よし、裁判のパターンは見えました。でもちょっと現実的な話をさせてください。
はい、何でしょう?
裁判ってものすごく時間がかかるし、費用も馬鹿になりませんよね。明日が時効の危険だとして、今すぐ裁判の準備なんて絶対間に合いませんよ。
確かに、現実問題としてそれは厳しいですね。
ですよね。だから裁判官を巻き込まずに、自分たちだけで引ける緊急ブレーキみたいなものはないんですか?
もちろん用意されていますよ。それが裁判外での請求で、裁刻と呼ばれる手段です。
裁刻ですか?それって具体的にはどうやるんですか?
一番確実で一般的なのは、内容証明郵便を使うことですね。
あー、内容証明郵便ですね。聞いたことあります?
えー、郵便局がこの日にこういう内容の手紙を送りましたよと証明してくれる手紙です。
これでお金を払ってくださいと相手に請求するだけで、とりあえず6ヶ月間の完成猶予が得られます。
おー、手紙を送るだけで6ヶ月も時効をストットできるなら、手軽でめちゃくちゃ便利ですね。
とりあえず手紙を出しちゃえばいいんだ。ここであなたに○か×かで答えてください。
問題。時効の完成猶予として、裁刻によって6ヶ月ストップさせた後、もうすぐ期限が切れるからといって、もう一度裁刻をすれば、さらにまた6ヶ月ストップさせることができるでしょうか?
さあ、どうでしょう?少し考えてみてくださいね。正解は×です。なぜなら、
裁度の裁刻は完成猶予の効力を生じないという厳格なルールがあるからです。
つまり、手紙を送り続けるだけで永遠に時効をストップできるわけではないんですね。
払って払ってって言い続ければいいのかと思ってましたよ。
もしそれが許されたら、時効という制度そのものが崩壊してしまいますからね。
そうなんですか。
ええ、時効は古い管理関係を生産して社会を安定させるためのものです。
手紙1枚で無限に引き伸ばせるなら、相手は一生不安定な状態に置かれますよね。
ああ、確かにそれは相手がかわいそうですね。
だから法律は裁刻によるストップを一度きりに制限しているんです。
なるほど。裁刻はあくまで裁判などの本格的なアクションを起こす準備のための6ヶ月間のおまけであって、それ自体が解決策じゃないんですね。
その通りです。では、裁判外の手段でもう少し長く穏やかに時間を稼ぐ方法はどうか。それが協議を行う旨の合意です。
協議ですか。つまり、今後についてしっかり話し合いましょうとお互いに約束することですね。
ええ、そうです。
これだとどれくらいストップできるんですか。
この場合、書面やメールなどの電子的記録で合意すれば最長で1年の完成猶予となります。
1年ですか。手紙の6ヶ月よりはじっくり話し合う時間が持てますね。
そうですね。
でも、もし1年話し合っても決着がつかなかったらどうなるんですか。これも裁刻みたいに1回きりしか延長できないんですか。
ここが裁刻との大きな違いであり、比較して覚えたいポイントなんですよ。
協議を行う旨の合意は双方が納得して話し合いを続ける意思があるなら、再度合意をすることでさらに延長することが可能です。
えっと、じゃあお互いがまだ話し合おうと言い続ければ無限に延長できるんですか。
いいえ、法律はそこまで甘くありません。無限の先送りは許されないので上限が設けられているんです。
上限があるんですね。どれくらいですか。
資料にもある通り、再度合意で延長できるのは本来の時効が完成すべき時から最長5年までです。
なるほど、最長5年ですね。
ええ、5年経っても話し合いが終わらないなら、いい加減に裁判で決着をつけなさいということですね。
すごく論理的ですね。
手紙では一方的なので1回きりの6ヶ月ポーズ、お互いの話し合いなら延長できるけど最長5年までのポーズ、
そして裁判はハードルが高い。あれ、お金を貸している側からしたら、もっと一撃でゼロからリセットできる魔法みたいなボタンは他にないんですか。
実はですね、最もシンプルで最も強力なリセットボタンが存在するんですよ。
えっと、本当ですか。
ええ、それは相手に、はい、借金があります。ごめんなさいと認めさせることです。
えっと、相手が認めるだけでいいんですか。
はい、これが承認と呼ばれるものです。
承認ですか。
ええ、債務者が自分の借金を認めた瞬間、時効は更新、つまり完全にリセットされ、またゼロから10年の数え直しになるんです。
それは強力すぎますね。でも認めますっていう一方を欠かせないといけないんでしょ。
いえ、明示的な言葉だけではないんですよ。
言葉じゃなくてもいいんですか。
はい、例えば、今月は苦しいので来月まで待ってくださいと返済の猶予を求めたり、あるいは借金の一部、例えば300万円のうちたった1000円だけを口座に振り込んだりする行為。
1000円だけでもですか。
ええ、これらも全て借金の存在を前提とした行動ですよね。したがって、立派な承認となり、リセット効果が発動するんです。
1000円払っただけで、そこからまた10年リセットですか。これは債権者にとってはチート級の強さですね。
そうかもしれませんね。
でもちょっと意地悪な質問していいですか。
はい、何でしょう。
もし、そのお金を借りている相手が未成年者だったらどうなるんですか。未成年の約束って後から取り消せるんですよね。
いやあ、非常に鋭い視点ですね。まさにそこが、達験試験で受験生を罠にはめる最大の難所なんですよ。
やっぱりそうなんですね。
ここでテキストに必ず載っているめちゃくちゃ読みにくい超重要フレーズが登場します。聞いてくださいね。
相手方の権利についての処分につき、行為能力の制限を受けていないことを要しない。
わあ、出ましたね。法律用語の呪文ですよ。行為能力の制限を受けていないことを要しない。
ええ。
漢字ばっかりで何を言っているのか全く頭に入ってきません。
あなたも今、眉間にシワが寄りましたよね。専門家さん、これ要するにどういう意味なんですか。私たちのために日本語に翻訳してくださいよ。
わかりました。噛み砕いて翻訳しましょう。通常、未成年者などの制限行為能力者が新しく家を買うとかお金を借りるといった契約をした場合、判断力が未熟なので後から取り消すことができます。
はい、そこまではわかります。未成年を守るルールですよね。
これは財産を処分するには完全な判断力が必要だからなんです。でも承認はどうでしょうか。
承認ですか。
ええ。これは新しい契約を結んで財産を減らす行為ではなく、単に昔お金を借りましたよねという過去の事実をはい知っていますと見ためるだけの行為なんですよ。
ああ、なるほど。
はい。
新の契約を結ぶほどの完璧な判断力、つまり完全な行為能力がなくても自分が借金をしているという事実くらいは未成年でもわかるでしょうってことですか。
その通りです。だからこそ法律は事実を認めるだけなんだから、完全な行為能力までは必要としない、つまり要しないと言っているんです。
すっきりしました。行為能力の制限を受けていないことを要しない、イコール未成年者でも承認のリセット効果はバッチリ発生するってことですね。
ええ、そういうことです。
こうやって翻訳して理解しておけば、本番の試験でこの呪文みたいな文章が出てももう怖くないですね。あなたもぜひこの裏側にある事実を認めるだけだからという理由と一緒に覚えてくださいね。