アイヌ遺骨返還のニュース概要と背景
日替わりコメンテーターによる解説で、日々のニュースを掘り下げるブラッシュアップ。 月曜日は、法学者の谷口真由美さんです。谷口さん、おはようございます。
おはようございます。
2週間ぶりのブラッシュアップ、谷口さんです。
そうでした。
さあ、今日はどんなニュースでしょうか。
はい、今日はですね、イギリスの自然史博物館が、アイヌの人々の祖先の遺骨7体分を返還したというお話なんですけれども、
これは、よくある有効の証みたいな伝え方をしたくないなと思って、
やっぱりこれ、奪われた祖先の身体を、体をですね、人として、民族として取り戻していくという話なので、
人権と先住民族の権利の話だというふうに捉えています。
なるほど。
まずもう事実関係なんですけれども、ロンドンの自然史博物館で5月5日に返還の式典が開かれて、
日本政府の担当大臣と北海道アイヌ協会の代表たちが参列したというものです。
返還された7体の中には、1866年に当時の英国領事、イギリスの領事から博物館に渡されて、
160年近く保管されてきた遺骨も含まれているというものです。
これ実は突然出てきた話ではなくて、欧米の流れをお話ししなきゃいけないんですけど、
欧米の博物館はここ20年ほどで一気に返還するということに舵を切っているんですね。
一つは植民地主義とか人種研究の時代に、
先住民族の遺骨が当事者の同意なく集められたという歴史に対する自己批判があります。
だから今回も自然史博物館の館長自身が、
今日の基準では受け入れがたい仕方で習得されたものがあるということを認めているんですね。
2つ目は、法律と公的な枠組みの整備というところなんですけれども、
今回のイギリスでは2004年に法律ができて、
過去1000年以内の遺骨については返還要請を検討できるようになったんですね。
なので自然史博物館だけでも、これまでに約600人分の遺骨を
オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ、北米などの
その人たちの出自のコミュニティに返還してきたというふうに公表しています。
3つ目が国連に先住民族の権利に関する宣言というのがあるんですけれども、
これの12条は、先住民族は自らの祖先の遺体、遺骨の返還を求める権利を持つというふうに明記されているんです。
なので、そういう欧米の流れがあるということを理解した上で、
じゃあなんでアイヌの祖先の遺骨がロンドンにあったのかというので、
日本国内におけるアイヌ遺骨の問題と返還の論点
過去の収集の問題がありますよというので、明治以降に日本でも海外でも
アイヌの人々の遺骨というのが、人種研究とか人類学の対象として収集されてきたというのがあるんですね。
文部科学省も、これ今北海道大学なんかがよく出してるんですけども、
大学保管のアイヌ遺骨の中に本人とかコミュニティの意に反して集められたものが含まれているというふうに認めているというので言うと、
実は欧米の博物館だけの話じゃなくて、日本社会にも全く同じ構造があるということですね。
で、次考えなきゃいけないのは誰に返すかという問題なんですよ。
今回遺骨がウポポイという白尾居にできたアイヌ共生文化センターでしたっけね。
そこの慰霊施設に収められるという予定になっているんですけれども、
施設側はすぐに個別返還できない遺骨を尊厳をもって管理する場だというふうに説明しているんですけれども、
一方で出土地域に住むアイヌの人々を中心にした団体が地域への返還を申請する仕組みというのもあるんですね。
なのでやっぱりもともといてたところに返してほしいというので言うと、
日本という国に戻ってきたら返還なのか、地域の共同体、アイヌの言葉で言うとコタンと言いますけれども、
コタンに戻って初めて返還というふうに呼べるのかというのが難しいところですね。
また別の論点としては、研究資料としての価値と祖先としての尊厳をどう両立させていくのかという問題で、
遺骨を資料として見る人と、痛みも記憶も持つ祖先の身体の一部だというふうに見る考え方では全く違うわけで、
実は国連の人権高等弁務官事務所に提出されているレポートでも、
日本のアイヌの遺骨の返還が進みにくい理由として、研究者側の学術的再利用への根強い要求があると。
そうすると、研究の自由が誰の身体を素材にしてきたかという倫理観の問題も出てくるんですね。
なので今、遺骨の返還というのは、ものすごくいろんな議論、学術界でも起こしているという問題があります。
アイヌ先住民族の権利を巡る国内の動き
今回のことを見て、いろんなことを考えるんですけど、もう少しアイヌの人たちのお話をすると、
日本の課題として、人権とか先住民族の権利の話というのを避けては通れないと思うんですね。
2019年にアイヌ施策推進法というのができまして、
その中で、アイヌの人々を日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族であるというふうに法律にはっきりと書いています。
アイヌの人々が先住民族であることも、そうした人たちに対する差別が違法であることも法律のレベルでは決着しているんですが、
最近になって、その法律の前提を国会議員のレベルで揺らがそうとする動きが出てきています。
例えば、日本保守党の百田尚貴代表が、アイヌは先住民族と位置づけた政府の方針を大きな過ちだというふうに発言をしています。
また、同党の北村春夫参議院議員が、先住民族かどうか簡単に決められる問題ではないというふうに述べているんですけれども、
簡単に決まったわけではないんですね。
木川田さんがアイヌの施策担当大臣なんですけれども、
木川田さんは、日本列島北部周辺、とりわけ北海道の先住民族という認識に変わりはないというふうに、政府としては明確に反論をしています。
ここを軽く扱ってはいけなくて、ロンドンの博物館が植民地主義の過去を反省して、祖先の遺骨を返す同じ都市に、
日本の政治の場では、そもそも先住民族なのかという議論を蒸し返す声が出ているので、
その返還の意義を日本側から切り崩しているというふうにも見えます。
具体的に、例えば札幌駅前の地下歩行空間、地下歩と言われるところで、
アイヌ民族の同化政策として批判される北海道旧都人保護法を称賛して、
いわゆる日本人がアイヌを文明化したような趣旨の民間のパネル展が開かれて、
アイヌの女性もあまりにもひどいということを語り、
研究者も私立を歪めて差別を助長する内容だと批判していますし、私もそう思っています。
だからこういう公共空間で分別的な先住民族に対する発言が多くなってきている。
大きな声になってきているというのがあります。
だから世界は、植民地主義の過去を見直して、先住民族の祖先に返す側に立ち始めているのに対して、
日本は逆流が起こっているという話です。
遺骨返還の意義と今後の課題
ようやくその祖先の遺骨を日本に返してもらったにも関わらず、
同じ国の中で先住民族としての存在そのものを揺るがす政治的な言説と、
公共空間での分別的な展示が同時進行しているというのが現在の状況になります。
変換はゴールではなくて、これは祖先の尊厳を取り戻すという出来事で、
今生きている愛人の人々の人権と権利の回復をどうつなげていくかという問題。
今回のニュースというのはそういう問題を突きつけているんだなというふうに考えます。
正しく知る、正しく教えるということもすごく大事だなと思います。
誤った解釈による情報に触れて、知らなかったらそうなんだと思ってしまうのも本当に怖いです。
そういうきっかけにもしてほしいなと思います。
谷口さんありがとうございました。
この時間は谷口真由美のブラッシュアップをお送りしました。
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