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2022-01-05 12:35

人に言いたくないことを、一番身近な人にこそ打ち明けられなくて【第90夜】

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今夜は「外に出かけたくないほど寒い日に、暖房のきいた部屋にこもって読みたい震撼の海外サスペンス」をご紹介します。今夜の勝手に貸出カードは、サラ・ピアーズの『サナトリウム』。スイスの山岳リゾートに建つ古いサナトリウムを改装してできた豪華ホテルで起こる凄惨な殺人事件。吹雪で密室状態になったホテルで休職中の女性警官エリンはたった一人事件解決に挑むのですがーー。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、ナビゲーターの高段者ウェブマガジン、みもれ編集部のバタやんこと河童です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第90夜を迎えました。新年皆さんいかがお過ごしでしょうか。
今夜はお便りの紹介はお休みで、こんなテーマで本を紹介したいと思います。
外に出かけたくないほど寒い日に暖房の利いた部屋にこもって読みたい、新刊の海外サスペンスです。
外はもう雪、大雪、吹雪の中、耳がちぎれそうで外に一歩も出たくないっていう感じの日に、家でね、こたつとか毛布にくるまれながら読みたい一冊です。
今夜の勝手に貸し出しカードは、サラピアーズのサナトリウムにしました。
これ私が年末に読んですごく面白かったんですよ。
もう早く紹介したくってリクエストを待たずに、勝手に推薦しちゃいます。
舞台はですね、スイスの山岳リゾートです。
古いサナトリウムをリノベーションしてできた、おしゃれで豪華な5つ星ホテルがあるんですね。
そのホテルに弟の結婚のお祝いで恋人とやってきたのが主人公のエリンです。
彼女はイギリス人の警官で、今はちょっと事件があって給食中なんですね。
元サナトリウムという、ちょっと岩くつきの土地の建築を生かして、そのサナトリウムも勝者なデザインで、
当時から有名だったみたいなんですけど、その洒落た建築物を生かして装飾を極限まで削ぎ落とした超おしゃれホテルなんですね。
主人公のエリンはちょっとそのうすら気持ち悪いなーって思っているんですけど、一緒に来た恋人のウィルは建築デザイン好きな男性で、
超かっこいいな、このイケてるインテリアも建築もっていって、いちいち感動しているわけです。
この辺りの2人のギャップが面白いのと、後々この2人の感覚の違いなんかが効いてくるわけなんですが、
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私はこの本を読みながら、あるホテル・リゾートをちょっと想像していました。
どことは言わずにおきますけれども、有名建築家がリノベーションしたホテル・リゾートで、おしゃれには違いないけど、
殺風景な真っ白い箱が、扉がバーって並んでいる廊下とかが、ちょっと病院っぽいなと思ってて、
サムエみたいな部屋着がまたね、病院、入院患者感を助長するというか、
やっぱり高いホテルは過度な装飾、過微なインテリアが多少あった方がいいのかもしれないなって思ったりしました。
皆さんも想像つくところがあるでしょうか。ちょっとこう今っぽいね、ミニマリズムな感じのホテル、最近できたホテルなんか、こういう傾向のところも多いですけどね。
さてこのホテルでどんなことが起こるのか、後半にお話ししていきたいと思います。
主人公のエリンは弟のアイザックの結婚祝いでこのホテルに来ているんですが、実は弟と仲があんまり良くないんですね。
もう一人いた弟が過去に事故死、デキ死、溺れて亡くなってしまっていることや、
半年以上前にお母さんが、二人のお母さんが亡くなった時に弟のアイザックが無関心だったというか、何もしてくれなかったっていうことが過去を残していて不満があって、
弟の嫁のロールとも昔何かあったっぽくて、このエリンと彼氏と弟夫妻の4人がギクシャクしているんですよ、ずっと。
そのギクシャクしている4人の描写が続く一方で、ホテルの従業員のアデルという女性が何者かに襲われているという描写が挿入されてくるんですね。
アデルに何が起こっているのかちょっとよくわかんないまま、この話が交互に進んでいくんですけど、物語が大きく動き始めるのは200ページ目くらいからなんですかね。
前回のこのポッドキャストで同志少女よ敵を打てをご紹介して、あれは展開がとにかく早くて、最初の40ページぐらいで舞台設定を説明してクライマックスまであっという間ですごいっていう話をしたかと思うんですけど、
これはその真逆ですかね、ゆっくりしたペースで進んでいきます。
