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2021-12-08 18:20

2021「女の人生を見つめ直す」おすすめ文庫本4冊【第86夜】

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年末年始におすすめの文庫本をご紹介します。女性の人生の選択にまつわる小説をセレクトしました。あの時の選択は間違ってなかったのかな……、こんなはずじゃなかった……、いやこれでよかったのか……そんなことをグルグル考えさせられる小説たちです。『彼女が私を惑わせる』こじかさら/『タイムスリップしたら、また就職氷河期でした』南綾子/『田舎の紳士服店のモデルの妻』宮下奈都/『ブルーもしくはブルー』山本文緒

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第86夜を迎えました。今夜のお便りをご紹介します。
ペンネームゆきたんさんより、バタやんさんこんにちは。今年の年末は久しぶりに実家へ帰る予定です。
旅のお供におすすめの文庫本があれば教えてほしいです。特に、することもなく実家で暇を持て余しそうな予感です。
気軽に読めるものや、人生を見つめ直すような小説があれば教えてください。といただきました。ありがとうございます。
そうですね、この年末年始は久々に実家に帰りますという方や、家族旅行も久しぶりに企画してますという方も多いかもしれませんね。
小さいお子さんを連れて里帰りするのって荷物も多いし、すごい大変だと思うんですけど、大人だけだと実家に帰っても結構手持ちぶさだったりするかもしれないですよね。
地元の同級生とか親戚とか、近所の人なんかに会うと月日が経ったのを実感したりとか、人生の選択についてふと考えたり、こんなはずじゃなかったかなとか、あの子はどうしたらなっちゃったんだろうとかね、
そんなことを考えたりするのが年末年始お正月だったりするかもしれません。
今日はそんなわけで、帰省される方もされない方にも年末年始におすすめの文庫本を何冊かご紹介したいと思います。
ユキタンさんのリクエストにもあったように、ちょっと人生を見つめ直すような、でもそんなに重たくなくて、新幹線の行き帰りにちょっと気軽に読めるような文庫本を4冊選びました。
早速ご紹介していきたいと思います。
1冊目は小塚沙羅さんの「彼女が私を惑わせる」という小説です。
これはですね、行きの新幹線の中とかがすごく合いそうですね。
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主婦の友達が急に臨機療理家になっていくっていう話なんですよ、ザワザワしますよね。
詳しく説明していきますと、青柳美香子さんっていう方はフードコーディネーターをやっているんですね。
単体時代の同級生で、主婦で、今は子さんが2人いて、っていうような、榎本沙和子さんというもう一人の主人公にアシスタントを頼むことになるんですよ。
フードコーディネーターとして結構忙しくなっていた美香子さんなので、アシスタントを頼まなきゃってなって、その単体時代の沙和子さんのことはちょっと思い出せないぐらい、
まあちょっとまあ言ったら地味なタイプというか、もっさりした感じなんですけど、自分の仕事の忙しい時にピンチヒッターをお願いしたりしているうちに、
なんとこの沙和子さんの方が主婦雑誌のレシピが人気になったりなんかしちゃって、どんどん一躍人気料理家になっていくんですよ。
このあたり大好物ですね。こういうなんて言うんですか、マウント返しみたいなやつね。
少し昔の林真梨子さんの小説を彷彿とさせるような、この女子二人のどっちが上なのか逆転劇みたいな話ですね。
さらに男性も絡んできて、どっちの方が女としての評価が上なのかみたいな話になっていきます。
この三賀子と沙和子とどっちもあんまり好きになれないなぁと思いながら読んでいたら、最後の最後、二人よりもさらに上手な女が現れるんですが、それは誰かっていうのはちょっと言わないでおきますが、読んでのお楽しみということで。
東京駅から新幹線に乗ったとしたら名古屋ぐらいまでで息も忘れて一気に読んじゃうような感じの小説でした。
さてさて、2冊目をご紹介します。
2冊目は、南綾子さんのタイムスリップしたらまた就職氷河期でした、という小説です。
これはタイトル通りなんですけれども、タイムスリップしたらまた就職氷河期だったっていうお話です。
主人公の櫻井凛子さんは就職氷河期世代で、現在あらほ非正規雇用なんですね。
