タスクのチェック
音声ドラマ、働かない蟻、鍵屋にシナリオブログより。
キャスト、kaitoを紡ぎ、saiga kazuto、その他。
カタカタカタとキーボードを打つ音、勢いよくエンターキーを押す。
はぁ、saiga先輩、データ組み終わりました。チェックを、あれ?あの、saiga先輩、見ませんでした?
タバコ休憩じゃない?
それね、またですか?先輩、タバコ吸わないのに。
まぁ、タバコが目的じゃないからね。
あぁ、もう。
バンと机を叩いて立ち上がるつぬぎ。
ははは、そりゃもっちーが悪いよ。
saiga先輩!
ん?kaitoさん、どうしたの?
どうしたの、じゃないですよ。先輩から頼まれた機能、組み終わったんで、チェックをお願いしたいんですけど。
あぁ、そっか。早いね、さすが。じゃあ、テストはぬまっち、ぬまたさんにお願いしといて。
いや、あのタスク、もともと先輩の仕事ですよね?先輩がチェックすべきなんじゃないんですか?
いや、そう言ってもさ、俺、よく仕様わかってないんだよね。
それなら、その辺把握してるぬまっちがテストした方が効率的だと思うよ。
カタカタカタとキーボードを打つ音、後ろからクリタマロンがやってくる。
あれ?kaitoさん、まだ残業してたの?
はい。
キーボードを打ち続けるつぬぎ。
んー、やる気があるのはわかるけどさ、頑張りすぎは体壊すよ。
乱暴にエンターキーを叩くつぬぎ。
誰のせいだと思ってるんですか?
え?俺のせい?
あ、もしかしてあのタスクのこと?チェックのために俺を待ってたとか?
あの件はぬまたさんにチェックしてもらって納品しました。
あ、そうなんだ。じゃあ今は何やってるの?
自分の分のタスクです。
え?じゃあ自分の分のタスクの方が先にやってくれたってこと?
先輩のタスクの方が納期近いですから。
ごめんごめん、そのタスク俺の方に送っておいて。
先輩今からやるんですか?
いや、明日やるよ。
じゃあいいです。
え?なんで?別に納期今日じゃないんでしょ?
そうですけど、チェックも考えると今日中にめどをつけておきたいんです。
んー、無理することないと思うけどな。
あ、そうだ。明日俺が霧ヶ島総理に頼んで納期をリスケしてもらうよ。
いいです。
え?なんで?
私が仕事できないみたいじゃないですか。
なんかと誰も思わないって。怪盗さんいつも頑張ってるでしょ?
先輩と比べれば誰だって頑張ってるように見えます。
ははは、って厳しいな。
もう放っておいてください。お疲れ様でした。
な、なんか手伝うけど。
おつかれさまでした。
お、お先に失礼します。
カタカタカタとキーボードを打つ音、ピタリと手が止まる。
怪盗さん大丈夫?少し休憩したら?昨日も遅くまで残業してたんでしょ?
平気です。終電で帰れましたから。
怪盗、サイガのタスク、状況はどうなっている?
あの部長、ちょっといいですか?
うん、まあ。
サイガ先輩、チームから外してくれませんか?
うーん、そろそろ言われると思ったよ。けど、サイガはチームに必要なやつだ。
どうしてですか?あの人、全然仕事してません。それで私に全部押し付けて、私もう耐えられません。
サイガがお前に押し付けたのか?
いえ、ですが放っておいたら脳気すぎてしまいますから。
なるほど。怪盗はもうチームのタスクを把握できているのか。すごいな。
話を逸らさないでください。
うーん、働きアリの中には働かないアリがいるって知ってるか?
いえ、知りません。
サイガの自己評価
不思議なことに、その働かないアリを抜くと、今度は今まで働いていたアリの中から働かなくなるアリが出てくるんだ。
サイガ先輩は働かないアリだって言いたいんですか?ですが、私たちはアリじゃありません。
そういうことじゃないんだが。
もう少しだけ様子を見てくれ。
誰もいない夜のオフィス。カタカタカタとキーボードを打つ音。そこに電話がかかってくる。
はい、はい、そのタスクの担当は私です。え、ちょ、ちょっと待ってください。確認します。はい、はい。
ガチャッと電話を切る。マウスのクリック音とキーボードを叩く音。
あ、嘘。え、どうして。
キーボードを叩く音。
あれ、仕様と合ってるはずなのに。
ここの要件定義、間違えてない?
いや。
ごめん、驚かせちゃったか。
サイガ先輩、あがったんじゃ。
やあ、今までニカの人と喋ってた。このタスク、納期は?
明日の朝、です。
どうするつもり?
徹夜で直します。
いや、無理っしょ。
スマホを取り出して電話をかけるイット。
あ、モッチ。ごめんごめん。ちょっとミスってさ、手伝ってくんない?
え?
ありがとう。今からカイトーさんからデータ装填してもらうから。ん?
おっと、カイトーさんにも手伝ってもらってる。すまんね。今度、おごる。
ピッと電話を切る。
あの、電話をかけるクリタマロン。
あ、クラタさん。納期、勘違いしてたタスクあってさ、助けて。
よし、人員は確保した。カイトーさんは送られてくるプログラムのテストをやって。
サイガ先輩は。
見てるよ。
はあ。
納品できました。
よかったよかった。
あの、ありがとうございました。
ん?俺は別に何もしてないよ。
でも、サイガ先輩のおかげで間に合いました。
俺は無能なんだよ。
はい。
そこはいって言っちゃうの?
あ、すいません。
はははは。まあ本当のことだからいいんだけどさ。
で、俺は無能だから、誰かに助けてもらわないと仕事が回らないんだ。だから俺は人脈を作るしかない。
それで、いつもいろいろな人と話してるんですね。
まあ、半分は楽しいからだけどね。
私、人脈、全然気づけてませんでした。いえ、考えもしませんでした。
ダメですね、私。
いや、カイトーさんにはカイトーさんの仕事のやり方がある。
一生懸命仕事を進められることはすごいと思うし、かっこいいよ。
カイトーさんは今の自分のまま、自信持って進めばいい。
はい。
まあ、唯一の欠点は一人で頑張りすぎることだね。
困ったことがあったら相談してもらえれば。
俺が助けてくれる人を探すからさ。
たりき本願なんですね。
仕方ないでしょ。俺、無能なんだから。
そうですね。
うわ、ひどい。
本当のことじゃないですか。
そうなんだけどさ。
おしまい。