ホテルの中の建築とかインテリアとかの細かい描写が続いて、それはそれで結構楽しいんですけど、とにかく外は寒そうだし、4人は家族はギクシャクしているという会話が続いていて、不穏な感じがじわじわくるっていう感じのミステリーですね。
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でも全然前半が退屈ということではなくて、読み手の心をそらさないのは、どこがすごいかっていうと、まず大吹雪で外部と遮断されてしまったっていうこの舞台設定が魅力的ですよね。
次々いろんなことが起こるんですけど、てこと犯人はホテルの中にいるっていう緊張感、弟かもしれない、そのフィアンスかもしれないし、恋人かもしれない、支配人か他の従業員なのかっていうこの緊張感が完璧な舞台設定ですよね。
大堂のミステリーの定石が散りばまっていて、それに加えてこの主人公のエリンっていう人が不安定なんですよ。不安定なヒロインという魅力ですかね。
エリンはイギリス人の警官で、イギリスから旅行でたまたま来ているスイスで、急に捜査をしなきゃいけない状況になっちゃったっていうことなんで、
管轄外なわけですよね。この飛行機の中にお医者様はいらっしゃいますか?みたいな感じで、たまたま言い合わせちゃった。プロではあるけど、専門外だよっていうか管轄外なんだけど、急に事件を一人で解決しなきゃいけなくなった。
そのヒーロー、ヒロイン役としてはエリンはちょっと頼りなすぎるんですよ。切れ物って感じでもなくて、思考がぐるぐる行ったり来たりしているし、弟と母親のことで頭がいっぱいという心がまいっちゃってるんですね。
その癖も結構単独で犯人に対峙しようとしたり、無謀なとこがあって、いやいやちょっとそれは本部に連絡してから行ったほうがいいんじゃないのっていうね、一人で結構行動してしまうっていう、一番最初に殺されそうな事件を解決できなそうなヒロインっていう設定がドキドキ感、こちらの読み手の緊張感を盛り上げているかなと思いました。
今日はこのサナトリウムから神フレーズをご紹介したいと思います。
欠点を見せたがらないということは、完璧ではない自分を人に見せることが苦手ということだ。困っていても誰にも相談しないタイプ。本当は自分に自信のないタイプ。
ロールはおそらく素の自分を好きになってくれる人などいないと思っているのではないか。だから表面を作ろう。
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こちらは主人公のエリンが弟の嫁ローラーのSNSを見て彼女を分析しているシーンなんですね。
ローラーはこの前に行方不明になってしまっていて、彼女はどういう人であるかっていうのをエリンが分析しているシーンなんですが、そっくりそのままエリンにも当てはまりそうな分析なんですよ。
エリンは過去に弟の事故史、歴史があって、それはもう一人の弟、アイザックのせいだと思っていて、それが彼女に大きな影を落としているんですね。
それを恋人のウィルには話してはいないんです。これを読んで、島本龍さんのファーストラブを思い出したんです。
北川圭子さんと中村智也さんで映画になったのをご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。
北川圭子さんが演じる公認心理師のマカベユキさんは、自分のお父さんがロリコンというか、小児性愛者だったっていうショックがあって、それを夫には言ってないんですよね。
自分のトラウマを父親殺しの事件を起こした少女、かんなちゃんに、重ねすぎちゃっているんじゃないかって中村智也に指摘されるところがあるんですが、その北川圭子さんとエリンはちょっと似てるなぁって思いながら読んでいました。
一番の自分の闇を一番身近な人にだけ話せてないっていう、後ろめたさ、ほの暗さがあるんですよね。
でも先ほど読み上げた箇所の通り、その自分を好きになってくれる人などいないって、多かれ少なかれ誰でも思ってるんじゃないかなと思ったりして、
家族や恋人とか夫婦で、その自分を好きになってくれてるって胸を張って言える人はどのくらいいるだろうかと思ったりなんかしました。
ちょっとそのウィルとエリンの関係がどうなっていくのかというのも一つの大きな軸になってまして、
その2つの夫婦の関係性だったりとかを追っかけながらも、後半ね、怒涛のサイコスリラーに展開していくんですよ。
お話が苦手な方にはちょっとお勧めできませんが、すごく続々できる海外小説です。
ぜひね、温かくして読んで楽しんでいただけたらと思います。
今日は最後までお付き合いいただきありがとうございます。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみー。
12:35

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