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未来を築く力 宮本由理子
女の人というものは道理がわからないものだ。 そう思われるのが常識であった時代は過ぎた。
夏目漱石が、我輩は猫であるの中で、婦人の精神の低劣さを封死した文章は、
今日、もう日本の女性の愚かしさを語るものではなくなった。 かつて漱石ほどの作家でさえも、明治40年代の日本の社会では、
婦人についてこういう見解を語ったのだから。 日本の封建的な習慣というものはひどいものであったと、
すべての人に考えさせる資料となった。 道理もわかり、その方法も可能性として婦人の生活に芽生えているのに、
まだ何か、 婦人の日々のうちには、湧き立つ美しく強い力が不足している。
後から後からと、抑えがたい力で泉が噴き出てくるような想像が、 まだ私たちの毎日にあふれていない。
それは、なぜなのだろう。 日本の女性は、あまり過去に抑えられ、従いさせられてきた。
そのために、自分たちが現実に持っている実力に対して自信を持っていないのだと思う。
かわいいよちよち歩きの幼子の前にしゃがんで、後じさりしながら手を叩き、 喜びで笑いながら、
まあ、坊やお上手ね。そら、あんよできるでしょう。 ここまで来てごらんなさい。
はい、もう一つ、いよいと。 と励ましてやることを知っている日本のすべての若い女性が、
自分の人生に対して一つでもいいと信じることを実行するために、 自分を励ます技を知らないとしたら、
それは、あんまり哀れなことではないだろうか。 今日という日は、もう二度と私たちの人生に帰ってこない。
それを思えば、私たちはそれを愛し、いっぱいの努力で内容づけたいと、 恋願わないものはないと思う。