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2021-02-24 13:14

【第47夜】読み始めると止まらない5作品。本屋大賞全作レビュー&大胆予想

「2021年本屋大賞」ノミネート作品全作解説。今日は、残りの5作品『この本を盗む者は』、『52ヘルツのクジラたち』、『自転しながら公転する』、『八月の銀の雪』、『滅びの前のシャングリラ』を一挙解説してまいります! 候補作品の共通点や傾向についても分析します。

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みもれ真夜中の読書会、おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAウェブマガジンみもれ編集部のバタやんこと川端です。
おしゃべりな図書室では、水曜日の夜にホッとできて明日が楽しみになる、をテーマに、
皆様からのお便りをもとに、おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
さて、第47夜となりました。
先週に続き、今年の本屋大賞ノミネート作品について、
全作解説をお届けしてまいります。
先週、加藤重明さんの【オルタネート】をご紹介しまして、
六畳間のピアノマンに見る加藤さんの俳優としての勇気もすごいという話をしたら、
すごい数でツイッターでシェアされまして、
加藤さんすごいというか、加藤重明さんのファンの方がすごいありがとうございますという感じです。
10作品あるのに、まだ半分しかご紹介できてなくて、
今日はノミネート作品、残り5作品を一挙紹介していきたいと思います。
どんどん行きます。
まずは深緑の野脇さんの【この本を盗むものは】です。
今回、ノミネート作品10作品をパラパラって全部立ち読みというか見たときに、
ある共通点があって、
読みやすそうだな、これなら入っていけそうだなという印象のものが多いなと思ったんですよ。
それは書き出しもあるんですけど、もうちょっとどっちかというと見た目の問題というか、
ひらがなと漢字のバランスだとか書体とか、
行間、その本の想定だったりデザインも含めた印象で、
読みやすそうだなと思うものが多かったと思いました。
この深緑さんの【この本を盗むものは】だけがちょっととっつきにくそうというか、
噛み応えのありそうな小説だなという印象があって、
実際に読んでみてもそうだったんですね。
手出しをちょっと読んでみたいと思います。
読長町の三倉開智といえば、
全国に名の知れた書物の収集家で、評論家であり、
ぼぎゃーとこの世に生まれ落ちてから、
縁側で読書中にぽっくり行くまで、
読長に暮らし続けた町の名詞であった。
と書いちゃいましたけど、読み仮名振ってないと読めない漢字も多いですし、
文体もやや古風といいますか、
主人公の美冬ちゃんは高校生で、
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その書物収集家の祖父と書庫の管理人の父を持つんですが、
本人は本があまり好きじゃないっていうね。
この設定とタイトルからして、本好きの心をくすぐりますよね。
この本を結ぶものかっていうタイトルと、
女の子が本でできた階段を駆け上がっているような表紙のイラストなんですけど、
それでも優勝しているっていう、期待通りに捕まれる作品でした。
さて、どんどん行かないと。
続いては町田園子さんの52Hzの鯨たちをご紹介します。
これはさっきのこの本を盗むものの印象とは真逆で、
ぱっと見の表紙から受ける印象と中身のギャップが一番大きかった、
この10作品の中で一番大きかった作品と思いました。
どんな作品か後編でご紹介していきます。
52Hzの鯨たちというタイトルのほっこりした語感と、
表紙も暗い中の花柄みたいなややファンシーな世界観なんですけど、
中身はとてもヘビーなんですね。
ASLと呼ばれる難病の父親、義父の解剖、
21歳で担わなくちゃいけなかった主人公の女性が家族の呪縛から逃げ出して、
そして母親に虐待されていた少年と出会ってっていう話なんですよ。
全然ほっこりしてないじゃんってびっくりしたっていう、
あらすじを読んでから読めやっていうことですけれども、
その意外性とパンチ力、予想外に浜水が転がっていく展開も含めて、
本当にすごい小説でした。
町田園子さん、私はこれを初めて読んだんですけど、
他には魚乱とかコンビニ兄弟とかを書いてらっしゃるそうで、
タイトルだけでも面白そうですよね。
次読んでみようと思いました。
続きまして山本文夫さんの「地点しながら号展する」です。
これは何度かこのポッドキャストでご紹介しているので、
詳しくはあまり繰り返さずにおきますが、
過去の紹介の回もぜひ聞いてみてください。
私の昨年のナンバーワン小説に挙げさせていただきました。
このポッドキャストも今日で47回、50回近く配信してきたわけなんですが、
この小説が一番反響があったんですよ。
読みましたっていうね。
長い小説をあまりしばらく読んでなかったんだけど、
私が紹介しているのを聞いて買って読んでみたら
一気読みしたっていうコメントをいろんなところからいただきました。
Amazonとかでポチッと買うとびっくりするぐらい分厚くて
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ギョッとするかもなんですが、本当に一気読みなんですよ。
