「そのとき、脳では何が起きているんでしょう」
「ドーパミンが大量に出る」「ヘロインを使ったときと同じ」——よく聞く説明の出どころを、ひとつずつ確かめました。今回は、裏づけが見つからなかったものと、たしかに測られているものを、10分でお話しします。
いちばん確かだったのは、「人によって違う」という一点でした。
- ✅ 「ヘロインと同じ」の出どころは2003年の脳画像研究。ただし、その論文はヘロインと直接比較していない
- ✅ その研究は4年後、同じ研究者たちが調べ直し「射精と関係していなかった部分がある」と訂正している
- ✅ 調べ直して残った所見は「増える」ではなく「前頭前野の働きが下がる」ほう
- ✅ ヒトの脳内でドーパミンやセロトニンの放出量を直接測った研究は、探した範囲で見つからない
- ✅ ヒトで直接とらえられたのは、オーガズム後の海馬での内因性オピオイド放出(フィンランド・2023年)
- ✅ ホルモンは血液で測られている。くり返し再現されているのはプロラクチンの上昇だけ
- ✅ 骨盤の底の筋肉は、0.6秒間隔から始まり10〜15回収縮する。力のピークは7〜8回目(米国・11人・1980年)
- ✅ そして、その収縮パターンは同じ人なら毎回似ていて、他人とは区別がついた
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参考文献・関連リンク
今回のエピソードで参考にした資料です。いずれも参加人数の少ない研究で、因果を示したものではありません。
- The male orgasm: pelvic contractions measured by anal probe (1980) — Archives of Sexual Behavior 9(6):503-521。米国・若年男性11人が各3回。収縮は約0.6秒間隔で始まり10〜15回続き、1回ごとに約0.1秒ずつ間隔が伸び、圧の最大は7〜8回目でした。※測っているのは収縮の圧・回数・間隔で、快感の点数ではありません。
- Brain activation during human male ejaculation revisited (2007) — NeuroReport 18(6):553-557。2003年の研究(J Neurosci 23(27):9185-9193)と同じデータを著者らが再解析し、「以前に報告した活動パターンの一部は射精と関係していなかった」と述べています。新解析で最も重要とされたのは、前頭前野全体の活動低下でした。※独立した再現ではなく、同じ11人のデータの再解析です。
- Endogenous Opioid Release After Orgasm in Man (2023) — Journal of Nuclear Medicine 64(8):1310-1313。フィンランド。オーガズム直後に海馬で内因性オピオイドの放出が確認され、陰茎刺激中の視床の活動は自己申告の性的興奮の強さに比例していました。※ごく少人数の研究です。
- Specificity of the neuroendocrine response to orgasm during sexual arousal in men (2003) — Journal of Endocrinology 177(1):57-64。ドイツ・男性10人。2分間隔の採血で、最も一貫した変化はオーガズム後のプロラクチン上昇でした。オキシトシンの急性増加は一貫しませんでした。
- Endocrine response to masturbation-induced orgasm in healthy men following a 3-week sexual abstinence (2001) — World Journal of Urology 19(5):377-382。ドイツ・男性10人。3週間の禁欲後も、オーガズム直後にテストステロンは上昇しませんでした。
- Human spinal ejaculation generator (2017) — Annals of Neurology 81(1):35-45。フランス。死後の脊髄(男性6体・女性6体)の解析と、完全脊髄損傷の男性384人のデータから、ヒトの脊髄に射精を組織化する神経集団があることを示しました。
- Sexual desire, erection, orgasm and ejaculatory functions and their importance to elderly Swedish men (1996) — Age and Ageing 25(4):285-291。スウェーデン・50〜80歳の男性435人に郵送し319人が回答(73%)。70〜80歳でも46%が月に1回以上オーガズムがあると答えています。※1996年・スウェーデンの横断調査で、日本にそのまま当てはめることはできません。
▼次に聴くなら
- 前回は「オナホの正しい洗い方」。洗い方を比べた研究が見つからない、という話をしています。
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夢野アートは、元風俗嬢・夢野カナエのリアルな体験談と、性科学・セクシャルウェルネスの知識をもとに、性のお悩みや快感の仕組みを明るくわかりやすく発信するブログ・ポッドキャストです。
「快感を科学する」をテーマに、あなたの毎日が少し楽しくなるヒントをお届けします。
【ご注意】
※番組内で「研究は見つかりませんでした」「文献はありません」とお伝えしている箇所は、収録時点で私たちが調べた範囲での結果です。あとから見つかることもあります。新しい情報が出たときは、番組や記事で訂正します。
本エピソードは、性に関する一般的な情報提供を目的としたもので、医学的診断や治療を目的としたものではありません。
番組で触れたカナエの話は、本人が見聞きした範囲の実感であり、統計や医学的な根拠ではありません。
紹介した研究はいずれも参加人数が少なく、動物実験の知見は含めていません。脳の画像研究が示すのは「同時に起きていた変化」であって、快感の原因ではありません。
感じ方や回数には大きな個人差があります。他の人と比べて判断するためのものではありません。
急に射精やオーガズムの感覚が変わった、痛みがある、服薬を始めてから変化したという場合は、自己判断で薬をやめずに、泌尿器科や処方した医療機関にご相談ください。
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