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おはようございます。英語の歴史を研究しています。 慶応義塾大学の堀田隆一です。このチャンネルでは、英語の先生もネイティブスピーカーも、
辞書も答えてくれなかった英語に関する素朴な疑問に、英語史の観点からお答えしていきます。 毎朝6時更新です。ぜひフォローして、新しい英語の見方を養っていただければと思います。
今回取り上げる素朴な疑問は、なぜ used to do が「〜したものだった」なの? という疑問です。
この変な助動詞がありますね。この used to というやつです。 これは、いわゆる使うを意味する use に、過去形の d を加えて used ですね。
その後、不停止が来るということで used to なんですが、これが一色端になってしまって、助動詞として使われるので、無性化して used to になるんですね。
used の do の部分が t になるわけです。そうすると、次の不停止マーカーである to の最初の to と一緒になっちゃうので、
この辺が、この used の d があるのかないのか分からないような発音になりますよね。つまり used to ということになります。
この後に動詞の原型が続いて、以前〜したものだったというような過去の習慣、過去の状態を表したりする used to という特殊な助動詞が英語ではあるわけです。
例文としては、I used to get up at 5 in the morning when I was a child みたいな文ですね。
かつて〜したものだった、〜する習慣だったということですね。これを疑問文にしますと、What time did you used to get up when you were a child?
過去は過去なので、did を使うという言い方もあれば、これは一つの助動詞なんだという言い方で、ちょっと固い言い方ですが、
What time used to get up when you were a child? のような言い方も可能です。
このように、一般動詞と助動詞の中間的な位置づけにあるということですね。
否定文も一緒です。過去形の普通の動詞と扱えば、I didn't used to get up at 5 when I was a child という言い方もできれば、
I used to get up at 5 when I was a child のような、used to という言い方ですね。
used にnt が付くので、途中のシーンにtあたりが消えて、used to という発音になりますが、
こんな長たらしい言い方ですけれども、助動詞梢にですね、そのまま used に nt を付けた、used to これが使われる場合もあります。
そもそも、これはused、使うという意味の、一般動詞から来ているということは想像できるんですが、
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なぜこれが以前何々したとか、かつて何々したものだったというような、過去の動作の習慣みたいなものを表す意味になるのかということですね。
ただの used じゃないかと思われるわけです。ここで思い出されるのは、be動詞を伴った be used to ってやつですね。
これはまた全く別の意味ですが、何々慣れているという意味で使われますよね。
これ、慣れているという意味ですので、先ほどの助動詞の used to これ、かつてしたものだった習慣、つまり慣の字ですよね。
慣れるっていうことがあるので、何かあるなと思われるわけですね。
実際ですね、この used という単語は本来の英語ではなくて、フランス語なんですね。
フランス語で使うという意味なんですが、ただ使うではなくて、常用する、常に使うという常にの部分があるんです。
その慣用的に使う、慣習的に使うというような常にとかいつもとか、つまり習慣というような意味がもともと内在されてるんですね。
一番わかるのはですね、この実は形容詞形が usual なわけですよ。
そして副詞形はもちろん usually ということで、これ常にいつも、つまり習慣を表すわけですよね。
なので used というと、使うという意味が頭に浮かぶんですけれども、もともとの意味は習慣的に使う、つまりたまたま使うんではなくて、
いつも使っているよという意味の常用する、この意味での使うなんですね。
そう考えると、なぜ be used to が何々慣れている、つまり何々を習慣としているという意味ですよね。
同じように今回の問題である used to という助動詞、かつてしたものだったというのも、この used という動詞をですね、何々することを習慣とするぐらいの意味でとれば、
これが過去形であり、そしてその後に不定詞を取ってですね、何々することを常としていたという意味が出るのは当然ということになります。
つまり、I used to get up at 5 in the morning when I was a child というのは、言い換えれば単に usually という副詞を使ってですね、
I usually got up at 5 in the morning when I was a child ということと、ほぼ同じ意味っていうことですね。
usually であれば副詞として言ってるんですが、これを動詞を使って、そして助動詞的に使ってですね、
I used to get up at 5 in the morning when I was a child みたいな言い方と、ほぼ同義ということになります。
さあ、そうであれば、なぜ used to というふうに、これ過去形しかない変わった助動詞なんですよ。
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used to かつて何々したもんだった、以前した、以前そういう習慣があったって意味で、じゃあこれ過去形じゃなくて現在形でですね、
普段何々しますという現在の習慣を表す用法があっても良さそうではないかと。
つまり、ただの used の現在形に to そして do という不定詞が続くっていう方ですね。
これがないっていうのはなぜなんだろうっていうことが今度は気になってきますね。
実は歴史的にはこれ存在したんです。
used to という、つまり現在形ですね。現在形の used に to がついて、不定詞 do というものが続くということで、
普段何々する、良くする、何々する習慣だという意味で、これはですね、14世紀ぐらいから実はこの現在形の用法というのも存在したんです。
それがですね、初期近代英語記ぐらいまで使われたんですね。
これちゃんと記録に残っているってことです。
ところが、その初期近代英語記以降ですね、表現が過去の用法、つまり used to という形の過去の用法に限定されていって、
しかもそれが一般動詞的な使い方から助動詞的なものへと発展したということなんですね。
そして現在形の使い方は廃れていったということなんです。
結果的に、過去限定の、過去オンリーのフレーズになっていったということなんですね。
もともとは現在形もちゃんとあった、つまり I usually get up at 5 というのを、かつては I used to get up at 5 と現在形でこういうことができたということなんですね。
じゃあこれなぜか、なぜ現在形は消えて、過去形だけに限定されてしまったのか。
これはなかなか難しいんですけれども、一つは音声上の理由があると思うんですね。
最初の方で述べたように、
used ですね、この後に to が付くとですね、過去形か現在形かがはっきりしなくなる音上ですね。
過去形にはもちろん d がついて、t って発音なんですが、
used to の次の to 不定詞の to の最初の t とですね、一緒になっちゃって、結局マージしちゃいます。
なので he used to とか I used to って言った時に、これが過去形なのか現在形なのか、音上はわからなくなるということですね。
こんなように時勢が異なるのに、形態上をマージしてしまったということが、一つの原因なんではないかと考えられますが、
最終的にはですね、本当のところはどうして過去形がなくなったのかっていうのはよくわかりません。
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そして標準英語では近代英語記ぐらいにですね、この現在形の用法はなくなったといったんですが、
実はですね、現在世界で話されているいろんな種類の英語っていうのがありますね。
その中で例えば Singapore English ではですね、この現在形としての use に to を組み合わせた used to というのが使われてるんですね。
過去形の used to ではなくて、現在形の発音一緒なんですが used to が使われているっていうことなんです。
一つコーパスから見つけた例文を読み上げますと、例えば Fortunately for me, nice and satisfied clients used to write me complimentary letters ということで、これは現在形。
習慣的に私に手紙を書いてくれるという文なんですね。今でも使われている現在形の例文でした。ではまた。