<<今月の「ほんのれん」Editor’s Note>>
「大人」を問うむずかしさ
春、フレッシュな新入社員を見ると、かつての自分がよみがえる。緊張の中に「いよいよ大人の仲間入り」という誇らしさがあった。
あれから15年。いまの自分は、当時イメージしていた「大人」とは、だいぶ違う気がする。そもそも大人ってなんだ? 考えても、簡単には答えがでない。この答えづらさの原因はどこにある?
現代は成熟困難な時代と言われている。昔はどの地域にも、若者が大人になるための通過儀礼(イニシエーション)があった。儀礼を終えること=大人になることで、明確に「ここから大人」の境があった。
生き方が多様になり、通過儀礼を失った現代では、共通する「大人像」が持ちにくい。
大人を取り戻すには、想像力を働かせ、自らが心惹かれる大人のかたちを模索していくほかないのかもしれない。
「大人ってなんだ? 」を問うことは、「憧れ」を問い続けていくことでもあるはずだ。旬感本の向こうに、その姿が、浮かび上がってくるかもしれない。
(編集長・仁禮洋子)
出演:ほんのれん編集部 ニレヨーコ、ウメコ、はるにゃ
<今回登場する本>
『メタファーとしての発酵』Sandor Ellix Katz (著), ドミニク・チェン (監修), 水原文 (翻訳) オライリージャパン 2021
『大人になることの難しさ』河合隼雄 (著), 河合俊雄 (編集) 岩波書店 2014
『生と再生─イニシェーションの宗教的意義』ミルチャ・エリアーデ (著)堀一郎(訳)東京大学出版会 1995
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