再就職セミナーに行ったりして、人生の逆転を狙いたいなと思っているところ、そして雷が落ちてきて、1999年にタイムスリップしてしまうんです。
また就職氷河期からやり直しかよっていうね、私は2002年に就職しているので、ほぼ同世代、まさにこの世代の就職氷河期世代なんですけど、
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20年前の就活ってこんな感じだったっけなーって、ちょっとついこの間のことのように勝手に思ってましたけど、全然時代が違ったんだなっていうことにこれを読みながらびっくりしましたね。
パワハラとかセクハラとかブラック企業が当たり前みたいな世界だったのかな、そういう言葉がなかった、あってもそれがコンプライアンス的にこれはダメですよみたいな言葉じゃなかったから、
言葉がないと概念がないというかね、そういうもんなのかなって思っちゃってたんでしょうね。
中場ちょっとやばい宗教地みたいな研修とか、
なんか叫ばされたりとかするような研修とか、恐怖政治的な先輩の教え、
そういうしきたりだからみたいなものとか、会社員社会人になるってこういうもんなのかなって、
納得しちゃってたのかもしれないですね、多くの人たちが。でもそのいろいろ経験して40になった今、もう一回それの世界に行ってみると、いやいやちょっとおかしいでしょっていうことがいっぱいあって、
その林子さんは世直し人的になっていく小説なんですけど、
ああそれはワンオピーク時ってやつですねって林子さんが言うシーンがあって、周りの人がポカンとするっていう下りがあるんですけど、
ワンオピーク時っていう言葉がなかったのかな、なかったんでしょうね、1999年には。
それが当たり前で、働いてても働いてなくてもお母さんが全部やるのが当たり前だったから、ポカンとされたっていうことなんですけど、
そんな感じで林子さんがいろいろ指摘していって、それはおかしいって生き残ったりしてくれるのを、結構爽快な小説ですね。
ヒーローものっぽい感じなんで、ドラマ化してほしいなぁ、 誰だろう、たべみかこちゃんとかでピシャッとやってほしいですね。
恋愛も折りはさみながら、最後はちょっと感動できるような気持ちのいい小説でした。
続いて3冊目ご紹介します。 宮下夏さんの田舎の紳士服店のモデルの妻という本です。
これは先日仲の良いライターの厚見志穂さんに教えてもらって、面白かったよって、その場でポチッとして届いたらすぐ読んじゃった。
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もう届いた、その日の夜中に読んでしまった、それぐらい面白かったっていう小説なんですけど、
営業部のホープでイケメンでキラキラと線香を放っている、線香と芳香を放っているって書いてあったかな、
斉藤さんがいて、うつ病になってしまって、彼の故郷である田舎に引越をすることになるんですね。
奥さんの主人公のリリコさんにとっては彼の夫の故郷は馴染みのない、ただの田舎町っていう感じなわけですよ。
心が弱ってしまった旦那さんにとってはホッとできる場所なのかもしれないけど、
リリ子さんにとってはこんなところに東京から行かされてしまったみたいな気持ちがどっかにあるわけです。
タイトルにあるように田舎の紳士福典のポスターモデルみたいなのを旦那さんがやることになるんですね。
だって元はイケメンだからね。
この田舎の紳士福典っていう言葉の強さっていうかパワーワード、
いろいろな情景が浮かびますよね。
この町の商店街の中の紳士福典にポスターが貼ってあって、それに旦那さんがモデルをやってるっていうイメージがすごくつきますね。
この中で運動会で二人三脚をするシーンがあって、
二人三脚をするっていうのが毎年恒例の盛り上がるゲームみたいになってるっぽいんですが、
その地域の運動会、みんな来るお祭りみたいな大事な行事っぽいんですよ。
そこで奥さんがちょっと転びそうになっちゃった旦那さんをグイッと持ち上げて、最後まで転ばずに走り切るっていうシーンがあって、
奥さんかっこよかったねって町の人たちに言われたりするんですけど、これはちょっと比喩的というか、もしかしたら奥さんは本当はそうやってグイッと持ち上げて、自分がリードして走るタイプの人だったのかもしれないんだけど、
なんとなくこう従う側になっていて、旦那さんについて田舎に来てみたものの、
なんかもっと私は花開けたんじゃなかったかなとか、こんなはずじゃなかったんじゃないかみたいなことをずっと考えているわけです。
全く同じ境遇にいるっていう人はそこまで多くないかもしれないですけど、そういうことを感じたりする女性は多分少なくないし、人生のどっかでそんなことを思ったりするんじゃないかなと思いながら読みました。
