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2024-02-07 10:20

すごく身近な人へ嫌悪感を持っちゃったときの怖さ。ゾッとしたり、ホッとしたり

今夜の勝手に貸出カードは、カン・ファギルさん著、小山内園子さん訳『大丈夫な人』です。

いろんな大丈夫じゃない状況を描いた短編集です。残虐なシーンはないけれど、ゾンビより怖いのは、身近な人の……。


★まよどく、2つのラジオ番組でご紹介いただきました!

橋本直と鈴木真海子のCROSSPOD

聴きょうるん!?スーツおじさんのスモールトーク



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真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室へようこそ。
こんばんは、KODANSHAのバタやんこと川端です。
真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室では、
水曜日の夜にホッとできて、明日が楽しみになるおテーマに、
おすすめの本や漫画、紙フレーズをご紹介します。
第164夜となりました。今夜のお便りご紹介します。
ペンネームあゆみさんからいただきました。
こんにちは、こんにちは。いつも楽しく拝聴しています。
私はこれまで洋書を読むことが多かったのですが、
千早朱音さんの透明な夜の光を読んで初めて、
日本語って美しいと改めて思い、千早さんの本をほとんど読んでしまいました。
アリエもとても良かったですね。
その勢いでいくつかの日本人作家さんの本を読んだのですが、
どうも千早さんの自分がその場にいるように感じる鮮やかな情景描写や、
感情がひしひし伝わる繊細な心理描写と比べてしまい、満足感がありません。
千早朱音さんの小説がエッセイが好きな人に
おすすめの作家さんや本があれば教えてくださいといただきました。
ありがとうございます。
千早朱音さんの波が来ているんですね、あゆみさんの中に。
いいですよね、千早さんの透明な夜の香りも、アリエも。
そしてエッセイだと、いのあう二人とか、悪い食べ物とか、食にまつわるものが好きですね。
小説の中に出てくる料理もすごく美味しそうだし、リアリティがありますよね。
なんかドラマとか映画でいうところのフードコーディネーターみたいな人が
千早さんの中にいるのかなって思っちゃいます。
というわけで、今夜の勝手に貸し出しカードは、
カンファギルさん著、幼い園子さん役の大丈夫な人にしました。
私があゆみさんにこれをおすすめしたい理由は、まず要書がそもそもお好きだということだったので、
これは韓国の小説なんですけれども、海外小説としての異国情緒がある魅力、
独特な表現の魅力があります。
もう一つは千早朱音さんの小説の魅力は、
私は無駄のない描写と言いますか、どこか淡々とした描写に対して、
食事とか香りとかお洋服のディテールとかに関しては、
必要に司祭な描写が重層的に続いていて、
それによって作品全体のトーンとか空気感みたいなのが生まれているところだと思うんですね。
カンファギルさんは大丈夫な人という、この短編集で私を初めて読んだんですけど、
その後、大仏ホテルの幽霊っていう長編を買いまして、
千早朱音さんと似ている共通点があるなって思ったところがあります。
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まずは大丈夫な人の作品について解説していきたいと思います。
カンファギルさんの大丈夫な人という一冊は、
表題作の大丈夫な人を含む9つの小説が入った短編集になっています。
帯にはサイコスリラーとあって、おー怖い話なのかなって思ったんですけど、
残虐なシーンとか出てこないです。
ただしどれも続々ぞわぞわと怖いお話でした。
表題作の大丈夫な人は、主人公の私が婚約者と一緒に車に乗っているという話なんですね。
婚約者が購入したちょっと人里離れた土地にある家に、
2人で車に乗って向かっているという話なんですよ。
来春結婚する予定で、相手の男性は高収入の弁護して、
もう家を買ってあるから一緒に見に行こうというわけですね。
幸せ絶頂っぽいじゃないですか。
しかしどうも不審な不穏な空気が流れていまして、
主人公はその前の週に婚約者に階段から突き落とされているっぽいんですね。
恋にではなかったと、ちょうどその時に停電が起こって、
うっかり当たってしまったと言われるものの、
しかしその車の中でもややモラハラっぽいっていうんですかね。
高圧的だったり、車の助手席の前のグローブボックスから開けようとしたら、
