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こんばんは、ゆうこです。このチャンネルでは、私の読書ログや日々の学びを音声配信しています。
今日は、千早茜さんの『透明な夜の香り』という小説について話してみようと思います。
元書店員の市川、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。
そこでは、調工師の小川作が、幼馴染の探偵、心情とともに客の望む香りを作っていた。
どんな香りでも作り出せる作のもとには、風変わりの依頼が次々と届けられる。
市川、人並み外れた嗅覚を持つ作が、それゆえに深い孤独を抱えていることに気がつき、
香りにまつわる新たな知覚の扉が開く、ドラマティックな長編小説。
ということで、千早茜さん。言わず儲かなですが、直木賞を受賞された作家さんですね。
透明な夜の香りという名前の小説で、この4月に続編である赤い月の香りという本が発売されています。
この透明な夜の香りは渡辺純一文学賞を受賞している。
小川陽子さんが解説を寄せられていて、
言葉の意味を越えて嗅覚が際立つという軽薄な体験をさせてくれる小説であるとおっしゃっています。
小説の始まりは市川の普段の暮らし。
市川がどんな人でどんな暮らしをしていて、どこに住んでいて、どんな状態にあるのかみたいなことが、
ありありと読んでいる側に伝わるような、市川赤根さんらしい細かいリアルな描写から始まります。
市川が言うんですね。働かなきゃ。
そこからこの物語がスタートするような気持ちになりました。
この本の中で出てくるのは、香りというのは人間の五感の中で唯一脳の界刃とつながっている知覚であるということですね。
界刃というのは記憶を司る機能になっていて、匂いだけが記憶と直結している。
だからある匂いを嗅ぐと昔の遠い記憶が呼び起こされたりする、そういう現象もある。
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それは五感の中で唯一嗅覚だけみたいです。
ラベンダーの香りを嗅ぐと昔行った北海道の旅行の記憶が蘇るとか、そんな風に記憶と匂いというのは直結していて、匂いによって記憶を呼び起こすことができる。
匂いってそういう五感の中でも特別な知覚だということですね。
例えばずっと覚えていたい自分にとってはとても大切な記憶だったらいいんですけれども、中には忘れたい記憶っていうのもありますよね。
そういったものをまず永遠に自分を忘れたい記憶につなぎ止めてしまう、忘れられないという苦しみにもつながるんだなと思います。
長行詞である作は人並み外れた嗅覚を持っているがゆえに、それは良いことばかりではなく、それ上に深い孤独を抱えてしまうことにもつながっている。
主人公の市川はそういうことに気づく役割として登場します。
市川自身も忘れたい記憶から逃れられない一人であるというところに、作の下で働くことでそういった記憶と向き合っていく。
その向き合う鍵となるのは匂い。
そんなお話ですね。
なので、こんな読書体験って今までしたことないなっていう感じです。
香りによって記憶が呼び起こされる。
そういう主人公の体験を読みながら追体験するような形になっていくので、
香りの表現だったり、そこから呼び起こされる記憶の描写がこの小説の中でいろんなところで出てくるわけですけれども、
どこか同じような、自分にも似たような経験を呼び起こしてしまったりするような不思議な読書体験だったなと思います。
この小説のテーマっていうのは香りであり記憶であり、そこから人間の悩みだったり苦しみ、孤独というものがこの小説全体のテーマなんですけれども、
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調香師の作がこんなセリフを言うんですね。
人を所有するっていうのはどんな気分?っていう。
作は人並み外れた嗅覚でいろんな匂いを嗅ぎ分けることができるし、それを再現することができるんですね。
要するに匂いを作り出すことができる。
なのでそれを頼っていろんな依頼人が一風変わった匂いを作ってくれっていうことを作に依頼してくるわけです。
作は自分なりのルールに従ってその依頼を受けたり受けなかったりするわけなんですけれども、
そんな作は作った匂いをガラスの瓶の中に閉じ込めて自分で保存するっていうことができるわけです。
それをやるのは匂いだけ、あるいはその匂いに紐づく自分の記憶だけなんですけれども、
あるとき人を所有する、要するに人に執着する匂いではなくて、人にその執着を移すということに作は危ない興味を持ってしまうんですよね。
それがどうなるかっていうのはこの小説で描かれている面白いところ、ドラマチックな場面だと思うんですけれども、
そういう執着っていうものがこの小説の裏にあるテーマのような気がしていて、
それはさっきも言った通り匂いっていうのは会話と直結していて、記憶を呼び起こす、
その鍵のようなものである、その記憶に匂いを記憶する、そのこと自体がどこか何か執着なのかなと思うんですよね。
その記憶を留めておきたいという執着だったり、その記憶から逃れたい、忘れたいけど忘れられない、それも執着だと言えますよね。
仏教ではこの執着から逃れることが幸せになる、下達であるというような教えがあると思うんですけれども、
そうできないからこそ悩みを引き起こす、そういう人だったり、そこにその人の記憶、
思い出、そこにあった匂い、そういったものが会話に直結して記憶されてしまって、忘れたいけど忘れられない、忘れたくない、そんな執着につながっている、そういうふうにも思えました。
愛と執着、愛着と執着の違いとは何か、ということに策が答えを出していくわけですね。
市川はですね、そんな策に少し惹かれる役になっています。
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最初はね、目の前に見えなくなってしまったんですけれども、
そんな市川は、その策に対して、どこか注文の多い料理店のようだと言います。
注文の多い料理店というのは、宮沢賢治の作った話ですよね。
えーと、宮沢賢治の作った料理店というのは、
えーと、あるお店に入ると、神の声みたいなところから指示されて、その通りお客さんがしていくと、
いいように料理されて、最終的には食べられる、みぐるみ剥がされて食べられてしまうという話なんですけれども、
なんかそんなようなことのようなことを言うと、
で、それでもいいと市川は思う。
そういう気持ちは、どういう名前なんだろうか。
この気持ちは、なんていう名前なんだろうか。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
で、それでもいいと市川は思う。
そのあまり良い名前の欲望なのか、そんな風に、市川が呟くシーン、とっても印象的でした。
香りも色も名前が付けられて、言語化されて初めて人が認識する。
果たして欲望もそういった類のものではないのかなと思います。
なので、香り、匂いというキーワードに紐づいて色だったり欲望だったり終着、
というような、どこか言葉にできない、言語ができない、だからこそ悩みにつながっているようなことに取り組んだ
千早朱音さんの小説なのかなというふうに思いました なので
ちょっとゾクッとするね 落ちる喜びみたいなものも見えてくる話なのかなと思いますが
最後は一華の健全な素直さ、賢明さにとても救われる 作が救われる話だなと思います
続編である赤い月の香りも私の手元にあって 読むのがとっても楽しみですね
なのでこれから読んでいきたいと思います ということで今日は
千早朱音さんの透明な夜の香りについて話してみました
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ではでは