ちょっとこのリリコさんにいい人が現れたりして、ただただかわいそうなリリコさんっていう話ではないので、前向きなシーンもあり、すごく愛おしい小説でした。
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さて最後の1冊ご紹介したいと思います。
4冊目、最後は山本文夫さんのブルーもしくはブルーです。
山本文夫さんの話をするとまた泣きそうになっちゃうんですけど、ご紹介しますね。
ブルーもしくはブルーは1992年に単行本で刊行されたので、もうだから30年近くになるんですね。
そんな古さを感じさせない、ぐいぐいドラマチックに読ませる小説になっています。
ちょっとSF的な小説ですね。
広告代理店の旦那さんがいて、結婚6年目なのかな、東京に暮らす相子さんが主人公で、彼女は恋人もいて、その恋人とも八極寸前になってはいるんですけど、
不倫旅行中に昔の恋人が自分とそっくりな女性と一緒にいるのを見かけるんです。
それを相子Bとしますね。相子Aと相子Bは顔が一緒で、記憶も共有していて、
でも性格はちょっと違っていて、ドッペルゲンガーっていうやつですかね、とにかくその2人は生活を交換してみようってなるんですよ。
相子Aは昔の恋人に未練があるというか、あの人と一緒になってたらどうだったんだろうなっていうことを考えちゃうので、相子Bと入れ替わって、
元彼と一緒になったらもっと今より幸せなんじゃないか、みたいなことを思うんですけど、そうはいかないよっていう話ではあるんですが、
どっちを選んだら良かったんだろうっていうのは、結局入れ替わってもそうでもないっていうか、
そんなにこっちにしとけば良かったって思うほどには良くはないっていう結論なのかなと思ったりしましたけど、
ちょっとホラー的な要素もあり、サスペンスっぽさもあったりして、
割と短い小説なんですけど、女の人の揺れ動くいろんな選択、小さな選択とか、迷う日々の様々なことがギュッと凝縮された、
これは見事な出力だなって思わされる小説でした。ちょうど今年その文庫が真相版になって出たばっかりなんですよ。
私が持ってたのは古いバージョンの文庫だったんですけど、新しい方も買い直しました。
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ゆずきあさこさんの解説がついているので、ぜひ皆さんも新しく購入されるのでしたら真相版の文庫をゲットしていただけたらと思います。
今日の紙フレーズは、先ほどご紹介した宮下なつさんの「田舎の紳士服店のモデルの妻」よりお届けしたいと思います。
ここでないならどこでもいい 私は普通に東京で暮らしていたかっただけだ
えりこは考える 考えるふりをして考えない 考えないようにして考える
私は東京で暮らしていたかったのに 家庭の事情で田舎に引っ越すことを余儀なくされた
から行き通っている 振りをしているけれども実のところほっとしている とも思う
認めたくはない けれど強引に連れてこられて未来の設計を狂わされてほっとしている なぜなら未来の設計など始めからなかったのだから
とあります 鋭いですね 考えるふりをして考えない 考えないようにして考えるっていうのは
皆さんもご経験あるんじゃないでしょうか 設計図はね未来の設計図を描くってすごくしんどいことですもんね
設計図と違うっていうことを実感するのも辛いことだし だからそもそも設計を狂わされたんじゃなくて
そもそも設計など始めからなかったから 今こういう状況になんとなく流れでなってしまったっていうことにちょっと
ほっとしているっていう人は ほとんどの人がそうなんじゃないかなと思ったりして
でもこうなっ 感じになっちゃったけどこんな感じになっちゃった今も悪くないかと思う自分も
いたりして みたいなことを まあねまつねーしちょっと考えながら
読んでみてはいかがでしょうか あのいずれもそんなに暗いお話ではないし
ちょっと最後スカッとするようなどんでん返しがありますので ぜひ楽しんでいただけたらと思います
ユキタンさんリクエストありがとうございました 良い年末年始をお過ごしください
さてそろそろ時間になってしまいました 真夜中の読書会おしゃべりな図書室はこんな感じで
皆さんからのお便りを基にしながらいろいろなテーマでお話ししたり本を紹介したり しています
18:03
ミモレのサイトからお便り募集しているのでぜひご投稿ください また来週水曜日の夜にお会いしましょう
おやすみなさい おやすみ
18:20

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