こうして読みましたって言ってくださる方と
ポッドキャストを通じて交流できたのも嬉しかったという意味で
思い入れのある作品です。
続いて、伊予原真さんの「8月の銀の雪」です。
これは就職活動を連輩中の理系の大学生と
コンビニで働くベトナム人のグウェンさんとの交流を描く
表題作「8月の銀の雪」のほか、
科学や理系の話がちょっとしたエッセンスになっている短編集ですね。
グウェンさんが意外なすごい人だったりとか
意外な偶然に出会いがキーになっていて
心優しい独語感のあるお話だったりします。
さてさて、ラスト10作品目に続いてまいりたいと思います。
さて、本屋大賞10作品目のエントリーは
永良雄さんの「滅びの前のシャングリラ」です。
これも一度ご紹介してますかね。
1ヶ月後に地球が滅びるという世界を描いた
ディストピアモのSFなんですけれども
これも自転しながら好転すると同じで
一気読み間違いなしの作品です。
地球が滅びるという設定にちょっとピンと来なかったとしても
騙されたと思って読み始めてみてください。
読み始めたら一気にいけちゃうからっていう風に
お伝えしたい。
そのぐらい永良雄さんの文章って推進力があるっていうか
船をぐんぐん漕ぎ出すような
自転車のペダルを一回踏んだらぐんって加速するような
そんな入っていきやすさがあるんですよね。
読みやすいっていう言い方があまり文芸では
褒め言葉じゃないかもしれないんですけど
大事ですよね。引っかかるところがないというか。
永良さんは昨年本屋大賞を取った
《流浪の月》でも私もそう思ったんですけど
人物の背景に入っていきやすい
ガタガタするところがなくて無駄がないし
説明できすぎない文章の天才だなと
改めてこの作品で思いました。
2年連続大賞はあり得るですかね。どうだろうか。
でも本当に未読の方はぜひ
騙されたと思って読んでみてくださいと
お勧めしたいです。
そんなわけで10作品全部ご紹介してまいりました。
気になる作品はありましたでしょうか。
今日の紙フレーズは52Hzの
《鯨たち》からご紹介したいと思います。
明日の天気を聞くような軽い感じで
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風俗やってたの?と言われた。風俗。
一瞬だけ言葉の意味がわからなくてきょとんとし
それからはっと気づいて
反射的に男の花っぱしらめがけて
ひらうて打ちした。パチンとこぎみよい音がする。
これは52Hzの《鯨たち》の
本当の書き出し冒頭の部分なんですけれども
まずこの冒頭が見事だなと思って
大分県の海辺の町に移り住んできた
主人公の女性の家の床板が壊れちゃって
それを修理に来た男の人が風俗やってたの?って
聞いたっていうシーンなんですね。
若い女の人が円もゆかりもない田舎に
突然東京から移り住んできて
しかもお金の羽振りは悪くなさそうだし
なんだか怪我をしてるっぽいっていうもんだから
風俗でもやっててヤクザに刺されたんじゃないかと
勝手に今村の人たちが推測してるよっていう話なんですよ。
そうじゃないっていうところから物語が始まるわけですが
この主人公に身の上話をさせる上手い展開だなと思って
難病のお父さんの介護と難しい母親との
いろいろいざこざがあったりして
そして脱出してこの町にやってきた
彼女の身の上話をどんな理由でいつさせるのかって
すごく難しいと思うんですよね。
こういう小説において
急に独り語りで告白しだすのも変だし
それを自然な流れで主人公の自己開示が始まって
しかも冒頭からインパクトが大きくて
聞き込まれてしまいました。
先週までのところで
順位としては暫定3位 オルタネート
2位 逆速ラテス
そして暫定1位がお下ゆ 主位キープとお伝えしておりました。
5作品を今日最後まで紹介しまして
発表します。
第3位がお下ゆ
ちょっと下がりましたね。
第2位が52Hzのクジラたち 急上昇
第1位は自転しながら好転するをしたいと思います。
今回10作品読んでみて
傷を負った主人公やあまりうまく今を生きれてない主人公が
光を見つけるっていうようなお話が多いなという風に感じました。
みんなが今世界的にちょっとトンネルの中にいるような
トンネルの向こうの光が近づいてくるのを
心待ちにしているような感じだから
なのかなと思ったりしました。
短編集や連作短編集も多かった中で
自転しながら好転するは書き下ろし長編ということで
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心身のパワーを感じますし
映像化もされてほしいなと思っています。
主人公の女の子は誰がいいかなって
今ずっと考えています。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございます。
3週連続で本屋大賞ノミネート作品の解説をお届けしてまいりましたが
来週からはまた皆さんのお便りをもとに
いろんなテーマでお話ししたいと思っています。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は
みもれのサイトからお便りを募集していますので
ぜひご投稿ください。
また水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
13:14

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