後に坊主になろうとしてますからね。
意思は変わらない。とりあえず弟だけは助けようと。
彼が見てる世の中の中で、弟っていうのが一番プライオリティが高いんですよ。
本当にあの感じだったんでしょうね。
で、弟のことを考える時だけ、高橋って人間になるんですよね。
変な言い方ですけど。
弟はどうでもいいんですよね、彼にとって。
足利家も別に都合が継ぐまではどっちでもよかったし、
正義対勝負なんて夢にも思ったことがないし、
五大子天皇に反抗しようとも思ったことがないし、
全て彼の人生、そういう意味じゃ不本意な。
そうですね。
不本意に常に流れていってるんですよ。
不本意に流れていった挙句、その不本意な人生を彼に敷いていた
足利忠義っていう弟と、こうの物なおは、2人がいがみ合って死んじゃうわけじゃないですか。
そうすると、じゃあ高橋、僕は幸せが何なのかよく知らないんですけども、
世間一般的な幸せからすると、まあ幸せなのはなかったろうなっていう結論になりますよね。
やめてよって。俺、泣いたくもなかったのにさ、バック開かせて正義対勝になったけどさって。
それやった?お前らみんな死んじゃったじゃんって。
じゃあ俺がなんとかしなくちゃいけないじゃんっていうのもあり、
僕はその高橋の生き方をよく思う時に思い浮かべるのがヒモですね。
ヒモ。
女に食わせてもらってるヒモですね。
高橋はあの人のヒモなんですよ。
はい。
無能力者、生活できない1人では。
たまたま高橋をこれじゃいけない、こうして下さいって言って、
手取り足取り指導してくれる弟と一番の自由心がいて、
彼女たちがある種の女ですよ。
そうですね。
だから、その女たちに手取り足取り教えてもらって、
別に好きでもないんだけど、そっちの道歩んでたけども、
その女同士がいがみ合って殺し合いが始まるんですよ。
そうすると、もうそのいがみ合いを始めた時点で、
高橋はどうしようって。
このまま女がいなくなって、俺一人で生きなくちゃいけないんだ!
っていう感じになるじゃないですか。
そっから少しずつ、人間になるための努力をし始めてるんですよ。
なるほど。
じゃあ、なぜこんなに人間が天下取れてしまったのかってのは、
もうこの時代最大のヒモだったんですよね。
ヒモ人間。
ヒモっていうか、たりき本願、徹底して。
たりき本願で、自分から何の意思もない。
どうなりたいっていうのもないし、
彼が思ってんのは、ひたすら楽に生きたい。
そこはあったわけですよね。
今まで、柿根さんの作品、この歴史小説その前からもですけど、
やっぱり極限状態で自意識が覚醒する瞬間をテーマに、みたいなことを。
これはね、それから外れてます。
っていう感じで受けてきたんですけど、
今回の高橋は、明らかにそうすると、
覚醒ってほとんどしてねえじゃんって、
最後したけどしてないな、みたいに思ったんで、まさにそう。
これまでと対局とか、そもそもこれまでにない。
覚醒ってのは、問題意識がある意識では覚醒していくんですよ。
問題意識がない人には、覚醒なんかしないですよ。
そうすると、
すいません、僕も柿根さんの全部の本を、すいません、
完全に読み込んだわけじゃないんで、見落としあったの申し訳ないんですけど、
この本はそこに、やっぱり当てはまらないっておっしゃいましたけど、
他にもそういう本もあるの?
うん、あるにはありますね。
ただ今回、これがやっぱり当てはまらないっていうのは。
それもあって書くのが嫌だったんです。
苦労するのが目に見えてた。
やっぱりそうなんですね。
だから『陽炎の夏』を書きたかったんですよ。
なるほど。
そうか、じゃあやっぱりもうチャレンジだ。
チャレンジっていうか、ハードなもの。
チャレンジっていうか、
それは高橋と一緒で文芸春秋の前の担当者に、
ほぼほぼ半ば無理地にされて書いたってのは正直なところです。
俺結構恨みましたよ、最初。
ですよ。
ひんどいのにな、こんな小説。
じゃあ高橋は、そういう意味ではこれ、覚醒…
いや、なんか、うっかり言って、
最後やっぱりちょっと覚醒しかけたように見えましたけど、やっぱり覚醒してない?