勝手に開けるなとか何を探しているのかみたいな反応をされて、
この人いつ切れるかわかんないぞみたいな緊張感があるんですよ。
サイコスリラ、ホラーと言っても残虐なシーンは出てこないですよと言いましたが、
婚約者、これから結婚しようと思っている恋人が、
もしかしたらすごい怖い人なんじゃないか。
いや優しいとこもあるんだけど、もしかしたらサイコパスっぽいんじゃないだろうかとか、
DVなんじゃないだろうかとか、
いやいやそんなはずないって思うっていうこう言ったり来たり、
試案するっていうのが一番怖いんじゃないかと思ったんですよね。
ゾンビが出てくるとかそういうことよりも。
9つある他の小説も、親友の恋人とか兄の恋人とか、
シェアハウスにいる人とか、すごく身近な人への疑い、
嫌悪感を持っちゃった時の怖さみたいなものを描いたものが多いです。
大丈夫な人というタイトルで、いろんな大丈夫じゃない状況を描いた短編集ですね。
この独特の不快感みたいなのがやみつきになりますね。
千早朱音さんの作品との共通点としては、
主人公が不快に思ったり、逆にすごくほっとしたり、
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この人好きだなって思ったりっていうその感情を、
感情自体を描写するんじゃなくて、
食べ物の描写で擦り替えたり、匂いの描写で擦り替えたりっていう
シーンがよく出てくる気がしてまして、
美味しそうな料理の描写が続くことで、
主人公がすごく高揚している、幸福感に包まれているっていうことを代弁していたり、
しずる感のある食べる描写が続くことで、
エロチックな雰囲気を、エロチックな気分になっていることを代弁していたりとか、
そういうところがすごく好きなんですけど、
カンファゲルさんの小説にもそういう描写の傾向を私は感じましたね。
今日はこの大丈夫な人に収録されている虫たちという短編から、
紙フレーズをご紹介して終わりたいと思います。
夕食のメニューはワインにつけてからグリルした鶏料理だった。
バターと胡椒、塩とハーブを混ぜ込んだマッシュポテトに
ブラックオリーブのパン、トマトサラダが添えられていた。
イエヨンが長くて薄いナイフを鶏の足の部分に入れた。
歯は滑らかに肉を切り離した。
熱い湯気が立ち上がり、一瞬視界が遮られた。
香ばしい匂いがした。気持ちが和んだ。
とあります。
この虫たちという小説は、格安のシェアハウスに入居した女の人の話なんですね。
同居している3人の女性には探り探りの緊張感があるんですよ。
でも美味しいものを一緒に食べる瞬間はやっぱりちょっとほっとするし、
いい匂いの湯気が立つ瞬間はやっぱり和むわけですよね。
その緊張と緩和がご飯を挟んで巧みに描写されていきます。
とっとする瞬間とほっとする瞬間が現れて、
そして結末がまたパツッと終わるっていうところはこの9つともに共通しているんですけれども、
なかなか独特の終わり方をする作家さんだなと思いました。
ぜひ9つともじっくり味わっていただけたらと思います。
さて最後に今日はお知らせがあります。
2つのポッドキャスト番組にちょっと出演というか紹介していただきました。
1つは服飾ジャーナリストで編集者の山本照彦さんのスーツおじさんのスモールトークというポッドキャスト番組にゲスト出演しました。
2月4日放送分と2月11日放送分の1コーナーに登場してますので、よかったら聞いてみてください。
これまで真夜中の読書会、真夜読で反響の大きかった本とか、就活性におすすめの本なんかをお話ししています。
それから銀シャリの高橋尚さんとラップユニットチェルミコの鈴木真美子さんによるクロスポットというラジオ番組でポッドキャストを紹介する番組のようなんですけれども、
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おすすめの読書系ポッドキャスト番組として真夜読をご紹介いただきました。
こちらも各種ポッドキャストで聞けるようなので、クロスポットで検索して聞いてみてください。
結構たっぷりご紹介いただきました。ありがたやありがたやです。
あと漫画も紹介してほしいというお声をいくつかいただいているので、近々漫画特集、漫画紹介会をやりたいなと思っています。
さて、そろそろお時間になってしまいました。
真夜中の読書会おしゃべりな図書室は皆様からの感想やリクエストをお待ちしています。
インスタグラムのアカウントまたよむから是非メッセージをお送りください。
それではまた来週水曜日の夜にお会いしましょう。
おやすみなさい。おやすみ。
10:20

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