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おはようございます。英語の歴史を研究しています。慶応義塾大学の堀田隆一です。
このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしてきます。
毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回の話題は、-son, Mc-, -skiという息子に贈る接辞たち、という話題です。
昨日の放送では、人名ローズの語源に迫ったわけなんですけれども、この英語の人名、英語に限らず、さまざまな言語の人名というのは、非常に面白い語源を持つものが多いですね。
親が子に付ける、特にファーストネームですね。
日本語で言うと下の名前に関しては、やはり親としては、ある狙いというか希望のようなものを、愛情を込めて名前を付けるというところなわけですが、
その際に、当時のあるいは各地の文化的な、習慣的なものも入ってきて、時代によって、土地によって、さまざまな変異を示す、非常にバリエーション豊かなんですね。
名前の付け方というのは、流行りしたりもあるということは、現在でも一緒ですが、深く調べてみると、いろいろと面白いことがあるものです。
今回はとりわけ、息子に付ける名前ですね。
これに、ヨーロッパの言語を中心として、世界の言語である種の傾向があるということなんですね。
これは、実は父孝と呼ばれています。
父親の父に、名孝の孝、父孝というふうに呼んでいます。
パトロニブというふうに英語でも呼びますが、これですね。
親、父親の名前を取って、それに何かプラスする。
瀬戸字であれ、瀬美字であれ、何かプラスすることで、息子に自分の名前も込めて、受け継いでいくというような発想です。
この発想自体は、さまざまな言語文化で共通してあるわけなんですが、
そうするのに使う瀬字ですよね。
これは言語によってさまざまだったりするわけですよね。
頭につけたり、お尻につけたりとか、いろいろな形があります。
それを紹介していきたいと思うんですね。
父孝の紹介ということになります。
まずですね、本来の英語名、アングロサクソンの英語名において、父孝はですね、瀬美字、ingで表したんです。
これは例の同名詞であるとか、現在分詞のingとはまた別起源です。
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これ自体が何々の息子とか子孫とかですね、末裔といった意味があります。
このingという息子、子孫を表す語尾ということですね。
英語本来の父孝、瀬美字というのはこのingだったんですが、今どれだけ残っているかというと、それほどメジャーではないですね。
ですが、例えばブラウンさんの息子ということでブラウニングといったりですね、デンの息子でデニングとか、ガンの息子でガニングのような形で、ingで父孝とするという例は多少ですが、今でも残っていないわけではない。
ただこれは本来の英語の設字としてはですね、下美になって、今ではマイナーとなっています。
その代わりに何が流行ったのかと言いますと、小英語以降ですね、さまざまな言語の影響を英語は受けました。
そして一般の単語ですね、人名とか固有名詞でない単語がそうした言語ですね、ガガッと英語に流れ込んで入ってきたんですが、
同じように人名もですね、かなり大きな影響を外国の言葉から受けていまして、そしてまたこの父孝の設字もまた大きな影響を受けました。
特にですね、8世紀後半から北欧のバイキングにイギリスが襲われたということですね。
向こう2世紀3世紀ぐらいの間はですね、北欧の言語であるコーノルド語のですね、この影響を英語は大いに受けました。
そしてこの北欧でのこの父孝の付け方というのが、実は設備時にSONさんを付けるというおなじみのやり方だったんですね。
もちろんですね、これさんというので息子という意味は、実はこの単語自体、名詞自体は英語にももともとあってですね、必ずしも北欧語から借りたきたものではないと。
ただ父孝の設字として設備時として使うさんというのは英語では知られていなかった。
この習慣を北欧語から借りたということになりますね。
その結果ですね、無数のなんとかさんという人名が生まれました。
例えばアンダルソンとかジャクソン、ジョンソン、エリックソン、モリソンとかですね。
こういったなんとかさんというのは典型的な父孝ということですが、これもともと英語にありそうでいて実はなかった。
バイキングの影響で北欧の父孝の習慣を借りたまでだということですね。
ですから現在でも北欧人の名前では非常に多くて、いわゆるアンデルセンというのはアンダーさんのセンというふうにSENと英語では濁りますけれどもアンデルセンであるとか。
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他に例えばメンデルさんの息子でメンデルズゾーンというドイツ語のゾーンの部分は息子なわけです。
このようになんとかさんSONの部分はちょっと生って違ったスペリング発音になるかもしれませんが、これ非常に広く行われている父孝ということになりますね。
今度はスコットランド系、広い意味ではケルトの一派ですけれども、スコットランド系はケルト語のスコッティッシュゲイリックというケルト語のうちの一つの言語ですね。
ここで使われているのが皆さんもよくご存知のこのMACというものです。
MACあるいは絵が省略されてMCと書くものですね。
マクドナルドというのはドナルドさんの息子ということです。
マクミラン、マッカーサーということですね。
マッカーサーはアーサーの息子ということになります。
これスコットランド系の父孝の付け方。
次、アイルランド系なんですが、これは瀬戸字としてOを付けます。
Oアポストロフィーという風に瀬戸字では書くことが多いですが、オブライアン、ブライアンの息子。
オコーノ、オコーナー等ですね。
Oなんとかというのがアイルランド語における、これもケルト系の一派なわけですが、父孝の付け方ということですね。
ウェールズ語、これもやはりケルト系の一派ですが、これは頭にアップというのを付けます。
アップジョンとかアップレイスとか、有名なところではパウェル。
パウェルっていうのは、実はアップハウェルが包まってパウェル。
最初のAも消えちゃってパウェル。
ハウェルがパウェルになったわけですが、もともとはハウェルに父孝を付けたという父孝の瀬戸字を付けたのが、このアップハウェル。
そしてパウェルということになるわけです。
フランス系です。
次はですね、これ瀬戸字でフィッツってのを付けますね。
フィッツ・ジェロール、フィッツ・シモンズ、フィッツ・ウィリアンのような言い方です。
これは典型的にフランス語と言いますか、ノルマンフランス語ですね。
ノルマン征服の後に流行ってきた名付けです。
この辺は直接的に英語とか英語の近隣ということで、こうした名前に接する機会が多いんですが、
少し離れた東欧からロシア方面にかけてもこの父孝というのは現役です。
ロシア語ではこれもよく知っていると思います。
なんとかオヴィッチってやつですね。
イヴァノヴィッチっていうのはイヴァンさんの息子ということでイヴァノヴィッチとかショスタコヴィッチであるとか
なんとかヴィッチっていうのは典型的にロシア語ですよね。
それからポーランド語。
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これもお馴染みなんとかスキーです。
コルジップスキーとかマリノスキーというスキーというのはスラブ系でロシアでも使われますが
もともと父孝の語尾ということになりますね。
ヨーロッパを離れても東洋でも例えばアラビア語などでは頭にイブンっていうのをつけますね。
イブンバトゥーターとかイブンフィーナーって言った例がありますが、これも父孝の意思です。
このように父親の名前を取ってですね、息子に送ると言いますかね。
その際に全く同じではなくて、頭やお尻に何らかの設備字をつけるということで継承したということです。
どういう名付けか、父孝を使っているかによって少なくとも系統は分かるということになりますね。
それではまた。