高橋が覚醒したのは、
世の中の断りが何かってことは全く覚醒してないです。
ただ、2人がいなくなっちゃった。
でもバックできちゃったって。
じゃあどうしようって。
俺、結局体制側の人間として生きるしかないってことですよね。
その意味で、僕実は今までの小説の中で、
体制側についた人間を書いたこと一回もないんで。
ですよね。
絶えず反体制側にいて、
葛藤と社会の仕組みに対してアゲインストの風を吹きまくる人間ばっかり書いてきてるんで、
これはそういう意味では初めて書きましたね。
僕、さっき冒頭で、
すいません、いきなり最初読みたくなかったって失礼なこと言っちゃいましたけど、
僕、ワイルド・ソウルを昔、すごい偶然読んでて、
同じ垣根さんって最初気づかなくて、
めちゃくちゃほんと好きだったんですよ。
なので、今の話聞いてて、ワイルド・ソウルは全然真逆ですよ。
真逆?
そういう意味では共通点は、ワイルド・ソウルとっていうより、
極限状態自意識っていう意味では共通点ないなりに、
でも、垣根亮介がずっと書いてきた本の中では、
何の全てに提出するものがあるんですか?
というか、真逆ってことは軸があるってことですよ。
この中心点から考えれば、真逆だけども、
それは一緒の中に含まれることですから、
ここでこういう関係になってないんですね。
言ってる意味わかりますかね。
こういうねじれの方向性で交わらない関係ではなくて、
ちゃんと矢印みたいに力点があって、重心があって、
こっち側が反体制の話で、
こっち側に体制にごく自然なじんでもらう人の話がある。
それは実は要素としては一緒なんですよ。
なるほど。
でもあんまり書きたくなかったのは、僕の気分です。
それは好き嫌いです。
そういう意味では、大枠としては、
そういう小説はなかなかないので、
そういう小説っていいよなって、僕もたまに思う時があるんですね。
理屈を書いてても結局、精神性の欠片も感じられない話とか物語っていっぱいあるんですよ。
そうじゃなくて、理屈を一切書かずに、
何でか終わってみると、すごいその人の精神性を感じる本って、なかなかない。
いつもインタビューをご視聴いただいてありがとうございます。
この度スタートしたメンバーシップでは、
各界のトップランナーから戦争体験者に至るまで、
2000人以上にインタビューしてきた僕が、
国内外の取材、そして旅の中で見つけた人生をアップデートするコンテンツをお届けしていきたいと思います。
ここでしか聞けない特別インタビューや、基礎トークにもアクセスしていただけます。
随時、これは面白い、これはいいんじゃないかというコンテンツもアップデートしていきますので、
そちらも含めてどうか、今後の展開を楽しみにしていただけたらと思います。
なお、いただいた皆様からのメンバーシップの会費は、
インタビューシリーズの制作費だったり、国内外のインタビューに伴う交通費、宿泊費、
その他取材の諸々の活動経費に使わせていただきたいと思っています。
最後に、なぜ僕が無料でインタビューを配信し続けるのか、少しだけお話しさせてください。
この一番の理由は、僕自身が人の話によって、うつや幾度の困難から救われてきたからです。
そして何より、国内外のたくさんの視聴者の方から、これまで人生が変わりました、
毎日進む勇気をもらいました、救われましたという声をいただき続けてきたからに他になりません。
この声は、世界がコロナ禍に見舞われた2020年頃から一層増えたように思います。
これは本当にありがたいことです。
ただ、同時にそれだけ心身ともに疲弊したり、不安を抱えたりしている方が増えていることに関わらない、
その裏返しであると僕は強く感じています。
正直に言えば、過去僕自身も15年以上前に起業して以来、
最大のピンチといっても過言ではない劇をこの数年送り続けてきました。
でも、こんな時だからこそ森に入ることなく、インスピレーションと学びにあふれる、
まだ見ぬインタビューを送り続けることが、インタビュアーとしての自分の使命なのではないかと強く感じています。
世界がますます混迷を極め、先の見えない時代だからこそ、僕はインタビューの力を信じています。
これまでのようにトップランナーや戦争体験者の方への取材はもちろん、
今後は僕たちと同じ姿勢の人、普通の人の声に耳を傾けたり、
試合もすると打ち抜きになってしまう今こそ、海外でのインタビューに力を入れていきたいと思っています。
そして彼らの一つ一つの声を音声や映像だけでなく、本としてもしっかりと残していきたい、そう考えています。
そんな思いを共感してくださる方が、このメンバーシップの一員になってくださったら、
これほど心強く、そして嬉しいことはありません。
ぜひメンバーシップの方でも皆様とお耳にかかるのを楽しみにしています。
以上、早貝大平でした。